’05年に、Vulture Music/DefectedからLifelike & Kris Menace名義で発表した「Discopolis」が世界的ヒットを記録し、注目を集める存在となったダンス・ミュージック・クリエイター、クリス・メナス。自身のレーベル、Work It Baby、Compuphonicを中心に、2000年代初頭から様々な名義、プロジェクトでリリース活動を続ける彼は、その独特のテクスチャーをもったロマンティックなサウンドで、ジャンルを越えた評価を得ている実力派です。リミキサーとして、LCDサウンドシステム、アンダーワールド、デペッシュ・モード、カイリー・ミノーグ、メトロノミー、エールらの作品も手がけているので、ご存知の方もいるでしょう。
そんなクリス・メナスが、初のオリジナル・アーティスト・アルバム、『Electric Horizon』(エレクトリック・ホライズン)を4/15にリリースします。過去のシングルやリミックスをまとめた3枚組ワークス集『Idiosyncrasies』を’09年にリリースし、これまでのキャリアにひとつの区切りをつけてから、念願のアーティスト・アルバム制作のためにスタジオ入り。多くの時間を費やして完成させたという力作です。
ここでは、本作『Electric Horizon』の内容と彼の音楽観について話を聞きました。
Kris Menace『Electric Horizon』インタビュー
__アルバム『Electric Horizon』のリリース、おめでとうございます。
「ありがとう。なんとかアルバムという形にまとめあげることができて、今は、ホっとひと息ついているところだよ。楽曲制作はもちろんだけど、曲が形になったあとも、DJやプロモーションなど色々フォローしなければならないことが多くて、実はまだまだ道半ば、という感じなんだけどね。ツアーにも出なきゃいけないし。でも、すでに素晴らしいフィードバックをたくさんもらっていて、それが大きな励みと原動力になっているよ」
__まずは、ご自身の経歴について簡単に教えてください。
「プロフェッショナルな音楽キャリアがスタートしたのは、14歳のころだったと思う。クレジットには出ないんだけど、ゴーストライター的な受け仕事をその頃からやっていたんだ。DJも同じころにスタートしたね。’90年代の半ばころから、そんな感じで(他アーティスト向けの)楽曲制作、イベントの運営、DJなんかをやっていた。で、しばらくすると自分の楽曲も制作するようになって、そのリリースのために自然とレーベルを立ち上げる流れになった。昔からの友人だったイヴ(Yves Sticht)も手伝ってくれて、それでWork It Babyをはじめることになったんだ。レーベル初期のリリースは、ほとんどが自分たち関連か、友人の楽曲だったね」
__クリス・メナス名義以前のリリースには、どのようなものがあったんですか?
「多くがイヴとのプロジェクトだった。レーベルの最初のリリースだったRelightもそうだし、Stars on 33、Menace & Adamもそうだね。最初のシングル10枚のうち、半分は僕ら二人のリリースだったわけさ」
__あなたは、’05年にLifelike & Kris Menace名義でリリースした「Discopolis」で、一躍注目される存在となりましたね。Lifelikeとの出会いはどんな感じだったのでしょうか。
「Lifelikeとは、Work It Babyを通じて知り合ったんだけど、もともとお互いに30分くらいしか離れていない場所に住んでいたこともあって、すぐに仲良くなったよ。で、意気投合して、互いのビジョンを何となく交換しながら夜な夜な作業をして、気付いたらあの曲ができ上がっていた」
__分かりました。それでは『Electric Horizon』について教えてください。まず、今作に収録されている楽曲は、すべて『Idiosyncrasies』(’09)以降に制作されたものなのでしょうか?
「そうだね。全ての楽曲は、2011年に制作されたものだよ。実は去年1年間、ずっとボーカル・アルバムの制作に取り組んでいたんだ(編注:このボーカル作品は、2012年後半にCompuphonicからリリース予定、とのこと)。で、その合間の息抜きみたいな感じで、このアルバムに入っているインスト曲を、コツコツとレコーディングしていったんだ。ボーカル作品のレコーディングは、思ったよりも時間がかかってね。いつの間にかこのインストの方も相当数でき上がってしまったよ。で、あるときインスト曲だけを集めてドライブしながら聴いていたら、“ああ、これはこれで良いアルバム作品になるんじゃないかな”って思うようになって、それで『Electric Horizon』としてリリースすることになったんだ」
