露崎春女 『Now Playing』 インタビュー


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 ‘95年にメジャー・デビュー、’01年~’08年にかけてはLyricoという名義で、日本のR&Bシーンで活躍してきた、露崎春女。マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンを彷彿とさせる、その表現力豊かな歌声から、ボーカリストとしてのイメージが強い彼女ですが、実は作詞作曲からプロデュースまでこなす才人です。
 そんな彼女が、通算10作目となるオリジナル・アルバム『Now Playing』をリリースしました。BACH-LOGIC、Nao’ymt、松原憲といったJ-POPシーンのヒット・メイカーから、miu-clips、ROOT SOUL、RUDEJACKといった新鋭陣、はてはクラブ・ミュージック・ファンにはおなじみのMark de Clive-Loweまでが参加したこの新作、一曲一曲が異なる表情を見せる、カラフルな内容となっています。先行配信されたデジタルEP『Sacrifice』が、iTunes R&B / ソウルチャートで1位を記録したのも話題でしょう。
 2008年の『13 years』で、今までの集大成をした彼女。新たなる第一歩は、どんな踏み出し方をしたのでしょうか? 対面インタビューで探ってみました。


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露崎春女
10枚目のオリジナル・アルバムで生まれ変わった
ジャパニーズ・R&Bシーンのパイオニア

――このたびリリースされる『Now Playing』は、久々のフル・オリジナルアルバムとなるわけですが、そこにはどんな意気込みがありましたか?

「レーベルも変わって、今作から純粋に露崎春女という名前に戻したので、今までのやり方にとらわれずにやっていこうというのはありましたね。もう一回デビューみたいな感覚でした」

――サード・ステージに突入という感じでしたか?

「サード・ステージ(笑)。たしかに、そうでしたね」

――露崎さんは、作詞作曲のみならずプロデュースまで自分でできるわけですが、今作で、すべて自分一人でやろうというアプローチをとらなかったのは、なぜですか?

「前のアルバムで、けっこう自分でやって、気が済んだっていうのは、ありますね。あと、他の人に曲を書いたり、プロデュースをするようになって、自分のいいところを客観的に見る目線ができたっていうのがありますね」

――今作の制作は、いつ頃から始めたんですか?

「去年の春ぐらいからですね。つくり始めてから、リリースまで1年です。レコーディングは、半年ぐらいでバァーっとやりましたけど」

――アルバム・タイトルを『Now Playing』にしたのは、なぜですか?

「自分の新曲を、iPodで聴いていたら、そこに“Now Playing”って書いてあったんですよ。“どうしよっかな、タイトル?”って思っていたんで、“これだ!”ってことになったのが、きっかけですね。アルバムは、いろんなクリエイターとつくったので、バリエーションがあって、それをひとくくりにする言葉が全然浮かんでこなかったし、一曲づつ聴いてもらえる感じでしたから。あと、みんなに“今聴いているのはコレだよ”って言ってもらえるようなアルバムになって欲しいなっていう思いも込められています」

――ということは、最初の段階で、アルバムにコンセプトやテーマのようなものは、特になかったのでしょうか?

「タイトルにはなかったですけど、アルバムには、“80’sの感じで、新しいクリエイターとつくっていこう”という方向性はありました」

――具体的に80’sで、露崎さんが通ってきたのは、どういう音ですか?

「マドンナ、マイケル・ジャクソン、カルチャー・クラブ、ヒューイ・ルイス & ザ・ニュース、スターシップ、ナイト・レンジャーとか、そのへんです。’85年のグラミー賞授賞式で、初めてアメリカのエンターテイメントを見て、それに衝撃を受けましたね。“かっこいい~、ミュージシャンになる!”って、そのとき小学校5年生で思って、ナイト・レンジャーのブラッド・ギルス・モデルのギターを買いましたね(笑)」

――その頃のサウンドを、新作ではアップデートして再現しようとしたのでしょうか?

「パッと聴きでは分からないと思いますけど、ネオンみたいな感じの音色を使ったり、感覚的なところでは、そうですね」

――今作には、BACH-LOGICさんやNao’ymtさん、松原憲さんなど、トップ・プロデューサー陣が参加していますが、その人選は露崎さんが行ったんですか?

「基本的にはそうですね。新しい人たちに関しては、スタッフからも提案がありました」

――他の作詞家や作曲家に、制作を依頼するときは、細かく注文をつけましたか?

「たとえば「Sacrifice」では、コンセプトを言って、上がってきたトラックを聴いて、“このトラックでいい”って感じだったので、そんなに注文しなかったですね」

――「Sacrifice」はリード曲になっていますが、この曲はどういう過程で、でき上がったのでしょうか?

「コンセプトとミッド・バラードみたいな感じっていうのを(作曲家に)伝えて、トラックが上がってきて、“この曲は、わたしがメロディー書かないほうがいい”と思ったので、メロディーも書いてもらって、“歌詞どうする?”ってなったときに、また“わたしが書かないほうがいい”と思ったので、それもふって、みたいな感じでした。トラックが来た時点で、それがわたしにとって新しい世界のものだったので、だったら自分のフレイバーを入れ込もうとするよりは、全部わたしじゃない人がつくったところに乗っかるのが新鮮でいいかなと思ったんです。だから、レコーディングが終わるまで、どういう感じに仕上がるのか、全然わかんなかったです」

――『Now Playing』は、実に多彩なアルバムになっていますが、全体としてこのような仕上がりを意図していましたか?

「ここまでになるとは思わなかったですね(笑)。いろんな人に(詞曲を)頼んでるんで、そういう風になるだろうっていうのはありましたけど。半分は自分の手から離れているような感覚だったので、すごいドキドキでした」

――このアルバムの中で、特に思い入れの強い曲はありますか?

「全部ですけどね~。「Bye Bye Gloom」とか、ここまでロックンロールって感じの曲をやったことはなかったんで、そういう意味じゃあ“やったー!”みたいな感じはありますけどね。“これやりたかったよ!”っていうのもあって。あと、「EMERGENCY!」とかも、おもしろい雰囲気でできたかな」

――新作は、リスナーに、どのように楽しんでもらえたらよいと思っていますか?

「“Now Playing”にしてくれたら嬉しいですよ、ホントに。音楽では“楽しい”ってことが、一番大事だと思っているんで、楽しんでもらえたらなと思います」

――露崎さんを、長きに渡って音楽制作に駆り立てている原動力は何ですか?

「“露ちゃんの歌を聴きたいよ”って言ってくれる人の存在ですね。ライブやCDを楽しんでくれる人がいるのが、励みになっています」

――アーティストとして心がけていることは、どんなことですか?

「常に新しいことにチャレンジして、新しい音と自分をぶつけて、壊しては新しいものをつくっていくという精神は、忘れないでいたいなと思ってます」

――今後の予定、やってみたいことなどありましたら教えてください。

「ツアーをやるので、このアルバムをライブでどう表現していくのかっていうのが、やりたいことっていうか課題ですね。あとは、他のアーティストを引き続きプロデュースしていきたいですね」

Interview & text TOMO HIRATA


【アルバム情報】

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露崎春女
Now Playing
(JPN)Yamaha Music Communications / YCCW-10127
HMVでチェック

【LIVE INFORMATION】
NOW PLAYING TOUR 2011
6月24日(金) 大阪 なんばHATCH OPEN 18:00 / START 19:00
6月25日(土) 名古屋 THE BOTTOM LINE OPEN 17:30 / START 18:00
6月27日(月) 東京 赤坂BLITZ OPEN 18:00 / START 19:00

【オフィシャルサイト】
http://www.harumitsuyuzaki.com/

【VIDEO】

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