These New Puritans『Field of Reeds』インタビュー


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双子のバーネット兄弟を中心に活動するイギリスのバンド、These New Puritans(ジーズ・ニュー・ピューリタンズ)。2008年にデビュー・アルバム『Beat Pyramid』をリリースすると、その神秘的にしてダークなサウンドでカルト的人気を確立したアーティストです。当時ディオール・オムのデザイナーとして活躍していた、エディ・スリマンのお気に入りバンドとしても話題を集めましたね。そして2010年には、クラシックや現在音楽の要素を大胆に導入した進展作『Hidden』をリリース。唯一無二の音世界をつくり上げ、英NMEの年間ベスト・アルバムの1位に選出されるなど、高い評価を獲得しています。

そんなThese New Puritansが、サード・アルバム『Field of Reeds』(フィールド・オブ・リーズ)を6/26にリリースします。前作同様、クラシックやジャズ畑のミュージシャン達をスタジオに招き、様々な実験、ユニークな効果音を録音しながら、『Hidden』で展開したサウンドをさらに深く追求した本作。その内容は、愛、希望、絶望、喜び、悲しみといった人間の感情をテーマに、正に芸術と呼ぶに相応しい音響世界を展開したものとなっています。

ここでは本作『Field of Reeds』の内容について、バンドの中心人物、ジャック・バーネットに話を聞きました。なおThese New Puritansは、6/8(土)6/9(日)に恵比寿ガーデンホールで開催される<Hostess Club Weekender>で来日することが決定しています(TNPの出演日は 6/8)。この日は、彼らにとってワールド・ツアー初日のパフォーマンスになるそうですよ。


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These New Puritans『Field of Reeds』インタビュー

__前作『Hidden』(’10)は、かなり実験的なサウンドを打ち出した作品であると同時に、高い評価を得たアルバムとなりましたね。振り返ってみて、あなた達自身は『Hidden』をどのような作品だったと評価していますか?

「『Hidden』を通して、みんなの僕らに対する見方が変わったよ。このアルバムをつくったことによって、Hiddenライブのようなツアーができ、ロンドンのバービカン・センター(Barbican Centre)やパリのポンピドゥー・センター(Pompidou Centre)みたいな会場で、大規模なブラス・アンサンブル、木管楽器、パーカッション、フォーリー・テクニック(映画等で使われるような効果音)、子供達の合唱団らと一緒に演奏することができたんだから」

__そうですね。


「一番大きな違いと言えば、これは特に最初のアルバムで顕著だったんだけど、僕と音楽の間に隔たりがあったんだ。それが『Hidden』では、ほぼその溝を埋めることができた。そして今作『Field of Reeds』では、そのギャップが完全に消えた。だから音楽とその内容が、一番パーソナルなものになったと思う」

__今作『Field of Reeds』は、前作『Hidden』から約三年ぶりとなりますね。制作はいつ頃から、どのようなアイディアをもとにスタートしたんですか?

「『Hidden』のライヴ・ツアーの間に、曲は書き始めた。ややこしい法的な交渉にも関わっていて、それが長引いたせいで、書く時間がいっぱいあったんだ」

__今回の曲づくり~レコーディングは、どのようなプロセスで行いましたか?

「プロセス自体は『Hidden』と似たようなものだったよ。スタジオに入る前に、ほとんど曲づくりを終わらせていた。で、エンジニアのフィル・ブラウンと一緒に、指揮者を招いてアンサンブル・セッションをしたんだ。前回はベルリンで、今回はプラハでやったね。それからソロイスト(ソリスト)やセッション・ミュージシャンたちを付け足していって、それらをまた別の人にミックスしてもらった。だからレコーディングのやり方としては、前回とほとんど似たような感じだったよ。僕たちは、何をすればいいのかをもう把握していたから、よかったと思う」

__なるほど。

「今回で違った点と言えば、一緒に演奏したミュージシャンが、ほとんど知り合いだったことくらいかな。以前一緒にライブ・パフォーマンスをした人だったり、前作で一緒にレコーディングした人だったり、他の人に推薦してもらった人だったり、とね。そういったメンバーは、ジャズや技術水準の高いクラシックをやるような、素晴らしい人達ばかりさ。で、みんなで、いろんな楽器を通して一つになった。少しサウンドがハズれたりまがったりした部分は、全部編集してしまうのではなく(少し変わったものが感動を呼ぶんだ)、純粋に演奏を通して洗練させていったね。何人か苦労していたミュージシャンもいたけど、ほとんどの人が最後には楽しいって言えるようになっていた。僕らはみんな、完璧主義者だからね。だから何日かかっても、何か月かかっても、必要な分だけ時間を費やそうという気持ちで取り組んでいったんだ」


__アルバム制作を進めていくにあたって、作品全体のテーマやコンセプトはありましたか?

「テーマは、人間の感情。愛、希望、絶望、喜び、悲しみ、だよ。“Field of Reeds”というのは、古代エジプト神話に出てくるコンセプトなんだ。彼らにとっての天国や来世の様なものなんだけれど、でも普通の人生が続いているところなんだ。不思議なんだけど、僕にとって音楽はとても簡単で、すごく自然と流れ出すものなんだ。でも言葉を使うとなると、座って、ちゃんと考えなきゃならない。9時から5時の仕事みたいなもんだね」

__今回、言葉にはこだわった、ということですか。

「オルタナティブ・ミュージックでは、抽象的で何の意味もないことを歌うことが、主流になり過ぎているよ。僕も、過去にはその罠にひっかかってたことがある。でも今回は、本当に一文字一文字に意味のあるものをつくりたかったんだ。だから、それぞれの曲に具体的なアイディアや感情を与えたかった。聴いてる人は、僕たちは知的過ぎる、とか言うけど、ただ単に心から音楽をつくり上げてるから、こういう作品になるんだ」

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__音楽的には、現在音楽~実験音楽やクラシック音楽の要素を取り入れたアプローチにさらに磨きをかけたかのような、審美的、神秘的な音世界が印象的ですね。今作の曲づくりとサウンドメイキングで、特に重視したことは何でしたか?

