『Gang Gang Dance』(’04)、『God’s Money』(’05)、といった作品を通じてカルト的人気を獲得してきた、ニューヨーク出身のアヴァンギャルド・ポップ・バンド、ギャング・ギャング・ダンス。’08年に、ロック、民族音楽、テクノ、ヒップホップ、ダブといったサウンドをポップかつディープに融合してみせた『セイント・ディンフナ』を発表するや、一躍世界から注視される存在へと駆け上がった実力派です。日本でも人気が高く、フジロックや単独ツアーで、そのサイケデリックなサウンドを披露し、話題をさらっています。
そんな彼らが、4AD移籍後初となる待望の最新アルバム『アイ・コンタクト』を、5/25にリリースします。リジー(Vo/Perc/Effects)、BDG(Key/Synth/Perc/Effects)、ジョシュ(G)、新メンバーのジェシー(Dr/Perc)、タカ(Hype/Vibe/Spirit)という新体制で制作された注目作です。そのサウンドは、トライバルなリズム、コズミックなシンセ、エフェクティブなギターが、より美しく、よりオーガニックに結合した、カラフルなもの。リード・トラック「Glass Jar」を筆頭に、神秘的な音世界に磨きがかかった内容となっています。
見事な完成度を誇る、新たなるギャング・ギャング・ダンス・サウンドが詰まった『アイ・コンタクト』。本作の内容について、メンバーのリジーに話を聞きました。
GANG GANG DANCE
マジカルでサイケデリックな音世界に磨きをかけた、
NYが誇る実力派アヴァンギャルド・ポップ・バンド
__前作『セイント・ ディンフナ』(’08)は、あなた達の存在をより幅広いリスナーに広めた、ヒット作となりましたね。前作は、あなた達にとってどのような意義のあるアルバムでしたか?
「それぞれのアルバムには、それぞれの立ち位置やサウンドっていうものがあると思うわ。『セイント・ ディンフナ』を出した頃って、バンドとして本当に迷いの多い時期だったの。レコードをつくるお金がもらえない中で、自分達の資金だけでなんとか制作しようとしていたアルバムだったし、本当に作品をイチから全部やり直すような心境でもあったわね。あのアルバムでは、本当にたくさんの音源をボツにしたものよ(笑)。でもその結果、本当に面白い、ポジティブな作品が完成したと思う。そして、それが未来へと続くドアを開けてくれることになった。変なバンドとして、どんどん変な音づくりに進んでいけるようになったっていうかね(笑)」
__今作『アイ・コンタクト』は、前作から約3年ぶりとなりますが、曲づくりはいつ頃から始めたのでしょうか?
「このアルバムは、’09年頃からつくり始めたわ。ツアーをすごくたくさんやっていたから、まずは砂漠に向かうことにした。曲も書きたかったけど、バケーションも必要だということでね。砂漠で何ができるのか、見当もつかなかったけど(笑)。それで、機材を全部まとめて、ジョシュア・ツリーのすぐ外くらいにある町に、車で向かった。砂漠の町よ」
__カリフォルニア州南東部の、ジョシュア・ツリー国立公園がある辺りですね。
「で、そこに1ヶ月半滞在して、レコーディング作業を始めたの。でも、途中でボアダムズから面白いオファーをもらって、どうしてもそのプロジェクトに参加したくなったからニューヨークに戻ることにして、最終的にはウッドストックに行って、もうちょっとちゃんとしたスタジオで再レコーディングしたわ。ミックスは、自宅に戻ってからやったんだけどね。正直言って、私達は焦って物事を進めるのが大嫌いなのよ。私達にはルールがあって、なんでも、すごくゆっくりなの(笑)」
__分かりました(笑)。では、遂に完成した『アイ・コンタクト』の内容について教えてください。まず、アルバム全体のテーマは、どのようなものでしたか?
「自分達のサウンドというものに集中する、ってことだったわ。もちろん、毎回自分達の音に集中して作品をつくってはいるんだけど、このアルバムでは、まるで聴いている人が私達とアイ・コンタクトを取っているような、すごくリスナーと向きあえるサウンドにしたかった。結果的に、毎作全く違うサウンドになっているけど…」
__音楽的には、あなた達らしいトライバルで神秘的な音世界を、より緻密に、繊細に、美しく発展させた内容になっているように感じました。音づくりで特にこだわったのは、具体的にはどのような部分でしたか?
「ただ、すごく自然なサウンドにしたいって思っていたわ。オーガニックなね。私達のサウンドって、すごく変な部分もあるけど、ポップな部分もあると思うの。うまく言えないけど…お湯が沸く音を入れたり、私の声が男の人みたいに聞こえるエフェクトをかけたりとか…。でも、最近のポップ・ソングって、そういう実験的な要素を使ったものが多いと思う。私は、R&Bやヒップホップをすごく聴くんだけど、そういう影響から、今回は自分のボーカルでいろんな実験をしたわよ(笑)」
__ライブなどを通じて既に話題となっていたリード曲「Glass Jar」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?
「説明するのが難しいんだけど、基本的には輪廻転生のことを表現した曲ね。誰かが亡くなると、また違う形で戻ってくるっていう…。曲のインスピレーションになったのは、曲中で歌っているような人々だったんだけど、すごく深い感情について歌っている曲よ」
__「Glass Jar」と「Adult Goth」には、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティのメンバーとしても活躍しているティム・コウが、ベースで参加していますね。どういう経緯で参加してもらったんですか?
「私達には、タカっていうスピリチュアル・ガイドの仲間がいるのよ。日本人なんだけど、みんなベイビーって呼んでるわ。で、時々ステージ上で旗を振ったりしてくれるの(笑)。彼は、バンドのスピリチュアル・アドヴァイザーね。曲を滑らかにしてくれたり、空間の浄化をしてくれる。で、ベイビーはティム・コウと仲がよくて、そのつながりで曲に参加してもらうことになったのよ」
__では、アレクシス・テイラー (ホット・チップ)をフィーチャーした「Romance Layers」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?
「この曲は、ずっと気に入っていたんだけど、なかなか完成しないでいたものね。で、私は、アレクシスのアルバムをすごく気に入っていたから、その曲にR&Bっぽいバック・ボーカルを入れて、彼に送ってみたのよ。そこにメイン・ボーカルを入れてくれたら嬉しいなって思って。そうしたら、彼はマーヴィン・ゲイのように滑らかなボーカルを入れてくれて、すごく気に入ってるわ(笑)。すごくクオリティの良い曲になったと思う」
__分かりました。では最後に、ギャング・ギャング・ダンスの次なる活動目標を教えてください。
「マイアミで次のアルバムをつくることかな(笑)。今度はトロピカル・バンドになるかも(笑)。あとは、6月に日本でやるショーを、すごく楽しみにしてる(編注:残念ながら公演中止となりました http://www.contrarede.com/ggd.html )。日本のことを、すごく心配してるのよ。少しでも、何か日本の力になれたらいいって思ってるわ」
tanslation Nanami Nakatani
interview & text Fuminori Taniue
【アルバム情報】
GANG GANG DANCE
Eye Contact
(JPN) P-VINE / PCD-93393
5月25日発売
HMVでチェック
tracklisting
01. Glass Jar
02. ∞
03. Adult Goth
04. Chinese High
05. MindKilla
06. ∞ ∞
07. Romance Layers
08. Sacer
09. ∞ ∞ ∞
10. Thru and Thru
11. Bond
【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/gang-gang-dance
http://www.ganggangdance.com/
http://nowarforged.blogspot.com/
【VIDEO】