EDMの次はトランス再び?

NWYR @ Ultra Music Festival Miami 2017

edm.comにおもしろい記事が出てました。簡単に言ってしまうと、トランスが再注目されてる中、EDMに転向していたSander Van DoornやW&W、Artyなどが別名義でトランスに戻り始めているのは金のためか?って話ですね。
http://edm.com/articles/2017/5/2/edm-djs-are-returning-to-trance

John O’Callaghanは「正直なところ、DJがどれだけ金が欲しかったかって話でしょ。コマーシャルな音楽をプレイして、より金を稼ぎたかったから、そうしたんだ。財布に突き動かされてるなら、そうするでしょ。でも、トランスに突き動かされているなら、自分の愛するところにとどまるよ」って言ってて、アーミンもそれに同意してます。

が、僕はこれは必ずしもそうではないと思うわけです。EDMムーブメントは、ダンスミュージック史上最大のものだったわけで、それは現在も続いています。このエキサイティングなムーブメントや新鮮な音、新しいアーティストとやっていきたいと思うアーティストもたくさんいるわけです、金銭以前の問題として。ティエストがその代表格ですね。

純粋主義者というのは、どこの世界にもいて、彼らがシーンのベースを築いているのですから尊重するのは当たり前なのですが、一方でトレンドセッターやテイストメーカーという人種もいるわけで、こちらがいなければシーンに新しいムーブメントは起きません。

で、本題に戻ると、EDMアーティストがトランスに戻ったとして、そこにEDMで得た新しいエッセンスが加えられているなら、音楽的にはおもしろいことになると思うわけです。シーンが硬直化したら、それは衰退していくだけなので、柔軟に楽しむべきで、結果的にトランスDJがダンス・フェスのメインステージにたくさん帰ってきたら、トランス・ファンだって嬉しいのではないでしょうか。

個人的には、次の大きなムーブメントがトランス・ルネサンスだとは僕は思わないのですが、トランスがここからUSを中心に一段進化する可能性はあるんだろうなと思ってみています。

The Chainsmokers『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』はEDMなのか?

The Chainsmokersのデビューアルバム、とってもいいです。
なぜかYourEDMは、編集長自ら乗り出して叩きまくっていますが、何を期待してたかによって評価は分かれるものですよね。

昨年Tomorrowland Radioのスタジオでインタビューしたとき、Alexが「アメリカのシーンでは、トラップやダブステップが人気だけど、ヨーロッパのフェスではそうじゃないよね。長い間、ビッグルームを128BPMでプレイしてきたDJが、たくさんいる。それはそれで素晴らしいし、楽しいけど、僕らにはある意味、やりつくしたことかな」って言ってたのを思い出しました。
Tomorrowland Radioでのインタビュー

で、日本盤のライナー読んだら新谷洋子さんが「いろんな読み方が可能なんだろうが、第一に、ポストEDM時代の到来を告げているのだろうと思う。当初は一過性の流行と見做されていたものが、いつしか日常的な風景の一部と化して、どんどん枝分かれし、突然変異して、DNAを共有しながら全く新しい形に姿を変える。そして生まれたのが、ザ・チェインスモーカーズ流のポップ・ミュージック。“躍らせる”或いは“アゲる”というEDMの主要なモチベーションを排除して、でもEDM世代の言語でストーリーとエモーションを伝える、ポップミュージックだ」って書いていて、鋭い指摘だなと思いました。

彼らがEDMヒストリーから生まれたアーティストなのは間違いないですが、ポストEDMが、こうしたEDM発のポップであり、それはまた結局EDMの発展系でもあるということですね。

まあ、音楽を楽しむ上で、それは知らなくてもいいことではありますが、The Chainsmokersのこのアルバムは、「さあパーティだ!踊れ!」とは真逆の方向性を持っていながらEDM的でもある素晴らしい作品なのです。そして思い出や人間関係にフォーカスした、コンセプト・アルバム的作品でもあるのです。

Oliver Heldensが「Something Just Like This」に対して、この二組ならもっといい作品ができたはずだって言ってましたが、僕にはこの曲は充分すぎるくらい良いです。「Roses」に似てるとか、どうでもよくて笑、この曲には最近のColdplay特有の、聴けば聴くほどよくなっていく感じと、素晴らしい歌詞があります。そう、「歌詞」や「感情」や「場面」があるんですよね。「踊れ!踊れ!」の単機能性は強力であると同時に、多くの人がEDMを「薄っぺらい」とする根拠にもなっているのですが、The Chainsmokersは、そこにも回答を示していると思ったのでした。

The Chainsmokersが各曲にこめた思いは、彼ら本人の言葉でご確認ください 🙂
『MEMORIES…DO NOT OPEN』The Chainsmokers コメント和訳

Ultra Music Festivalの本質は何かな?

Ultra Music Festival 2006 – Paul Oakenfold – Live Set

日本ではEDMブームとともに上陸した感のあるUltraブランドですが、本家マイアミのUltra Music Festivalは、’EDM’なんていう言葉が流通するはるか前、1999年から行われていて、業界コンファレンスのWMCと2010年までは連動していました。
そんなわけで、Ultra Music Festivalは’Music Festival’であり、いまでもビッグネームが新曲を発表する場として、真の音楽好きや業界関係者にも注目されています。

その歴史をたどる興味深い記事が、YourEDMに出ていました。
1999年からのフライヤーが、ここには載っています。
RELIVE THE EPIC HISTORY OF ULTRA MIAMI WITH EVERY SINGLE LINEUP EVER

ヘッドライナー格を、ざざっと見てみると、2010-2011年のWMCとの連動が切れたあたりで変化が見えてきます。
そこまでの主役はRabbit In The Moon, Sasha, John Digweed, Paul Van Dyk, Paul Oakenfold, Carl Cox, Tiesto, Underworld, The Chemical Brothers, Erick Morillo, The Prodigyなどなど
2010年以降はDavid Guetta, Swedish House Mafia, deadmau5を皮切りに、いわゆるEDM勢が進出してきて、主役が総入れ替え状態になります。

そんな中、そこを大胆に乗り切ったのがTiesto(音楽性も変えたわけですが)なので、先に挙げたGuetta、SHM、deadmau5とともに、この4組は現在のEDMシーンにつながる最重要人物なわけです。

Ultra Music Festivalの変遷を見ていると、ダンスミュージックの歴史もわかる、そんな素敵なフェスは今週末です。
日本時間の早朝から午前にかけては、ライブストリームもありますよ 🙂
https://ultramusicfestival.com/