’00年に『I ♥』でアルバム・デビューを果たした、ベルギーはゲント出身のポップ・バンド、ダス・ポップ。現在のメンバーは、ベント(Vo)、ニーク(B)、レインハード(G)、マット(Dr)の四名。彼らは、セカンド作『The Human Thing』(’03)以降、約5年間のブランクを余儀なくされるも、ジャスティスらがサポートした「Underground」(’08)で最注目され、見事シーンに返ってきた実力派です。’09年には、同郷の友人であるステファン&デイヴ・ディワーラ(ソウルワックス/2Many DJs)を招き制作した『ダス・ポップ』をリリースし、完全復活。来日公演も行っています。
そんな彼らが、最新アルバム『ザ・ゲーム』を5/11にリリースします。ストックホルムのスタジオで一気に曲づくりを行い、元Stax Recordsの凄腕エンジニア、テリー・マニングと共にアルバムを仕上げたという注目作です。その内容は、彼らの持ち味である、卓越したメロディー・センスを、よりナチュラルに表現したもの。初期のドリーミーなシンセ・ポップとも、前作のダンサブルでダイナミックなバンド・サウンドともひと味違う、ソフトでロマンティックな音世界を楽しめる作品となっています。
ポップ・ミュージックの醍醐味が詰まった『ザ・ゲーム』。本作の内容について、バンドのリーダー、ベントに話を聞きました。ちなみに「The Thunder」は、渋谷がインスピレーションになっている曲だそうですよ。
DAS POP
鮮やかなメロディー・センスに磨きをかけた、
ジャンルを超越する実力派ポップ・バンド
__最新作『ザ・ゲーム』は、5年近くブランクを経てリリースされた前作『ダス・ポップ』と違い、言わば予定通りにリリースできたアルバムとなりましたね。
「うん、本当に! 今回は思った通りの、良いタイミングでリリースができた」
__そして、初のセルフ・プロデュース作品となっています。
「そうだね。僕らは、いろんなバンドのプロデュースをしてきたけど、自分達のプロデュースはしたことがなかった。それで、今回は自分達でやってみようってことになったんだ。ただ、自分でつくったものを自分でプロデュースするって、実際は難しいんだよね。全体を俯瞰するような視点が必要だから。でも今回は、すごく速いスピードで曲ができあがっていっていたから、たぶん他人の手を借りなくても一気に自分達でつくれるんじゃないか、ってことになってね」
__曲づくり、レコーディングは、どのように進めていったんですか?
「僕らは『ダス・ポップ』が出るまで、あえて曲づくりを禁止していたんだ。ツアーをやっていても、新曲ができてしまうと、そっちの方に意識が行ってしまって、これからステージでプレイする曲の方に愛情を注げなくなっちゃうしね。でも『ダス・ポップ』が店頭に並ぶと、僕らはすぐにストックホルムのスタジオに入って、曲をつくり始めた。そこでは、まるでシャンパンの栓がポン!って抜けたみたいに、ものすごい勢いで曲があふれてきたよ(笑)。ちょっとした歌詞、コード、フレーズを持って朝スタジオに入ると、夜までにはそれが完全な曲になっていた。一日一曲つくるような感じだったね」
