Merk & Kremontの投稿より

Merk & Kremontが、Facebookに、とても興味深い投稿をしてた。
以下、和訳。

「数年前にホームタウンでDJをはじめたとき、プロモーターは僕らに、ラインナップに名前をのせるためには‘友達をクラブに連れてきて、チケット買わせて’って求めてきた。この戦略について僕らは判断しないけど、ただ自分たちのギグを確保するためだけに、友達にチケットを買ってと頼むことは悩ましいし、自分の才能ではなく、誰かほかの人の力によってのみパフォーマンスができるということは、満足できることではないと理解するのは簡単なことだった。なので、僕らはDJをやめて、僕らのトラックと音楽ゆえにプレイできるようになるまでスタジオにこもった。
数年がたち、ついに僕らはホームに戻ってきた、今回は新しい友達を連れて!
ありがとう、ミラノ。」
https://www.facebook.com/merkandkremont/photos/a.293165184068246.83803.291348837583214/1042810899103667/?type=3&theater

「年間300件のDJをこなす」とか「ディスカウントリスト100人は呼べます」って言う人たちは、このMerk & Kremontの投稿を見たら、どう思うんだろう?

現代のEDM DJが目指すべきところは、この投稿にはっきり出ていると思う。
プロモーターも日銭ばかり追わないで、こういう考え方を尊重してくれたらいいのになって思う。
経営上の判断でいろいろ難しいのはもちろんわかるけれど、クラブで音楽が大事だと思うのなら、それだけじゃいけないんじゃないかな。
Big Shout Out To Merk & Kremont!

Paris HiltonにEDM Tunesがインタビュー

Paris Hilton – Foam & Diamonds @ Amnesia Ibiza 2013 by Amnesia Ibiza on Mixcloud

こんにちは、Tomo Hirataです。
いろんな意味でよく話題になるParis Hiltonですが、EDM Tunesがなんと彼女にインタビューしてきましたよ。そういや、彼女のプレイって一度も聴いたことがなかったなと思ったので探してみたら、2013年のですが、ちゃんとイビサの名門Amnesiaのオフィシャルにありました。それが上のですね。Paris Hiltonは、ここ3年Amnesia土曜<Foam & Diamonds>のレジデントをしています。7/4のプレイを見たEDM Tunesいわく、Traktorのコントローラと2台のCDJを使って“NOW: That’s What I Call EDM”の領域に近いプレイだったということですが、上のもそうですね。なんかいちおうマッシュアップ入ってて、すごいミックスですが。。。日本のEDMをプレイしているDJも、これをクイックミックスにした感じの人がほとんどかなと思います。

インタビューから、返答のおもしろいところをピックアップしてみましょう。
「Daft Punkは今でもわたしのインスピレーションよ。素晴らしいわ」
「自分のやっている何よりもDJが好き」
「わたしを嫌っているすべての人が間違ってると証明できたと思うわ」

自分のDJにめちゃくちゃ自信を持っていて真剣に取り組んでいるようです。
2009年に起きた、Steve Angelloを酷評したあげくに、Angelloがリクエストに答えなかったということで大騒ぎになった件についても
「ほんとに謝罪します。ほんとにばかげていたと感じているわ」
と反省の言葉を口にしています。

彼女は、まったく下積みもクラブヒットもなしに、有名人からDJに転身してきたわけですが、彼女のパーティを楽しんでいる人がいて、そこに需要があるのなら、それでいいのだろうなと個人的には思っています。それはそれで、EDMカルチャーとは違う世界で成立しているわけなので。結果的に、彼女がEDCやTomorrowlandに出ることは現時点では予想できないわけですが。。。

コメント欄にひとつ共感できるものがあったので、ちょっと引用してみますね。
「Paris Hiltonがやっていることと、deadmau5やDaft Punkのようなアーティストがやっていることの間には大きな違いがあるよ。彼らはオリジナルのアルバムを出しているし、それを長いこと続けている。彼女はDJだから、クラブっぽいセッティングで、他人の曲をかけてクラウドを盛り上げているんだ。DJはちゃんとやるなら世界で一番簡単なことではないよ。彼女は他のアーティストが到達しているレベルには、はるかに及ばない。彼女がアルバムを出し始めたら、真剣に受け取るよ。それまでは、彼女はただのセレブリティから転身したDJ」

アルバムはポップアルバムを彼女も出してますけど、いわんとしていることは、アーティスト/プロデューサーと、ヒット曲をそのままかけるDJは違うんだよということですね。

