MCのTSUBOIとWADA、DJ/トラックメイカーのSUZUKIからなるハイパー・ヒップホップ・ユニット、アルファ。ハッピーでウィットあふれるキャラクターと、テクノ、エレクトロ、ドラムンベースをも飲み込む音楽性で、着実に支持を獲得してきた存在です。
そんな彼らが、2005年の『ALIEN』以来となる、5年ぶりのオリジナル・フルアルバム『BOYS&GIRLS』を、本日4/20(配信4/6)にリリースしました。先行公開され話題を呼んだ、「STEREO LOVE」「She Sea Girl」『Boy Meat Girl」「君にポゴシッポヨ」を含む進展作です。lecca、SU(RIP SLYME)、HALCALI、RYO(ケツメイシ)、スチャダラパーといった豪華ゲスト陣の参加も注目でしょう。
iLOUDでは、この新作の核心に迫るべく、アルファの三人に対面インタビューを行いました。
アルファ
5年ぶりのオリジナル・フルアルバムをリリース
そのテーマは“男子と女子”
ーー『BOYS&GIRLS』は、5年ぶりのオリジナル・フルアルバムということですが、久々のアルバム制作はいかがでしたか?
SUZUKI(以下S)「おもしろかったですよ。伸び伸び、楽しくやりましたね。その(5年)間も、曲は録っていたので、ブランクも感じなかったですね」
ーー今作には、コンセプトやテーマは、あったのでしょうか?
TSUBOI(以下T)「毎年、年末に自分らのイベントをやっていて、そこで“アルバムを来年春までに出す”と言ったことから、制作が始まったんです。最初は、配信で出していた曲が4曲あったんで、それ以外の曲はテーマも考えないでやっていこうみたいな感じだったんですけど、週2回ぐらいスタジオとってやっていくうちに“これだと間に合いそうもなくなってきた”ってことになって、そこから全体を見直してみたときに、“配信で出してきた曲には男子と女子のことを歌っているものが多いから軸にしてみようか”ってことになったんです。それで、昔に手がけていた、男女的な曲をやり直してみたり、ゼロから何曲かつくってみたりしていって、ざっくりと“男子と女子の曲”っていう枠組みが、2月前くらいにできたんです」
ーーそれが、タイトルにもなっているんですね。ということは、配信で出していた曲以外は、けっこう短期に集中して録ったんですね。2か月で10曲ぐらいですか?
WADA(以下W)「今までに8割くらいつくっていた曲も、引っぱり出したりしましたけどね。まっさらからつくったのも6曲くらい?」
S「6、7曲くらい録ったかもしれない」
ーーそんなに早くできるものなんですね。
W「1月4日から始めて、10日には2曲は見えていましたからね」
S「バァーっと」
ーー制作は、スタジオに入って一発で、みたいな感じだったんですか?
S「そういう曲もあれば」
T「どうする?って、そこでからつくっていった曲もあったり」
S「スタジオをバッとおさえられる環境にあったんで、それがラッキーでしたね。家で自分でつくってきて、っていうのももちろんあったんですけど、今回はあえてスタジオでセッションして、つくっていきましたね」
ーーラップの部分も、スタジオで考えたんでしょうか?
W「新曲は、スタジオで書いたものが多いかもしれないですね」
S「デカい音で鳴らしながらやったほうが、ボコーンって決まることが多いんで。今回は、ミックスも含めて、テンポすごく良かったですね。珍しくトラブルもなかったし。曲順も、ライブ・セットの感じで組み上げていこうかなって感じで、ポポポ~ンと決まって」
ーーでは、レコーディングでは、あまり悩みどころはなかったんですね。
S「悩みなかったっすねぇ。“考えない”がテーマだったし。考えるのは、配信の曲とかで、2010年にずっとやってたんで、2011年はもう考えなくていいっしょ、みたいな」
T「思いついたことをすぐ試して、違うなら“違う”って、すぐできる環境でやってたし」
ーー曲のとっかかりは、どんなところにあることが多いんですか?
W「たとえば「SEXY BOY」だったら、“SEXY BOY”っていうワードが先にあって、そこから各々のイメージが広がっていくっていう感じでしたね」
S「最初にタイトルというか、核になるワードがあることが多いですね」
T「トラックについていた仮タイトルから始めることもありましたね」
ーーそこから、自然な流れを重視してつくっていった感じでしょうか?
