いまや日本を含む、世界のメインストリーム・ダンス・ミュージックとなったEDM。世界中のダンス・フェスティヴァルでは、メインステージで何万人もの観衆を興奮のるつぼに巻き込み、音楽の素晴らしさを広めています。
そのEDMシーンで頂点を極めた元Swedish House Mafia(スウェディッシュ・ハウス・マフィア)の二人、Axwell(アクスウェル)とSebastian Ingrosso(セバスチャン・イングロッソ)の新たなユニットが、Axwell Λ Ingrossoです。彼らは、2014年5月29日に活動開始を宣言、6月8日にNYのGovernor’s Ballで新曲を数曲デビューさせています。そのうち、歌モノの二曲「On My Way」と「Sun Is Shining」は、まだリリースされていないながらも、すでにファンの間ではアンセムとなるほどの人気です。
そんな彼らが<Ultra Japan>の大トリとして来日、新曲とデビュー・アルバムについて語ってくれました。
AXWELL Λ INGROSSO インタビュー
__お二人のDJセットはUshuaiaの<Departures>で一度見たことがあり、とても感動しましたが、昨日のUltraのセットにはまた違った素晴らしさがありました。お二人での日本でのプレイは初めてでしたが、どのような印象をお持ちですか?
Sebastian Ingrosso(以下 SI)「驚いたね。まったくマジカルで、一分一秒一時間がスゴかった」
Axwell(以下 A)「こんな都会のど真ん中で、あんな大勢のクラウドを前にプレイできたことにエキサイトしたよ」
__“日本の皆さん、仲良くしてくれてありがとう”など、スクリーンに日本語も映しだしていましたが、これはお二人のアイディアですか?
SI「そうだよ(笑)」
A「おれたちは日本語が話せないけど、がんばるとこはがんばってみようかなって(笑)」
__日本人は英語があまりわからないっていう事前知識があったのでしょうか?
A「ああ、だからメッセージをちゃんと伝えたかったんだ」
__オープニングでいつもプレイしている「This Time (We Can’t Go Home)」にはメッセージ性があると思うのですが、そこにはどんな意味がこめられていますか?
A「メッセージは…」
SI「タイトルどおりだよ」
A「そう。僕らはスウェディッシュ・ハウス・マフィアをやめてから、ちょっとの間、実際に家に帰るような気持ちでいた。でも、今回は帰らないよ、これからは違うよっていう、そういう意味だね」
__この曲のラッパーはプシャ・T(Pusha T)と伝えられていますが、この曲ができた時点で、すでに彼とレーベルメイトになると思っていましたか?
SI「いや、ぜんぜん」
A「実際おもしろいことになったと思ったね(笑)」
__彼とは、どうやって知り合ったんですか?
SI「アクスウェルが、ラッパーを入れようっていうアイディアを持っていて、彼がリサーチしたところ、プシャ・Tがすばらしかった。で、おれがラスベガスにいたとき、彼もラスベガスにいたんで、マネージャーが連絡とってくれて、彼がホテルの部屋に来てくれた。そこで、実はアルバムを作ろうと思っていて、こんな感じの曲を作っているんだって聴いてもらったら気に入ってくれた。それで、おれがスウェーデンに帰ってから、彼がLAで録ったラップを入れて、やりとりしながら完成させたんだ」
__このたびDef Jamと契約しましたが、ヒップホップの代表的レーベルというイメージがあるDef Jamをあえて選んだ理由は何ですか?
SI「リスニング・パーティーをやって、いくつかのレーベルの人に来てもらって話をしたんだけど、そこで選んだのがDef Jamだったんだ。人間を見て選んだね」
A「UKやヨーロッパでは、いまでもスウェディッシュ・ハウス・マフィアの頃から一緒にやっているスタッフと仕事しているんだ。アメリカだけがDef Jamなんだけど、自分たちのことを理解してくれて、好きでいてくれて、熱意を持ってやってくれる人っていう点で、彼らを選んだね」
__ライヴでは、オーディエンスの歓声をサンプリングして曲に取り入れるという試みも行っていますが、これはどこから生まれてきたアイディアなのでしょう?
A「かなり前にあれは始めたんだよね。なんとかして、お客さんをおれたちの中に取り込んで、一緒に何かつくりたかったんだ。ただシャンパンをぶちまけたり、ケーキを投げたりじゃなくて(笑)、っていうところでね。それで音楽の中に歓声を取り入れることにしたんだ」