現代のEDM DJは、Hardwellも言っていましたがアーティスト/プロデューサー出身です。そうでなければ、一流と認められるレベルには到達しないのです。そういう意味では、beatportヒット(というかトップDJにサポートされるようなフロアヒット)が何曲か出たところで、やっとスタート地点に立てるのだと僕は思います。

EDM Tunesのインタビュー記事

インターナショナルDJとローカルDJ

よく、日本からは国際的に活躍するEDM DJがなぜ出ないのだろう?という質問をもらいますが、これはトップEDM DJのほとんどがプロデューサー出身であることを考えると当たり前です。
日本のDJで国際的ヒット曲を持っている人はEDMシーンには一人もいません。
僕の「Taiko」がbeatport Electro House chartで27位、これが今のところ最高位と記憶しています。
またチャート順位だけじゃなくて、トップDJのラジオショウやDJセットでプレイされることが、欧米のEDMシーンで活躍するには必要条件になってきます。
これらは、いずれも現在の競争が激しいEDMシーンにおいては、ものすごくハードルが高いです。

ちなみにトコト君は総合チャートでトップ10入りという偉業をなしとげていますが、そのときの彼の曲はハウスだったので、いわゆるEDMヒットではなかったかなと思います。
シーンも、もっと健全でした。

では、日本でトップDJ扱いされている人は、国際的にはどういう評価なのだろう?という疑問が出てくると思いますが、これはローカルDJです。
要するに、日本国内(もしくはアジア圏内)で活動しているDJと認識されているということですね。

つまり、DJの種類は大きく分けて二種類あるのです。
国際的ヒットを出して、世界中をツアーしているインターナショナルDJと、自国周辺を主に守備範囲とするローカルDJですね。クラブのレジデントDJなどは、典型的なローカルDJです。
これは日本だけでなく、世界中どこにでもある区別です。
beatportチャートでブレイクを目指すか、iTunes Japanチャートでブレイクを目指すかの違いといったら、わかりやすいでしょうか。

もちろんインターナショナルDJのほうが世界的には人気もあり、出演料も高いのですが、だからといってローカルDJがダメということではありません。
特に、日本においては自国の経済の中だけでDJも職業として成立し得るので、あえてハードルの高い海外を目指すより、ローカルDJとして活動するほうが懸命な場合も多いでしょう。

また、この二種類はほぼ両立できないので、インターナショナルDJは地元ではほとんどブッキングがなく、ローカルDJは自国外ではほとんどブッキングがないという現象も起こります。

どちらを目指すかは、本人の意志しだいで、どちらもアリなわけですが、ローカルDJのほうがなりやすく、そのかわりに限界点も低いということを覚えておいたらいいと思います。

ちなみに僕はインターナショナルDJを目指していますが、ものすごく道は険しいですね(> <)

EDM DJと、これまでのDJの違い

EDM DJと、いわゆる一般的なDJは、やっていることがまったく違います。
ふつう、DJっていうとみんなが想像するのはスクラッチびしばしのバトルDJだったり、クラブで黙々と(ときどきMCいれたりして)beatportやトップ40のヒット曲をつないでいくDJだったりしますよね。
これは、EDM DJではありません(いいすぎかな、EDM DJスタイルではありません)。

HardwellはBillboardのインタビューで、こう語っています。
「もうDJなんていないよ. まあ少しはいるか、年配の人に。新人はみんなビッグ・ヒットを出したプロデューサーで、突然DJになるんだよ」

そうなんです。
EDM DJは、いまやほぼ全員がプロデューサー出身なんです。
最初にヒット曲があって、それで人気が出て、いろんなクラブやフェスでプレイできるようになるんです。Martin GarrixやOliver Heldensが好例ですね。

もちろん彼らも10代の頃からみんなDJの基本的なところは練習してきているでしょうが、Zeddとか、ほとんどDJ経験はなかったって言っていますよね。あのCalvin Harrisでさえ、最初の頃はつたないPC DJでした。

先に音楽制作とヒット曲ありき。
そして、自分の曲や、自分のレーベルの曲、自分でつくったマッシュアップやエディットでDJパフォーマンスをする、これがEDM DJです。

その背景にあるのはPC DJの普及によって、DJ自体はもはやあまりスキルを必要としなくなったこと、そしてEDMのトラックはPC1台でつくれるようになったってことがありますね。
そういう意味では、誰にでもチャンスがある時代になったということです。
このDJカルチャーにとって、巨大な転換点が2000年代にあったわけですが、日本ではそこが見過ごされていると個人的には感じます。