EDMS復活によせて(2015年7月)

こんにちは、Tomo Hirataです。
7/31にEDMS(Electronic Dance Music States)が、一年半ぶりに復活します。
なんじゃそれ?って人がほとんどかもしれませんから、紹介させてください。

EDMSは、2012年9月にageHaアリーナでスタートした、日本初の大型EDMイベントです。
主観が入り込まないように、より客観的にかみくだくと、“EDM”をイベント名、音楽的コンセプトにあげた日本初の大型パーティです。

当時、日本には“EDM”という言葉はほとんど浸透していませんでした。

しかし、“EDM”が世界的に流行し始めたのは実は2009年でした。David Guettaがアメリカでブレイクし、Black Eyed Peasと「I Gotta Feeling」を生み出し、アンダーグラウンドではSwedish House Mafiaのメンバーたち+Laidback Lukeが「Leave The World Behind」を、Sidney Samsonが「Riverside」をヒットさせていたのが、その年です。
そこからEDMシーンは急速な勢いで巨大化し、海外ではすでに2012年にはEDC Las Vegasに32万人集まる規模にまでなっていました。

それにもかかわらず、日本には“EDM”という言葉は存在しないかのように扱われていました。
僕は“EDM”の精神(これは初期ハウス、Raveから脈々と流れるPLUR=Peace,Love,Unity & Respectです)と、ダンスミュージックシーンにおけるその存在の形の新しさ(プロデューサーカルチャー/ダンスフェス主導)、そしてこのムーブメン トがダンスミュージック史上最大のものであることに強烈な刺激を受けていたので、これをなんとか日本に持ち込みたいと思い、当時David Guetta、Swedish House Mafia、deadmau5(彼はちょっと違った系統ですが)という超大物EDMアーティストを抱えていたEMI Music Japanさんと、ageHaさんに相談にいったわけです。

その結果、当時のageHa高田部長のご理解が得られ、なんといきなり2400人収容のアリーナで、日本にもEDMを浸透させようというイベント がスタートしたわけです。それがEDMSの始まりでした。EMI Music Japanさんのご理解も得られ、日本初のメジャーEDMコンピレーション・シリーズ『Electronic Dance Madness』もスタート、BlockFMでは僕の担当する番組が『EDM Essentials』にコンセプト変更になりました。

Ultraが2014年に上陸したのが黒船来襲だったとすると、日本でそれを受け入れる素地をつくっていたのが2012年だったと言っていいと思います。

話をEDMSに戻しますが、EDMSはageHaさんの運営に、僕が企画協力&レジデントDJをするという形で展開され、2012-2014年に かけてLaidback Luke、Sidney Samson、Quentin Mosimann、twoloud、Ivan Gough、Hard Rock Sofa、Mikael Weermetsを招聘、日本のEDMシーンに確実に礎を築いたと思います。その頃EDMSに集まってくれていたEDMファンの多くは、海外フェス的な楽 しみ方をすでに知っていて、あるいはEDMSで覚えていて、「Save The World」をみんなで合唱するなんてこともすでにできていました。EDMSは海外EDMシーンのバイブスにもっとも近いパーティだったと思います。

その後、ageHaさんの新たな方向性とEDMSは一致点を見つけられなくなり、現在に至るまでEDMSはお休みとなっていたのですが、このたび 新天地でリスタートすることとなりました。そこは、僕がSyn Coleを初来日させた、思い出の場所です。

ここ1年ほどで、日本のEDMシーンはさまざまな方向に広がっていますが、EDMSは初心を忘れず、“EDMという音楽のパワーと、Peace,Love,Unity & Respectの精神のもと、参加者がひとつのヴァイブスをつくりあげる”をコンセプトに、海外のEDMシーンと連動するグローバルなイベントを目指していきます。EDMを音楽として心から楽しめる人がUNITEできる、いまの日本のEDMシーンには、フェス以外ではほとんど存在しない形を再びつくっていきたいと思っています。僕らEDMSチームは、EDMの音楽の力を信じています。EDMSは、女性入場無料で も、ALL MIXで知っている曲がガンガンかかるイベントでもありませんが、そこではまったく違った魅力を感じてもらえるはずです。

