Pharien インタビュー(2019)


2017年、まだ高校生の時に初リリースして以来、これまでに海外レーベルを中心に20曲以上のリリースを重ね、最近ではフューチャー・ハウス系の新星として注目を浴びている日本人プロデューサー、Pharien。2019年に入ってからも、Strange Fruitsからの「There for You」「Find My Way」、Armada Musicからの「Tell Me the Truth」とステップアップし、先日ついにEDM系最重要レーベルの一つSpinnin’ Recordsと、日本人初の専属契約を交わした、ワールドクラスの逸材です。

そんなPharienが、Spinnin’での初仕事となるSam Feldt「Post Malone」のリミックスに続き、いよいよ10/11にニュー・シングル「Fall Apart」をリリースします。

ここではそんな絶好調の若き才能、Pharienに、これまでのキャリアについて、そして作曲や音楽制作について対面で話を聞きました。

Pharien – Fall Apart (Official Music Video)

Pharien インタビュー(2019)

__あなたのSNSの投稿を見ていると英語ネイティブのような印象がしたのですが、出身はどこなんでしょうか?

出身は栃木で、今は埼玉に住んでいます。実家暮らしです。英語は独学なんで、ネイティブではないですね。文章の読み書きとかリスニングとか、話すこと以外はだいたい不自由なくできるんですけど、海外に住んでいたことはないです。受験の頃に英語だけはすごくやっていたので、それが今になって役立ってますね。

__あなたは8歳の時にピアノを、10歳の時にギターを始めたそうですが、子供の頃から音楽が好きだったんですか?

そうですね。うちの母親がピアノを弾いていたので、小さい頃から母親が行くクラシックのコンサートなんかによく連れて行かれたんです。で、妹も楽器をやっていたので、そういうのにつられて自然と僕もピアノの教室に一緒に行ったりして、って感じです。母親はジュリアナ東京に行ったことがあるそうですよ(笑)。クラバーだったことがあるらしいです。ギターやバンドは、中学になって軽音楽部に入ってからですね。いろんな音楽を聴いてましたけど。

__では、自発的に音楽を聴くようになったのは、中学に入ってロックなどを聴くようになってからですか?

クラシックも自発的に聴いてはいましたけど、ロックを聴くようになってクラシックは聴かなくなりました。で、その後ダンス・ミュージックに入っていきました。

__当時は、どんなアーティストの音楽が好きでしたか?

クラシックだとショパンが一番好きだと思います。一時期は弾いてやろうって思ってたんですけど、高校に入った時ピアノの練習をやめてしまって、以降ノータッチです。中学の時にギターをやるようになって、徐々にピアノへの興味が薄れちゃって。ロックだと、当時は海外よりも日本の方が好きでしたかね。the pillowsとか好きでした。

__ダンス・ミュージックを聴くようになったのは、高校の時ですか?

はい。友達の一部の間でそういうのが流行っていたんで、僕も聴いてみたんです。最初はKnife PartyとかSkrillexとか激しいやつで、おくれてAvicii、Zedd、Cash Cashとかを聴きはじめて。完全に友達の影響からでした。はじめの頃は、綺麗なメロディよりもひたすら激しいのが好きで、YouTubeでUKFとかもよく見てましたね。今は全然そっち系じゃない方ですけど。

__なるほど、ちょっと意外でした。その頃は、まだハウスやテクノにはあまり関心なく?

今はすごく好きなんですけど、当時はまだ存在を知りませんでしたからね。他にも新しいやつを聴いてみたいって思っていろいろ調べてみた時に、ハウスやテクノが出てきて、その時は…なんか面白みのない音楽だなって思いましたけど(笑)。高校2年くらいだったと思います。メロディも特にないし、最初は何だろう?って思って。

__ダンス・ミュージックに関してはEDMネイティブなんですね。では、楽曲のリリースについて教えてください。リリースは2017年からはじめたんですか?

はい。最初のリリースはDeugene Musicからの「Something Make You Move」ですね。プログレッシヴ・ハウスです。

Pharien – Something Make You Move (Original Mix)

__その頃はプログレッシヴ・ハウスやビッグルームをつくっていたんですよね。

はい。あと、EDMよりのグルーヴ・ハウスとか。

__初期の頃は海外のマイナー・レーベルからかなりのリリースがありますが、何か意図はあったんでしょうか?

僕が作曲をはじめた頃は、作曲をやっているだけで凄い人、みたいな感じだったんで、もっと有名になるなら海外だなって思って。海外のレコード会社から出せば、日本での認知度ももうちょっと上がるだろうということで、片っぱしから出してました。Melodic Tunesで「Go Down」を出したあたりから、Soundcloudの再生数やフォロワー数が徐々に上がったと思います。

