ART-SCHOOLのフロントマンとして、作詞作曲の大半を手がけ、独特の個性を放つ木下理樹と、同バンドのオリジナル・メンバーとして活動した後、ZAZEN BOYSを経て、現在はストレイテナー、Nothing’s Carved In Stone(以下、NCIS)で活躍するベーシスト、日向秀和。この二人が再びタッグを組み、スタートさせた新プロジェクトが、ここにご紹介するkilling Boyだ。レギュラー・サポート・メンバーに、伊東真一(G/from HINTO)、大喜多崇規(Dr/from NCIS)を迎え、昨年末にはで初ライブを行い、大きな話題を呼んでいる。
そんなkilling Boyが、このたび初のアルバム『killing Boy』を完成させた。ファンクやアフロ・ビートにも通ずる、ダンサブルなグルーヴ&ループ感、ボトム・ヘヴィーなサウンド、立体的な音像を主軸とした、シンプルながらも深みのある楽曲が堪能できる本作。パーカッションで、アヒト・イナザワ(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)が参加している点も注目だ。
killing Boy結成の経緯と、そのオリジナリティーあふれる音に隠された背景を探るべく、木下理樹、日向秀和の二人にインタビューを行った。
killing Boy
ディープなサウンドとグルーヴ感を携えた、新バンド始動!
__killing Boy結成のきっかけは、木下さんがソロ・プロジェクトをやろうとしたことだったそうですね。
木下理樹「ART(-SCHOOL)のレコーディングが終わって、僕自身、身も心もボロボロになっていたので…。一回リフレッシュした気持ちで音楽をつくりたくて、ソロでもやろっかなーと思ったんですよね」
日向秀和「理樹がソロやるって、twitterでつぶやいてるのを見て。“それなら俺がベース弾く!”って言って、一緒にやることになったんです」
__リスナーからすると、ART-SCHOOLのオリジナル・メンバーだった二人が、長い年月を経て再び一緒に音楽をやるというのは、驚きだと思うんですが。
日向秀和「僕らにとっては、至って普通ですよ(笑)。“ちょっと飲みながら、一緒に音を出してみる?”みたいな、軽い気持ちだったんですよ」
木下理樹「最初は、僕ら二人とドラムのおにぃ(大喜多崇規)で、スタジオで2、3曲セッションして。その時の音を持ち帰って聴いてみたら、尋常じゃない横ノリの心地よさがあって。“これは、バンドにした方がいいんじゃないか?”ということで、伊東ちゃんにギターを手伝ってもらって、killing Boyとしてやることになったんです」
__横ノリのグルーヴ感が、killing Boyの軸になった、背景は何なのでしょう?
日向秀和「もともとプリンスとかが好きなのが、僕ら二人の共通点なんですよ」
木下理樹「あと、ひなっち(日向)は、横ノリを出すのが、すごくウマいベーシストなので、それにフォーカスしたかったのもありますね。リズムにフックを持たせて、かつ僕の個性や、伊東ちゃんのフレーズ・センスを交ぜていったら面白いなと思ったんです」
__このたび、killing Boy初のアルバム、『killing Boy』がリリースされます。本作は、木下さんが主宰するレーベル、VeryApe Recordsからのリリースとなっていますね。
木下理樹「自分で原盤を持つだけでも、入ってくるパーセンテージがだいぶ違うんですよ。だったら、自分でやった方がいいなと思って。あとは、自主でどこまでやれるか、一回挑戦してみようと思ったのもありますね」