EDMS懐かしいなぁという方も、初めて名前を聞いたという方も、7/31にぜひ集まってください。EDCの言葉を借りると、ヘッドライナーは 「あなた」なのですから 🙂

EDM終了の8つの理由

こんにちは、Tomo Hirataです。
今日たまたまUKのmixmagのサイトで面白い記事を発見しました。
「EDM終了の8つの理由(と、終了しない4つの理由)」というものです。

ちょっと引用させてもらいながら、話を進めますね。

まずmixmagの考えるEDMの定義ですが、これは「すべてのエレクトロニックなダンス・ミュージック」ではありません。「ドロップが重くて、スタジアムを満たして、拳を高く上げさせて、チャートの上位にくるような、アメリカを征服した、めちゃくちゃコマーシャルなメインステージ・サウンド」「たぶん、エレクトロ・ハウスとプログレッシヴ・ハウスのどこかに位置するもの」ということです。これは、もはや世界的な認識になりつつありますね。つまり広義のElectronic Dance Musicと、その略称EDMは別物なのです。2015年の現段階において、TomorrowlandやEDC、Ultraのメインステージでかかっているような音楽をEDMと呼ぶという発想ですね。この点では、日本での認識と大きな違いはないと思われます。とりあえずPitbullやNicki MinajをEDMアーティストと考えるのはやめておきましょう。当たり前ですが、AKBやSMAPのようなものでもありません(AKBやSMAPは、海外で言えばボーイズグループやガールズグループのようなもので、まったく別種のエンターテインメントを提供しています)。そういうことを書いているサイトがあったら、静かに読むのをやめましょう。

さて、その前提で8つの理由を要約で見ていきましょう。

1.EDMイベントはピークをうった
TomorrowlandもUltraもEDCも、もはやグラストンベリー級になっており、これ以上ばかげた大きさになるところが想像できないから。

2.サウンドが進化しようがなく、進化しないであろう
様式化が進んでいて、そこから脱却できないから。

3.選手がそう言っている
Steve Aoki、Nicky Romero、Tiëstoなどがそう言っているから。

4.偽DJのスキャンダルが多すぎる
花火やLEDといった仕掛けがミュージシャンシップを凌駕しているので、あらかじめレコーディング済のセットや当てぶりのEDMスキャンダルが絶えない。

5.パリス・ヒルトンがいる
ポップスターやモデルやTVアイドルが、能力ではなく知名度で、決まったセットリストをコントローラでプレイしているから。

6.趣味の悪いファッションを伴っている
ビーズのマスクや蛍光色のベストをつけてぎょっとするような目つきをした王様が、現実に遭遇するのは時間の問題だから

7.ダンスミュージックのサブジャンルとして寿命
もう強力になって3年たつから。

8.EDMイベントはすでに、ジャンルの絶滅にそなえている
EDCやUltraにアンダーグラウンドなステージが登場しているから

以上が8つの理由ですが、僕なりにそれぞれをどう考えてるか述べさせてください。

まず1ですが、これは誰にもわからないです。ロックフェスがグラストンベリーやコーチェラのサイズでピークになったからと言って、EDMフェスがそこで止まるというのは預言者的な話で、根拠がありません。

2は、様式美化している1-2-3-Jump的なものは、すでに影をひそめており、KSHMRあたりのBig RoomやDon DiabloなどのFUTURE HOUSEがEDMを進化させています。さらに違った方向に進化した音を僕でさえ思いつきますから、これもナシですね。

3は、当事者が「みんなが思っているようなEDMではなくなる」という意味で発言しただけで、言葉そのままの意味ではないのは、彼らがいまでもEDMをプレイしていることで証明されています。

