Ustream放送等を通じて、現在世界中の音楽リスナーから注目を集めている秋葉原のDJバー、MOGRA。そのMOGRA初となる公式DJミックスCDコンピ、『MOGRA MIX VOL.1 mixed by DJ WILDPARTY』がリリースされました。ミックスを手がけたのは、横浜出身で現在24歳のDJ WILDPARTY。彼のDJスタイル、そしてMOGRAのパーティー・フィーリングを捉えたその内容は、アニソン、アイドル、J-POP、ボカロ曲、そしてクラブ・ミュージックまでを縦横無尽にミックスしたものとなっています(詳しくは、是非トラックリストをご覧ください)。
いわゆる“既存の枠組みに収まらない選曲”と呼ばれる選曲をさらに上まわる、唯一無のヴァラエティーを誇りながらも、全体の統一感も保たれている『MOGRA MIX VOL.1 mixed by DJ WILDPARTY』。ここでは、そんな日本発の新世代・新時代ポップ・ダンス・ミックスの内容とその醍醐味について、DJ WILDPARTYに話を聞きました。
『MOGRA MIX VOL.1』DJ WILDPARTYインタビュー
__DJ WILDPARTYさんは、もともとブレイクコア~エレクトロニカ系のDJとして活動を始めたそうですが、そういった音楽、サウンドに魅力を感じた経緯、そしてDJを始めたきっかけについて教えていただけますか。
「もともと聴いていた日本語ラップやヒップホップとかで、曲の方を凄く意識して聴いていたのもあってビートに注目し始めて、エレクトロニカに辿りついた感じです。丁度Machine DrumやPrefuse73が話題になって、その時期に流行っていたというのもあるんですが、エレクトロニカはメロディーのキレイさとか、ボイスのカットアップとかがすごく魅力的でした。ブレイクコアは、エレクトロニカの時と違って、兄がある日“ブレイクコアっていう凄いジャンルがあるんだよ!”とレコードを買ってきて、聴かせてくれたのが始まりでした。あり得ないサンプリング・センスとエディットに思わず笑ってしまって、でも掘ってみるとシリアスでかっこいい曲も多くて、その極端な振れ幅にどんどんハマっていきました」
__なるほど。
「その兄が、本当に色々なジャンルで曲を掘っていて、面白い曲を見つけてきては聴かせてもらって、というのを繰り返していく内にDJがやりたくなってきて、兄がある日友人からタンテ(ターンテーブル)とミキサー一式を安く手に入れてきたのがきっかけで、DJを始めました。最初は兄と共同でイベント企画したりと、オーガナイザー的なこともやってました」
__DJ活動をしていく中で、“MOGRA”を知り、“MOGRA”でDJをするようになった経緯や理由は何だったのでしょうか?
「Maltine RecordsのTomadとはDJ始めた頃くらいから知り合いで、彼の主催するイベントに出演させてもらっていたんですが、その中の一つにMOGRAで開催されるものがあって、それがMOGRAを知るきっかけでした。でもその時は、MOGRAもオープンして間もない頃だったので、そのイベントが騒音苦情によって中止になってしまい、自分はDJができなかったんです。その時に店長のD-YAMAが色々気にしてくれて、他のMOGRAのパーティーで呼んでもらったりと交流していく内に、MOGRAも改装したり、スピーカー増設したりとドンドン良いお店になっていき、今の“MOGRAらしいオールジャンル感”を確立して、その感じが自分のDJと凄く相性が良くて、色々とブッキングしてもらえるようになりました」
__DJ WILDPARTYさんの立場から、“MOGRA”というスペースの魅力や醍醐味、またそのオリジナリナリティーについてご紹介いただけますか?
「MOGRAは、これまで言われてきていたのと違った“オールジャンル”が、最大の特徴だと思います。アニソンオンリーのイベントと、しっかりとテクノやハウスだけがかかるイベントが、レギュラーとして同じ場所で開かれていて、それが両方とも受け入れられている。さらには両者が一緒になった、アニソンもクラブ・ミュージックも両方かかるイベントもある。例えば、アニソンのパーティーでレギュラーをやっているDJが、他のイベントでも名義を変えずにクラブ・ミュージックのDJをしていて、それが成立するのがMOGRAです」
__どうしてそういったことが可能になったんでしょうね。
「それは、そういう幅を持ったDJが増えてきたのは勿論、それを受け入れられる懐の深いお客さんが来てくれて、支持してくれているのが一番の理由だと思います。そうした魅力は、最初からあったわけではなく、皆が根強く活動してきた結果広まっていって、今があります。だからこそ、今のこの魅力が一過性のものではなく、また新しい世代になっても次へと繋がっていくものだと思っています」