__とにかくデモをたくさんのレーベルに送っていた、と。ただ、たくさんデモを送っても、なかなか返事はありませんよね?

はい、全くなかったです(笑)。聴いてすらくれないですから。毎日朝起きてチェックしても再生数はついてないし、受信トレイ見ても返事ないし、迷惑メール見ても入ってないし。ああ、聴いてもらってないなぁ、と。Deugene Musicから返事がきた時は嬉しかったですね。特にフィードバックもなく“そのまま出しましょう”って言ってくれて。まだ、そんなに曲のクオリティは高くなかったですけど。高校3年の頃だったと思います。

__ということは、大学受験の時に曲をつくっていたんですか?

そうですね(笑)。その時は自分の家にパソコンがなくて、近くに住んでいたおばあちゃんの家にパソコンがあったので、たまにおばあちゃんの所に行って曲をつくる、っていうのが楽しみでした。テスト勉強の時に部屋の片付けをしだしちゃうとか、関係ないことを始めてそれがはかどっちゃうってこと、あるじゃないですか。受験勉強からの逃避というか、息抜きというか。そういう感じでしたね(笑)。

__それが功を奏して、リリースにつながっていったんですね。

それが良かったみたいです(笑)。まあ、受験勉強に入る前か、テストが終わって大学に入るまでの間につくった曲が多かったですけど。で、大学に入ってからパソコンを買って、そこからですね。プラグインも買えるようになって。

__日本ではダンス・ミュージックのつくり方って、あまりネット上に転がってませんよね。そこは、やはり海外のチュートリアルを見たりして学んだんですか?

はい、YouTubeを見たりはしてました。あとは手探りです。

__なるほど。話を戻しましょう。で、次のターニング・ポイントになったのは、2018年にRevealed Recordingsからリリースされた「Nightfade」ですか?

そうですね。

Pharien – Nightfade [FREE DOWNLOAD]

__これまでリリースしてきたレーベルとは違って、Revealed Recordingsは一気にメジャー級ですが、ここまではどうやってたどり着きましたか?

いやぁ…。この曲をつくった時には、もうSERUMもSPIREも(共にシンセ音源)持っていたんで、不自由ないくらいには制作できる環境でした。なので、自分のつくりたいものをつくってって感じでしたけど、自分が送りたいレーベルの曲をチェックしていく中で、自分の中で引き出しは増えていきましたね。「Nightfade」は、リリースは2018年の5月ですけど、つくったのは2017年の11月頃で…。

__Revealed Recordingsは、なかなか返事がこないんですよね。Hardwellの最終確認もあってリリースまでも時間がかかる。

そうなんですよ。で、突然返事が来たんですけど、もうネットで公開してしまっていたので、それをあわてて下ろしました。

__で、この後に2-Dutchから、TIBA ft. Emanuela Delaj「Embrace (Pharien & Gustaf Bjornberg Remix)」を?

はい。それは僕の仲のいい友達の友達経由で、“2-Dutchから公式リミックスやらない?”って話をいただいて。

__この頃までは、まだプログレッシヴ系のサウンドですよね。その後フューチャー・ハウスに移行するのは、Strange Fruitsから今年3月にリリースされた「There for You」からになるんですか?

そうですね。Strange Fruitsからリリースする3~4ヶ月前からフューチャー・ハウスをつくる練習というか、いろいろ試行錯誤はしてましたけど。Strange Fruitsにも、最初はけっこう断られまくりましたね。なので、リリースした頃にはもうかなりフューチャー・ハウスをつくってました。

Pharien – There For You

__フューチャー・ハウスをやり始めてからも、最初はレーベルから良い返事がもらえない、リジェクテッド期間があったんですね。

そうです。だからStrange Fruitsからリリースできた時も、やっぱり嬉しかったです。突然リジェクテッドではなくアプルーブドのメールが届いて、その時はRevealed Recordings以来の喜びでした。

__そこからフューチャー・ハウス方向で、一気に引きがくるようになったんですか?

はい。Spotifyの再生数・フォロワー数が増えたのは、Strange Fruitsのおかげですね。

__ビッグルームやプログレッシヴ・ハウスはフェスティバル・チューンという側面が強いですけど、フューチャー・ハウスは普通にリスニング・ミュージックとして聴く人も多いですよね。そういった点は意識していましたか?

自分で曲をつくる時は、つくりたいものをつくると決めているので、あんまり…。再生数を増やすために曲をつくるとかは、してないです。

__で、Strange Fruitsの次に来た大きなリリースは、Armada Musicから7月に出た「Tell Me the Truth」ですね。

そうですね。またちょっと行き詰まっていた時に、“僕はフリーのタレントをスカウトしているんだけど、君の曲を気に入ったから、もし良かったらArmada Musicにピッチングしてあげるよ”って人が現れたんです。オランダの人ですね。はじめはちょっと胡散臭いなって思っていたんですけど、ちょうど手詰まりの状態だったんで、ダメモトで彼に曲を渡してみたんです。そうしたらArmada Musicが気に入ってくれて、良かったぁ、と。

