Yan(Vo/G)、Noble(G)、Hamilton(B/Vo/G)、Wood(Dr)、Phil Sumner(Keys/Cornet)、Abi Fry(Viola)の6名からなる、英ブライトンのインディー・ロック・バンド、British Sea Power(ブリティッシュ・シー・パワー)。2003年にRough Tradeから『The Decline of British Sea Power』でアルバム・デビューを果たして以来、着実に支持層を広げてきた実力派です。マーキュリー・ミュージック・プライズにノミネートされたサード・アルバム『Do You Like Rock Music?』(’08)は、全英10位を記録。日本には、2004年と2011年のフジロックで来日を果たしています。
そんなBritish Sea Powerが、『Valhalla Dancehall』(’11)に続く通算6作目のニュー・アルバム『Machineries Of Joy』(マシンナリーズ・オブ・ジョイ)をリリースしました。昨年限定リリースし話題を集めたデモEPシリーズ『BSP EP 1-6』を経て制作された進展作です。“ライブで一緒にプレイして自然に感じる曲”を軸に、ほぼ一発録りに近い形でレコーディングを進めたという本作。その内容は、彼ららしい知的で英国的な音楽センスとオーガニックなバンド・サウンドが一体化した、叙情性豊かものとなってます。
ここでは、本作『Machineries Of Joy』の内容と制作背景について、メンバーのヤン(Yan)に話を聞きました。なおBritish Sea Powerは、6/8(土)6/9(日)に恵比寿ガーデンホールで開催される<Hostess Club Weekender>で来日することが決定しています(BSPの出演日は 6/9)。
British Sea Power『Machineries Of Joy』インタビュー
__最新作『Machineries of Joy』は、昨年限定リリースしたデモEPシリーズ『BSP EP 1-6』に収録された楽曲をもとにした内容となっていますね。まず、昨年『BSP EP 1-6』をリリースしようと思った経緯は何だったのでしょうか?
「いろいろ試してみるためにも、強制的に仕事をしなきゃならないルールを自分たちに課してみるのも良いかなって思ったんだ。全然アイディアが出てこないよりは、アイディアがあり過ぎるくらいの方が良いからさ。少なくとも、それが元々の理由だった。それで、自分たちでやってた毎月のクラブ・イベント“Krankenhaus”で、リリースしていんたんだ。凄く面白かったよ。毎回みんなから直接感想を聞くことになったから、自分たちの感覚が、世間離れしてないか、その都度チェックすることもできたしね」
__過去の作品群とは特に異なるサウンドが印象的だったアルバム『Valhalla Dancehall』を経て、この『BSP EP 1-6』では、音楽的、楽曲的にはどのようなことにトライしてみかったんですか?
「最初にEPシリーズを始めた頃は、ルールを決めたり、どんな方向性にしようかって話合ったりもしなかったよ。ハミルトン(Hamilton)とアビ(Abi Fry)は人里離れた島に住んでいて、別世界に住んでるみたいだったしね。でも、他の曲は全部僕がボーカルを担当したから、ある程度統一感が出たかもしれない。正直言うと、毎月毎月、世に出せる程度に完成した音源をかき集めてた、って感じなんだ。月を追うごとにどんどんチョイスが減っていって、締め切りを守るのが精いっぱいだったね。プレッシャーだったけど、でもそれが同時に楽しかったんだ」
__では、『BSP EP 1-6』リリース後、今作『Machineries Of Joy』の制作やレコーディング、収録曲の取捨選択はどのように進めていったんでしょうか?
「EPシリーズを終わらせるまで、アルバムについては考えたりしなかった。まずこのEPシリーズをやることで、一連の作品を生み出すことが目的だったからね。その後、ライブのリハーサルのために集まった時に、少しずつアルバムとしての形が見えてきたって感じだった。アルバムのために選んだ曲は、“ベストな曲”というよりも、“ライブで一緒にプレイして自然に感じる曲”だったね。何よりも、それぞれの曲をひとつに合わせた時、統一感のあることが大事だったから」