__アルバム・タイトルの由来は何ですか?
「ああ…というか、このアルバムをリリースすることになって、たくさんインタビューを受けてきたけど、タイトルのことを聞かれるのは今回が初めてだな(笑)。質問してくれてありがとう! もともとは、ただ“Horizon”にしようと思っていたんだ。僕にとって音楽というのはオープンマインドなもので、多くの異なる側面、別々の物事を結び付けているものだからね。ところが、ある友人がそこに“Electric”という言葉を持ってきた。確かに、僕の音楽にとってエレクトリックな側面というのは外せない要素だし、この二つ言葉の結び付きは、自分の音楽の本質をよく表しているように感じたよ。どことなくクラフトワーク的でもあるしね。というわけで、これは、ある種の偶然から誕生したタイトルなんだ」
__参加アーティストについても教えてください。
「サード・シングル「eFeel」には、koweSixが参加してくれた。彼と僕は、Black Vanというユニットを一緒にやっているんだ。あと、アルバムに収録したのはインスト・バージョンだけど、「We Are」にはボーカル入りバージョンもあって、それにはニューヨークのKiki Twinsというアーティスト参加しているよ。この『Electric Horizon』から次のボーカル・アルバムまでに、いくつかの橋渡し的なリリースをしようと思っていて…まだ詳しく話せないんだけど、とにかく期待していてほしいな」
__分かりました。ちなみに「Falling Star」と「eFeel」のビデオは、Hextaticが手がけていますね。
「僕は、昔からHexstaticの大ファンだったんだ。いつかコラボできたら、と思っていた。特に「Bass Invaders」が大好きだったよ。もともと前のマネージャーが、Hexstaticのロビン(Robin Brunson)とルームメイトだったんだ。それで「Invader」でコラボできて、彼らと知り合うことができた。だから、「Falling Star」が完成して、すぐロビンに連絡したよ。で、彼も気に入ってくれて、「Falling Star」と「eFeel」の映像をつくってくれることになった。ライヴも手伝ってくれるようになって、先日バルセロナのクラブ、Razzmatazzでやったステージでは、彼らが映像をつけてくれたんだ」
__ところで、あなたは日本を含め世界各地をDJしていますが、最も印象に残っているのはどこですか?
「もちろん日本だね、お世辞じゃなくて。4年くらい前に東京と大阪でプレイする機会があったんだけど、本当に素晴らしい体験だったよ。クラブ、オーディエンス、食べもの、文化、すべてが新鮮だった。あのときの記憶は、間違いなく自分のDJキャリアのハイライトさ」
__では最後に、今後の活動予定について教えてください。
「夏頃には、そのずっと温めてきたボーカル・アルバムをリリースするよ。何人もの素晴らしいミュージシャン、ボーカリストたちとタッグを組んでつくり上げたものだから、期待していてほしいね。あと、Stars on 33名義のアルバムも間もなく完成するよ。Black Vanの新曲もでき上がっているから、これも遠くないうちにリリースできると思う。あとは、サイモン(Simon Lord:The Black Ghosts)と新プロジェクトに取り組んでいるところさ。もう一つ別のプロジェクトも進行中で、こっちはもっとリスニング寄りの音なんだけど、夏過ぎには形が見えてくるかな。色々と同時進行して、忙しくやっていくよ」
photo Thommy Mard
【リリース情報】
Kris Menace
Electric Horizon
(JPN) calentito music/Compuphonic / RTMCD-1020
4月15日発売
HMVでチェック
tracklist
01. Falling Star
02. Trusting Me
03. Timeless
04. Efeel
05. Fly Me To The Moon
06. Schnulzenspiel
07. Electric Horizon
08. Enivrons-Nous D´Amour
09. Elove
10. Eglecy
11. We Are
12. Soulsurfer
【全曲試聴】
http://soundcloud.com/krismenace/sets/kris-menace-horizon-album
【オフィシャルサイト】
http://www.facebook.com/krismenace
http://www.krismenace.com/
http://calentito.net/