__では、MOGRA初の公式DJミックスとなる『MOGRA MIX VOL.1』について教えてください。まず、作品全体のテーマやコンセプトについては、どのようなものになっているのでしょうか?
「“ボーカロイド”、“ネット・レーベル”、“DJ”といった、自分の周りでは当然のように使われている言葉も、他の人達からすればよくわからないものであることが多々あります。それを先程の“MOGRAの新しいオールジャンル感”でまとめて、秋葉原やインターネットで生まれたカルチャーを広く知ってもらおう、という思いでつくりました。ミックス・コンピレーションCDという形態なのも、自分がDJとして音楽を一曲ずつ聴いて楽しむだけではなく、それがつながっていくことによって新しい聴こえ方や魅力を見つけられるという喜びを実感してほしい、という思いが込められています」
__具体的な選曲面については、どのような基準で、どのような点を重視してチョイスしましたか?
「J-POP、アニソン、クラブ・ミュージックといった要素が、どれか一方でも偏りすぎないように、なおかつパーティー感であったり、聴いている人の感情に訴えるようなエモーショナルな感覚、“楽しさ”や“前向きさ”といったメッセージ性を重視した曲で、選曲しました。あとは若い世代、今17歳や20歳で活動しているトラックメイカーをしっかりと紹介しよう、と決めてました。現在、CDや雑誌ではなくインターネットを通して音楽を聴いている若い世代による曲が発表され始めていて、それらの楽曲にも、この『MOGRA MIX VOL.1』でコンセプトに上げているような、オールジャンルを感じさせる要素が多く見られます。だからこそ、まだ大きく取り上げられていないですが、彼らの持つ世代感や熱みたいなものも大事にしました」
__ミックスの構成については、どのようなことを意識して制作に取り組みましたか?
「ドラマやアニメの主題歌、またはネットで発表されている若手の楽曲が入っていると思いきや、DigitalismやDanny Byrdといった本場の第一線で活躍しているクリエイターの曲も収録されているなど、端から見るとすごく雑多に見えるかもしれないけど、聴いてみるとまとまっていて自然に聴こえる、というのはかなり意識しています。あと、最後の曲に向けてBPMが早くなって、ドラムンベースへと展開していくように高揚感を高めていくような流れは、ミックスをつくっていく上で凄く大事にしました」
__DJ WILDPARTYさんの中では、多岐にわたる楽曲群のどんなポイントを捉えて、どのような方法で仕分け~分類しているのでしょうか? そのイメージを、説明できる範囲でけっこうですのでちょっと教えてください。
「自分はもとからDJで使う曲をほとんど整理していなくて、“四つ打ち系”って書かれたフォルダの中にハウスからテクノ、ダブステップ、ドラムンベース等々とにかく曲を詰め込んでいて、イベント前にどういうイベントか、どういう客層かを考えながら、“このイベントでこういう客層だったらこの曲が合いそう”、“自分の前のDJはハウスだから最初はハウスから繋いでいこう”とか、予想しながら選曲してます。雑多に詰め込みすぎで選曲には時間がかかっちゃうんですけど、だからこそ、その分ジャンルとかに縛られないDJができているんだと思います」
__本作には、アルバム限定オリジナル曲として、RE:NDZ「White Out」、fu_mou「Abyssal Drop」、buzzG ft. GUMI (extend Power Rev. Zero)「祭囃子 (fu_mou Remix)」も収録されていますね。それぞれ、アーティストと楽曲について、ご紹介ください。
「RE:NDZは、livetuneとして初音ミク等ボーカロイドの作曲をしているkzさんの別名義で、今回の「White Out」もボーカロイドではない、インストの四つ打ちダンス・ミュージックをつくっていただきました。自分の中では、ボーカロイドを使ったダンス・ミュージックでは日本で一番クオリティーの高い曲をつくる人の一人なんですが、今回もインストだけれど日本人らしいエモさを持った高揚感のあるメロディーといい、それを生かす構成力といい、素晴らしい曲を提供してもらいました」
__fu_mou「Abyssal Drop」はいかがですか?
「fu_mouさんはALTEMA RECORDSというネット・レーベルからアルバムをリリースして、注目を集めた方です。ルーツはロックにありますが、エレクトロニカもつくっていたこともあり、繊細な音づくりと、ボーカルとして自分で歌うというポップスのセンスを持っています。「Abyssal Drop」は、その活動初期にデモとしてつくられた曲を今作のために再構成したもので、fu_mouさんのセンスや世界観が十二分に詰め込まれた曲になっています」
