DIGITALISM『I LOVE YOU DUDE』インタビュー


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イェンス(Jence)とイシ(Isi)からなる、ドイツ、ハンブルク出身のエレクトロ・デュオ、デジタリズム。フランスの人気レーベル、KITSUNÉからリリースしたシングル3連発、「Idealistic」(’05)、「Zdarlight」(’05)、「Jupiter Room」(’06)で一躍脚光を集めた彼らは、デビュー・アルバム『デジタル主義』(’07)と、同作に収録された「Pogo」のヒットで、ニュー・エレクトロ・シーンの中心的存在へと駆け上がった人気アーティストです。昨年11月には、配信限定で久々のニュー・シングル「Blitz」を発表。今年1月には、DJツアーで6度目の来日を果たしています。

彼らが、待望のニュー・アルバム『アイ・ラヴ・ユー・デュード』を、6月15日に日本先行でリリースします。イェンスが、“地に足の着いたアルバムにしたかった”と語る、新たなデジタリズムの音世界を表現した注目作です。気になるその内容は、彼らならではのキャッチーでダンサブルなサウンドはそのままに、表情豊かな楽曲群が次々に展開していくもの。リード・シングル「2 Hearts」を筆頭に、飛躍的成長を遂げた彼らのソングライティング・センス、サウンド・プロダクションが楽しめる作品となっています。

よりポップに、よりダンサブルに生まれ変わったサウンドが詰まった『アイ・ラヴ・ユー・デュード』。本作の内容について、イェンスに話を聞きました。なお、本作の日本盤ジャケットは、メンバーの意向により“Pray For Japan”の特別仕様となっています。また、彼らは、フジロックへの出演、さらに10月には東名阪ツアーが決定しています。


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DIGITALISM

華麗なる音楽的成長を果たした、
人気エレクトロ・デュオの新たなるサウンド・マジック

人間らしくて、フレンドリーな最新作

__早速ですが、前作『デジタル主義』(IDEALISM/’07)から約4年ぶりとなる、最新アルバム『アイ・ラヴ・ユー・デュード』について教えてください。今年初頭にDJで来日した際、あなたは取材時に“自分達の気分次第で、どうなっていくか分からない状態だ。もうちょっと考えて、いろいろ見極めたいと思っている”って言っていたんですけど、遂にリリースの時を迎えました。まず、今作の仕上がりは、完璧なものとなりましたか?

「イエス!そう言えば、日本でそんなこと言ったね(笑)。でも面白いことに、あの後スタジオに戻ってアルバムを完成させるのにかかった時間は、2ヶ月だけだったんだ。たったの2ヶ月だよ(笑)。実際作業にとりかかったら、それで充分だったんだよね。今まで書いてきた曲を、全て書き直していったら、2ヶ月で自分達がしっくりくる曲に仕上がって…コレだ!って思えた。結果的に制作期間は1年くらいだけど、個人的にこのアルバムの本当の制作期間は、その2ヶ月間だったといってもいいんじゃないかと思ってる。その前は、制作に取りかかるための準備期間って感じかな」

__今作を最終的にまとめるにあたって、特に見極めたかったのはどんな部分だったのでしょうか?

「自分でも分からないんだよね(笑)。俺達のリリースする作品は、自分達が心の底から満足できるものでなければならないってことだけ頭にあって…あの時もそれが何なのかよく分かっていなかったけど、とにかく満足できてなかったんだ。だから、作品がちゃんと完成するまでには、まだまだ時間がかかるだろうって予想してたんだ。でも制作に戻ったら、魔法みたいにスムーズに進んじゃって、2ヶ月で“パーフェクト!”って思える作品ができた。ビックリだよね。オーストラリアのビーチでリラックスしたり、日本に行ったりして、気分転換できたのが良かったのかも。その間に、ソングライティングについていろいろ学んだし」

__アルバム全体の方向性としては、“前作のテーマが‘宇宙’だったとすると、最新作のテーマは‘宇宙から地球に帰ってきた’って感じ”だと言っていましたね。あなた達は、もともと今作をどのようなテーマ、コンセプトのアルバムにしようと思い描いていたんですか?

