EDMの主要ジャンル – 4 – POP系

EDMの特徴の一つに、ポップ・チャートにもブレイクするようなポテンシャルの高さがあります。
ここでは、みんなが’EDM’と呼ぶけれど、他のジャンル名では呼び難いポップな曲をピックアップしてみました。
こういうものは、PopでもありEDMでもあり、ある意味一番EDMらしいかもしれません。
ラジオやSpotifyで一番人気があるのも、このへんの曲だったりします。
しかし、Lady GagaやAriana Grande、Rihannaといった、もともとダンスミュージック・シーンではなくポップ・シーンのアーティストのオリジナルは、EDMには入らないのがポイントです。

Avicii – Wake Me Up (’13)

Calvin Harris – Summer(’14)

David Guetta – Hey Mama ft Nicki Minaj, Bebe Rexha & Afrojack (’15)

Major Lazer – Cold Water (feat. Justin Bieber & MØ) (’16)

Alesso – I Wanna Know ft. Nico & Vinz (’16)

Zedd, Alessia Cara – Stay (’17)

The Chainsmokers & Coldplay – Something Just Like This (’17)

EDMの主要ジャンル – 1 – HOUSE~Big Room系
EDMの主要ジャンル – 2 – HOUSE~Future House系
EDMの主要ジャンル – 3 – Bass Music
EDMの主要ジャンル – 4 – POP系

EDMの主要ジャンル – 3 – Bass Music

Bass Musicは、元をたどるとUKのレイヴ・ミュージックに行きつく、四つ打ちではない、ベース音がメインになっている様々なジャンルを総称したものです。
USのBass Musicには、Hip Hopからの流れも強く入っています。
ここでは、Dubstep、Trap、Future Bassをご紹介しましょう。

Dubstepは、’90年代末にUKで生まれたジャンルですが、EDMシーンで“Dubstep”と言った場合は、通常Skrillexらがそこから進化させた、ハードでひずんだシンセとロッキンなリズムを前面に押し出した“Brostep”を指すことが多いです。
EXCISION & DATSIK – Deviance (’11)

SKRILLEX – Bangarang feat. Sirah (’12)

Flux Pavilion – Daydreamer feat. Example (’12)

Borgore feat. Miley Cyrus – Decisions (’12)

Trapは、本来ヒップホップのサブジャンルで、いまでもヒップホップ・シーンにその流れはしっかり存在しています。EDMシーンで“Trap”と言った場合は、それらではなく“EDM Trap”を指すことが多いです。
特徴はTR-808の音色などを使った、ヒップ・ホップ・スタイルのリズムにあります。
Baauer – Harlem Shake (’12)

Yellow Claw – Shotgun ft. Rochelle

FLOSSTRADAMUS & DJ SLIINK – CROWD CTRL (’13)

DJ Snake, Lil Jon – Turn Down for What (’14)

RL Grime, What So Not, and Skrillex – Waiting (’16)

Ookay – Thief(’16)

Marshmello – Alone(’16)

Future Bassは、シンセのコードワークや、そこでのエフェクトづかいが特徴的なジャンルです。
本人がFuture Bassアーティストかどうかは別として、この流れを決定づけたのはFlumeです。
Flume – Holdin On (’13)

San Holo – Light (’16)

Martin Garrix & Bebe Rexha – In The Name Of Love (’16)

Illenium – Fractures (feat. Nevve) (’17)

EDMの主要ジャンル – 1 – HOUSE~Big Room系
EDMの主要ジャンル – 2 – HOUSE~Future House系
EDMの主要ジャンル – 3 – Bass Music
EDMの主要ジャンル – 4 – POP系

EDMの主要ジャンル – 2 – HOUSE~Future House系

EDMには、ハウス・ビートがより強いジャンルも存在します。

Future Houseは、2013年にTchamiが造語して発生した新しいジャンルです。
ハウス・ビートにメタリックな音のベースラインが典型で、現在ではピアノやトロンボーン系の音もよく使われています。
ハウスとEDMの中間的にとらえられていることが多く、メインフロアでプレイされることも多いです。
Oliver Heldens X Becky Hill – Gecko (’14)