Pharien – Tell Me The Truth

__手詰まりといっても、Revealed RecordingsやStrange Fruitsからリリースしていたら、他から“出しませんか?”って声がかかると思いますけど。

まあ…でも、そういうわけにはなかなかいかず。まだ伸びたいとも思っていたんで。だから、本当にそのオランダ人のタレントスカウトのおかげです。

__Armada Musicからのリリースとなると、DJからのサポートも沢山もらえますよね?

そうですね。凄かったです。

__で、このリリースの直後、Spinnin’ Recordsとの契約に至るわけですが、それもそのオランダ人が繋いでくれたんですか?

彼はSpinnin’にも送ってくれたんですけど、“Spinnin’は返事してこないから自分で送った方がいいよ”ってアドバイスしてくれて、メールアドレスを教えてくれたんです。なので、3曲くらいですけど自分で送り続けました。そうしたら6月くらいでしたかね、Spinnin’から“君の名前はウオッチリストに入れてるよ。この曲をリリースしたいからサインしよう”って連絡がきたんです。はじめは、それがホンモノかニセモノか分からず…いや、ニセモノだと思いましたね(笑)。比較的早く返事が来たので、まさかって感じでしたから。なんで、22Bulletsとか、Spinnin’からリリースしたことがある知り合い三人くらいに、“このドメインって本物?”って確認したりして。

__で、最終的にOKになって。

はい。思っていたよりもスムーズに話が進んで、返事も早かったです。で、それと同じタイミングで、“エクスクルーシブの契約にも興味があるんだけど”って話をもらいました。で、Spinnin’とのエクスクルーシブ契約ってなかなかありえない話なんじゃないかと思ったんで、“ぜひ話を聞いてみたいです”って返事をしました。そうしたら、“今はどのレーベルも新人・若手の人材を欲しがっている時期で…”みたいな説明を受けましたね。例えば、いまSpinnin’にはMike Williams、Curbi、Mestoとかいますけど、そういう流れで考えてくれないか、みたいなことでした。

__なるほど。

それで周りに相談してみたら、“絶対に契約した方がいい”って言う人もいれば、“専属はやめてインディペンデントでやった方がいい”って言う人もいたんですけど、僕は…ネーム・バリューにおされて専属契約しちゃいました(笑)。Spinnin’と専属契約だなんて、断れないですよ。

__気持ちはよく分かります。日本人では初めてですしね。きっとSpinnin’としては、アジアの各国に一人ずつくらいはSpinnin’の代表アーティストが欲しいと思っていて、そういう意味でPharienは日本代表になったんだと思いますよ。

はい、そうらしいです。中国のCartaとかも、そうらしいですね。

__ただサインする時、これからはSpinnin’からしかリリースできなくなるのか?、と悩みませんでしたか?

そこをメールで聞いてみたら、“別レーベルからのリリースは、それが良いレーベルで、長い目で見ると我々の利益やアーティスト・バリューにつながるのであれば問題ない”って返事が来ました。

__で、9/19にリリースされたSam Feldt ft. RANI「Post Malone (Pharien Remix)」が、Spinnin’からのファースト・リリースになるわけですが、これはSpinnin’側からオファーがあったんですか?

そうですね。“予算はないけど、やる?”って感じで言われたんですけど(笑)。

Post Malone (feat. RANI) (Pharien Remix)

__そして次に出るのが、オリジナルの「Fall Apart」になります。既にDon Diabloなどがラジオでプレイしてますね。

そうですね。10/11にリリースされます。Don Diabloの他に、Kianu Silva、Stadiumx、Metrush、Yves V、Sagan、RetroVision、Dropgun、Raven & Kreyn、Toby Greenなどには先にプロモを送りました。リリースされるのが楽しみです。

__この曲は、サウンド的にはフューチャー・トランスになりますか?

一応、フューチャー・トランスですね。

__そういうコンセプトがあってつくった曲ですか?

大体の場合、こういう雰囲気にしようというのはありますけど、でもそれはあくまでも参考です。僕はメロディーと雰囲気に結構こだわっていて、雰囲気に関してはドリーミーというか、フワっとやさしい感じというか、あたたかい感じというか、ですね。メロディーに関しては、歌いやすいもの、例えば思い出す時に思い出しにくいメロディーは使わないようにしています。そこは曲をつくる時に一番気にしていることですね。

