’06年と’07年に、史上初となる2年連続UKヒューマン・ビートボックス・チャンピオンに輝き、’08年には同大会のジャッジも務めた、イギリス出身の人気ビートボクサー、バーディーマン。コルグのタッチ・パッド式エフェクター/サンプラー、KAOSS PADを駆使したアクロバティックなパフォーマンスが話題を呼び、これまでに5千万回以上のネット動画再生数を記録している、実力者です。もちろん世界各地のフェスでも人気者で、昨年はフジロックでもパフォーマンスを披露しています。
そんな彼が、ロブ・ダ・バンクが主宰する人気レーベル、SUNDAY BESTから、初のアルバム作品『アイ・ダン・ア・アルバム』を3月2日にリリースします。制作アドバイザーにベテラン・エレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、トム・ミドルトンを招き、驚愕のヒューマン・ビートボックス・ワールドを展開している本作。そのサウンドは、一聴すると一般的なエレクトロニック/ブレイクビーツ・ミュージックに匹敵する、衝撃的なものとなっています。
ダブ・ステップ、ヒップホップ、テクノ、ドラムンベースを横断する、ユニークな楽曲群が詰まった『アイ・ダン・ア・アルバム』。本作の内容について、バーディーマンに話を聞きました。
BEARDYMAN『I Done A Album』インタビュー
UKのビートボックス・チャンピオンがつくり出す、
ヒューマン・ビートボックスの概念を超えた、驚異の音世界
__まずは、あなたの音楽的バックボーンについて、少し教えてください。もともと、あなたがヒューマン・ビートボックスに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
「’01年に、ラーゼル(Rahzel:元ザ・ルーツのビートボクサー)を観たことだね。彼の作品を友達に教えてもらったんだ。僕の世代の、他のビートボクサー達と同じさ。で、自分でもああいうことができるんじゃないか?って思うようになって、ビートボックスを始めたんだ。ずっとノイズを出すのは上手かったから(笑)、コレだ!って思ったよ」
__バーディーマンとして活動する前は、どんなことをやっていたんですか?
「僕は、5歳からピアノを弾いて、15歳からギターを弾いていたから、いろんな音楽活動をやってたね。友達とバンドをいくつかやったけど、それはどうにもならなかった。大学では、コメディー・ショーをやったり、MCをしたりもした。最初はソングライターになりたくて、ギターで曲をつくっていたんだけどね。でも、その夢をちょっと諦めかけていた頃に、ビートボックスと出会ったんだ。ビートボクサーの存在を知った時は、初めて自分が他の人よりもウマくできそうな何かにめぐり合えた、って思えたよ」
__あなたは、コルグのKAOSS PADを最大で4台も駆使したパフォーマンスで知られていますが、このアイディアは、何をきっかけに思いついたんですか?
「ラーゼルもKAOSS PADを使っているけど、僕は、彼のプレイを観る前から、マイクをギター・エフェクターに通して、ドラムの口まねをやると、本物のドラムと全然区別できない音が出るってことに、気づいてたんだ。だから、KAOSS PADを使えばギグができるって思って、すぐに始めたよ。他の人が使ってる機材なんかを見ながら、いろいろ実験もしたりしてね。KAOSS PADは本当にすごい機材だと思う。世界中探しても、他にあんな機材はないと思う」
__分かりました。では、アルバム『アイ・ダン・ア・アルバム』について教えてください。多彩な楽曲を楽しめる作品になっていますが、どんな内容のアルバムにしたかったのでしょうか?
「ちょっとひねりのある終末論的な雰囲気を、とか、ポップ・カルチャーへのコメントを、とか、そういうイメージはいくつかあったけど、基本的には、ただ自分が聴きたいアルバムをつくろう、って思っていただけだった。だから、このアルバムのコンセプトは…自分のファースト・アルバム、ってことかな(笑)。もっといろんな可能性を取り入れたい、とも思ったけど、あんまり入れ過ぎても聴きづらくなるしね。今はこのバランスで満足してるよ」
__本作には、もはやどこまでがヒューマン・ビートボックスで、どこからがシンセやサンプリングなのか判別できない楽曲が、数多く収録されていますね。このアルバムは、基本的に、あなたのパフォーマンスを一発録りしていったものなんですか? それとも、かなり綿密に構成を考えて、エディットやオーバーダビングを重ねながら仕上げていったものなんですか?