__アルバム全体の音について、特に意識したのはどんな事でしょうか?
日向秀和「派手な演出をしない、っていう意識がありました。ギターでグァーって持っていくのではなく、ドラムで立体図をつくって、そこにいろんな要素を重ねて、奥行きを出しています」
木下理樹「トータルコンプをかけない、ローエンドの音を切らない、という点はこだわりでした。“地味だ”って批判もあるかもしれないけど、“いやいや、これが本来カッコいい音なんだよ”って思っています」
__リズムやグルーヴ、ボトムの音を突き詰めた、シンプルだけど、ものすごく濃厚なサウンドだと感じました。ただ単に、音数を突っ込んでつくられたものとは違う、スタイリッシュさと深みがありますし。
木下理樹「まさに、そこを狙ったんです。ファンクのような横ノリの音に、シューゲイザーっぽい歌が乗ってたら、すげーカッコいいんじゃないかと思って。それを形にして、新しい物を提示したいという気持ちがありましたね」
日向秀和「ドラムだけでも成り立っちゃうような音楽を、目指したというか。本当は音楽って、そういうシンプルな要素だけでも、臨場感を出せるものじゃないですか。それをストイックにやっていく制作は、スリルがあって楽しかったですね」
__「xu」からは、アフロ・ビート的な要素を感じました。そこには、ロックとはまた異なる質の、疾走感がありますよね。
木下理樹「僕は以前から、トーキング・ヘッズが好きで。その影響もあって、トライバルっぽいパーカッションを入れたいなと思ったんです。「xu」以外にもう一曲、「Frozen Music」にもパーカッションを取り入れています。僕がやっていた、KARENってバンドのドラム、秋山さんに“全てのビートは、アフリカから始まっている”って、いろいろな音楽を聴かせてもらったんですよ。それがきっかけで、アフリカの音楽にあるような、“原始的なんだけど、すごく洗練された音”の聴かせ方が、自分でもちゃんと理解できてきたんです」
__パーカッションは、アヒト・イナザワ(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)さんが演奏しているそうですね。
日向秀和「はい。もう、あふれ出るビートが凄かったですよ(笑)」
木下理樹「NUMBER GIRLかと思いました(笑)。あ、本人か、って(笑)」
日向秀和「ディレクション大変だったよね。アヒトくんが5分ぐらいずーっと叩いてて、そのプレイバックをみんなで聴いて、“どこを使おうか?”って考えたんです」
木下理樹「どれもすごい良かったからね」
__そうだったんですね。あと、本作ではシンセ・サウンドも取り入れていますが、その音色はどのように制作したのでしょうか?
木下理樹「これは、あんまり公表したくないんですけど(笑)。GarageBandとかのチープなシンセ音って、ProToolsのローファイってプラグインをかけると、めちゃ良い音になるんです。だから、僕が弾いたシンセ音には、基本的にローファイをかけていますね」
日向秀和「「Call 4 U」のシンセは僕が弾いたんですけど、これはReasonを使ったものです」
__ところで、歌詞に関しては、木下さんらしい退廃的な世界観あふれる内容になっていますね。
木下理樹「もう、自分は自分にしかなれないんだなって思いました。個人的には、(チャールズ・)ブコウスキーとか、(ウィリアム・S・)バロウズの文学がすごく好きで、それを読んだ時の衝撃を伝えたい、っていう思いがあるんです」
日向秀和「僕は、それを聴いて懐かしい気持ちになりました(笑)。“これこれ!”って」
木下理樹「トム・ヨークやイアン・カーティスが書いた歌詞の、和訳を読んだんですけど、すごい暗いけど文学的かつシニカルで、本質を突いているんですよ。これがネイティヴな言葉で飛び込んで来たら、すごく衝撃的なんだろうなと思って。killing Boyの歌詞も、英語にする事はできたけど、それでは普段しゃべっている言語じゃなくなってしまうので。日本語で歌う事に、意味があると思ったんです」
__では最後に、killing Boyについて、今後の展望を教えてください。
日向秀和「このアルバム以降も、新曲がどんどんできているんですよ。ビジョンがどんどん生まれているので、“これは今やらないと勿体ないぞ”って思っています」
木下理樹「年内に、もう一枚リリースしたいですね。後々のアーティストにも、影響を与えられるような存在になりたいです」
interview & text EMIKO URUSHIBATA
【アルバム情報】
killing Boy
killing Boy
(JPN) VeryApe Records / UK.PROJECT / VARUK-0001
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Towerで買う
tracklisting
01. Frozen Music
02. Call 4 U
03. cold blue swan
04. xu
05. Perfect Lovers
06. 1989
07. black pussies
08. Confusion
09. Sweet Sixteen
【LIVE INFORMATION】
killing Boy tour ~Frozen Music~
3/11(金)@ JANUS(大阪)
Guest: 8otto / FRONTIER BACKYARD
DJ: DAWA(FLAKE RECORDS)
3/12(土)@ 名古屋CLUB CUATTRO(愛知)
Guest: 8otto / the band apart / mudy on the 昨晩
3/29(火)@ LIQUIDROOM(東京)
Guest: 8otto / andymori
DJ: 田中宗一郎(CLUB SNOOZER)