「“地球に帰ってきた”っていうのは、決して自分達が宇宙から受け取ったアドバイスを伝えるため戻ってきた、って意味じゃないよ(笑)。“もっと地に足の着いたアルバムにしたかった”って意味なんだ。なんていうか、今回のアルバムは、より人間らしいアルバムなんだよ。それがコンセプトさ。自分達と周りの人々とのつながり、ってことだね。俺たちは、ツアーで本当に様々な場所を旅してきけど、その旅の中で、最高の人々と出会ったんだ。しかも、世界中でね。今回は、そういう人達に囲まれてアルバムをつくったから、自然と作品のテーマが変わっていって、最終的には、それがコンセプトになった。コンセプトとかテーマって、最初に考えはするけど、アルバムが完成する頃にはいつも変わってるんだよね(笑)」

__ちなみに、当初の作品テーマは何だったんですか?

「最初は、なんとなくだけど、旅っぽいテーマのアルバムをつくろうと思ってた。あと、“今を生きよう”っていうメッセージを持たせようともしていたかな。でも、思ったよりもリラックスした感じに仕上がったんだ。旅とか、そういうことよりも、もっと身近な感じ」

__もっと現実的な内容ということですね。

「そうそう。とはいっても、内容は自分達自身についてじゃないけどね。一般的な人々の生活やつながりのことだよ。いろいろ考えたんだけど、レコードをつくっていくうちに、いろんなものが反映されていって…スカンジナビアの、あのピュアさも、途中で取り入れたくなったりしたね。あのメロディックな感じに影響されたんだ。このような仕上がりになるまでには、たくさんのステップがあったんだ」

__では、そんな今作のタイトルを、“アイ・ラヴ・ユー・デュード”(I Love You, Dude)にした理由について教えてください。

「ファースト・アルバムのイメージを壊したかったから、だね。デュオとして成長したこともデジタリズムの一部分だと思ってるから、前作との関係性よりも、良い意味で変化して、成長した自分達を表現したかったんだ。前作の時は、ただスタジオで適当にレコーディングして、それをリリースしたって感じだったからね。あの当時、俺達はまだ何も分かっていなかった。でも今はベテランなんだ。だからこそ『デジタル主義』とは違う、何か新しいものをつくりたかったし、『デジタル主義』と同じようなアイデアは使いたくなかったんだ。で、このタイトルは、オーストラリアで思いついた(笑)。あそこでは、“I Love You, Dude”って言葉が飛び交ってた。そのリラックスした雰囲気というか…そのリラックス感のようなものが、このアルバムのちょっとしたメッセージでもあり、曲のテーマでもあるから、頭から離れなくてね。人間らしくて、フレンドリーで、さらっと言える言葉だから、素晴らしいなって思ったんだよ」

ソングライティングにこだわった曲づくり

__音楽的には、前作以上に多様な楽曲群が楽しめる、良い意味でキャッチーなサウンド、メロディーの詰まった作品になっていますね。今作の曲づくりで、特にチャレンジしてみたかったとは何でしたか?

「ソングライティング! 前作の時は、曲の書き方をほとんど知らなかったんだけど、「Pogo」をつくっていた時に段々と把握し始めたんだ。あの時、デジタリズムの新しい方向性が見えた!って感じがしたんだよね。あれはナイスだった。だから、このアルバムは「Pogo」の延長腺上にある作品とも言えるかもしれない。「Pogo」の時から、しっかりとした曲らしい曲をつくりたいって思うようになったんだ。というわけで、今回のアルバムには、前作よりももっと曲らしい曲が入っている。デジタリズムにはテクノのバックグラウンドがあるから、ちょっと激しい部分もあるけど、“しっかりとしたメロディーを持った、曲らしい曲”っていうのが、このアルバムのポイントなんだ」

__なるほど。

「日本から帰った後の2ヶ月で、そこをさらに深く掘り下げたんだ。『デジタル主義』には、ちゃんとした曲と言えるトラックは、たった2つしかなかった。「Pogo」と「I Want I Want」の2つ。でも、その2曲も、曲っぽさ半分、ビート半分って感じで、50%しか曲らしくなかった。だから、今回はそれを100%にしたかったんだ。俺達が今回一番やりたかったことは、それだね。今回のレコーディングは、本当に真剣だったよ。前作の時は、質の悪いマイクでボーカルを録音しても、全く気にならなかったけど(笑)。俺達、まだ若かったんだ(笑)。若かったし、何に対しても反抗的で…若い時って、みんなそうだよね?」

__その通りです。

「でも、俺達はちゃんと成長して、大人になれたから、今回はいろんなことを放置せずに、きちんと目標を達成したくてたまらなかった。だから、曲っぽさが99%では、納得できなかったよ。やるなら100%を目指したいと思った。そういう心意気って、前作の時には持ち合わせてなかったよ」