__Pharienは、音色の作り込みがちゃんとしていて、本当にすごいと思います。今、日本人でここまでできる人って、なかなかいないと思いますよ。

ありがとうございます。

__今、制作環境はどんな感じなんですか?

僕が長い間使っているパソコンって富士通のコレなんですよ(写真)。Windows 8です(笑)。で、このパソコンとヘッドホンのみでやっています。

__え?そうなんですか。

一応スピーカーも持っているんですけど、確認用で使うくらいですね。僕はスピーカーで作曲していくのが苦手なんです。ヘッドホンじゃないと聴き取れない帯域とかがあって、スピーカーだと分からなかったりして。なんで、どうしてもヘッドホンで聴きたくなっちゃうんです。で、僕は家だと曲がつくれなくて…集中できないというか。なんで、近くのコンセントがあるカフェとかに行って、そこで作業をすることが多いですね。だから、どうしても身軽になっちゃうんです。しかも追加注文すると集中が切れちゃうんで、先に飲食を済ませてから5~6時間もいたりして…。お店には申し訳なく思ってます。

__鍵盤がなくて、打ち込みはどうやっているんですか?

画面のピアノロールを見ながら、マウスでノートを打ってやってますね。ちょっと面倒くさいですけど。

__ヘッドホンは何を使っているんですか?

SENNHEISERのHD25です。スタンダードな感じですかね。

__そうですね。で、DAWはFL Studioなんですよね?

そうですね。

__この富士通のラップトップは、何ギガ積んでるんですか?

8ギガです。

__え、8?

8でも一応できるっぽいです(笑)。トラック数が増えてくると止まっちゃうんで、とりあえず止まらないパソコンは欲しいです(笑)。

__これは凄い話だ。全国のベッドルーム・プロデューサーのみんなに、希望を与えるエピソードだと思います。

とても嬉しいです。

__制作環境のわりには多作ですね?

そうですね。自分でも作曲は速いほうだと思います。最近は凝った感じにしようと思ってやっているんで、昔ほど速くはつくれなくなっちゃいましたけど。

__では、今後について教えてください。

このあと何曲かリリースしていくことは、既にスケジュール決定してます。で、Spinnin’からのリリースやリミックスを通じて認知度を上げていって、その先はツアーをしたり、好きなアーティストとコラボできたら…ですよね。

__最終的にはどういうところまでいきたいと考えてますか?

いま目指しているところでは、数年以内にDJ MAG Top 100 DJsのトップ50に入れたらいいなぁ、っていうのがあります。そうしたら、もうちょっと良い状態で活動できるんじゃないかと思うんで。あと、Tomorrowlandにはやっぱり出てみたいです。TomorrowlandやUltra Music Festival Miamiのステージは、ファンだった頃からずっとYouTubeで観てましたから。まあ、地道にやっていくまでですけど。

__DJとしての活動も積極的にやっていこうと思っているんですね。

海外では、作曲とDJができてはじめてステージに立てるというのが、普通の流れだと思うんで。ですので、DJもいろんなところでやっていきたいです。中目黒のsolfaで主催しているイベントに関しては、あんまりクラブに行かないけどダンス・ミュージックには興味ある人とか、クラブに行ったことがない人とか、そういう人に来てもらいたいと思ってやっています。

__Spotifyのプレイリストを見ると、テックハウスとかも結構入ってますね。

そうですね。DJの時になると、ここ半年くらいは結構ハウスが多いです。出るイベントがハウス系だっていうのもありますけど。大きな舞台ではEDMもやりますし、基本的には自分の色を混ぜてやってる感じです。Spotifyではいろんな曲を聴くようにしてますし、Soundcloudだけに上がっているマイナーな曲なんかも宝探し的な感覚でチェックしてます。

__根っからの音好きですね。最後に、このインタビューを読んでくれた方に何か伝えておきたいことはありますか?

やっぱり、“続けること”です。デタラメに続けてもしょうがないですけど、でも続けないよりは絶対に続けた方がいいと思います。それに尽きます。あと、僕の音楽を聴いてくれた人には、まずは“ありがとうございます”って伝えたいです。そしてDJをぜひ観にきてほしいですね。

interviewer: Tomo Hirata
text: Futuregroove

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Pharien
オールタイム・ベスト5
1. Riton x Oliver Heldens ft. Vula – Turn Me On
2. Don Diablo ft. Kiiara – You’re Not Alone
3. Zonderling ft. Mingue – Remedy
4. Matt Nash – Home
5. Adrien Rux & Bedmar, David Tuck, Kuaigon – Set Me Free

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