「僕たちの音楽はとても幅広いジャンルをカバーしている、って言われるけど、僕にとってこのアルバムは、曲づくりに集中したもの、なんだ。必要なものだけを残して、余計なものは削り落した。歌詞も同じさ。実は歌詞の面で大きく影響されたのは、百人一首なんだ。簡潔なのに意味が深くて刺激的な部分に、すごく惹かれたんだ」


__そうなんですか。では、今作で新たに導入した楽器演奏やサンプリング、参加ミュージシャン、レコーディング方法などについても、少しご紹介いただけますか?

「ちょうど他の人とその話をしてたんだ。サステイン・ペダルを踏んだまま、僕がピアノを下から叩いた、っていう音が入っているよ。すごく強くピアノをパンチしないと、全然音が出ないんだよね。あの後、手があざだらけになったな。こういうアイディアって、良いと思えても、いざやってみたら全然良くないっていうオチだったりするんだけど、意外とすごく上手くいったね。いつも頭の中に浮かぶイメージがあって、それは、僕がグランドピアノに閉じ込められていて、逃げ出そうとするっていうものなんだ。だからこのパートを聴くと、ちょっと笑いたくなっちゃうんだけどね。たしか最初のレコーディング・セッション時の、最後にレコーディングしたものだったね。朝の5時くらいだったかな。そのピアノは、一時はポール・マッカートニーも使っていたものらしくて、それを思うともう10%くらい頑張れたよ」

__アルバム・タイトル曲の「Field of Reeds」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「ピアノで作曲したんだ。あの時のことは結構よく覚えているよ。最初にコードを書いて、そこからつくり上げていった。そのアイディアをコンピューターに書き込もうと思った時、僕の彼女がその時に読んでた本の中で、何人かが馬小屋でセックスしてる絵画を見たらしくて、騒いでたな。そして何日か後に、ボーカルを足した。その時は何を書こうとか全然頭になくて、とりあえず何かピッタリと流れるようなメロディを上に乗せてみた。だからあの曲には、歌詞の代わりによく分からない音が入ってたりするんだ。自分から出てくる音の方が、言葉よりも意味があるってこともある。で、曲の終わりは、何年も前に僕がチェロで作曲したものだね」

__今作の中で、あなたが特に仕上がりに満足している曲がありましたら、ご紹介ください。

「うーん、好きな部分は、ある特定のフレーズだったり、インストだったりするんだよね。「Sprial」と「Organ Eternal」にある、ダブル・ベースと低いピアノのコンビネーションは、すごく好きかな。なんだか似たようなトーンを持ってるんだよね、あの二つの楽器って。あの二つの楽器が一緒に何かを奏でていたら、一日中聴いてられるよ。全く飽きないんだ」


__シングル曲やミュージック・ビデオ曲は、どの曲になりますか?


「「Fragment Two」のビデオを撮りに、ニューヨークに発つ予定だよ。「We Want War」で一緒に仕事をした、ダニエル・アスキルとまた一緒にやるんだ。だから、同じような雰囲気を持ったビデオになると思う。彼は、僕たちの音楽を完璧に理解しているんだ。僕たちが楽器演奏してるところをメインにしたビデオになるんじゃないかな。それが全ての始まりだから」

__6月に開催されるHostess Club Weekenderでの来日公演では、どんなステージを披露しようと考えていますか?

「本当に待ちきれないね。つい最近ピース・バンドを結成したところなんだ。で、ちょうどリハーサルを始めててね。いい感じだよ。より洗練された、ダイレクトなサウンドをつくり上げようって努力してるよ」

__最後に、These New Puritansの次なる活動目標を教えてください。

「新しいアルバムをつくることさ」

interview : iLOUD
photo : Willy Vanderperre


【リリース情報】

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These New Puritans
Field of Reeds
(JPN) Infectious/Hostess / HSE-30304
6月26日 発売
HMVでチェック

tracklist
1. This Guys In Love With You
2. Fragment Two
3. The Light In Your Name
4. V (Island Song)
5. Spiral
6. Organ Eternal
7. Nothing Else
8. Dream
9. Field of Reeds

【オフィシャルサイト】
http://www.thesenewpuritans.com/
http://hostess.co.jp/

【来日公演情報】

Hostess Club Weekender
恵比寿ガーデンホール(東京)
2013年6月8日(土)OPEN 13:00 / START 14:00
2013年6月9日(日)OPEN 12:00 / START 13:00

出演
6/8:Múm / Team Me / These New Puritans / Inc. / Indians
6/9:Travis / Editors / Wavves / Little Barrie / British Sea Power

チケット
1日券:7,900円(税込/1ドリンク別)
2日通し券:13,900円(税込/各日1ドリンク別)
http://www.ynos.tv/hostessclub/schedule/201306weekender/index.html

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