Tchami feat. Kaleem Taylor – Promesses (’14)

Tiësto & Don Diablo – Chemicals (feat. Thomas Troelsen) (’15)

Bass Houseは、Future HouseやDubstepと親戚関係で、ベースラインにWobble BassなどUS Bass Music系の音色を使っているものです。
Bass Music系のDJもよくプレイします。
Jauz and Ephwurd – Rock The Party

Spinnin’ Deepなどがリリースしているギターやオーガニックな楽器をフィーチャーしたハウスは、Deep Houseと呼ばれていますが、これらは’80年代から存在するアンダーグラウンドなディープ・ハウスではなく、よりポップな2010年代型のハウス・ミュージックと言ってよいでしょう。
このサブジャンルがTropical Houseです。
Lost Frequencies – Are You With Me (’14)

Mr Probz – Waves (Robin Schulz Remix) (’14)

Sam Feldt – Show Me Love (EDX’s Indian Summer Remix)(’15)

Thomas Jack – Rivers (feat. Nico & Vinz) (’15)

Kygo – Stole The Show feat. Parson James (’15)

Kryder周辺のトライバルなサウンドはGroove Houseと呼ばれています。
Kryder & Eddie Thoneick – The Chant (’16)

EDMの主要ジャンル – 1 – HOUSE~Big Room系
EDMの主要ジャンル – 2 – HOUSE~Future House系
EDMの主要ジャンル – 3 – Bass Music
EDMの主要ジャンル – 4 – POP系

EDMの主要ジャンル – 1 – HOUSE~Big Room系

‘EDM’といっても、’EDM’は様々なジャンルをUSシーンの観点からとりまとめたものでしかないので、そこにはいろんな種類の音楽が存在しています。

まず、多くの人が’EDM’と思っているのは、ハウス系の’Big Room’というジャンルです。
これは文字通り、フェスティバルや大バコでのプレイを前提とした、スケール感が大きい、BPM128前後のサウンドです。

このBig Roomは、大きく二つの種類に分けることができます。
エレクトロ・ハウス系とプログレッシヴ・ハウス系です。

まずは、エレクトロ・ハウス系ですが、こちらはシンプルなリズムと、わかりやすく派手なシンセのドロップ、ブレイクからの強烈な盛り上げが特徴となっています。
一時期シーンを席巻していたハードキックの曲が典型的なものですね。
’1-2-3-Jump’とか入ってくる類の曲は、ここに分類されることが多いです。
Martin Garrix – Animals (’13)

DVBBS & Borgeous – TSUNAMI(’13)

W&W – Bigfoot (’14)

Dimitri Vegas & Like Mike vs Ummet Ozcan – The Hum (’15)

プログレッシヴ・ハウス系(Sasha、Digweedなどのプログレッシヴ・ハウス・ジャンルとは関係ありませんので、ご注意を)は、エモーショナルなコードワークやメロディに重点がおかれたサウンドです。
Swedish House Mafia以降の、ほとんどのスウェディッシュ・ハウスは、ここに入ります。
’14~’15年に流行したメロディック・プログレッシヴ・ハウスも、その代表格です。
Sebastian Ingrosso, Tommy Trash, John Martin – Reload (’13)

Alesso Vs. OneRepublic – If I Lose Myself (’13)

Dimitri Vangelis & Wyman X Steve Angello – Payback (’14)

Nicky Romero vs. Volt & State – Warriors (’15)

Big Roomの近隣ジャンルに、オーストラリアを発祥とするMelbourne Bounceがあります。
Psy-Trance系統のシンプルなベースラインの、パーティ・チューンです。
Will Sparks – Ah Yeah So What (feat. Wiley & Elen Levon) (’14)

また、EDM以前からオランダで人気となっていた、高速のHardstyleシーンからは、HeadhunterzやShowtekがEDMシーンに参加しています(Headhunterzは、その後、Hardstyleに復帰宣言をしています)。
Hardstyleのキックは、Big Roomに大きな影響を与えました。
Headhunterz – Dragonborn (’12)

