FAR EAST MOVEMENT『Free Wired』インタビュー


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 ジャパニーズ/チャイニーズ・アメリカンのケヴ・ニッシュ、コリアン・アメリカンのプログレス、J-スプリフという3MCと、フィリピーノ・アメリカンのDJヴァーマンからなる、LAを拠点に活動するヒップホップ・ユニット、ファー・イースト・ムーヴメント。2010年に発表したシングル、「Like A G6 feat. The Cataracs, Dev」が全米チャートNo.1をマークし、いま話題沸騰中の存在です。日本では同年に、レディー・ガガのに、オープニング・アクトとして登場したことでも知られていますね。

 そんな彼らのメジャー・デビュー・アルバム、『フリー・ワイアード』が、このたび日本盤でリリースされました。エレクトロニックな音色を前面に押し出した、まさに時代を象徴する最先端サウンドが楽しめる本作。スヌープ・ドッグ、ケリー・ヒルソン、ライアン・テダー(ワン・リパブリック)といった、トップ・アーティストが参加しているほか、日本盤ボーナス・トラックには、ロジャー・サンチェスとの共作曲「2Gether」、リル・ジョンをゲストに迎えた「Go Ape(Main)」も収録されています。

 そこでiLOUDは、1月にプロモーション来日していた、ファー・イースト・ムーヴメントの4人をキャッチ。その活躍ぶりと、メジャー・デビュー作の制作背景を語ってもらいました。


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FAR EAST MOVEMENT
破竹の勢いでトップへのぼり詰めた
エレクトロ・ヒップホップ・ユニット

――まずは、ファー・イースト・ムーヴメント結成のいきさつを教えてください。

ケヴ・ニッシュ「僕たちはもともと、高校の同級生だったんだ。放課後、LAのダウンタウンにある屋根裏部屋に集まって、パソコンを使いながら独学でレコーディングを覚えていったのさ。初めてつくったのが「Far East Movement」という曲で、これは、ダウンタウンのメいろんな人種が住んでいて、様々なファッションや音楽があるモっていう状況を歌ったものだった。今思えば、曲の出来映えは最悪だったけど(笑)、この曲をきっかけに、LAのクラブ・シーンに出ていくようになったんだ。それが、2003年頃だね」

――ファー・イースト・ムーヴメントの音楽は、ヒップホップ、エレクトロ、ハウスなどが融合した、ハイブリッドなものとなっていますよね。

ケヴ・ニッシュ「僕らはみんな、その日の気分によって25曲を選んで、プレイリストでランダムに聴くような、“プレイリスト世代”なんだよね。だから音楽をつくる時も、それと同じ感覚でやるのさ。そういった、いろんなスタイルがごちゃ混ぜになっている感覚を、スタジオで制作する時にも生かしているんだ」

――なるほど。メンバーそれぞれが、影響を受けてきた音楽を教えてもらえますか?

DJヴァーマン「僕は、スヌープ・ドッグ、2パック、ダフト・パンクかな」

J-スプリフ「アウトキャスト、スマッシング・パンプキンズ、ナズ…。SUMMER SONICに出ている人は、みんな影響源だね(笑)。もちろん、ケミカル・ブラザーズも」

プログレス「ほんと、SUMMER SONICのラインナップは、お客さんとして遊びに行きたいぐらい好きだね(笑)。あとは、マイケル・ジャクソン。これはメンバー全員そうだと思う(笑)。僕はその他に、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、サウンドガーデンにも影響を受けたよ」

ケヴ・ニッシュ「僕は、ドッグ・パウンドや、オールドスクールなものだとホール&オーツ。あとはモス・デフかな」

――エレクトロニックなサウンドに接近したのは、いつ頃のことでしょうか?

ケヴ・ニッシュ「2005〜2006年ぐらいかな。DJヴァーマンが、ダフト・パンク、ティエスト、ベニー・ベナッシなどの曲をかけるようになったのが、きっかけだね。以前、アムステルダムでライブをやった時に、エレクトロ・トラックに、LAならではのライミングを乗せてみたら、すごく盛り上がったんだ。それで手応えを感じて、オリジナル曲でも、そういったものをつくろうと考えたのさ」

――このたび、メジャー・デビュー・アルバム『フリー・ワイアード』が日本盤でリリースされました。アルバム・タイトルには、どんな意味を込めたのでしょうか?