__よりクリエイティヴな形で、っていうことですね。
A「ああ、ほかにもまだそういうアイディアはあるよ」
SI「今後のためにとってあるんだ(笑)」
__これは、「Can’t Hold Us Down」のワンパートと考えてよいのでしょうか?
A&SI「そうだね」
__この曲では、後半にテンポを上げるという試みも行っていますが、この曲のテーマには“実験”がありましたか?
SI「そうだね。テンポを使って何かやってみようというのは、最近自分たちがやっていることのひとつなんだ」
A「エレクトロニック・ミュージックは、ここしばらくの間、同じテンポで動いていたから、そうではなく、お客さんに違うものを体験させたい、“なんだなんだ?”って思わせるような速い曲をやってみたいっていうのはあったね」
__128BPMには飽きましたか?
A「それはいいテンポだけど、確実にいまは違うテンポを試してみるときだと思っている。128はすばらしいけどね。そろそろ140もありかなと」
__アクスウェルの古い曲には、アシッド・ハウスの速い曲もありますもんね。
A「ああ、ほんとに昔の曲にね。トランス、アシッドがある。140BPMか150BPMだった(笑)」
__その頃に戻るんですね(笑)。
A「しちゃいけないってことはないだろ?(笑)。遅いのも、速いのもありだよ。クラウドは128を充分体験しているから、「Can’t Hold Us Down」の後半にテンポを上げるのは楽しいね」
__現時点では、デビュー・アルバムの軸となる曲は、まず「On My Way」になるかと思います。この曲のストーリーはどういうものでしたか?
A「軸というより、最初に公開した曲だね。内容は、ちょっとおれたちの歴史に関係している。おれたちはスウェディッシュ・ハウス・マフィアで大きくなって、ありとあらゆる世界中への鍵を手に入れた。でもそれを自分たちで捨てて、ゼロから、もがきながらまた上に上がっていく、そんな意味がこめられているよ」
__ヴォーカルは誰ですか?
SI「二人いるんだ。…まだあかせないけど」
A「知ってるんだろ?(笑)」
__噂は正しいですか?
A「そうだね」
SI「噂では誰になってる?」
__Salem Al Fakirです。
SI「そう、彼が一人だ(笑)」
A「彼とは、ずっと昔に「It’s True」(注:2008年)っていう曲を一緒に作ったことがあるんだよね」
__同様に軸となりそうな曲は、昨日のセットでアンコールでプレイした「Sun is Shining」で、これも素晴らしい曲ですが、この曲のヴォーカリストもあかせませんか?
A「同じ二人だよ」
__Salem Al Fakir & Vincent Pontare?
SI「そうだ、正解。秘密だよ(笑)」
__ギターがフィーチャーされたトラックと、サイモン&ガーファンクルにも通じるメロディーラインが印象的ですが、この新たな方向性はどこから得たのでしょう?
A「まさにサイモン&ガーファンクルだよ」
SI「いろいろ書いた中でも気に入っている曲だね」
__この曲にはエルトン・ジョンが参加しているという噂も流れていますが、本当ですか?
A「いや。みんなそう言ってるけど、違う。さっき言った二人さ」
__他に、アルバムにゲスト参加しているアーティストはいますか?
SI「エルトン・ジョン、ワンリパブリックのライアン・テダー、プシャ・T、あとは過去に一緒にやった人とまた一緒にやるかもしれないけど、まだわからない」
__エルトン・ジョンは別の曲に参加しているんですね。
A&SI「そうだね」
__その曲は、まだプレイしていないということですね。
A&SI「そう」
__それは爆弾ですね。
SI「そうなるといいね(笑)」
__あと、アコースティック・ギターがフィーチャーされていて、“Take a look at…”で始まる、男性ヴォーカルの曲が新曲かと思うのですが、これについて教えてもらえますか?
A「ああ、これは新曲だけど、おれたちの曲じゃないんだ。一緒にやってる別の人の曲だ」
__あなたたちの曲だと思っていました。
A「いや、まだ違う(笑)。レーベルで関わっているアーティストの曲だ」
__ニュー・アルバムの制作はどこまで進行していますか?
A「ハーフウェイだね」
SI「曲はもうあるんだ。でも、まだプロデュースされていない」
A「そこからが時間がかかるんだよ」
SI「気が変わったりするし、いろんな服を着せてみたいしね」
__リリース・タイミングはいつぐらいになりそうですか?
SI「来年の第一四半期かな~」
A「だといいね」
__何曲入りになりそうですか?
SI「少なくとも10曲だね」
__ということは、まだ未発表の曲がたくさんあるということですね。
A「そう」
SI「まだプレイできない段階のがある(笑)」
A「まだプレイしていないほうに、実はベストなものをとってあるよ」
SI「間違いないね」
__リード・シングルは、現段階で未発表の曲になりますか?
A「いや、それはもうみんなが聴いたことのある曲の中からになる」
__未発表曲は、これからDJセットで披露していくんですか?
A&SI「そうだね」
__何かアルバムにテーマはありますか?
A「さっき言った“家には帰れない”っていうのがテーマかな。あとは、自分たちらしいサウンドを出すことがテーマだと思う」
__最後にひとつだけ、くだけた質問をさせてください。お寿司は好きですか?
SI「大好きだよ」
A「ベストだ」
__一番好きな寿司ネタは何ですか?
SI「ハマチ、トロ、マグロ(笑)」
Interviewer: Tomo Hirata
Translator: Kyoko Maruyama
【オフィシャルサイト】
http://axwellingrosso.com/
http://www.universal-music.co.jp/