Justice『Audio, Video, Disco.』インタビュー


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「Never Be Alone(Justice Vs Simian)」「Waters of Nazareth」「Let There Be Light」「D.A.N.C.E」といったアンセムを送り出し、シーンを象徴する存在へと駆け上がったフレンチ・エレクトロ・デュオ、ジャスティス(Justice)。
彼らが来週10/26に、『†(クロス)』(’07)以来となる待望のオリジナル・アルバム、『オーディオ・ヴィデオ・ディスコ』(Audio, Video, Disco.)をリリースします。ボーカル・パートにアリ・ラヴ(Ali Love)、モーガン・ファレン(Morgan Phalen/ Diamond Nights)、ヴィンセント・ヴェンデッタ(Vincenzi Vendetta/ Midnight Juggernauts)を起用し、クロスビー、スティルス&ナッシュへのトリビュートだという「Ohio」や、ブライアン・メイへのトリビュートだという「Brianvision」、さらに「Canon」「On’n’on」「New Lands」「Audio, Video, Disco」「Civilization」などなど、驚きの展開をみせる楽曲群が詰まった注目作です。

ここではそんな最新作『オーディオ・ヴィデオ・ディスコ』の内容と音楽性について、ジャスティスの二人、グザヴィエ・ドゥ・ロズネとギャスパール・オジェ(Xavier de Rosnay & Gaspard Auge)に話を聞いてみました。


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JUSTICE

フレンチ・エレクトロのイノベイターが展開する、驚きの音世界。

__最新作『オーディオ・ヴィデオ・ディスコ』の制作は、どのような形で進めていったのでしょうか?

グザヴィエ・ドゥ・ロズネ「実際にスタートしたのは’10年の2月で、そこから8月までは、スタジオのセッティングに時間をかけたんだ。なぜこんなに時間がかかったのかというと、僕らはどういう音のアルバムにしたいのか、イメージはしっかりと頭の中にあったんだけど、どういう風にすればそれが実現できるのか試行錯誤していたらだね。そして9月から実際に曲づくりを始めて、レコーディングして、今年の6月に制作が終わったよ。だから、アルバムの制作期間自体は短いんだ」

__どういう音のアルバムにしたかったんですか?

グザヴィエ「いくつかのキーワードが挙がっていたんだ。ただ気を付けてもらいのは、言葉だけを見ると、あるイメージが浮かぶかもしれないけど、具体的にそういった内容のアルバムではないということだね。で、僕らの頭の中に会ったキーワードとは、“中世”、“田舎”、“ゆったり”、“アグレッシブじゃないけど男らしい”、これは要するに、マッチョでバカ騒ぎをするものではなく、でも男らしい要素があるって意味だよ。あとは、“テクニカルじゃない”だね。すごくシンプルで、家庭的なものをつくりたいってイメージがあったんだ」

__“中世”、“田舎”、“ゆったり”、“アグレッシブじゃないけど男らしい”、“テクニカルじゃない”、ですか。

グザヴィエ「で、曲づくりに関しては、フレージングなどを徹底的に凝ったものにしたかった。そして、プロデュースしすぎないものをつくりたかったね。凝ったものをプロデュースしすぎると、複雑な曲になってしまうから、シンプルなプロデュースを施したアルバムにしたかったんだ」

__いくつもキーワードがあったんですね。

グザヴィエ「たしかに、いろんな言葉が出てきたけど、言ってしまえば全て同じイメージを示してるんだけどね」

__今作では、ギターなど、あなた達自身で演奏したパートも多く取り入れたそうですね。どうしてこのようなアプローチをとったんですか?

グザヴィエ「たしかに楽器も演奏したけど、このアルバムはコンピュータを使った作品なんだ。ギター・サウンドっぽいけどキーボードで出した音だったり、シンセだと思うような音が実はギターで弾いたものだったり、いろいろあるけど。ともかく、僕らが今回こういうアプローチをしたのは、前作よりもより軽い音に仕上げるため、音と音の間にスペースを与えるためさ。ぎっしり詰まっているような音にはしたくなかったんだ。ファーストの時は、本当に細かい部分までサンプリングを多用したんだけど、今回はサンプリングを使っていないから、自分達の求めていた“不安定なサウンド”になったね。どういうことかというと、ポンと触ると全て崩れてしまう積み木のお城か何かのような、そういうサウンドにしたかったんだ」

