feels like HEAVEN 2012

僕がつくった曲の中で、一番良く知られているのは、角川映画『リング』の主題歌になった「feels like HEAVEN」だろう。’98年の作品だから、もう14年も前の曲ということになる。映画が大ヒットしたおかげで、一応オリコンのチャートにも入ったし、そこそこ売れた。ということで、その後、J-POP的なお仕事も入ってくるようになったのだが、事務所がめちゃくちゃなところだったこともあり、その路線はフェイドアウトになってしまった。

まあ、もともとクラブミュージック・クリエイター/DJだし、個人的にはJ-POPは、ほとんど聴かないので、それでよかったんだと思う。

その「feels like HEAVEN」を下敷きにした「feels like HEAVEN 2012」が、友人のレーベルから出た。
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これは、実はちょっと前に、その友人に勧められてつくったものだ。ボーカルには、ボーカロイドを使っている。ちょっと不思議な楽曲になったと思うので、聴いてみてもらえると嬉しい。ちなみに“Ring 21st Century Version”というのが、フル歌バージョンだ。

アメリカにEDMブーム到来

アメリカは、これまでエレクトロニック・ミュージック不毛の地と思われていたし、そこではクラブミュージックの扱いも基本的にマイナーなものだった。それが、ここ数年で大きく変ってきた。Billboard誌が若者の音楽としてEDMを取り上げたり、大きなフェスでもダンス・アクトがヘッドライナーに近い扱いを受けるようになってきた。

その原因は、もちろんデヴィッド・ゲッタが大ブレイクしたことにあるのだが、EDMは、今やアメリカの若者にとって「最もイケてる」音楽なのだ。ロックが元気を失っていく中、EDMの台頭は、とても目立つ。

EDM=Electronic Dance Musicは、元来エレクトロニックなダンス・ミュージック全般を表す言葉で、そこにはハウスからトランス、エレクトロ、ドラムンベースにいたるまで、様々なジャンルが含まれていた。しかし、近年EDMと言った場合、その範囲はもうちょっと狭くなる。エレクトロ・ハウスを中心に、エレクトロ、ダブステップあたりまでを指すことが多いだろう。この言葉が使われるのは、主にアメリカで、ヨーロッパでは使われることは少ない。

アーティストで言うと、ゲッタはもちろん、スウェディッシュ・ハウス・マフィア、スクリレックス、カスケード、アフロジャック、スティーヴ・アオキなんていうのが代表格として上がってくる。トランスからの転身組でティエストも、このグループに入れてよいだろう。

このアメリカにおけるEDMブームは、実はとてつもない起爆力を秘めている。アメリカには、世界最大の音楽マーケットがあるのだから。

しかも、アメリカで流行したことは、ほとんど日本にも遅れて入ってくる。すでに、その兆候はあるが、日本にEDMブームが到来するのも、そう先のことではないだろう。だから僕は、Loud Essentialsで、今一番面白いこのシーンからの音楽をたくさん紹介している。もともと自分はDJなので、近いうちに現場でのレギュラー展開もしたいなと思っている。

ヨーロッパでのダンス・ミュージック・ブームから20年余り、ゲッタがDJを始めてから30年という歳月を経て、ついにアメリカでEDMという名前の音楽は爆発し始めた。これは、ものすごく面白いことになりそうだ。英Guardian誌によると、International Music Summitのディレクター、ベン・ターナーは「20年の時を経て、EDMは成熟し、アメリカにおいてヒップホップ以来最大のユース・ムーブメントになった」とさえ称している。2003年にUKでスーパークラブ・バブルがはじけて以来、クラブ・ミュージック・シーンには、あまり明るい兆候はなかったが、暗黒時代はいつまでも続かないのだ。

X-tra クラシック

僕はターンテーブルも、売り払ってしまってもう1台しか持っていないし、アナログ・レコードも相当数処分してしまったので、先週のX-traに向けては、デジタルで楽曲を買い直した。そこで役に立ったのは、’90年代X-tra開催当時のLOUDだった。自分が書いたレビューは、X-traでプレイしたディスクの記録として、そこに残っていたのだ。

’90年代の楽曲が、beatportやJunoで売られているかというと、意外なことに、それなりにあった。でも、無いもののほうが多かった。無いのは、主にメジャーのレコード会社がからんでいる音源だった。たとえばCe Ce Peniston「Finally」のSharpミックスなんていうのは、どうしても欲しかったのだが、WAV屋さんでは売っていなかった。

そこで便利だったのは、アマゾン・マーケットプレイスだった。そういう音源は、CDシングルで買うしかないのだが、マーケットプレイスには、かなりマイナーなものまであった。

かくして、僕の手元には、X-traでかけていた曲が約180曲集まった。もう充分すぎる量だった。

それでも最終的に見つからなかったのは、CROSSTRAXなどの微妙にマイナーなレーベルから出ている音源と、ホワイトレーベルで流通していたブートレッグたちだった。

アナログ・レコードを大量に持ったままで、どうしたらよいか分からないという人は少なくないと思うが、微妙にマイナーなものと、ブート系のディスク以外は、処分してもそれほど困らない。買う気になれば、今からでもデジタルで買える。これが、僕の出した結論だ。

先週使った、16GBのUSBメモリさえあれば、僕はいつでもX-traクラシックをプレイできる。これは、なかなか気分のいいことだ。

ちなみに当日、デジタルでプレイしたのは僕だけだった。だから、DJミキサーの両脇には、CDJ-2000を押しのけて、Yo-C仕様のダブルピッチ・ターンテーブルがデ〜ンと置かれていた。それは、なんだか微笑ましい光景だった。