ケヴ・ニッシュ「“フリー・ワイアード”はスラングで、“既成概念や型にハマっていないけど、良いもの”を意味する言葉なんだ。僕らの音楽って、エレクトロニックなビートに、ガンズ・アンド・ローゼズの音をミックスしたり、トランスのトラックにオールドスクール・ヒップホップのライムを乗せたりして、いろんなカルチャーをミックスしているから、この言葉はピッタリだと思ったのさ」

――同アルバムからのファースト・シングル曲「Like A G6 feat. The Cataracs, Dev」では、ビルボード・チャートNo.1という快挙を成し遂げています。この知らせを聞いた時は、どう思いましたか?

プログレス「制作している時は、自分たちが好きな、みんなで楽しくクラブで盛り上がれるような曲をつくる事しか考えていなかったから、まさかNo.1になるとは、予想もしていなかったよ。本当に嬉しかったね」

ケヴ・ニッシュ「No.1になったニュースは、ツアーでカナダのカルガリーにいる時に、Twitter経由で知ったんだ。レーベル・ヘッドのマーティンから、お祝いにドンペリを2本もらったんだけど、ライブ中に、ステージからオーディエンスに全部吹きかけちゃったよ(笑)」

一同「あははは(笑)」

――そんなエピソードがあったんですね(笑)。「Like A G6」は、どんなコンセプトで制作したのでしょうか?

ケヴ・ニッシュ「プロデューサーのザ・カタラクスとスタジオに入った時、最初の1時間は、何もアイディアが浮かばなくてさ。そこで、僕らの曲「Girls On The Dance Floor」をかけて、部屋を暗くしてパーティーみたいな雰囲気にした後、生まれたのが「Like A G6」なんだ。ダンス・ミュージック、エレクトロニック・ミュージックの要素を取り入れつつ、オールドスクールなライム、ポップなメロディーを織り交ぜた楽曲だね」

――アルバムには、「She Owns The Night feat. Mohombi」や、ロジャー・サンチェスとコラボレートした「2Gether」のように、ハウス・グルーヴが強い楽曲も収録されていますね。

ケヴ・ニッシュ「ハウス・ミュージックはもともと好きだったし、ロジャー・サンチェスとの「2Gether」は、トラックも素晴らしかったから、すごく楽しみながら制作することができたよ。機会があれば、ロジャーと一緒に、イビサでライブをしたいと思っているんだ」

――その他にも、本アルバムには、ライアン・テダー(ワン・リパブリック)、スヌープ・ドッグ、ケリー・ヒルソン、リル・ジョンといった、豪華ゲストが参加していますね。特に印象的だったコラボレーションがあれば、教えてください。

プログレス「スヌープ・ドッグと共作した、「If I Was You(OMG)」は印象的だったね。スヌープが、16小節ただラップするだけじゃなくて、積極的に曲に入ってきて、サビを歌ってくれたりと、一緒につくってくれたのが良かったよ」

ケヴ・ニッシュ「僕は、「Rocketeer」が印象的だったな。これは、僕らとザ・ステレオタイプス、ブルーノ・マーズ、ライアン・テダーの、4組によるコラボレーション曲なんだ。ライアンはビデオにも登場してくれたし、楽曲にも彼らしいカラーを入れてくれたから、とても嬉しかったね」

J-スプリフ「レーベル・メイトでもある、フランクミュージックとの制作も面白かったね。「Fighting For Air」のレコーディングでは、彼にUKからLAに来てもらったんだ。この曲は、恋をした時の、胸が詰まるような思いを歌った楽曲だよ」

DJヴァーマン「僕は、リル・ジョンとの「Go Ape(Main)」だなぁ。これは、アルバム本編を完成させた時に、“何か足りないよね?”って話になって、盛り上がるパーティー・ソングをもう一曲つくるということで、生まれた楽曲なんだ」

――アルバム『フリー・ワイアード』を、リスナーにはどう楽しんでほしいですか?

ケヴ・ニッシュ「一つのジャンルにとらわれず、広い視野を持って聴いてくれたら嬉しいね!」

interview & text EMIKO URUSHIBATA


【アルバム情報】

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FAR EAST MOVEMENT
Free Wired
(JPN) Delicious Deli / UICV-1012
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