__それはどうしてですか?

ギャスパール・オジェ「不安定な要素を入れると、聴く人に驚きを与えることができるからさ。そして、より生々しく感じられるからだね。完璧じゃないからこそ、聴く人を一緒の部屋でレコーディングしているんじゃないか、という気持ちにさせるんだ。聴いていると、崩れてしまうんじゃないかってドキドキすると思うけど、もちろんその曲がメチャクチャになることは絶対にない」
グザヴィエ「そのギリギリの所の音をつくるっていうのは、言うのは簡単だけど、すごく大変なことなんだ。僕らは、今回いろんな驚きを曲に入れ込んでいて、2秒に1回くらいは“おっ!”となる要素が入っているよ。この曲は、もうこれ以上ラウドにならないだろう、これ以上すごいことは起こらないだろうって思った瞬間に、次なる要素が出てくる…そういうのが面白いと思ったんだ」

__スリリングだと感じました、たしかに。

グザヴィエ「カシアス(Cassius)のフィリップ(Philippe Zdar)は、このアルバムを聴いた時、“これ以上もう驚きがないと思った瞬間に次の驚きが出てくるから、すごく面白いね”って言ってくれたよ。マスタリングをしている時って、パソコンを通して音の限界が目で確認できるよね。ファーストの時は、曲のスタートから(音量/音圧を)限界までガンガンに上げていたんだけど、それに対して今回のアルバムの音は、ほとんど限界の部分、ラウドの部分まで到達していないんだ。1曲に対して20秒程度しかないと思う。これでもか、これでもか、というくらい驚く要素を、全然ラウドじゃないのに次の瞬間にはラウドになるような面白い要素を曲に入れることで、不安定さも生まれてくるワケさ」

__今作のサウンドは、必ずしもクラブ・ミュージック的とは言えないものとなっていますが、これはライブ・パフォーマンスを意識したものなんでしょうか?

グザヴィエ「僕らにとって、DJと音楽をつくることは、全く違うものなんだ。DJの方が注目されることも多いけど、僕らの音楽活動においてDJは一部分でしかない。僕らはクラブのために、DJ達のために、踊れる曲をつくろうって思いながら曲を書いたことなんてない。DJのために曲をつくろうとすると、イントロをすごく長くしなきゃいけないし、127BPM~137BPMのものをつくらなきゃいけなくなるけど、そんな曲は自分たちにとって面白くないからね。僕らが曲を書く時に大切にしていることは、いかにエモーショナルであるかさ。そして、僕らはリアル・バンドでもないから、ライブのことを考えた曲づくりをすることもない。ライブ・ショーをやることで、いろいろ勉強するようにはなったけど。だから、ただ単に、ベストなアルバムをつくろうって考えるだけだね。唯一考えるとしたら、この曲を車の中で聴いたらクールに聴こえるかどうか?かな」
ギャスパール「僕らは運転免許を持ってないから、車を運転しないけどね」
グザヴィエ「運転しないからこそ、車の中で最高の音を鳴らすことを夢みてるのかも」

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__では、今作のアルバム・タイトル“Audio, Video, Disco.”には、どのような意味が込められているのでしょうか?

グザヴィエ「まずこのタイトルは、タイトル曲ができる前からあったものでね。僕ら二人は、この言葉のタトゥーを腕に入れているんだけど、“聴く、見る、学ぶ”という意味のラテン語なんだ。1年半くらい前に、お互い腕に彫ったんだけど、こんなモダンな言葉が古い時代から存在していた、って点が気に入っている。僕らは、新しいものと古いものをブレンドするのが大好きだし、この言葉自体、すごくキャッチーでタイトルに向いているだろう? それにこの言葉は、僕らの曲づくりと共通する部分があると思ったんだ。僕らは、音楽活動をする以前はグラフィック・デザイナーとして活躍していたから、プロのミュージシャンじゃない。だから僕らにとって音をつくるということは、この言葉のように、常に聴いて、見て、学ぶプロセスなんだよ」

__本質を突く、ディープなタイトルなんですね。

グザヴィエ「説明するとディープな意味合いに聞こえるかもしれないけど、要するに、この言葉のタトゥーを入れてるからっていう、軽いノリさ(笑)」

__で、今作につながる流れとして、まず「CIvilization」がいち早く公開されましたね。この曲は、アルバムを実質的にリードしていったものだったのでしょうか?

グザヴィエ「僕らとしては、このアルバムはどういう曲の集まりであるべきか、どういうサウンドであるべきか、制作に入る前からイメージができていたから、「CIvilization」がアルバム全体の方向性を決めたわけじゃなかったね。単なる1曲にすぎない。イメージをもとに曲を書いていく中、アディダスのCMで「CIvilization」が使われることになったから、先に発表しただけさ。「CIvilization」って、ジャスティスっぽい曲だしね。あまりにもブッ飛んだ、これまでと違うことをやっている曲ではないから、みんなに久々にジャスティスの曲を聴いてもらうには、問題ない感じだろ? 素直に受け入れてもらえると思ったんだ」

