米ワシントン州べリンガムで結成されたロック・バンド、デス・キャブ・フォー・キューティー(Death Cab For Cutie)のフロントマン、ソングライターとして活躍するベンジャミン(ベン)・ギバード。これまでに、デス・キャブ・フォー・キューティーとしては、過去に全米チャートの1位を獲得した『Narrow Stairs』(’08)など計7枚のアルバムを、またジミー・タンボレロと結成したザ・ポスタル・サーヴィス(The Postal Service)としても、全米でゴールド・ディスクを獲得した『Give Up』(’03)をリリースしている才人です。
そんなベンジャミン・ギバードが、初のソロ・アルバム『Former Lives』(フォーマー・ライヴズ)をリリースしました。ベンが、“僕の人生のスナップショット”で、“新しいチャプターではなくサイド・ストーリー”だと語る、過去8年に渡って溜めてきた曲やメロディーの断片をまとめた注目作です。彼の長年の友人、アーロン・エスピノーザ(Earlimart)のスタジオで、まるでマリアッチのようにレコーディングしたという本作。その内容は、エイミー・マン、スーパーチャンクのジョン・ウースター、サン・ヴォルトのマーク・スペンサー、トリオ・エラスらがゲスト参加した、自由でリラックスした音、楽曲群が詰まったものとなっています。
ここでは、本作『Former Lives』の内容と制作背景について語った、ベンジャミン・ギバードのインタビューをご紹介しましょう。
Benjamin Gibbard『Former Lives』インタビュー
__ソロ・アルバム『Former Lives』のリリースは、以前から計画していたアイディアだったんでしょうか?
「ソロ・アルバムのリリースを計画していたわけではないんだ。気付くとレコードを一枚出せるくらい曲が溜まっていたから、レコーディングしようって決めて、そこからアルバムをつくれればって思ったんだよ。デス・キャブ・フォー・キューティーのメンバーも、みんなソロ活動を応援してくれている。バンドの中に、こうした活動を気に入らないメンバーがいると、大抵はしばらく避けられたりするもんだけど、今のところそういうことはない(笑)。みんなこのレコードの話をしてるから、楽しんでくれてると思う。だから、気に入ってくれてるんじゃないかな(笑)」
__つくり溜めていた楽曲というのは、もともとデス・キャブ・フォー・キューティーのために用意していたものだったんですか?
「今回のアルバムの曲は、ソロ用にあえて書いたものではないんだ。その当時つくっていたデス・キャブ・フォー・キューティーのアルバムには、うまくはまらなかった曲なんだよ。曲として良くなかったっていうんじゃなく、デス・キャブ・フォー・キューティーのアルバムには合わなかった曲だね。それをこのアルバムにまとめたんだ。だから、バンドのアルバムの、未公開シーンみたいに考えているよ」
__なるほど。
「一方サウンド的には、比較的統一感があると思う。やっぱりほとんどが同じスタジオでレコーディングされたものだからだろうね。しかも同じプロデューサーでね。つまり、曲としてはいろんな時期に書かれた、ある数ヶ月間に集中して書かれたものではないんだけど、レコーディングが同時期だったから統一感があるんだ。それぞれの曲を、書かれた時期にレコーディングしていたら、たぶんアルバムとしては上手くいかなかったと思う。中にはかなり古い曲もあるし」
__レコーディングに関しても教えてください。サウンド面で重視したことは何でしたか?
「サウンドに関しては、今回はとにかくそれぞれの曲をはっきりと、ストレートにとらえたかったね。最近、サウンド・プロダクションの技術って、どんどん均一化されてきているように思うんだ。その時のプロダクションのトレンドに、左右されがちなんだよね。個性がなくなってきている。例えばインディー・ロックだと、常にリヴァーブがかかっていて、全部コンピュータで音がいじられていたりする。で、僕は、むしろそういうのから離れて、聴いてすぐにインディー・ロックっぽい印象を与えない音にしたかったんだ。今風のレコードをつくりたかったら、絶対にリヴァーブはかけなきゃいけない…みたいな感じがあったからね。全体にリヴァーブがかかっているようなモノはやりたくなかった」
