Ken Takano インタビュー(2019)


1990年代末から高野健一やpal@pop名義でシンガー・ソングライター/プロデューサーとして活躍し、オリコン・チャートにランクインしたシングル、アルバムもリリースしているKen Takano。2010年代に入ってからはエレクトロニック・ダンス・ミュージックのプロデューサー/DJとしての活動を本格化させ、近年はFuture House Musicや2-Dutchといった海外レーベルからフューチャー・ハウス系のトラックを数々リリース。そして10月末には、Lost Frequenciesのレーベル、Found Frequencies(Armada傘下)から、FROZTとのコラボレーション・シングル「Set Me Free (ft. Ozimede)」をリリースしたばかりという、ベテランにして注目株です。

ここでは、今後Spinnin’ RecordsからのリリースもひかえているというKen Takanoに、自身の音楽やキャリアについて話をききました。

Ken Takano インタビュー(2019)

__高野さんが音楽活動をはじめた経緯について教えてください。高野さんは、シンガー・ソングライターやJ-POP系プロデューサーとしてのキャリアもお持ちですね。

子供の頃から鼻歌で自分の好きなメロディーを作って遊んでいたんですが、中学生の時にビートルズに影響を受けて将来ミュージシャンになりたいと思うようになりました。バンドブーム全盛期の頃(80年代)でしたが、僕は楽器を弾かずにパソコンで作曲するプロデューサー・タイプのミュージシャンでした。26歳でデモテープ・オーディションで合格してプロになったときも、当時では珍しい「プロデューサー契約」をソニーミュージックと結びました。以降、自分が歌う楽曲も含めて20年近くJ-POPを作らせていただいてます。

__エレクトロニック・ダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックの制作を始めたのはいつ頃のことでしたか?

もともとダンス・ミュージックは好きで、その要素をJ-POPの曲のアレンジに取り入れたりしていたのですが、2012年頃にZEDDやDavid GuettaなどのEDMのヒット曲を聴いて「こんなに新しいサウンドでヒットチャートが溢れるなんて素晴らしい!」と衝撃を受けました。「これはもう自分もEDMを本格的に作って、ライフワークとして新しいサウンドとヒット曲を模索し続けよう」と決心しました。

__Ken Takano名義でのファースト・リリースは、2015年にBAM BAMからリリースされた「That Bear」だと思いますが、この頃は、どのようなトラックをつくって、どのような活動プランを考えていたのか教えてください。

その頃は「いかにプロの音に近づけるか」という課題をクリアーするための「習作」というつもりで、いろんなタイプの曲を作っていました。自分もプロなんですが(笑)、とにかく思い通りの音が作れずに「世界との壁」を痛感してましたね。悔しくて悔しくて、恥ずかしながら四十過ぎにして初めて猛烈に音楽の勉強をするようになりました。二十代、三十代の頃より全然スタジオ作業時間が長くなりました。世界最高水準の音を作るにはそれくらい時間がかかることを理解して、それまではDJ活動もやらずになるべく制作に集中しようと決めました。

__ダンス・ミュージック・プロデューサーとして活動を始めた当時、影響を受けたプロデューサー、アーティストは誰かいましたか?

ZEDD、David Guetta、Skrillex、Swedish House Mafia (SHM)、などですかね。売れている曲がとにかくみんなカッコよかった。

__いわゆる有名レーベルからリリースするようになったきっかけの一つは、2017年にLYD/Future House Musicからリリースした「Departure」でしたか?

そうですね。「Departure」のデモをDon DiabloのHexagon Radioでピックアップしてもらえて、それを聴いたFuture House Musicのスタッフが「リリースしたい!」とメールをくれたのがきっかけでした。

Ken Takano – Departure

__この頃からフューチャー・ハウス系のサウンドに作風が変化していった経緯についても教えてください。

ZEDD → Don Diablo → Zonderlingという、分かる人には分かりやすい影響の受け方の経緯だったと思います(笑)。新しいサウンドと自分らしいサウンドを模索していくうちに自然と…ですね。

__その後、Future House Cloud、Spectrum Recordings、Break It Down Music、Future House Music、2-Dutch Recordsからリリースを重ね、海外プロデューサーとコラボなども行なっていますが、海外レーベル、プロデューサーとのコネクションはどのように培っていきましたか?