__アルバム全体をまとめるにあたって、テーマやコンセプトは何か設けましたか?
「特にテーマを話し合ったことはなかったね。潜在的にみんなが同じ方向性を共有していたとは思うんだけど、口に出したことはなかった。アルバムの統一感が乱れても意味がないから、曲単体としては凄く良かったのに、アルバムに入れなかったものはあったよ。最近は、(音楽を)アルバム単位では聴かずに、曲ごとに選んで聴く人が多くなってきているから、時代錯誤な考えなのかもしれないけれど」
__今作はセルフ・プロデュース作品になっていますが、今作のサウンドメイキング面で特に重視したこと、チャレンジしてみたかったことは何ですか? 今作のサウンドは、身体に沁み入るかのような、とても温もりのあるオーガニックな雰囲気が印象的ですね。
「今回は、どの曲も演奏ができ、ほぼライブに近い形でレコーディングできることが大事だった。メンバー全員で一気に録音するっていうね。レコーディング自体は短期間だったけど、その分、事前のリハーサルを十分やるようにしたよ。だから、レコーディングのプロセスでそれほど実験的なことをしたわけではなかった。完璧を求めるのではなく、なるべくフレッシュで、勢いに乗ってレコーディングするよう心がけたよ」
__今回の曲づくりやレコーディングで印象に残っている作業やエピソード等ありましたら、少しご紹介いただけますか。
「実験的なことっていうと、歌詞だけだね。歌詞は、毎回レコーディングの前日に数時間かけて完成させるようにしていったよ。レコーディングについては、とにかくスタジオに入ったら素早くレコーディングを済ませていったんだけど、僕はそのやり方が気に入ってた。でも、他のメンバーは違うやり方でやってたよ。例えばハミルトンは、夜になってから録音したものを聴き直して、考えを変えて、ハーモニーを足したりっていう作業をしてたし、ノーブル(Noble)は、ギターのサウンドで試行錯誤して時間をかけることもあった」
__なるほど。
「ウッディ(Wood)は、とにかくスピーディーに、率直に、って感じだったかな。どの曲も、メインとなる部分はバンド全員でボーカルも含めて一気に録音したもので、1回目か2回目のテイクを使ったよ。ボーカルは、後日録り直したものと差し替えたけど、残りは少し足したり、変更したりしただけって感じだった」
__では、今作のアルバム・タイトルを“Machineries of Joy”とした理由について教えてください。この言葉は、Ray Bradbury(レイ・ブラッドベリ)の小説『The Machineries of Joy』(よろこびの機械)にちなんだものだそうですね。
「そのタイトルにいつの間にかなっていた、って感じなんだよね。最初は、ただ曲のタイトルだったんだけど。本当は、曲のタイトルをアルバム名にすると、どうしてもその曲に注目が集まるから、あんまりやりたくないんだけど、今回は例外だ。この名前がアルバムにぴったりだ、って感じたから。レイ・ブラッドベリの話が、あらゆるところで出てきたんだよ。彼は偉大な人だし、このフレーズが世界を表している感じもした。未来的であると同時に、ビンテージな感じもしてさ」
__アルバム・タイトル曲で、シングルカットされた「Machineries of Joy」自体は、どのようにして誕生した曲ですか?
「きっかけは、ノーブルが書いたリフとコードだったよ。音楽的にとっても強いムードがあったし、なんとなくボーカルのメロディーが浮かんでくる感じだったから、それに従って書いてみた。歌詞の由来は、自分でも分からないよ。なんとなく歌い始めてみたら、それがそのまま歌詞になった感じで、ほぼそのままレコーディングしたね。もしかすると、レイ・ブラッドベリの霊が乗り移っていたのかもね」
__セカンド・シングルは、どの曲が選ばれそうですか?
「ハミルトンの「Loving Animals」になると思う。曲の由来については、全然分からないな。ハミルトンはスコットランドの田舎の島に住んでいて、あんまり話さないからさ。多分、猫に関する話だとは思うけど、よく知らない」
__分かりました。6月に開催されるHostess Club Weekenderでの来日公演では、どんなステージを披露しようと考えていますか?
「願わくば、良いライブが見せられるといいね! アルバム・ジャケットの写真風の、白クマの着ぐるみは残念ながら間に合わないから、音楽勝負になるってことだな。ちょうどイギリスのツアーが終わったところなんだけれど、凄く楽しかったよ。そのままの良い流れで、日本でのライブもできるといいね。どの国よりも、日本でプレイするのが好きなんだよ、本当に。お客さんもエネルギッシュだし、みんな一緒に楽しんでくれるから。今回もそれを期待しているよ」
__最後に、British Sea Powerの次なる活動目標、次なるヴィジョンを教えてください。
「勇気を出して、全く違う何かにチャレンジする時期が来たって思ってるんだ。他のメンバーも同様に感じていてくれたらいいなぁ」
interview iLOUD
【リリース情報】
British Sea Power
Machineries Of Joy
流通品番:BGJ-10169
(JPN) Rough Trade/Hostess / BGJ-10169
発売中(4月17日発売)
※初回仕様限定盤は、ボーナストラック・ダウンロードカード(フォーマット:mp3)、歌詞対訳、ライナーノーツ付
HMVでチェック
tracklist
01. Machineries Of Joy
02. K Hole
03. Hail Holy Queen
04. Loving Animals
05. What You Need The Most
06. Monsters Of Sunderland
07. Spring Has Sprung
08. Radio Goddard
09. A Light Above Ascending
10. When A Warm Wind Blows Through The Grass
【アルバム全曲試聴】
http://hostess.co.jp/roughtrade/britishseapower/news/2013/04/002463.html
【オフィシャルサイト】
http://hostess.co.jp/roughtrade/britishseapower/
http://www.britishseapower.co.uk/
【来日公演情報】
Hostess Club Weekender
恵比寿ガーデンホール(東京)
2013年6月8日(土)OPEN 13:00 / START 14:00
2013年6月9日(日)OPEN 12:00 / START 13:00
出演
6/8:Múm / Team Me / These New Puritans / Inc. / Indians
6/9:Travis / Editors / Wavves / Little Barrie / British Sea Power
チケット
1日券:7,900円(税込/1ドリンク別)
2日通し券:13,900円(税込/各日1ドリンク別)
http://www.ynos.tv/hostessclub/schedule/201306weekender/index.html