__さらに今作では、テリー・マニング(元Stax Recordsの大御所エンジニア)とも作業をしたそうですね。彼との作業はいかがでしたか?
「セルフ・プロデュースするといっても、卓のところで絶妙にボタンを押してくれる誰かを見つけなきゃいけないからね(笑)。マット(Dr)の父さんは、昔バンドをやっていて、テリー・マニングと一緒に仕事をしていたんだ。それで、面識はなかったけど、“レコードをつくりに来たらいいよ”って言ってくれたんで、ニュージャージーにある彼のスタジオまで行ったよ。彼には彼のレコーディング方法というものがあって、それは僕らとはまったく違うものなんだけど(笑)、でも、それがすごく上手くいったね。テリーはオールドスクールなエンジニアだけど、本当に腕がいい」
__テリー・マニングとは、バハマのコンパス・ポイント・スタジオの近くにある、彼のツリーハウスでも作業を行ったそうですね。
「ニュージャージーでちょっとレコーディングをやって、それからバハマにある彼のスタジオ…家の庭にあるツリーハウスなんだけど、そこでミックスをしたんだ。ストックホルムで録った素材を、テリーのところで手直ししたり、音を足したりして、アルバムを完成させたってわけさ。ドラムはそのまま使ったけどね。スタジオにあったゴミ箱を叩いた音とか(笑)」
__では、そんな今作のアルバム・タイトルを、“ザ・ゲーム”とした理由について教えてください。
「タイトル曲の「The Game」ができた時、他のどの曲とも違うように感じたんだ。僕ら自身も驚いた曲だったよ。で、ゲームって、いろんな解釈ができる言葉だよね。愛かもしれないし、音楽業界のことかもしれないし、日々の生活のことかもしれない。様々なシーンにリンクする言葉だから、このアルバムをよく表しているタイトルだと思ったんだ。それに、以前クイーンが同名のアルバムを出していたし(笑)」
__音楽的には、前作以上に幅広い楽曲群が詰まった作品となっていますね。今作の曲づくりで特にチャレンジしたかったことは何でしたか?
「今作での大きなチャレンジは、自分達のルールを無視することだったと思う。昔は、カッコいいかとか、趣味がいいかとか、そういうことに結構気をつかっていたんだ(笑)。だから、ちょっと恥ずかしいなって思うような部分は、編集して削っていたりしていた。要するに、他人の目を気にしてたんだよ。でも今回は、“この曲にはサックスのソロが必要だ”って感じたら、それがカッコいいかどうかなんて考えず、“必要なら入れる”ってことにした(笑)。誰がどう思おうと関係なくね」
__前作よりも、ピアノを配した楽曲が多いこともあってが、全体的にナチュラルでソフトな印象もありますね。サウンドメイキング面では、どんなことを意識しましたか?
「確かにピアノを使ったのは、大きな変化だった。前作は、ドラムとギターが軸になっていたからね。当時はまだ三人組だったから、そうせざるを得ない部分もあったんだ。でも、その後マットが加入して、僕はたくさんピアノを弾けるようになった。今回は、ピアノでつくった曲がほとんどだったと思うよ。使えるものは使わないとね(笑)」
__分かりました。では最後に、今後の活動予定と、ダス・ポップの次なる目標について教えてください。
「今年は、ずっとツアーをしていく予定さ。まずはヨーロッパだけど、夏には日本にも行きたいな。日本のことはすごく心配していて、これから2Many DJsなんかと一緒に、ロンドンで開催されるチャリティー・イベントに参加する予定だよ。まだ余震が続いてるみたいだけど、早く良くなるといいね。僕らは、音楽は絶対に心の支えになってくれるって信じてる。僕らでも何か助けにはなると思うから、日本に行ってプレイしたいと思っているよ」
translation Nanami Nakatani
interview & text Fuminori Taniue
photo Jimmy Kets
【アルバム情報】
DAS POP
The Game
(JPN) EMI / TOCP-71084
5月11日発売
HMVで買う
tracklisting
01. ザ・ゲーム / THE GAME
02. スキップ・ザ・ロープ / SKIP THE ROPE
03. フラワーズ・イン・ザ・ダート / FLOWERS IN THE DIRT
04. ガール・ウルフ / GIRL WOLF
05. フェア・ウェザー・フレンズ / FAIR WEATHER FRIENDS
06. ロンギング・ザ・ライツ / WRONGING THE RIGHTS
07. アイ・ミー・マイン / FI ME MINE
08. ザ・サンダー / THE THUNDER
09. ゴールド / GOLD
10. キス・イズ・ノット・ア・クライム / A KISS IS NOT A CRIME
11. イェスタデイ / YESTERDAY
12. 楽しかったあの頃 / IT WAS A VERY GOOD YEAR [日本盤ボーナストラック]
13. ザ・サンダー(デモ) / THE THUNDER (Demo) [日本盤ボーナストラック]
【オフィシャルサイト】
http://www.emimusic.jp/intl/daspop/
http://www.daspop.com/
【VIDEO】