The Chainsmokers『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』はEDMなのか?

The Chainsmokersのデビューアルバム、とってもいいです。
なぜかYourEDMは、編集長自ら乗り出して叩きまくっていますが、何を期待してたかによって評価は分かれるものですよね。

昨年Tomorrowland Radioのスタジオでインタビューしたとき、Alexが「アメリカのシーンでは、トラップやダブステップが人気だけど、ヨーロッパのフェスではそうじゃないよね。長い間、ビッグルームを128BPMでプレイしてきたDJが、たくさんいる。それはそれで素晴らしいし、楽しいけど、僕らにはある意味、やりつくしたことかな」って言ってたのを思い出しました。
Tomorrowland Radioでのインタビュー

で、日本盤のライナー読んだら新谷洋子さんが「いろんな読み方が可能なんだろうが、第一に、ポストEDM時代の到来を告げているのだろうと思う。当初は一過性の流行と見做されていたものが、いつしか日常的な風景の一部と化して、どんどん枝分かれし、突然変異して、DNAを共有しながら全く新しい形に姿を変える。そして生まれたのが、ザ・チェインスモーカーズ流のポップ・ミュージック。“躍らせる”或いは“アゲる”というEDMの主要なモチベーションを排除して、でもEDM世代の言語でストーリーとエモーションを伝える、ポップミュージックだ」って書いていて、鋭い指摘だなと思いました。

彼らがEDMヒストリーから生まれたアーティストなのは間違いないですが、ポストEDMが、こうしたEDM発のポップであり、それはまた結局EDMの発展系でもあるということですね。

まあ、音楽を楽しむ上で、それは知らなくてもいいことではありますが、The Chainsmokersのこのアルバムは、「さあパーティだ!踊れ!」とは真逆の方向性を持っていながらEDM的でもある素晴らしい作品なのです。そして思い出や人間関係にフォーカスした、コンセプト・アルバム的作品でもあるのです。

Oliver Heldensが「Something Just Like This」に対して、この二組ならもっといい作品ができたはずだって言ってましたが、僕にはこの曲は充分すぎるくらい良いです。「Roses」に似てるとか、どうでもよくて笑、この曲には最近のColdplay特有の、聴けば聴くほどよくなっていく感じと、素晴らしい歌詞があります。そう、「歌詞」や「感情」や「場面」があるんですよね。「踊れ!踊れ!」の単機能性は強力であると同時に、多くの人がEDMを「薄っぺらい」とする根拠にもなっているのですが、The Chainsmokersは、そこにも回答を示していると思ったのでした。

The Chainsmokersが各曲にこめた思いは、彼ら本人の言葉でご確認ください 🙂
『MEMORIES…DO NOT OPEN』The Chainsmokers コメント和訳

ENGMNTのセカンド・シングルが出ました

Brevis X ENGMNT – Everyday (ft. Grand Khai)

僕とYavor Topchiev(Hotlife)のニュー・プロジェクト’ENGMNT’が、フリーダウンロードのセカンド・シングル’Brevis x ENGMNT – Everyday (ft. Grand Khai)’を3/28に、人気SoundcloudチャンネルのTrap Cordsからリリースしました。
なんでレコード会社じゃなくて、Soundcloudチャンネルでフリーダウンロード?って思ったかもしれませんが、いまYouTubeやSoundcloudのチャンネルには、レコード会社に負けずとも劣らないパワーがあるんです。

今回コラボしているBrevisは、昨年Snoop Dogをフィーチャーした’Jakoban X Brevis – Want To (ft. Snoop Dogg, Lox Chatterbox & Forever M.C.)’を、Trapで一番人気のYouTubeチャンネルTrap Nationで公開して、この曲は128万再生にもなっています。

Jakoban X Brevis – Want To (ft. Snoop Dogg, Lox Chatterbox & Forever M.C.)

おそらく現時点で最高峰のダンスレーベルはSpinnin’だと思いますが、再生回数だけで見るとTrap Nationのほうがパワーがあるくらいです。
フリーダウンロードのものには、バイラルに広がっていきやすいというメリットもあります。
もっともレコード会社は、アーティスト・プロモーションをちゃんとしてくれますから、単純に数字で比較はできませんし、ダンスミュージック・シーンとの関わりはDJレーベルのほうがはるかに深いので、どちらがよいというものではありませんが。

いずれにしてもSpotifyなどのストリーミングサービスとYouTubeやSoundcloudのチャンネルが、これからのプロデューサーとリスナーの接点になっていく度合は、間違いなく増していくだろうなと思っています。

ちなみに「Everyday」は、ただいま4万7千再生。Dimitri Vegas & Like Mike、Yves V、YouTubeの人気チャンネルTribal Trapにサポートされています 🙂

Ultra Music Festivalの本質は何かな?

Ultra Music Festival 2006 – Paul Oakenfold – Live Set

日本ではEDMブームとともに上陸した感のあるUltraブランドですが、本家マイアミのUltra Music Festivalは、’EDM’なんていう言葉が流通するはるか前、1999年から行われていて、業界コンファレンスのWMCと2010年までは連動していました。
そんなわけで、Ultra Music Festivalは’Music Festival’であり、いまでもビッグネームが新曲を発表する場として、真の音楽好きや業界関係者にも注目されています。

その歴史をたどる興味深い記事が、YourEDMに出ていました。
1999年からのフライヤーが、ここには載っています。
RELIVE THE EPIC HISTORY OF ULTRA MIAMI WITH EVERY SINGLE LINEUP EVER

ヘッドライナー格を、ざざっと見てみると、2010-2011年のWMCとの連動が切れたあたりで変化が見えてきます。
そこまでの主役はRabbit In The Moon, Sasha, John Digweed, Paul Van Dyk, Paul Oakenfold, Carl Cox, Tiesto, Underworld, The Chemical Brothers, Erick Morillo, The Prodigyなどなど
2010年以降はDavid Guetta, Swedish House Mafia, deadmau5を皮切りに、いわゆるEDM勢が進出してきて、主役が総入れ替え状態になります。

そんな中、そこを大胆に乗り切ったのがTiesto(音楽性も変えたわけですが)なので、先に挙げたGuetta、SHM、deadmau5とともに、この4組は現在のEDMシーンにつながる最重要人物なわけです。

Ultra Music Festivalの変遷を見ていると、ダンスミュージックの歴史もわかる、そんな素敵なフェスは今週末です。
日本時間の早朝から午前にかけては、ライブストリームもありますよ 🙂
https://ultramusicfestival.com/