__buzzG ft. GUMI (extend Power Rev. Zero)「祭囃子 (fu_mou Remix)」はいかがですか?
「buzzGさんも、kzさんと同じくボーカロイドで作曲を行っている方ですが、kzさんとは違いギター、ベース、ドラムといったバンド・サウンドで曲をつくっています。「祭囃子」は、そんなbuzzGさんの代表曲であり、オルタナ感のある激しいサウンドに非常に日本人らしい叙情的な歌詞が混ざり合う、特徴的な曲になっています。で、その曲をfu_mouさんにドラムンベースへとリミックスしてもらったのが、今回収録されている曲になっています。fu_mouさんのエモのセンスに、buzzGさんの歌詞の世界観が凄くマッチしていて、ミックスの最後を飾るのに相応しい曲に仕上げてもらいました」
__上記の他に、本作の中でDJ WILDPARTYさんが特に気に入っているトラック、注目しているアーティストがありましたらご紹介ください。
「「Soda float」というダブステップを提供してくれたmononofrog_4skは、20歳前後で若いながらも、クオリティーの高い楽曲を制作していて注目しています。あと、『MOGRA MIX VOL.1』には収録されていませんが、banvoxというトラックメイカーも17歳と若くて、両者とも現段階でも十分良い曲をつくるのですが、さらにこの先もクオリティーが上がっていきそうな予感がしていて、非常に楽しみです」
__“MOGRA”で現在展開されているサウンド、そしてパーティーのフィーリングは、今後どのように発展、進化していくと考えていますか?
「先に紹介した二人以外にも、若いながらもクオリティーの高い楽曲を制作しているクリエイターは沢山います。それだけじゃなく、数多くの方がMOGRAに興味をもって接してくれているのを見ると、まだまだ広がっていく予感がすごくするし、実際にこの周辺のDJやトラックメイカーが渋谷asiaを満杯にして沸かせたイベントもあって、MOGRAもそのカルチャーの一端として広がっていくと考えています」
__最後に、DJ WILDPARTYさん次なる活動目標、今後の活動予定等について教えてください。
「今も色んな場所で出演させて頂いておりますが、さらにもっと大きいステージでも活動しようと頑張っています! 『MOGRA MIX VOL.1』のリリースにあわせて全国ツアーも行っていくので、全国の色々な場所でDJを聴いていただけたらな、と思います」
interview iLOUD
【リリース情報】
V.A.
MOGRA MIX VOL.1
mixed by DJ WILDPARTY
(JPN) EMI / TOCP-64404
発売中
HMVでチェック
tracklist
01 柴咲コウ / 無形スピリット [ドラマ『LADY~最後の犯罪プロファイル~』主題歌]
02 ニルギリス / SHINY SHINY (livetune Remix) [アニメ『Deadman Wonderland』主題歌のリミックス]
03 DJ KAWASAKI / Paradise feat. COMA-CHI
04 Digitalism / Blitz
05 TeddyLoid / Fly Away [アニメ『Panty and Stocking with Garterbelt』テーマ]
06 baker feat.初音ミク / This love will not be successful
07 らっぷびと / Like! Like! Like! feat. 桃井はるこ (PandaBoY Remix) [アルバム限定リミックス]
08 八王子P / エレクトリック・ラブ feat.初音ミク
09 kanon × kanon / 恋の道程 (madmaid 17’s DT Bassline remix) [アニメ『30歳の保健体育』主題歌のリミックス]
10 桃井はるこ / かがやきサイリューム -RAM RIDER in MOGRA REMIX-
11 Lia / My Soul, Your Beats! (Rasmus Faber Remix) [アニメ『Angel Beats!』主題歌のリミックス]
12 芳川よしの feat.カリソ / Entertainer2010
13 RE:NDZ / White Out [アルバム限定オリジナル曲]
14 fu_mou / Abyssal Drop [アルバム限定オリジナル曲]
15 Digitalism / Pogo (Shinichi Osawa Remix)
16 mononofrog_4sk / soda float
17 Danny Byrd feat. Netsky / Tonight
18 DE DE MOUSE / new town romancer
19 HONDALADY / 青春の蹉跌
20 buzzG feat. GUMI (extend Power Rev.Zero) / 祭囃子 (fu_mou Remix) [アルバム限定リミックス]
【オフィシャルサイト】
http://www.emimusic.jp/release/detail/59362/
http://club-mogra.jp/
【ツアー情報】
DJ WILDPARTY、D-YAMA、fu_mou、PandaBoYを中心に、
MOGRAを代表するDJ、ライヴアクトによる大規模な全国ツアー開催!
MOGRA MIX VOL.1 Release Tour powered by pioneer dj
2012:THE YEAR OF GEEKS
4/16(月)秋葉原 MOGRA(Ust放送)時間:21:00~22:00
4/22(日)仙台 SHAFT、仙台fam(デイイベント/二ヶ所同時開催)
5/20(日)名古屋 MAGO(デイイベント)
5/26(土)沖縄 Livehouse output(オールナイト)
5/27(日)札幌 VIYATTO(デイイベント)
6/03(日)高松 SWAGG(デイイベント)
6/09(土)浜松 FORCE(オールナイト)
6/16(土)新潟 The PLANET(オールナイト)
6/30(土)秋葉原 MOGRA(オールナイト)