「どっちもだな。今回は、トム・ミドルトンが制作に関わってくれたこともあって、スタッフ全員で、すごく複雑なアルバム制作のシステムをつくりあげたからね(笑)。トムはすごいプロデューサーで、キャリアのある人だから、いろんなアイディアや意見をくれたんだ。レーベルのボス、ロブ・ダ・バンクが、トムをスタジオに呼んでくれたんだけど、音楽的な趣味も合ったし、良かったよ」
__本作は、ダブ・ステップ系のベースラインを再現した楽曲群から、エイフェックス・ツインのような高速ビートの入った「Game Over (feat. Latex Quim)」や、ア・トライブ・コールド・クエストのようなジャジー・ビートにトライした「Smell The Vibe」まで、様々な楽曲で、あなたの神業的なテクニックが楽しめる作品となっていますが、技術的に一番難しいことをやっている曲はどれになりますか?
「「Game Over」は、音的には難しく聴こえるだろうけど、レコーディング自体は難しくなかった。ループを使ったりして…って、あんまり秘密を暴露したくないな(笑)。僕は、エイフェックス・ツインを何度も聴きこんできたから、音づくりを含めて、かなりスムーズに仕上げることができた。「Smell The Vibe」は、難しかったね。あの音の雰囲気をつくるのは、かなり難しかった。なかなか満足いく形に仕上がらなかったよ」
__ビートを刻むことよりも、サウンドメイキングに苦労したんですね。ちなみに、トム・ミドルトンは、曲づくりにも関わったんですか? アルバム後半には、トム・ミドルトンらしい、スペーシーなシンセをフィーチャーした曲も収録されていますが。
「彼は、いろんな意見をくれたけど、曲づくり自体には手を出さなかったよ。二回やったセッションのうちの一回に来てくれて、制作技術面、精神面のアドバイスをくれただけ。僕が自分の力でやれるところを、応援してくれただけだった。すぐに集中力がなくなって道から反れていってしまう自分を、正してくれたりとかね(笑)。彼が来てくれただけで嬉しかったよ」
__では最後に、あなたの次なる活動目標を教えてください。音楽以外では、どんな分野に進出していきたいと考えていますか。また、DVD作品などの構想はないんでしょうか?
「将来のことは、まだはっきりしてないけど、いろんなことに興味があるよ。ビデオのプロジェクトもやってる最中なんだけど、それが面白いんだ。まぁ、真面目な音楽もやってみたいし、ものすごくバカみたいなこともやってみたいね。これから始まるツアーも、フリー・フォームのすごいパーティーになると思うよ! 自分がクールだって感じることなら、何でも試していきたい。それがクレイジーなことだったとしてもね(笑)」
tanslation Nanami Nakatani
interview & text Fuminori Taniue
【アルバム情報】
BEARDYMAN
I Done A Album
(JPN) BEAT/SUNDAY BEST / BRC-286
3/2発売
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tracklisting
01. And He Saw That It Was Good
02. Twist Your Ankal (Al Jolson’s Pondering Minstrel Edit)
03. Round The Clock Conclusions
04. Game Over (Feat. Latex Quim)
05. You. . . Win!
06. Vampire Skank
07. If Only
08. Oh! (Feat Foreign Beggars)
09. Big Man
10. Smell The Vibe
11. Gonna Be Sick
12. This Turbulent Priest
13. When You See The Light
14. Blind Rabbits
15. Sativa Steps
16. Mullet Bwoy
17. U R Mine
18. Brighton Beach 04:20
19. Where Does Your Mind Go?
20. Nothing To Undo
21. Where Does Your Mind Go? (Darkstarr Diskotek Remix) – Exclusive edit for Japanese CD
【 I Done A Album sampler mini-mix 】
Beardyman ‘I Done A Album’ sampler minimix (mixed by JFB) by Beardyman
【オフィシャルサイト】
http://www.beatink.com/Labels/Sunday-Best/Beardyman/BRC-286/
http://www.beardyman.co.uk/