The History of EDM – 9 ~まとめ

ここまで駆け足でEDMの歴史を見てきましたが、簡単にまとめてみましょう。

’80年代のシカゴ・ハウスからハウス・ミュージックが生まれる

‘UKに飛び火して、’80年代末から’90年代前半に野外レイヴが大流行する。
これが、現在のダンス・フェスの原点となっている。
レイヴでプレイされていた(ブレイクビート)・ハードコアからジャングル/ドラムンベースが生まれ、これがダブステップ~のちのUS Bass Musicにつながっていく。

ヨーロッパ大陸で、’90年代にトランスが人気となり、ここからTiestoやArmin Van Buurenが生まれる。

’00年代中盤にはエレクトロ・ハウスの人気が上昇。
beatportでdeadmau5が人気を獲得。

2009年
エレクトロ・ハウスからDavid GuettaがEDMと呼べるようなサウンドを生み出し、USでのEDM人気を決定づける。
同じころ、Swedish House Mafiaがカリスマ的人気を得始める。

2010年
TiestoがEDMに転向。
Skrillex誕生。

2011年
シーンが巨大化を始める。
象徴的名曲Avicii – Levels

2012年
Hardwell、Alesso、Nicky Romero、Zeddといった第二世代が登場する。

2013年
Martin Garrix、Oliver Heldensといった、さらに下の世代が脚光を浴びる
Swedish House Mafia解散。

2014年
画一的なシーンは一段落し、多様化が始まる。
年末にはKygoがFirestoneをリリースし、メインステージ仕様ではないEDMに注目が集まる。

2015年
EDMのポップ化を象徴するMajor Lazer & DJ Snake – Lean On (feat. MØ)が大ヒット

2016年
The Chainsmokersが、EDM史上最高の成功をおさめ、USポップチャートを席巻する。

というわけで、2009年のDavid GuettaのUSブレイク、2012年のダンスフェスの熱狂とビッグルーム・サウンドの大人気を経て、現在はポップ・シーンにEDMの中心は移ってきていると言ってよいでしょう。
一方、ダンスフェスには、Tomorrowlandのメインステージにテクノ勢がブッキングされたり、Ultra Music FestivalにResistanceステージ、EDCにDreamstateステージが登場するなど、ルーツに帰る動きが見られます。

日本ではどういうわけか、EDMのイメージは、“アゲアゲ&ショットで大騒ぎ”というチープな、かなり誤解された形で定着してしまっていますが、ここに書いてきたことはSpotifyのビデオでも伝えられています。
ちなみにPLURという言葉は、USの’90年代アンダーグラウンド・レイヴ・シーンから広まったとされています。
もっともハウス・ミュージック自体がPeace & Unityを願う音楽であり、レイヴ・シーンにはサマー・オブ・ラヴ的な思想も流れていますから、現在のダンス・フェスが、いずれも同様の理念を掲げているのは自然なことでしょう。

このコラムで、EDMに対する正しいイメージが広まってくれることを願っています。

The History of EDM – 1 (’80年代)~ルーツをたどればシカゴ・ハウス
The History of EDM – 2 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – US編
The History of EDM – 3 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – UK編
The History of EDM – 4 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – ヨーロッパ編
The History of EDM – 5 (’00年代)~エレクトロの台頭
The History of EDM – 6 (’09年~’10年)~EDMの起点
The History of EDM – 7 (’10年代)~ダンスフェスの爆発的人気上昇
The History of EDM – 8 (’10年代)~EDMシーンが巨大化
The History of EDM – 9 ~まとめ

The History of EDM – 8 (’10年代)~EDMシーンが巨大化

全米でのEDM人気急上昇や、フェスの大盛況を受けて、2011年~2013年にかけてシーンには続々とスターが誕生します。

ハウス・プロデューサーだったAviciiもその一人でした。
Aviciiの「Levels」は、当時のEDMシーンを象徴する一曲と言えるでしょう。
Avicii – Levels (’11)

MySpaceでSONYにピックアップされ、エレクトロ・ポップをつくっていたCalvin HarrisがEDMシーンに乗り出したのも、この時期です。
Rihanna – We Found Love ft. Calvin Harris (’11)

ハードコア~エレクトロからEDMにSteve Aokiが舵を切ったのも2011年。
Steve Aoki & Laidback Luke ft. Lil Jon – Turbulence

この年、のちにBig Roomシーンで一大流行するハード・キック(ハードスタイルから影響を受けた、キックとベースが一体化した音)を使ったEDMも生まれています。
Sandro Silva & Quintino – Epic

世界中のフェスには、PLURを象徴するSwedish House Mafia「Save The World」が鳴り響きました。

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The History of EDM – 7 (’10年代)~ダンスフェスの爆発的人気上昇

’09年からのEDM人気を受けて、トランス、ハウス、テクノを中心として運営されてきたTomorrowland(ベルギー、2005-)やUltra Music Festival(マイアミなど、1999-)、EDC(ラスベガスなど、1997-)の人気も急上昇、2012〜2013年にかけて、その熱狂はすさまじいものとなり、現在につながっています。