4は、花火やビジュアルがEDMシーンを盛り上げていても、何も問題はないと思います。それは新しいダイナミックなエンターテインメントの提供で、みんなが楽しいのだから。しかし、その重さがミュージシャンシップを超えてはいけないというのには同意。花火大会見に行ってるわけじゃないですからね。

5は、実際とてもマズイです。。。EDMシーンのイメージを悪くしている元凶のひとつです。

6は、そのとき楽しければいいのであって、終わってから「あちゃー」と思うわけですから、終わる理由にはなりません。主要プレスが、ダサいと言い出したら終わるっていうことですが、プレスの書くことなんか気にしている人がフェスファッションなんてしませんよねw

7は、音楽に寿命などないのです。常に変化しているのですから。トレンドは変わるでしょうけど。

8は、プロモーターが、より多様なダンス・ミュージックを提供して、さらに多くの人に楽しんでもらおうとしているだけですよね。音楽は、何かが終わるから、何かが始まるというようなものではありません。

というわけで、僕が同意できるポイントは4の一部と5だけでした。産業化が過剰に進んで、ムーブメントが本質を見失ったとき、それは危機に瀕します。残念なことに、日本やアメリカでは、音楽や芸術の文化的側面を軽視して、なんでも利益主導にしてしまう傾向が強いと思います。そこがEDMにとってもアキレス腱でしょう。いわゆるEDMがそれに覆い尽くされたとき、ファンは離れていくと思います。それが起きるかはわかりませんし、個人的には起きないでほしいと祈っています。

ちなみに、「終了しない理由」は以下の四つです。

1.ロシア、中国、韓国、東欧など新しい地域で新しいイベントが始まっている。
これには日本もはいりますね !

2.ジャンル名は同じで、定義が変わる
たとえば「ニューディープハウス」が「EDM」になるかもって話ですね。これは、FUTURE HOUSEで現実にすでに起きていると考えます。

3.グレートフル・デッド
アメリカで商業的に成功した文化現象は長い時間をかけて衰退していくということです。つまり、バブルがはじけるみたいにはならないということですね。

4.Tomorrowlandのアフタームービー
史上最大の規模でエレクトロニクミュージックのもとで、みんなが一緒にすばらしいときをすごしているのをEDMは見ているから。

はい、すべてそう思います。特に4が大事だと思います。PLURは人間の根底に流れているものだから、僕はEDMは終了しないと考えるのです。EDMが大嫌いという人は、一度だまされたと思って下のビデオ見てみてください 🙂

引用元:mixmag

beatport Progressive House chartで14位を記録した、僕の最新シングル、よろしくお願いします!
Hotlife & Tomo Hirata ft. Jonny Rose – One Last Time

インターナショナルDJとローカルDJ

よく、日本からは国際的に活躍するEDM DJがなぜ出ないのだろう?という質問をもらいますが、これはトップEDM DJのほとんどがプロデューサー出身であることを考えると当たり前です。
日本のDJで国際的ヒット曲を持っている人はEDMシーンには一人もいません。
僕の「Taiko」がbeatport Electro House chartで27位、これが今のところ最高位と記憶しています。
またチャート順位だけじゃなくて、トップDJのラジオショウやDJセットでプレイされることが、欧米のEDMシーンで活躍するには必要条件になってきます。
これらは、いずれも現在の競争が激しいEDMシーンにおいては、ものすごくハードルが高いです。

ちなみにトコト君は総合チャートでトップ10入りという偉業をなしとげていますが、そのときの彼の曲はハウスだったので、いわゆるEDMヒットではなかったかなと思います。
シーンも、もっと健全でした。

では、日本でトップDJ扱いされている人は、国際的にはどういう評価なのだろう?という疑問が出てくると思いますが、これはローカルDJです。
要するに、日本国内(もしくはアジア圏内)で活動しているDJと認識されているということですね。

つまり、DJの種類は大きく分けて二種類あるのです。
国際的ヒットを出して、世界中をツアーしているインターナショナルDJと、自国周辺を主に守備範囲とするローカルDJですね。クラブのレジデントDJなどは、典型的なローカルDJです。
これは日本だけでなく、世界中どこにでもある区別です。
beatportチャートでブレイクを目指すか、iTunes Japanチャートでブレイクを目指すかの違いといったら、わかりやすいでしょうか。