__なるほど。

グザヴィエ「この曲のおかげでカムバック…という言い方をあえてするけど、それができたからこそ、次に持ってくる曲は「Audio, Video, Disco」なんだ。この曲は、「CIvilization」よりもちょっとヘンな感じの曲なんだけど、もうコレを出しても、みんなそれほど驚かないと思うから」

__段階を経ながら、新しいジャスティスの音世界にみんなを連れ出したい、ということですか。たしかに、もしファースト・シングルが「Ohio」だったら、みんなかなり戸惑ったかもしれませんよね。インパクトがありすぎる、というか…。

グザヴィエ「まぁ、いろんな方法があるよね。「Ohio」みたいに、これまでとは全く違う曲を一番はじめに聴いてもらって、“何だコレ?”って思わせるのも一つの方法だし、そうしてみるのも面白かったかもしれない。ただ、今回はスムーズに入ってきてもらうために、「CIvilization」を一番はじめにしたんだ」

__ちなみに「Ohio」は、どのようにして誕生した曲だったんですか?

グザヴィエ「クロスビー、スティルス&ナッシュ(CSN)が、フランスの中世の頃の曲をカバーしていて、それはレオンとか、フランスに存在するいろんな街のことを歌った内容なんだけど、そこからヒントを得て、反対のバージョンをつくってみようということになったんだ。つまり、「Ohio」というアメリカの都市を歌った、ジャスティスなりの、新しいメロディーを与えた曲をつくってみようと思ったんだ」
ギャスパール「レオンは、ジャンヌ・ダルクと縁のある街なんだよ」

__「Ohio」も、中世というキーワードが当てはまる曲になっているんですね。

グザヴィエ「そうだね。“中世”は、僕らにとって大切な要素で、中世の音楽が持っているフィーリング、中世の曲の書かれ方にすごく引かれるんだ。みんなあんまり気づいてないのかもしれないけど、僕らがこれまでに手がけてきた曲にも、中世の要素は入っているんだよね」

__今作には、前作同様、あなた達の’70年代的な音楽趣味も反映されていますね。中世の要素と’70年代の要素には、どのような関係性があると考えているんですか?

グザヴィエ「イギリスのロック、特に’60年代から’70年代のロックって、中世の音楽に影響されていると思うんだ。その時代のロックのサウンドとルックスには、魔女とか黒魔術とか、そういった要素が入り込んでいるけど、僕らはそれとは反対のところにある、白魔術とか妖精とか、そういった要素に興味があるかもしれないな」

__分かりました。では最後に、今後の活動予定を教えてください。

グザヴィエ「アルバムがリリースされることにすごく喜びを感じているけど、今はライブ・ショーの準備でいろいろと忙しいね。アルバムを完成させた瞬間から実際に市場に出るまでには、かなり時間があるから、そういう意味ではもう次のことに移っている段階だよ」

__リリース面では、今作からもたくさんリミックスを出していく予定ですか?

グザヴィエ「うーん。まず、僕ら自身に関してだと、もちろんリミックスは今後も手がけていくと思うけど、それほど大量につくるつもりはないんだ。僕らがリミックスを手がける理由は、その曲をリミックスしたいというよりも、友人のアーティストや好きなアーティストのリミックスに僕らの名前が入ると嬉しいから、なんだよね。だから反対に、僕らの曲をリミックスしたいって言ってくれた友人のアーティストや好きなアーティストには、喜んでOKするよ。僕らは、自分達が共感できるアーティストと仕事したいんだ。リミックスは、友達に何か贈り物を渡すような感覚で手がけたいね。もちろん、音楽業界にはいろいろと慣例もあるから、アルバムに入れるためにリミックスしたりだとか、しなきゃいけないことがいろいろあるけど、ただ単にプレゼントとしてリミックスできることが、僕らの夢だね」

translation Sam Katsuta
photo Adrian Boot (monochrome) / Pedro Winter (color; Justice with Pedro Winter’s grandmother)
interview Fuminori Taniue


【リリース情報】

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JUSTICE
Audio, Video, Disco.
(JPN) WARNER / WPCR-14233(初回限定スペシャル・プライス盤)
(JPN) WARNER / WPCR-14234(通常盤)
10月26日発売
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tracklist
M-01 Horsepower / ホースパワー
M-02 Civilization / シヴィライゼイション
M-03 Ohio / オハイオ
M-04 Canon (Primo) / カノン (プリモ)
M-05 Canon / カノン
M-06 On’n’on / オンエンオン
M-07 Brianvision / ブライアンヴィジョン
M-08 Parade / パレード
M-09 New Lands / ニュー・ランズ
M-10 Helix / ヘリックス
M-11 Audio, Video, Disco. / オーディオ・ヴィデオ・ディスコ
M-12 Civilization (Demo Version) [*BONUS TRACK]

【VIDEO】


【オフィシャルサイト】
http://wmg.jp/artist/Justice/
http://www.facebook.com/etjusticepourtous

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