S「そうですね。なんだかんだもう100曲以上やってるから、発進したところからゴールまでの道のりは、もう見えてるんですよ。その中で、どうフレッシュなことをやるかは、もちろん考えましたけどね」
ーー今回は、どんな角度でフレッシュなことをやってみましたか?
T「一個あったのは、俺らしか分かんないみたいな内輪ノリをやり過ぎてるのはやめよう、ってことでしたね。ある程度間口は狭くなっていないところで、やっていこうっていうのはありました」
S「まぁ、外に向けたんじゃないですかね。“BOYS&GIRLS”みたいなことを表現するんだったら、そっちのほうが面白いし」
T「そもそも“BOYS&GIRLS”っていうのが、ちょっと前のオレらには考えられないテーマですからね」
ーーテーマ自体に新しさがあるんですね。
S「そうですね。誰しもが経験するようなことを、あえてテーマにしてみるっていうことをしました。それ自体にポピュラリティーあるから、結果ポップな方向に行きましたね。その点では、前のアルバムのときとは、マインド的にだいぶ違うんじゃないですかね」
ーーアルファと言うと、ウィットの効いた曲…
S「そういうイメージになってると思うんですよ。でも、そう考えると、歌詞カードを追えば何言ってるかちゃんと分かるようになったというのは、だいぶ変わってきたところなんじゃないですかね」
ーー何がきっかけで、そういう変化が出てきたのでしょう?
S「いろいろあると思うんですけど、自分たちの心にあることを言ってみて、それが伝わることが面白かったっていうのがデカかったんじゃないですかね。意外と、そういうことをやってなかったから」
T「昔は、自分らのことを書くっていうスタンスだったんですけど、ストーリーとしての曲をつくることも面白いなって思い出したのが、いろんなテーマができるようになったきっかけなんじゃないかな」
ーー自分の枠の中じゃないところにも手が届くようになってきたんですね。
T「そうじゃないですかね。そうじゃないと、限られた人格しか持ってないから、こんなに曲ができないと思うんですよ。例えば「She Sea Girl」は、ラブソングに聞こえるけど、“海に対して海が好き”っていうことをラブソングっぽく歌ったんです」
ーーそういう曲の書き方になるきっかけは、どこにあったんでしょう?
W「前のアルバムに入っている「PASSION」ですね。オダさんっていうプロデューサーの方に“ヒップホップなんて知らねーよ。お前の話なんて聞かねーよ”って言われたときに、ちょっとわかっちゃう部分もあって」
ーーそこから世界が広がっていったんですね。
W「あのときに広がった感じはありましたね。映画の部分もあってもいいのかなって」
S「映画監督がノン・フィクションを撮ってて、フィクションも撮り始めたら面白かったっていう感覚に近いんじゃないかな」
ーーフィクションの方が自由度が高いですからね。そこに、創造性を要求されますし。
S「そうそう。そこで、こっちも面白いって気づいちゃったんじゃないですかね」
ーーところで、今作にはゲストの方も多数参加されてますよね。まず、「She Sea Girl」では、leccaさんとSUさんがフィーチャーされてます。これは、どういう経緯で実現したのでしょう?
T「leccaとか昔から知り合いで、普通に友達だったんですよ。歌やってるっていうんで、ライブにも呼んだりしてて。SU君とも、よく遊んでたりしてて」
ーー友達つながりで実現したんですね?
S「基本、そうっすよ」
T「友達しか誘ってない」
W「あんまり知らない人と、スタジオに一日いれないですからね」
S「ゲストの名前を並べるとスゴいんですけど、もとから知ってた人たちとやっただけって感じで。知り合いが、みんな有名になっちゃったってパターンなんですよ。ケツメイシとかもそうだし」
ーーHALCALIも?
T「HALCALIとはイベントでよく一緒になってて、やろうよみたいな話をしてたんです。スチャに関しては、前回やって、その後“やってくれ、やってくれ”って会うたびに言ってて、“いや~、時間たっちゃったけど、やりますか?”って今回言ったら、“別にいいよ。マイナスとマイナスぶつかりあってもプラスにならねーよ”とか言われて(笑)」
ーーBubblesは?
