2015年のEDMシーンに思うこと

年が明けましたー!
みんなの2015年が、素晴らしい年となるようお祈りしています。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、僕は2012年から本格的にEDMの普及活動をしてきたわけですが、ちょうど2年の歳月がたったところでUltraがついに上陸して、それまで迷走していた日本でのEDMの方向性も国際標準にフィットしたかのように見えました。

しかし、その見方は残念ながら間違っていたようで、Ultra効果は一月ほどでほぼ消えてしまい、シーンは再び迷走状態に戻ってしまいました。

その背景には、EDMに関しては、日本のクラブシーンが、欧米のシーンと完全に切り離されてしまっていることがあります。

その証拠に、beatportのELECTRO HOUSEやPROGRESSIVE HOUSE CHARTに昨年登場した日本人アーティストは、僕とJapaRoll、それとEDMではありませんが大沢伸一さんだけでした。しかも、リリースは三人とも海外のレーベルからでした。僕はここで自慢話をしたいわけではなく、これが事実なのです。

日本には、CDを何万枚も売る人気DJや、iTunes Japanのダンスチャートを賑わせているプロデューサーがいるかもしれませんが、彼らの名前は海外ではほとんど知られていません。日本のシーンと海外のシーンには接点があまり無く、内容も違いすぎるのです。

これは、良い悪いの話ではなく、日本のシーンが、日本国内だけで完結しているということを意味しています。日本はやはり経済大国で、そのうえ島国なので、そこでは独自の文化が形成されているという見方もできるでしょう。

しかし、僕がここまで熱意を持ってEDMの普及活動をしてこれたのは、その根底にあるPeace,Love,Unity,Respectの精神をみんなに伝えたかったからです。国境はもちろん、人種も性別も超えて、EDMという音楽のもとで、みんながひとつになれる素晴らしい一瞬を味わってもらいたかったからです。それには、やはり日本と海外のEDMシーンの間に境界線はないほうがいいと僕は思うのです。

それで、僕は昨年の12月26日に、Yves V、Justin Prime、Blinders、Hotlifeという4組を呼んで、ageHaさん、DeNAさんの協力のもと、インドア・フェスティバルを企画しました。Ultra Japanが持ってきてくれた、国際標準のヴァイブスを生かしていくために。

結果的に、この日のageHaには、2000人が訪れてくれました。そして、招聘した4人のDJは、僕の期待通りの、PLURなヴァイブスを、その2000人とともにつくってくれました。来てくれたみんな、素晴らしいパフォーマンスをしてくれたDJ陣、そしてそれを陰で支えてくれた日本人DJ陣、スタッフのみんなには感謝の気持ちでいっぱいです。エンディングでは、僕の制作パートナーでもあるHotlifeはもちろん、Yves VやJustin Primeといった大物までが出てきてくれて、イベントを盛り立ててくれました。

僕は自分のライフワークとして、EDMという素晴らしい音楽を通じて、日本のみんな、ひいては世界のみんなにPLURなヴァイブスを伝える力になりたいと思っています。ダンスミュージックの歴史上、最大のムーブメントをサポートしていきたいのです。

日本から世界に通用するプロデューサーやDJが出てきて、Tomorrowlandのメインステージに、誰かが立つことがあってもいいではありませんか?そんな日が来ることを信じて、これからもがんばっていきますので、引き続きおつきあいいただければ幸いです。

2015年元旦
Tomo Hirata

12/26(金)のEDMインドアフェスを前に思うこと

以前、僕は
「日本におけるEDMの流れは、Ultra Japanによって、ほぼほぼ軌道修正されたと思います。」
と書きました。

しかし、残念ながら、その見方はちょっと楽観的過ぎたようです。

日本のクラブには、大量に海外のEDM DJが来日するようになりましたが、EDMがオールジャンル箱の1ジャンル扱いされる状況はあまり変わっていません。むしろVIP箱の、ステータスを示すためのアクセサリーとして利用される傾向が強まったようにさえ見えます。

さらに、Ultra Japanの成功で、EDMへの関心が高まったため、そこを金儲けに利用しようとする有象無象の人々が、プロデューサーでもなければ、それまでEDMに関わってもいなかったDJ、モデル、謎の新人をEDM DJ/アーティストとして売りだそうとするようにさえなりました。日本語で言うと便乗商法、英語で言うjump on the bandwagonですね。

彼らが本当にEDMを愛しているのなら、シーンに新しい登場人物が生まれてくるのは歓迎すべきことです。

しかし、僕には彼らからEDMへの“愛”がまったく感じられないのです。

某日本人トップDJが「トランスの悲劇」という言葉を以前使っていましたが、日本には大きなユーロトランスのシーンは、現在ありませんよね?
海外では、いまだに大人気なのに、なんでこんなことになったかわかりますでしょうか?

