’08年に、ティーンネイジャー時代からの仲間だった、ダン・マック(G/Key/Vo)、ジム・フィン(Key/Vo)、ダン・ウィリアムズ(Dr)の三名が結成した、オーストラリア出身のダンス・ロック・バンド、Art vs. Science(アート・ヴァーサス・サイエンス)。新人バンドであるにも関わらず、’09年にリリースしたシングル「Parlez Vous Francais?」が、オーストラリアのラジオ局、Triple Jが行っているリスナー投票で年間2位を記録し、オーストラリアの音楽賞、ARIAで2年連続複数部門ノミネートされるなど、本国では高い評価と人気を獲得している注目株です。
そんな彼らが、この度デビュー・アルバム『ザ・エクスペリメント』を5/3にリリースします。彼らの持ち味であるライブ感満点のパワフルなサウンドを追求すべく、ほとんどの曲を一発録りでレコーディングしたという本作。その内容は、ノイジーなシンセ、ソリッドなギター、キャッチーなメロディー、ダンサブルなビートが次々に飛び出す、正に緩急のきいた人力エレクトロ・ロックが楽しめるものとなっています。
既存のエレクトロ・ロック勢とは一線を画す『ザ・エクスペリメント』。ここでは、その内容とArt vs. Scienceの音楽性について、メンバー三名に話を聞いてみました。
ART VS. SCIENCE
生演奏でエレクトロをやってのける、
オーストラリア発の個性派ダンス・ロック・バンド
__まずは、あなた達がArt vs. Scienceを結成した経緯について教えてください。このバンドを結成したきっかけの一つには、ダフト・パンクのライブを観たことがあったそうですね?
ダン・マック「僕らは、十代の頃からいろんなタイプのバンドをやってきた仲だから、ダフト・パンクに衝撃を受けて音楽を始めたというわけじゃないんだ。ただ、彼らのライブを観た時に、ああいった音を自分達のバンドでやってみたら、どうなるんだろう?って思ってね。僕らが持っている機材って、ギターとかキーボードくらいなんだけど。で、キーボートをギター・アンプにつないで音を出してみたりしているうちに、今やっているようなサウンドができ上がったんだ。だから、やり方はあくまでロック・バンドさ」
ジム・フィン「三人の個性を自然と出したら、こういう音になったんだ。自分達の楽しみたい気持ちが、自然と音に反映されていると思うね」
__Art vs. Science以前は、どんな活動をしていたんですか?
ジム・フィン「僕らが知り合ったのは十代の前半で、みんな学校の仲間だったんだ。だから一緒に音楽活動を始めてから、もう7~8年になる。バンドを始めたのは、16歳の頃だったと思う。学校のバンド・コンテストに出たのがきっかけだったね。で、ポップ・パンクや、ガンズ・アンド・ローゼズのようなストレートなロックから、ジャズっぽいサウンドまで、生演奏でやれる音楽なら何でもいろいろやってきたよ。そのやってきた音楽が、全て好きだったわけじゃないけどね」
__では、デビュー・アルバム『ザ・エクスペリメント』について教えてください。アルバムのテーマは何でしたか?
ジム・フィン「純粋に楽しく騒げるような曲から、ちょっと考えさせられるような雰囲気の曲まで、アルバムに緩急をつけたかったね」
ダン・マック「アルバム全体で一つのサウンドトラックとして聴けるような、大きな流れのある、旅をしているような作品にしたかったんだ。『Interstella 5555』っていうダフト・パンクの映画があったけど、あの作品に影響を受けた部分はあったかも。だから、曲順や構成には、かなり気を使ったよ」
__曲づくりや音づくりで意識したことは何でしたか?
ダン・ウィリアムズ「フックも重要視したけど、基本的に僕らは、一曲の中に山と谷をつくっていくのが好きなんだ。徐々に盛り上げていって一気に落とす、みたいなね。お客さんも、そういう曲を喜んでくれるし。だから、曲をつくる時には、いつもそういったことを意識している」
ダン・マック「自分達にとっても面白い曲である、ってことが大事だね。ピークへのもっていき方とか、そこでの変化の付け方をどうクリエイトしていくのかが、曲づくりの肝なんだ」