S「それは異例です。カラオケ好きのOLと人妻DJっていうメンバーです」
ーー新人ですね?
T「活動を始めるとしたら、新人です(笑)」
S「三十路過ぎてるんですけど(笑)。「SEXY BOY」をつくるにあたって、まだ世に出てない人を使った方が面白いと思ってて、誰かいないかなということで探してみたら、彼女たちが近くにいたんです。日本では未成熟なものを出すのが、けっこう面白かったりするから、それをあえてやってみたんです」
ーーJiLL-Decoy associationの方々も参加してますよね。
S「事務所が一緒なんで。「We are gonna go home」は配信で出したんですけど、そのまま入れるのも面白くないなって思ったんで、バンド・アレンジにしたんです」
ーー「We are gonna go home」と「STEREO LOVE」は、アルバム中でも色が異なるかなって感じたんですけど、この二曲には、他の曲とは違う背景があったりするんでしょうか?
S「それは、さっき言ってた“今までやってなかったこと”をポンとやった二曲ですね」
W「“BOYS&GIRLS”を核にするとなると必要かなっていう二曲ですね」
ーーあと、今作と言えば欠かせないのは「君にポゴシッポヨ」ですね。これは、おそらく日本初の日韓バイリンガル・クラブ・ポップだと思うんですが、歌詞はどうやって書いたんですか?
T「本を読んで」
W「エキサイトの翻訳で鳴らして」
S「あと、Google Translateっていうアプリを駆使しつつ」
ーースチャダラパーに、こういう曲をやりたいんだけどって持っていったときは、どんなリアクションでしたか?
T「おもしれーって(笑)。前回は、ジャニーズのスーパー・アイドルっていうテーマでやってたから、そんなに抵抗はなかったです。そいつらがどうなっていったかっていう考え方をしたときに、やっぱ海渡っちゃったっていうのがいいんじゃねぇかって感じで」
S「あと、ここ何年か続いている韓流ブームにあえて乗っかろうっていう(笑)」
W「今しかできないし」
S「英語と日本語のバイリンガルみたいなのは、いっぱいあるじゃないですか。あの感覚で、英語の部分を韓国語にしたら面白いんじゃないかなって感じで。別にふざけてないんですよ」
T「完全にふざけてるのは、電話の部分だけですね(笑)」
S「あれは、悪ふざけ」
ーーとはいえ、今作では、悪ふざけ色は、そんなに強くないですよね。
S「そうですね。意外と少ないですね」
ーーあと、全体を通して聴いてみると、昔からそうですけど、いわゆるヒップホップのトラックが多くないですよね。これは、なぜなんですか?
S「ヒップホップって自由な音楽、カルチャーじゃないですか。そこで、日本人っていうのを意識して、単純にオリジナルを追求した結果がこういう形になったんです。あえて四つ打ちでやろうとか、そういうわけじゃないんです。普通にやりたいことをやってたら、こうなったっていう感じで」
ーーなるほど。アルファを長きに渡って音楽制作に駆り立てている原動力は何ですか?
S「“遊び心”じゃないですかね。単純に。遊びの延長から始まってるから」
ーー最終的にアーティストとして目指しているところは、あるんですか?
S「普通に続けられたらいいなって。おじさんになっても、普通にやっていけたらいいなって思います。グラミー賞とるとか、そういうのはないですけど(笑)」
ーー今後の予定などありましたら教えてください。
S「リリースはしていきたいですね。今はアウトプットは、いっぱいあるじゃないですか。YouTubeに自分で上げちゃってもいいし。そういうレベルのことは個人レベルでできるんで、それは普通にやりたいですね。時代に乗っかって、いろんなことができたらいいんじゃないかなと思ってます」
interview & text TOMO HIRATA
【アルバム情報】
アルファ
BOYS&GIRLS
(JPN)UNIVERSAL / POCS-1038
HMVでチェック
【着うたフル配信開始】
【LIVE INFORMATION】
2011/04/30(Sat)
「BOYS & GIRLS」CD発売記念スペシャルライブ
会場 : 渋谷CHELSEA HOTEL
【オフィシャルサイト】
アルファ OFFICIAL WEBSITE