便乗商法組が大きな資本を動かしてブームをつくり、本流のトランスの魅力を打ち消してしまったため、トランスのイメージが誤って伝わり、ブームの終焉とともにトランスという素晴らしい音楽も葬り去られてしまったのです。
その間5年もなかったことでしょう。
便乗商法組は、大きな資本を動かしてくるため、本当のミュージック・ラヴァーは、なかなか彼らに勝てないのです。

今回、EDMで同じことが起きてはいけません。

僕は、心からEDMを愛しています。
なぜなら、EDMは人種も国籍も年齢も貧富の差も容姿の違いも越えて、人々をひとつにすることができる音楽だからです。
そのポジティヴなヴァイブスは、Peace,Love,Unity,Respectを、このギスギスした世界で忘れてしまった人々に思い出させるのです。
だから、Tomorrowlandには、オリンピックをも越える200か国以上から40万人をも越える人々が訪れるのです。
彼らは、そのお祭り騒ぎの中で、EDMを楽しみ、人間性を取り戻すのです。

この素晴らしい音楽の本質を、資本主義主導の中で食い物にされてはいけないと僕は信じています。
そして、今の日本のEDMシーンの状況が再び危機的になってきているとも感じています。
Ultra Japanがつくってくれた、本物のEDMに触れるチャンスを誰かがサポートしていかなくてはなりません。

だから、僕はイベントも再び始めて、TOKYO EDM TVで若者たちにEDMの本質を伝えることも始めました。どうなっていくかは未知数ですが、応援いただければ幸いです。

Ultra Japan の感想

Ultra Japanに行ってきました。
素晴らしかったです。

僕が2012年にEDMの普及活動を始めた当時、賛同してくれる人はとても少なかったです。
そんな僕を最初に支えてくれたのは、数少ない理解者だった、ageHaの高田部長、EMIの関本部長、そして何より僕のDJを楽しみに来てくれるEDMファンのみんなでした。

でも、EDMが徐々に浸透してくると、それまで興味を示さなかった人たちが、たくさん参入してくるようになりました。それ自体はとても良いことだったのですが、その過程でEDMの本質は、かなりねじまげられて伝わってしまったように思います。

同業のDJには「ただのアゲでしょ」と言われ、EDMイベントで喧嘩が起きた話さえ聞くようになりました。
EDMは、音箱ではなくオールミックス箱のほうで強力にプッシュされるようになり、ナンパのBGMのような扱いにさえなっていたように思います。

そんな状況が、Ultra Japanで、大きく変わりました。

Ultra Japanで僕が見た光景は、海外のEDMフェスで僕が見た光景とそれほど違わない、一体感とハッピーなヴァイブスに包まれたものでした。
EDMシーンのトップDJが送り出すポジティヴなサウンドと、このシーンにしかない素晴らしい演出が、EDMの本質をくっきりと浮かび上がらせていました。
根底を流れるPLUR(Peace,Love,Unity,Respect)の精神は、どんな国でも音から伝わるものだとはっきり理解できました。

日本におけるEDMの流れは、Ultra Japanによって、ほぼほぼ軌道修正されたと思います。

音楽的にも、Ultra Japanのベストアクトに、多くの人がAxwell Λ Ingrosso、Alesso、Steve Angelloの名前を挙げていました。僕はSwedish勢の大ファンなので、その魅力を理解する人が増えたことに、感動さえ覚えます。これは、いままでの日本のEDMシーンの状況を考えると、ものすごく大きな変化です。

本来のレールに乗った、日本のEDMシーンは、これから飛躍的に発展を遂げることでしょう。
シーンの種をまいた人間の一人だと自負している僕にとって、これはとてもとても嬉しいことです。
Ultra Japanに、まったく問題がなかったとは言いませんが、それをはるかに上回るだけの功績を、このイベントは日本のEDMシーンにもたらしてくれたと僕は思います。

ありがとうUltra Japan。
来年も期待しています。