UnitedMastersというサービスが、Googleの親会社Alphabetと20th Century Foxが出資して立ち上がりました。ウェブサイトには「あなたの未来にレーベルは存在しない。長い間、アーティストは音楽業界の中で独立性とクリエイティブ面での自由で妥協を強いられてきた。今までは。UnitedMastersに登録して、あなたの独自性を増やして」とあります。さっそくUnitedMastersに登録してみましたが、これはUnitedMastersがネット上に存在するアーティストを片っ端からチェックし、サポートしていくような動きに見えます。そうだとしたら歓迎すべき方向に向かう可能性は高いと思いますが、それはさらに熾烈な競争を生み出すことにもなるでしょう。
ネットが僕らの生活の一部になってから、クリエイティブな活動やその発表はだれにでもできる、敷居の低いものになりました。それを見て、「誰もがクリエイターの時代、発信できる時代だから、アーティストも実力が評価されるようになる」という主張がありますが、これは残念ながらそのようにはならなかったように見えます。
大量のクオリティの低い作品がネット上に流れている環境では、人々はそれらをいちいちチェックしないのです。現代において最も貴重なのは「時間」ですから。
かくして、皮肉なことにメジャーな会社が、あらゆる分野でより力を持つようになりました。
音楽シーンを見てみると、インディ・シーンは元気を失っています。
ヒットチャートではメジャー・レコード会社が息を吹き返しているように見えます(それは必ずしも悪いことではありませんが)。
リスナーに選んでいる時間がない環境なら、資本と宣伝力を持った会社が強いのは自然なことでしょう。
これはGoogle検索の荒れ方にもシンクします。
Google検索をすると、ここ数年は大量の真偽不明のコピペ記事が上がってくるようになってしまいました。
そのコピペ記事のまとめサイトも上位表示されます。ネット検索は、こうして役に立たなくなってきました。
Googleは、オフィシャルなニュースサイト登録など、文責がはっきりしているものは特別扱いするようにしたり、内容の信用度チェックも強化していますが、SEOとのいたちごっこになってしまっているのは否めません。
そうすると、ここで息を吹き返すのは、発行人が責任を持ち、訂正も簡単にはできない書籍や雑誌かもしれません。
もしくは、Yahooが廃止したディレクトリだったりして。
情報過剰な時代に、それを的確に処理しようとするAIやビッグデータの方向性とは真逆な、各自が責任をもってクオリティ・コントロールしたものが評価される、アナログな方向性もいずれ強まるのではないかと思っています。
話を戻しますがUnitedMastersは、Chance The Rapperみたいなアーティストを次々と発掘、サポートすることで音楽業界、シーンの構造を変えようとしているのだと思います。メジャーレコード会社を彼らが駆逐するほどのパワーを持つのかどうか、興味を持ってみています。