ダン・ウィリアムズ「あとは、僕はドラマーだから、叩いた音が爆音であれば問題ないよ(笑)」
ダン・マック「音づくりに関しては、すごくナチュラルで良いな音で、極端に洗練されていない、ライブ感のある、臨場感のある音を意識しながらレコーディングしたよ」
__レコーディング自体は、どのように進めていったんですか?
ダン・ウィリアムズ「ほどんどの曲が、三人同時に演奏した一発録りなんだ。で、いくつかミスったところを、オーバーダビングで修正したり、さらに音の要素を付け足していったりした。だからこのアルバムは、スタジオ・ライブに近いと思う」
ジム・フィン「生のエネルギーというものを、アルバムを通じて体験してもらえるんじゃないかな。ただ、生でやっていると、どうしてもエキサイトしてきて、曲のテンポが変わってきちゃうから、1~2曲ではクリックを使ったけどね。でも、ほとんどの曲では、テンポが変わるのもリアルで面白いってことで、あえてそのままにしたよ」
__一般的なエレクトロ・バンドのスタジオ作品とは違って、よりライブ感のあるサウンドを意識したアルバムになっているんですね。
ダン・マック「僕らは、曲づくりの段階から、ライブでプレイしていくことを意識しているんだ。だから、そもそもライブで演奏できない曲はつくらないし、それほど難しいこともやってない。でも…「Magic Fountain」は難しかった。キーボードのセッティングを調整する機材を買ったんだけど、それを足で調整しながら演奏して、なおかつ歌うということをやらなきゃいけなくてね」
ジム・フィン「僕らはギター、ドラムの他に、4台のキーボードを使っているんだけど、各楽器の強弱のつけ方が大変でね。全部の楽器をいっぺんに鳴らすことはないけど、その楽器の組み合わせで、十分に幅広いサウンドをつくり出すことができるんだ。だから、いろいろ工夫しながらやってるよ。でも「Magic Fountain」は、僕も足で操作しなくちゃならないことがあって、ちょっと難しすぎたから、もうああいう曲はつくらないかも(笑)」
__ちなみに、あなた達がArt vs. Scienceとして最初につくった曲は、すでに本国でヒットしている「Parlez Vous Francais?」(’09)になるんですか?
ダン・マック「いや、最初に書いた曲は、デビューEPにしか入ってないよ。ただ「Parlez Vous Francais?」は、このバンドを始めてから2ヶ月以内につくった曲だったね。たしか、5本めのライブをやる前につくったんだ。フェスに出る予定だったんで、それに向けて急いでつくった曲だった。フェス受けする曲をつくらなきゃ、って思ってね」
__シングル「Finally See Our Way」は、どのようにして誕生した曲ですか?
ジム・フィン「この曲は、ダンがあるコードを発見して、それにみんなで肉付けをしていった曲だね。で、ホーンのラインを思いついた時に、これで完成だって、みんな思った曲だったよ」
__で、あなた達のPVは、「Finally See Our Way」はもちろん、「Magic Fountain」も、「Parlez Vous Francais?」も、とても面白い内容に仕上がっていますね。PVにも、かなりこだわっているんですか?
ジム・フィン「どのPVも、アレックス・ロバーツという監督が手がけたものなんだ。面白いことを表現したかったから、僕らもアイディアを出したよ。曲の世界観を反映させた、映画の物語っぽいPVにしたかったんだ」
ダン・マック「彼は、才能ある監督だと思う。結構低予算なのに、あんなPVをつくれるんだからね。きっとビッグになるよ」
__では最後に、Art vs. Scienceの今後の活動目標を教えてください。
ジム・フィン「このアルバムの曲を、ひたすらツアーでやっていくだけさ。まずはそこから、だからね。やっぱりお客さんに曲を知ってもらいし、いろんな国でプレイして、世界中のみんなと音楽を共有していきたいと思っている。もう、次のアルバムにむけて、曲も書き始めてるよ!」
photo Cybele Malinowski
interview & text Fuminori Taniue
【アルバム情報】
ART VS. SCIENCE
The Experiment
(JPN) P-VINE / PCD-20097
5/3発売
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tracklisting
01 Finally See Our Way
02 Flippers
03 A.I.M.Fire!
04 Take A Look At Your Face
05 Parlez-Vous Francais?
06 Higher
07 Magic Fountain
08 With Thoughts
09 Meteor (I Feel Fine)
10 Rain Dance
11 Sledgehammer
12 New World Order
13 Bumblebee
14 Hollywood
【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/art-vs-science
http://artvsscience.net/
【PV】