__今作のリズム/ビート面に関しては、ある種ロボティックな感じがあった前作よりも、全体的によりグルーヴィーものになったと感じました。この点に関しては、何か意識していたことはありますか?

「特に意識してなかったけど…俺達の場合、アルバムをつくってる時の気分とか、自分達の好きなものが、作品に反映されるんだ。例えば、その時もしレゲエにハマってたとしたら、レゲエ・アルバムができ上がっちゃうわけ(笑)。だから今回は、たまたまグルーヴィーなサウンドが好きだったんだろうね。だからグルーヴィーな要素が入ってるのさ。曲の中に、そういう要素がミックスされているんだ」

__どういうことですか?

「何ていったらいいかな…すごく冷たいビートの上に、温かいグルーヴのベースラインが乗っかってる感じというか、21世紀のサウンドに18世紀のサウンドがトッピングされているような感じというか…。とにかく、『デジタル主義』みたいなものは、もうつくりたくなかったね。ああいうサウンドには、実はちょっと飽きちゃっていて…もう必要ないんだ。もう誰でもやってることだし、どこにでもあるサウンドだしね。今の俺達は、もっと自分達のテイストを求めている。自分達が変わったことをアルバムに反映させたかったから、自然とそうなったんだ。今までとはサウンドが違うんだよ」

__ちなみに、今作の制作期間中は、どんな音楽にハマっていたことが多かったんですか?

「いろいろ聴いてたけど…スタジオにいる間は、ほとんど他人の音楽は聴かなかったよ。いつもそうなんだけど、スタジオの中にはイヤというほど音があふれてるからね。でも、スタジオの外で音楽を聴くのは大好きだ。本当に幅広い音楽を聴いていたから、いろいろありすぎて選べないけど…あえて言うなら、やっぱり’80年代の音楽かな。ゲイリー・ニューマンとかね。’80年代の未来的な音楽、とでもいったらいいのかな。まぁ、このアルバムには、ゲイリー・ニューマンっぽい曲もあれば、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンっぽい曲もあるんじゃないかな。とにかく、ポイントはメロディーさ。だから、サウンドトラックっぽいアルバムに仕上がってると思う。アルバム制作中には一切聴かなくても、俺達が聴いてきた音楽というものは、作品に自然とにじみ出てるんだろうね」

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バラエティー豊かな、自慢の楽曲群

__各楽曲についても、少し話を聞かせてください。まず、今作には、ジュリアン・カサブランカス(ザ・ストロークス)との共作曲「Forrest Gump」が入っていますね。彼とのコラボレーションが実現した経緯、最終的にこの曲名として完成した経緯について教えてください。

「あんまり大した話はないんだよ。最初、俺達はもっとロック調の曲をつくってたんだけど、ちょっとツテがあったんで、知り合いを通じてジュリアンにそれを送ったんだ。参考に、彼のメロディックなアイデアが欲しくてね。ジュリアンは、ちょうど新作のプロモーションで忙しくしていたから、結局直接会うことができなかったけど、なんと彼は、その曲にギターとかいろいろな要素を乗せたデータを送り返してきてくれて…その出来が最高だったんだ。送り返してくれた時、彼は“時間がなかったから、こんなことしかできなくて本当にゴメン!”って言ってきたんだけど、全然そんなことなくて、むしろ素晴らしかった(笑)。で、それをさらにミックスしたりしていって、この曲ができたんだ。“フォレスト・ガンプ”っていう曲名は、このアルバムの曲の中でも、一番納得のいくタイトルだと思う(笑)。この曲のテーマは、果てしなくずーっと走り続けることだからね。何かに夢中だったり、失われた自己を探し求めているのならば、とにかく止まることなく突っ走れ!っていうのがコンセプトなんだ。映画のフォレスト・ガンプみたいに(笑)」

__シングル「2 Hearts」は、まさに「Pogo」をさらに進化、発展させたかのような曲ですね。この曲は、どのようにして誕生したものですか?

「この曲には、たくさんのバージョンがあったんだ。一番最初のバージョンは、もう何年も前に、ライブ・ショーの中ででき上がったものだったね。インストゥルメンタルだけだったけど、インディーっぽくて、鳥肌がたつような雰囲気を持ってたから、すごく気に入っていて、何度も何度も手を加えて、書き直していったよ。コードを変えたり、ドラムを変えたりね。で、大体でき上がってはいたんだけど、日本から帰ってきた後、もう一度書き直して完成させたんだ。本当に長い道のりだったよ(笑)。この曲は、アルバムの中で一番最後に完成した曲になるね」