もちろんインターナショナルDJのほうが世界的には人気もあり、出演料も高いのですが、だからといってローカルDJがダメということではありません。
特に、日本においては自国の経済の中だけでDJも職業として成立し得るので、あえてハードルの高い海外を目指すより、ローカルDJとして活動するほうが懸命な場合も多いでしょう。

また、この二種類はほぼ両立できないので、インターナショナルDJは地元ではほとんどブッキングがなく、ローカルDJは自国外ではほとんどブッキングがないという現象も起こります。

どちらを目指すかは、本人の意志しだいで、どちらもアリなわけですが、ローカルDJのほうがなりやすく、そのかわりに限界点も低いということを覚えておいたらいいと思います。

ちなみに僕はインターナショナルDJを目指していますが、ものすごく道は険しいですね(> <)

EDM DJと、これまでのDJの違い

EDM DJと、いわゆる一般的なDJは、やっていることがまったく違います。
ふつう、DJっていうとみんなが想像するのはスクラッチびしばしのバトルDJだったり、クラブで黙々と(ときどきMCいれたりして)beatportやトップ40のヒット曲をつないでいくDJだったりしますよね。
これは、EDM DJではありません(いいすぎかな、EDM DJスタイルではありません)。

HardwellはBillboardのインタビューで、こう語っています。
「もうDJなんていないよ. まあ少しはいるか、年配の人に。新人はみんなビッグ・ヒットを出したプロデューサーで、突然DJになるんだよ」

そうなんです。
EDM DJは、いまやほぼ全員がプロデューサー出身なんです。
最初にヒット曲があって、それで人気が出て、いろんなクラブやフェスでプレイできるようになるんです。Martin GarrixやOliver Heldensが好例ですね。

もちろん彼らも10代の頃からみんなDJの基本的なところは練習してきているでしょうが、Zeddとか、ほとんどDJ経験はなかったって言っていますよね。あのCalvin Harrisでさえ、最初の頃はつたないPC DJでした。

先に音楽制作とヒット曲ありき。
そして、自分の曲や、自分のレーベルの曲、自分でつくったマッシュアップやエディットでDJパフォーマンスをする、これがEDM DJです。

その背景にあるのはPC DJの普及によって、DJ自体はもはやあまりスキルを必要としなくなったこと、そしてEDMのトラックはPC1台でつくれるようになったってことがありますね。
そういう意味では、誰にでもチャンスがある時代になったということです。
このDJカルチャーにとって、巨大な転換点が2000年代にあったわけですが、日本ではそこが見過ごされていると個人的には感じます。

ColdplayのChris Martin、EDMを支持


こんにちは、Tomo Hirataです。
僕の本業はダンスミュージッククリエイターでDJなので、物書きに時間をかけることはもうしないと決めていたのですが、日本を取り巻くEDMの状況があまりに誤ったイメージになっているので、このEDM PRESSで、コラムを書いてくことにしました。題材はDJや曲作りのことから、アーティストのことまでさまざまになると思いますが、よろしくおねがいします。

で、第一回目にどうしても取り上げたかったのが、2014年にリリースされて、世界中で大ヒットを記録した、ColdplayとAviciiのコラボ曲「A Sky Full Of Stars」です。この曲について、Chris Martinは、Rolling Stoneのインタビューでこう語っています。

「EDMをバカにする奴らもいた、でも出かけていってEDMにおきてることを見てみろよ、みんなものすごく一緒になって、最高の時間をすごしてる」
「それでおれは思ったんだ、(バカにするやつがいるから)なんだってんだ、おれはあれを愛しているんだよ。あの世界から生まれる曲が欲しいんだ、ってね」

それを踏まえて、上のふたつのビデオを見てみてください。
Chris Martinが、いかに的確にEDMの素晴らしさをとらえていたか、よくわかりますね。