__レコーディング自体は、どこで行ったんですか?
「レコーディングは、昔からの知り合いである、アーリーマート(Earlimart)のアーロン(・エスピノーザ)のスタジオ、The Shipで行った。このスタジオは、レコーディング設備は整っているんだけど、普通の生活スペース風でね。プロフェッショナルなレコーディング・スタジオっていう雰囲気じゃないんだ。でもちゃんと機材も揃ってるし、良い音が録れるスペースなんだよ。リラックスしてクリエイティヴになれると同時に、ちゃんとレコーディング・スタジオにいる気持ちにもなれる…僕はそういう場所が好きなんだ。レコーディングは、ほんとに楽しかったよ」
__今作のゲスト・ミュージシャンについても、ご紹介いただけますか。
「まず、アーリーマートのアーロンとは、’90年代からの知り合いなんだ。アーリーマートとは、デス・キャブ・フォー・キューティーのごく初期のツアーで、一緒にやってね。その時以来の知り合いだ。スーパーチャンク(Superchunk)のジョン・ウースターとも、かなり前から友達だね。スーパーチャンクは十代の頃から好きなバンドで、今でも大好きなバンドの一つさ。だから、今回一緒にやれて本当にグレイトだった。彼とレコーディングを始めたら、どうしてスーパーチャンクのレコードがあんなにいいのか、どうしてああいうレコードができてきたのか、すぐに分かったよ。彼は、ソングライターとしての視点からドラムをプレイしているんだよね」
__エイミー・マンに関しては、いかがですか?
「エイミー・マンとも友達なんだ。彼女が参加した「BIGGER THAN LOVE」は、最初からデュエットの曲だったんだけど、誰と一緒に歌えるか考えた時に、一番最初に浮かんだのがエイミーだった。ほんと、素晴らしかったよ。ずっと昔から聴いていた彼女の声が、僕の書いた曲を歌っているんだからね」
__最後に、今後の予定を教えてください。
「デス・キャブ・フォー・キューティーに関しては、今は休みを取っているんだ。僕も、今はこのソロ・アルバムをやっているしね。来年のどこかで新作に取りかかれれば、って思っている。日本のファンのサポートには、本当に感謝してるよ。日本に行くのは、いつも楽しみにしているんだよ。僕は、小さい頃日本に住んでたから、ものすごく親しみが感じられる場所なんだ。第二の故郷って言えるくらいさ。だから、日本に行くチャンスがある度に、本当に感謝してるし、楽しみにしているよ。今回のソロ・アルバムでも、日本にも行きたい。スケジュール的にうまくいけばね」
【リリース情報】
Benjamin Gibbard
Former Lives
(JPN) KSR / YRCG-90081
10月17日発売
HMVでチェック
tracklisting
01. SHEPHERD’S BUSH LULLABY / シェパーズ・ブッシュ・ララバイ
02. DREAM SONG / ドリーム・ソング
03. TEARDROP WINDOWS / ティアドロップ・ウィンドウズ
04. BIGGER THAN LOVE / ビガー・ザン・ラヴ
05. LILY / リリー
06. SOMETHING’S RATTLING (COWPOKE) /サムシングズ・ラトリング(カウポーク)
07. DUNCAN, WHERE HAVE YOU GONE? / ダンカン、ホェア・ハヴ・ユー・ゴーン?
08. OH, WOE / オー、ウォウ
09. A HARD ONE TO KNOW / ア・ハード・ワン・トゥ・ノウ
10. LADY ADELAIDE / レディ・アデレード
11. BROKEN YOLK IN WESTERN SKY / ブロークン・ヨーク・イン・ウェスタン・スカイ
12. I’M BUILDING A FIRE / アイム・ビルディング・ア・ファイア
13. TEARDROP WINDOWS (DEMO) / ティアドロップ・ウィンドウズ(デモ)*
14. ICHIRO’S THEME / イチローのテーマ*
*日本盤ボーナス・トラック
【アルバム全曲試聴】
【オフィシャルサイト】
http://bignothing.net/benjamingibbard.html
http://benjamingibbard.net/
【フリー・ダウンロード】