DJmag Top 100 真相は?

Top 100 DJs Awards Ceremony 2017

UKのDJmagは、1991年創刊の伝統あるDJ雑誌です。創刊当初からハウス、テクノ、レイヴミュージックといったサウンドに特化していて、トップ40系コマーシャル・クラブ(これは世界中どこにでもあります)などは無視してきた硬派な雑誌です。そのDJmagが主宰するDJランキングがDJmag Top 100です。1997年に一般投票を受け付けるようになったこのランキングは、EDMブームとともに注目度を増してきました。いまでは100万票以上を集めるようになり、ここ2年はMartin Garrixが一位を獲得しています。

さて、このDJmag Top 100で上位を獲得しているDJは、なぜ上位にいるのでしょう?DJスキルによってではないことはだれの目にも明らかです。では、Laidback Lukeをはじめとする一部のDJが指摘するように、広告にどれだけお金を使ったかランキングでしょうか?
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MarshmelloとMoe ShaliziとBass Music

Marshmello & Moe Shalizi Play 'Never Have I Ever' | Billboard

EDMがブレイクしたのは2000年代末~2010年代初めの期間で、’EDM’というのは米語です。それまでの間、’EDM’という言葉を使っているメディアは、ほぼ皆無でした。’EDM’というのは、アメリカの音楽業界が、最近のエレクトロニックなダンス・ミュージックを取りまとめるために作った言葉なのです。ヨーロッパの業界では、いまだに’EDM’という言葉を使いたがらない人も多く、彼らは「EDMってのはアメリカ産のダンスミュージックのことだろ?」なんて冗談を言うほどです。Tiestoも’EDM’ではなく’Electoro House’という言葉をつかうことがあります。

その点で、アメリカ産のエレクトロニック・ダンス・ミュージック、Bass Musicは、実は真正の’EDM’です。世界中どこにいってもSkrillexもmarshmelloもOokayもIlleniumも’EDM’扱いです。日本では最近Bass MusicとEDMを区別しようという謎の動きがみられますが、EDMという大きなくくりの中に、USを中心とするBass Musicとヨーロッパを中心とするHouse系のEDMの二大勢力があるだけです。
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ビッグルームEDMは、なぜ失速したのか?

EDMと言えば、日本でみんながまず思い浮かべるのは’1-2-3-Jump!’の、フェスティバルでアゲまくるための四つ打ちのビッグルーム・サウンドやバウンスではないでしょうか?
ところが、このビッグルーム・サウンド、2016年くらいからDJチャートで人気がなくなったばかりでなく、リリース自体が激減しています。
2017年の夏も、ダンスフェスのメインステージではヘヴィープレイされていたのに、2016年以降なぜ失速してしまったのでしょう?これは実は僕も疑問に思ってましたが、先日ヨーロッパの業界の人と話す機会があり、謎が解けました。以下のような流れなのだそうです。

EDMブーム→
プロデューサーがビッグルーム量産→
ダンスフェスブーム→
音楽自体は買わないが、フェスには行く人たちが増殖→
ビッグルームという音楽自体は(フェスは巨大化しているのに)思ったより売れない→
レコード会社は売れないものは出さない→
プロデューサーは出せないものはつくらない→
ビッグルームのリリースが激減→
かけるものがなくなったDJは他のジャンルをプレイせざるをえない / トップDJは自分の曲だけでセットが組めるようになっているので、それで問題ない→
しかし、その状況でフェスはトップDJに今までのギャラは払えない→
この状況で新進DJはビッグルームDJになろうとは思わない

EDM自体は、ポップフィールドとクロスオーヴァーして、ストリーミングを中心に勢いを増していますが、ビッグルームは、この悪循環を壊さないと復活は難しいのかもしれませんね。それには、まったく新しいビッグルーム・サウンドを誰かが提示しないといけないのかもしれません。まあ、EDM=ビッグルームではないわけで、USではベースミュージックがEDMのサブジャンルでは急伸しています。このへんのお話はまた次回。

*写真はイメージです。
Photo by Matty Adame on Unsplash