2012年のTomorrowland Aftermovieは、YouTubeで1億4千万回も再生されています。
Tomorrowlandは、‘Live Today, Love Tomorrow, Unite Forever’のメッセージ、世界中のほとんどの国200か国以上から参加者が集まることや、そのストーリー仕立ての素晴らしいデコレーションで人気となり、「最もチケット入手困難」「IDMAのBest Music Event」という事実を背景に「世界最高峰」と称されることも少なくありません。

レジデントDJのDimitri Vegas & Like Mikeは絶大な人気を誇ります。

Ultra Music Festivalは、そのロゴマークと未来的な演出、ライブステージ、世界各国でのUltraの展開でよく知られています。
3月のMiami Music Weekと同時期であることから、トップDJが新曲を披露し、その年の音楽的方向性を決定づけるイベントでもあります。

ふくろうが象徴となっているEDC(Electric Daisy Carnival)は、 Las Vegas Motor Speedwayという会場に40万人以上を集める、世界最大級のダンスイベントです。
PLUR(Peace, Love, Unity, Respect)を前面に押し出し、ヘッドライナーは「参加者のみんな」というポリシーのもと運営されているのも特徴的ですね。

Tomorrowland、Ultra Music Festival、EDC Las Vegasは世界三大ダンスフェスとも言えるでしょう。
2012年には、Swedish House MafiaがCoachellaのサブヘッドライナーを務め、この頃からロック / ポップ・フェスへもEDMアーティストは進出していきました。

The History of EDM – 1 (’80年代)~ルーツをたどればシカゴ・ハウス
The History of EDM – 2 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – US編
The History of EDM – 3 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – UK編
The History of EDM – 4 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – ヨーロッパ編
The History of EDM – 5 (’00年代)~エレクトロの台頭
The History of EDM – 6 (’09年~’10年)~EDMの起点
The History of EDM – 7 (’10年代)~ダンスフェスの爆発的人気上昇
The History of EDM – 8 (’10年代)~EDMシーンが巨大化
The History of EDM – 9 ~まとめ

The History of EDM – 6 (’09年~’10年)~EDMの起点

’00年代中盤にいったん失速したかに見えたダンス・ミュージック・シーンですが、そこで次の展開を考えていた一人がDavid Guettaでした。David Guettaは、2017年1月のインタビューで「Erick MorilloやMasters At Workといったクラシック・ハウスに影響を受けていたけれど、そんなアンダーグラウンドな音楽がラジオでかかったり、DJがアーティストとして認められること」を意図していたと答えています。
また、彼が「エレクトロニックとヒップホップという、かつてはほとんど敵」だったというジャンルを、ハウス側から融合させて、USではあまり人気のなかったエレクトロニック・ミュージックを全米のポップチャートにブレイクさせたところに“EDM”という米語が知れ渡るきっかけがありました。
David Guetta ft. Kelly Rowland – When Love Takes Over (’09)
The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling (’09)

力をつけてきたスウェーデン勢からは、Swedish House Mafiaが結成され、より大きなスペースを意識したハウス・ミュージックが新たなスタイルとなります。
Axwell, Ingrosso, Angello, Laidback Luke ft. Deborah Cox – Leave the World Behind (’09)
Swedish House Mafia – One (Your Name) (’09)

トランス・シーンで世界的スーパースターに上り詰めていたTiestoが、音楽的に大きく方向転換したのもこの頃でした。
Tiësto vs. Diplo – C’Mon (’10)

David Guetta、Swedish House Mafia、Tiestoは、いまでもダンス・フェスのヘッドライナーを務める大御所ですが、彼らがEDMシーンのパイオニアと言えるでしょう。

また、エモ、オルタナ系バンド出身のSkrillexがdeadmau5のサポートで、ハードなダブステップ(ブロステップ)でブレイクしたのも、この頃でした。
deadmau5やSkrillexは、前三者とはまったく違ったラインでEDMの起点をつくっていたのです。
Skrillex – Scary Monsters And Nice Sprites (’10)

The History of EDM – 1 (’80年代)~ルーツをたどればシカゴ・ハウス
The History of EDM – 2 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – US編
The History of EDM – 3 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – UK編
The History of EDM – 4 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – ヨーロッパ編
The History of EDM – 5 (’00年代)~エレクトロの台頭
The History of EDM – 6 (’09年~’10年)~EDMの起点
The History of EDM – 7 (’10年代)~ダンスフェスの爆発的人気上昇
The History of EDM – 8 (’10年代)~EDMシーンが巨大化
The History of EDM – 9 ~まとめ

CID – Secrets (ft. Conrad Sewell)

米ニューヨークを拠点に活動するハウス〜エレクトロニック・ダンス・ミュージック・プロデューサー/DJ、CIDが、オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、Conrad Sewell(コンラッド・シューエル)をフィーチャーした「Secrets」のPVを公開しました。「Secrets (ft. Conrad Sewell)」は、CIDが Big Beat Recordsからリリースしたニュー・シングルです。ビデオの監督はTyler Dunning Evans。

Conrad Sewellは、Kygoとの「Firestone」、Aviciiとの「Taste the Feeling」などで知られる存在ですね。