幸いなことに「Departure」をきっかけに、たくさんのレーベルやプロデューサーから声をかけてもらえるようになりました。そういう出会いはとても重要で、ありがたいですね。

Robby East & Ken Takano – I Want Your Soul
Ken Takano & Victor Tellagio – Prisoner [Copyright Free]

__2018年から今年2-Dutchからリリースした「And I’m with You」までのリリースの中で、ご自身の中で特に重要に感じている楽曲、気に入っている楽曲がありましたらご紹介ください。

どの曲も振り返ると反省しかないのですが、「Falling」や「And I’m with You」を作った頃からミックスやマスタリングも含めて、いわゆる「手応え」を感じました。納得のいくサウンドが作れるようになってきたのでは…と。

Ken Takano – Falling
Ken Takano – And I'm With You

__Found Frequenciesからリリースされた最新シングル「Set Me Free (ft. Ozimede)」について教えてください。FROZTとのコラボとなっていますが、この曲はどのようにして完成したものですか?

FROZTも「コラボしよう!」とメールをくれたプロデューサーの一人だったんですが、彼の作るボーカルやTop Lineはとても素晴らしく、創作意欲を沸き立たさせられました。「Set Me Free」はFROZTの作った歌とBreakをもとに僕がDropを作って完成させました。

FROZT & Ken Takano – Set Me Free (feat. Ozimede)

__現在、高野さんが曲づくりやサウンドメイキング面で意識していること、重要視していることがありましたら教えてください。

フューチャー・ハウスを作り続けることでサウンドメイキングに自信がついてきたので、これからはフューチャー・ハウスに限らず、より大きな視野で「どうすればヒット曲が作れるか」という意識にシフトしていこうと考えています。今まではとにかくDrop重視だったんですが、歌のクオリティーやメッセージ性も考えていきたいです。

__ダンス・ミュージックの制作と、シンガー・ソングライター系の作曲・プロデュースは、高野さんの中でどのように繋がっていますか?

ダンス・ミュージック制作で得た知識や経験は必ずシンガー・ソングライター系の作曲・プロデュースにも良いフィードバックを与えると思っています。サウンドメイキング的には同じロジックですし、歌メロを作る際の方向性の違いだけですね。最近はほとんど作っていませんが、自分の歌も含めて将来的にまたいつか日本語で作詞作曲したいと思っています。

__最後に高野さんの今後の活動目標を教えてください。また、決定しているリリース・スケジュールやDJスケジュールがありましたら教えてください。

今後の目標としては、とにかくヒット曲を出して「自分の曲で一番盛り上がるセットでのDJパフォーマンス」ができるようになりたいですね。まだ詳細は未定なのですが、Spinnin’ Recordsとリリース契約することになったので(11月下旬発表予定)、より「ヒット曲を作るには」という意識を強めて制作してゆきたいと考えています。「商業的」と誤解されるかもしれませんが、自分が影響を受けたEDMの曲は全て世界最先端のサウンドで、かつ世界的に成功しています。僕にとっては新しいサウンドや自分らしいサウンドを追求することと、ヒット曲を産むことが同じ道のりなんですね。EDMとはそれだけ素晴らしい音楽であり、ライフワークとしたい所以です。

__なるほど。

それと僕はいま四十八歳で、もう三十年近く音楽を作り続けています。「諦めたら試合終了」とはどこかで聞いた言葉ですが、こんなおっさんでもコツコツやってゆけばステップアップできるんだと、他のプロデューサーや夢を追いかけてる人に希望を持ってもらえるような、そんな活動ができたら嬉しいです。

interview/text: Futuregroove

Ken Takano
https://soundcloud.com/ken_takano/
https://www.facebook.com/KenTakanoDJ/
https://twitter.com/kentakano_dj
https://open.spotify.com/artist/2FXsX94VrpmwHJkP8F4DoE
https://music.apple.com/jp/artist/ken-takano/964460945

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