EDMの主要ジャンル – 1 – HOUSE~Big Room系
EDMの主要ジャンル – 2 – HOUSE~Future House系
EDMの主要ジャンル – 3 – Bass Music
EDMの主要ジャンル – 4 – POP系

The History of EDM – 9 ~まとめ

ここまで駆け足でEDMの歴史を見てきましたが、簡単にまとめてみましょう。

’80年代のシカゴ・ハウスからハウス・ミュージックが生まれる

‘UKに飛び火して、’80年代末から’90年代前半に野外レイヴが大流行する。
これが、現在のダンス・フェスの原点となっている。
レイヴでプレイされていた(ブレイクビート)・ハードコアからジャングル/ドラムンベースが生まれ、これがダブステップ~のちのUS Bass Musicにつながっていく。

ヨーロッパ大陸で、’90年代にトランスが人気となり、ここからTiestoやArmin Van Buurenが生まれる。

’00年代中盤にはエレクトロ・ハウスの人気が上昇。
beatportでdeadmau5が人気を獲得。

2009年
エレクトロ・ハウスからDavid GuettaがEDMと呼べるようなサウンドを生み出し、USでのEDM人気を決定づける。
同じころ、Swedish House Mafiaがカリスマ的人気を得始める。

2010年
TiestoがEDMに転向。
Skrillex誕生。

2011年
シーンが巨大化を始める。
象徴的名曲Avicii – Levels

2012年
Hardwell、Alesso、Nicky Romero、Zeddといった第二世代が登場する。

2013年
Martin Garrix、Oliver Heldensといった、さらに下の世代が脚光を浴びる
Swedish House Mafia解散。

2014年
画一的なシーンは一段落し、多様化が始まる。
年末にはKygoがFirestoneをリリースし、メインステージ仕様ではないEDMに注目が集まる。

2015年
EDMのポップ化を象徴するMajor Lazer & DJ Snake – Lean On (feat. MØ)が大ヒット

2016年
The Chainsmokersが、EDM史上最高の成功をおさめ、USポップチャートを席巻する。

というわけで、2009年のDavid GuettaのUSブレイク、2012年のダンスフェスの熱狂とビッグルーム・サウンドの大人気を経て、現在はポップ・シーンにEDMの中心は移ってきていると言ってよいでしょう。
一方、ダンスフェスには、Tomorrowlandのメインステージにテクノ勢がブッキングされたり、Ultra Music FestivalにResistanceステージ、EDCにDreamstateステージが登場するなど、ルーツに帰る動きが見られます。

日本ではどういうわけか、EDMのイメージは、“アゲアゲ&ショットで大騒ぎ”というチープな、かなり誤解された形で定着してしまっていますが、ここに書いてきたことはSpotifyのビデオでも伝えられています。
ちなみにPLURという言葉は、USの’90年代アンダーグラウンド・レイヴ・シーンから広まったとされています。
もっともハウス・ミュージック自体がPeace & Unityを願う音楽であり、レイヴ・シーンにはサマー・オブ・ラヴ的な思想も流れていますから、現在のダンス・フェスが、いずれも同様の理念を掲げているのは自然なことでしょう。

このコラムで、EDMに対する正しいイメージが広まってくれることを願っています。

The History of EDM – 1 (’80年代)~ルーツをたどればシカゴ・ハウス
The History of EDM – 2 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – US編
The History of EDM – 3 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – UK編
The History of EDM – 4 (’90年代)~ハウス大躍進の時代 – ヨーロッパ編
The History of EDM – 5 (’00年代)~エレクトロの台頭
The History of EDM – 6 (’09年~’10年)~EDMの起点
The History of EDM – 7 (’10年代)~ダンスフェスの爆発的人気上昇
The History of EDM – 8 (’10年代)~EDMシーンが巨大化
The History of EDM – 9 ~まとめ