インターナショナルDJとローカルDJ

よく、日本からは国際的に活躍するEDM DJがなぜ出ないのだろう?という質問をもらいますが、これはトップEDM DJのほとんどがプロデューサー出身であることを考えると当たり前です。
日本のDJで国際的ヒット曲を持っている人はEDMシーンには一人もいません。
僕の「Taiko」がbeatport Electro House chartで27位、これが今のところ最高位と記憶しています。
またチャート順位だけじゃなくて、トップDJのラジオショウやDJセットでプレイされることが、欧米のEDMシーンで活躍するには必要条件になってきます。
これらは、いずれも現在の競争が激しいEDMシーンにおいては、ものすごくハードルが高いです。

ちなみにトコト君は総合チャートでトップ10入りという偉業をなしとげていますが、そのときの彼の曲はハウスだったので、いわゆるEDMヒットではなかったかなと思います。
シーンも、もっと健全でした。

では、日本でトップDJ扱いされている人は、国際的にはどういう評価なのだろう?という疑問が出てくると思いますが、これはローカルDJです。
要するに、日本国内(もしくはアジア圏内)で活動しているDJと認識されているということですね。

つまり、DJの種類は大きく分けて二種類あるのです。
国際的ヒットを出して、世界中をツアーしているインターナショナルDJと、自国周辺を主に守備範囲とするローカルDJですね。クラブのレジデントDJなどは、典型的なローカルDJです。
これは日本だけでなく、世界中どこにでもある区別です。
beatportチャートでブレイクを目指すか、iTunes Japanチャートでブレイクを目指すかの違いといったら、わかりやすいでしょうか。

もちろんインターナショナルDJのほうが世界的には人気もあり、出演料も高いのですが、だからといってローカルDJがダメということではありません。
特に、日本においては自国の経済の中だけでDJも職業として成立し得るので、あえてハードルの高い海外を目指すより、ローカルDJとして活動するほうが懸命な場合も多いでしょう。

また、この二種類はほぼ両立できないので、インターナショナルDJは地元ではほとんどブッキングがなく、ローカルDJは自国外ではほとんどブッキングがないという現象も起こります。

どちらを目指すかは、本人の意志しだいで、どちらもアリなわけですが、ローカルDJのほうがなりやすく、そのかわりに限界点も低いということを覚えておいたらいいと思います。

ちなみに僕はインターナショナルDJを目指していますが、ものすごく道は険しいですね(> <)

EDM DJと、これまでのDJの違い

EDM DJと、いわゆる一般的なDJは、やっていることがまったく違います。
ふつう、DJっていうとみんなが想像するのはスクラッチびしばしのバトルDJだったり、クラブで黙々と(ときどきMCいれたりして)beatportやトップ40のヒット曲をつないでいくDJだったりしますよね。
これは、EDM DJではありません(いいすぎかな、EDM DJスタイルではありません)。

HardwellはBillboardのインタビューで、こう語っています。
「もうDJなんていないよ. まあ少しはいるか、年配の人に。新人はみんなビッグ・ヒットを出したプロデューサーで、突然DJになるんだよ」

そうなんです。
EDM DJは、いまやほぼ全員がプロデューサー出身なんです。
最初にヒット曲があって、それで人気が出て、いろんなクラブやフェスでプレイできるようになるんです。Martin GarrixやOliver Heldensが好例ですね。

もちろん彼らも10代の頃からみんなDJの基本的なところは練習してきているでしょうが、Zeddとか、ほとんどDJ経験はなかったって言っていますよね。あのCalvin Harrisでさえ、最初の頃はつたないPC DJでした。

先に音楽制作とヒット曲ありき。
そして、自分の曲や、自分のレーベルの曲、自分でつくったマッシュアップやエディットでDJパフォーマンスをする、これがEDM DJです。

その背景にあるのはPC DJの普及によって、DJ自体はもはやあまりスキルを必要としなくなったこと、そしてEDMのトラックはPC1台でつくれるようになったってことがありますね。
そういう意味では、誰にでもチャンスがある時代になったということです。
このDJカルチャーにとって、巨大な転換点が2000年代にあったわけですが、日本ではそこが見過ごされていると個人的には感じます。

Alesso – “Sweet Escape” (Audio)

Alessoが2014年からあたためてきた「Sweet Escape」のオーディオを公開しました。この曲は、Ultra Japanでもプレイされていたので、もうおなじみですね。ヴォーカリストは、Dimitri Vangelis & Wymanの最新シングル「Live Love Die」でも歌っているSirena。

ColdplayのChris Martin、EDMを支持


こんにちは、Tomo Hirataです。
僕の本業はダンスミュージッククリエイターでDJなので、物書きに時間をかけることはもうしないと決めていたのですが、日本を取り巻くEDMの状況があまりに誤ったイメージになっているので、このEDM PRESSで、コラムを書いてくことにしました。題材はDJや曲作りのことから、アーティストのことまでさまざまになると思いますが、よろしくおねがいします。

で、第一回目にどうしても取り上げたかったのが、2014年にリリースされて、世界中で大ヒットを記録した、ColdplayとAviciiのコラボ曲「A Sky Full Of Stars」です。この曲について、Chris Martinは、Rolling Stoneのインタビューでこう語っています。

「EDMをバカにする奴らもいた、でも出かけていってEDMにおきてることを見てみろよ、みんなものすごく一緒になって、最高の時間をすごしてる」
「それでおれは思ったんだ、(バカにするやつがいるから)なんだってんだ、おれはあれを愛しているんだよ。あの世界から生まれる曲が欲しいんだ、ってね」

それを踏まえて、上のふたつのビデオを見てみてください。
Chris Martinが、いかに的確にEDMの素晴らしさをとらえていたか、よくわかりますね。

Alesso ニューアルバム『Forever』について語る

Alessoが、デビューアルバム『フォーエヴァー』の5/27日本発売を前にして、DJmagのインタビューに答えました。

新作が、永遠にファースト・アルバムになることから“フォーエヴァー”と名づけたこと、
曲がたまっていて次のシングルをどれにしたらいいか考えていたら、マネージャーに「気がつかないうちにアルバムを作ってるんだと思うよ」と言われたこと、
アルバムをつくることによって初めてミュージシャンであると自覚したこと、
ダンスミュージックだけじゃなく、いろいろな種類の音楽をつくっているとみんなに知ってもらいたいということ、
などが述べられています。

また、Coachellaのステージにもゲストで登場し、いまやAlessoの盟友とも言える、OneRepublicのRyan Tedderには、「Calling」に歌が欲しいと思ったとき、共作者のSebastian Ingrossoの提案で初めてオファーしたとも言っています。

次のシングルは予想通り「Scars」と「Sweet Escape」のようで、「Scars」については、Ryanに「ハッピー・ビートなんだけど、そんなにハッピーじゃない何かを書いてみようよ」と提案したことや、「Sweet Escape」については、2014年のUltraでデビューさせた曲だけれど、ファンの期待にこたえる形でアルバムに収録すると語っていますね。

マイケル・ジャクソンが大きな影響源というのは、ちょっと意外でしょうか。
英語ですが、インタビュー原文は以下のリンクから読めます。

http://usa.djmag.com/content/alesso-view-top