__そうなんですか。

「みんな、“最後に完成した曲はベスト・ソングになる”って言うけど、面白いことに前回は「Pogo」で、今回は「2 Hearts」だったね。両方とも、本当にいい曲さ。この曲は、ある二人の友情について歌ったものなんだ」

__「Circles」も、インディーとエレクトロが融合した、とてもデジタリズムらしい楽曲に仕上がっていますね。この曲は、どんなアイデアから完成したものですか?

「この曲は、自分達のオーディオカセットについて書きたくて、つくったんだ。’90年代初期の、お気に入りラジオ番組が録音されたカセットなんだけどね。最終的には、過去に過ちをおかしたり、何かを見失ったとしても、いつでもふり返って、やり直して、今をベターにできる、っていうのがテーマになった。曲の中にあるループにとらわれて、ちょっとイライラするかもしれないけど(笑)、これも俺が気に入ってる曲のひとつだね。ゲイリー・ニューマンっぽくて、エネルギーに満ちた曲さ」

__また今作には、「Reeperbahn」「Antibiotics」「Miami Showdown」といった、ちょっとダークなムードのトラックも収録されていますね。

「曲をつくっていく途中にできたサウンドの雰囲気で、自然とこういう方向性になったんだけど…例えば「Miami Showdown」は、この曲をつくっている途中で、“なんとなくマイアミ・バイスっぽいね?”って話になって、その流れで結果的にこうなったんだ(笑)。マイアミの海岸にいる、ドラッグ・ディーラーとか、マフィアとか、その危険な雰囲気とか、そういう感じ(笑)。だからタイトルが「Miami Showdown」なんだよ。…それって、やっぱり’80年代の音楽にインスピレーションを受けているってことになるのかな? マイアミ・バイスは’80年代のドラマだしね」

__あなた達の地元、ハンブルグ出身のシンガー、Catheをフィーチャーした「Just Gazin’」も、新たなサウンドを打ち出した楽曲になっていますね。

「これは、ドリーミーな感じの曲をつくりたかったんだ。ドリーミーで、田舎の雰囲気を感じさせる曲だから、女性ボーカルがいいだろうってことになったんだけど、そんな時にCatheと出会ったんだ。彼女は、本当に素晴らしいシンガーなんだよ。ママス&パパスのキャス・エリオットみたいな声でね。クリアだけどスモーキーというか…。その歌声が、この曲のイメージにピッタリだったんだ。メチャクチャ良い曲に仕上がったよ」

__では最後に、今年のフジロックでは、どんなパフォーマンスをする予定なのか教えてください。

「とりあえず、最高のショーになることだけは確かさ! 楽しみにしてるんだ。前回フジロックでやったのは、もうかなり前だからね(編注:’06年のことです)。今回はドラマーもいるし、このアルバムからの曲ももちろん披露するし、本当に楽しいショーになるはずだよ。それに、日本のみんなの顔を見たいんだ。先日の震災で、大変だと思うからね…。みんなに、少しでも元気を与えられたらいいなって思っているよ。少しでもいいから、俺達の音楽を聴いて、日本のみんなが笑顔になってくれたら嬉しいよ!」

interview & text Fuminori Taniue
translation Miho Haraguchi


【リリース情報】

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DIGITALISM
I LOVE YOU DUDE
(JPN) EMI / TOCP-71111
6月15日 日本先行発売
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tracklist
01. ブリッツ / BLITZ
02. 2ハーツ / 2 HEARTS
03. サークルズ / CIRCLES
04. ストラトスフィア / STRATOSPHERE
05. フォレスト・ガンプ / FORREST GUMP
06. レーパーバーン / REEPERBAHN
07. スリープウォーカー / SLEEPWALKER
08. アンティバイオティックス / ANTIBIOTICS
09. ジャスト・ゲージン / JUST GAZIN’
10. マイアミ・ショーダウン / MIAMI SHOWDOWN
11. アンコール / ENCORE

【オフィシャルサイト】
http://emij.jp/digitalism/
http://thedigitalism.com/

【VIDEO】

【DIGITALISM来日公演詳細】

大 阪 10/5 (水) BIG CAT
名古屋 10/6 (木) クラブクアトロ
東 京 10/7 (金) SHIBUYA-AX

総合問合せ:03-3444-6751(SMASH)
http://smash-jpn.com
http://smash-mobile.com

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