’09年からのEDM人気を受けて、トランス、ハウス、テクノを中心として運営されてきたTomorrowland(ベルギー、2005-)やUltra Music Festival(マイアミなど、1999-)、EDC(ラスベガスなど、1997-)の人気も急上昇、2012〜2013年にかけて、その熱狂はすさまじいものとなり、現在につながっています。
2012年のTomorrowland Aftermovieは、YouTubeで1億4千万回も再生されています。 Tomorrowlandは、‘Live Today, Love Tomorrow, Unite Forever’のメッセージ、世界中のほとんどの国200か国以上から参加者が集まることや、そのストーリー仕立ての素晴らしいデコレーションで人気となり、「最もチケット入手困難」「IDMAのBest Music Event」という事実を背景に「世界最高峰」と称されることも少なくありません。
レジデントDJのDimitri Vegas & Like Mikeは絶大な人気を誇ります。
Ultra Music Festivalは、そのロゴマークと未来的な演出、ライブステージ、世界各国でのUltraの展開でよく知られています。 3月のMiami Music Weekと同時期であることから、トップDJが新曲を披露し、その年の音楽的方向性を決定づけるイベントでもあります。
ふくろうが象徴となっているEDC(Electric Daisy Carnival)は、 Las Vegas Motor Speedwayという会場に40万人以上を集める、世界最大級のダンスイベントです。 PLUR(Peace, Love, Unity, Respect)を前面に押し出し、ヘッドライナーは「参加者のみんな」というポリシーのもと運営されているのも特徴的ですね。
Tomorrowland、Ultra Music Festival、EDC Las Vegasは世界三大ダンスフェスとも言えるでしょう。 2012年には、Swedish House MafiaがCoachellaのサブヘッドライナーを務め、この頃からロック / ポップ・フェスへもEDMアーティストは進出していきました。
’00年代中盤にいったん失速したかに見えたダンス・ミュージック・シーンですが、そこで次の展開を考えていた一人がDavid Guettaでした。David Guettaは、2017年1月のインタビューで「Erick MorilloやMasters At Workといったクラシック・ハウスに影響を受けていたけれど、そんなアンダーグラウンドな音楽がラジオでかかったり、DJがアーティストとして認められること」を意図していたと答えています。 また、彼が「エレクトロニックとヒップホップという、かつてはほとんど敵」だったというジャンルを、ハウス側から融合させて、USではあまり人気のなかったエレクトロニック・ミュージックを全米のポップチャートにブレイクさせたところに“EDM”という米語が知れ渡るきっかけがありました。 David Guetta ft. Kelly Rowland – When Love Takes Over (’09) The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling (’09)
力をつけてきたスウェーデン勢からは、Swedish House Mafiaが結成され、より大きなスペースを意識したハウス・ミュージックが新たなスタイルとなります。 Axwell, Ingrosso, Angello, Laidback Luke ft. Deborah Cox – Leave the World Behind (’09) Swedish House Mafia – One (Your Name) (’09)
トランス・シーンで世界的スーパースターに上り詰めていたTiestoが、音楽的に大きく方向転換したのもこの頃でした。 Tiësto vs. Diplo – C’Mon (’10)
David Guetta、Swedish House Mafia、Tiestoは、いまでもダンス・フェスのヘッドライナーを務める大御所ですが、彼らがEDMシーンのパイオニアと言えるでしょう。
また、エモ、オルタナ系バンド出身のSkrillexがdeadmau5のサポートで、ハードなダブステップ(ブロステップ)でブレイクしたのも、この頃でした。 deadmau5やSkrillexは、前三者とはまったく違ったラインでEDMの起点をつくっていたのです。 Skrillex – Scary Monsters And Nice Sprites (’10)
ヨーロッパのハウス・シーンは、’90年代を通じて巨大化、そこから派生したトランスも勢いづき、スーパークラブ、スーパースターDJも登場する中、’00年代以降現在に至るまでのダンスミュージック・シーンに最大の影響を与えたのはDaft Punkだったでしょう。 テクノ、フィルター・ハウス、ディスコといった要素を組み込んだ彼らのサウンドは唯一無比のものとしてリスペクトされています。 Daft Punk – One More Time (’01)
DJカルチャーがデジタル化する中、beatportという新たなプラットフォームから生まれたスターがdeadmau5でした。 このころから、ダンスミュージック・シーンは、本格的にプロデューサー主導となっていきます。 deadmau5 ft. Rob Swire – Ghosts N Stuff (’08)
同時期、オランダではエレクトロ・ハウスの人気が上昇、Fedde Le GrandやSidney Samson、Afrojackが注目され始めます。 Fedde Le Grand – Put Your Hands Up 4 Detroit (’06)
Fedde Le Grand – Put Your Hands Up For Detroit (Official Video)
スウェーデンでも、新世代のハウスDJに注目が集まり始めます。 Eric Prydz – Pjanoo (’08) Axwell – I Found U (’07)
Kraftwerkを歴史に持つドイツは、テクノに対して最も好意的だった国の一つで、その伝統は現在もベルリンを中心に残っています。 また「トランス」というジャンルは、ドイツのDance 2 Tranceが命名したとも言われていますし、初期トランス・シーンの代表曲には、フランクフルトのJam & SpoonによるAge Of Loveのリミックスがあります。 Age Of Love – The Age Of Love (Jam & Spoon Watch Out For Stella Mix) (’92)
現在でもトランス・シーンに君臨するPaul Van Dykもドイツです。 Paul van Dyk – For An Angel (’94/’98)
’90年代のヨーロッパのシーンで最も重要だったのは、EDMの歴史から見ると’90年代中盤から’00年代初頭にかけて大きな盛り上がりを見せた、オランダのダッチ・トランスでしょう。Ferry Corsten、Tiësto、Armin Van Buurenは、このシーンの三巨頭でした。 System F – Out Of The Blue (’98) Delerium ft. Sarah McLachlan – Silence (Tiësto’s In Search of Sunrise Remix) (’99)
ハウスではフランスが、ディスコ・サンプルとフィルターを駆使したフィルター・ハウスで人気となりました。 Daft PunkのThomas Bangalterと、Alan Braxe、Benjamin Diamondが組んだStardustは、中でもよく知られています。 Stardust – Music Sounds Better With You (’98)
Stardust – Music Sounds Better With You (Official Music Video)
フィルター・ハウスは’90年代後半にUSからも盛んにリリースされていました。 Armand Van Helden – You Don’t Know Me (’98) David Morales – Needin’ U (’98)