OGRE YOU ASSHOLE『homely』インタビュー


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2001年に長野県諏訪で結成されたロック・バンド、OGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)。現在のメンバーは、出戸学(Vo/G)、馬渕啓(G)、勝浦隆嗣(Dr)の三名(編注:ベースの平出規人は、“お互いの未来を考慮した上での発展的な離脱”により、8/5にグループを脱退した)。USインディー・ロックのエッセンスを吸収した、オーガニックかつ実験的なサウンドで高い評価を得ている人気バンドです。’09年にはメジャーに移籍し、シングル『ピンホール』(’09)、アルバム『フォグランプ』(’09)、ミニアルバム『浮かれている人』(’10)をリリース。さらなるファン層を獲得しています。

そんな彼らが、通算4作目となる待望のニュー・アルバム『homely』を8/24にリリースします。前作同様、ゆらゆら帝国との仕事で知られる石原洋をプロデューサーに、中村宗一郎をエンジニアに招き、新たな音楽性を打ち出すべく、“居心地が良くて、悲惨な場所”をコンセプトに制作した注目作です。

ここでは、メンバーの出戸学さんに、本作『homely』の内容について聞きました。


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OGRE YOU ASSHOLE

コンセプト・アルバムでさらに新しい音世界を打ち出した、
唯一無二のセンスを誇る個性派ロック・バンド

__最新アルバム『homely』の構想、青写真は、どのようなアイディアからスタートしましたか?

「前作の『浮かれている人』(’10/ミニアルバム)を録り終わった時点から、もうこのアルバムのことは考え始めていて、コンセプト・アルバムにしようと思っていましたね。で、去年末くらいから、そういうアイディアをともに曲をつくりはじめた感じでした」

__そのアルバムのコンセプトとは、どのようなものでしたか?

「“居心地が良くて、悲惨な場所”…みたいな」

__このコンセプトは、サウンド面も含めて『浮かれている人』で得たものから出てきたものだったんですか?

「いや、そこに関しては、『浮かれている人』とはあんまり関係ないと思いますね。ただ、『浮かれている人』の後に、アナログで500枚限定のリミックス盤『浮かれている人 Twilight Edition EP』を出したんですけど、その時の感触は少しこのアルバムにも伝わっていると思います」

__どうして“居心地が良くて、悲惨な場所”をコンセプトに、作品をつくってみたかったんでしょうか?

「コンセプト・アルバムをつくろうと思った時に、自分の中で昔からそういうものの見方をしているってことに、逆に気づかされたんだと思います。いままでは、言葉に変換しようとは特に思ってなかったんですけど、今回は、この自分が持っていた“感じ”をメンバーにちゃんと伝えなきゃなって思って、その時に“居心地が良くて、悲惨な場所”という言葉が出てきたんです。“浮かれている人”というタイトルも、その範疇に入る言葉だと思うんで、何を表現したいってなった時に、自分には昔からそういうところがあって、そういうのが自然と出てくるのかなって思いますね」

__では、アルバム・タイトルの“homely”という言葉には、どんな気持ちが込められているのでしょうか?

「“居心地が良くて、悲惨な場所”を表現したいい言葉はないかなって辞書で調べていた時に、たまたま“homely”という言葉が見つかって、英語だと“心地よい、気持ちが安らぐ、家庭的な”といった意味なんですけど、米語だと“容姿が劣っている、不器用な”とか、ちょっと軽蔑的な意味合いも含まれていたので、今回のテーマを一言で表している言葉だと思ったんです。見つけた、って思いましたね」

__で、今作には、トランペット、サックス、フルート、女性の語り、女性コーラスの人達が、参加ミュージシャンとしてフィーチャーされていますね。彼らには、アルバムのコンセプトを実現すべく参加してもらった形ですか?

「そうですね。自分達でデモをつくっている段階から、管楽器を使うアイディアがあったので、今回は管楽器を入れようと思ってました。「フェンスのある家」に入っている女性の語りは、石原さん(プロデューサーの石原洋さん)のアイディアでしたね。“イントロ部分をもうちょっと長く演奏しよう”というアイディアから、出てきたものでした」

__どうして管楽器を入れようと思ったんですか?

「サックスの音色やA.O.R感って、ちょっとうさん臭さがあったりするじゃないですか。で、そういった要素が、僕らのバンド・サウンドに入ることによって、ある種のちぐはぐ感はあるんですけど、“居心地が良くて、悲惨な場所”というテーマと感覚的に近くなるって思ったんです。一見居心地がいい、心地いいサウンドなんだけど、よく見るとヘンなものになっている、異物感のあるサウンドになっている。サックスの音は、今回のコンセプトとシンクロしたというか…そういう感じですね」

__A.O.R.感のあるサウンドというのは、バンドとして自然と出てきた音楽的要素ではなく、“居心地が良くて、悲惨な場所”というイメージに合わせて出てきたものなんですね。

「そうです。もともとA.O.R.っぽいサウンドは嫌いじゃなかったですけど、今回のコンセプトにハマりそうだなってことですね。A.O.R.が好きで、そのままA.O.R.をやったら、もっとイージー・リスニングな雰囲気で、もっとカチっとしたサウンドになっていたと思うんですけど」

__出戸さんは、そもそもA.O.R.やフュージョン系のサウンドには、どのような形で接していたんですか?

「子供の頃、車の中でスティーリー・ダンがかかっていたりしていたんで、聴く機会がけっこうあって、そういった音楽がどういう気分なものかということも、なんとなく分かっていたと思いますね。子供の頃は、親が聴く音楽だと思っていたんですけど、今回のテーマにも合う音像だと思ったんで、そういった要素を取り入れるとバチっときそうな気がしたんです」

__なるほど。では、曲づくりも、これまでとは違うアプローチで取り組んだのでしょうか?

「そうですね。いままでの僕らの楽曲って、二本のギターが単音で絡み合う…みたいなのが特徴的で、それがOGREらしさになっていたんですけど、今回はそれを禁じ手にしようというとことからスタートしました。今回は、そういったバンドの特色を出すというよりも、コンセプトの雰囲気に忠実な音選びをしていこうという感じで、安易にそこに触れないようにはしましたね」

__曲づくり自体は、どのようにして作業を進めていったんですか?

「デモは、僕とギター(馬渕啓さん)の二人でつくっていきました。で、お互いに、“今、こういう曲があるから、次はこういう曲がほしい”って相談をしながら、できるだけアルバムの9曲が一つのベクトルを向くような、一つの作品になるような意識でつくりましたね。楽曲も、リリックも、アートワークも、今回はみんな同じ方向をむくようにつくっていきましたよ」

__音づくりの面では、どんな部分を意識しましたか?

「ギターの音色は、結構一つ一つ時間をかけて選んでいきましたね。ソロ部分の音色も、曲の雰囲気、コンセプトの雰囲気に合ったものを選んでいきました。いままでは、わりとライブで使っているような、手元にあるエフェクターを使っていたんですけど、今回はイメージ先行で、イメージに合った音を選んでいきましたね」

__コンセプト・アルバムをつくるという部分で、演奏面での苦労は何かありましたか?

「今回、レコーディングの途中でベース(平出規人さん)が辞めたんで、ベースはギターの馬渕が弾いたんですよ。僕自身はベースを弾かなかったんで分かりませんけど、やっぱりギタリストとベーシストの違いといいますか、その差が身に染みたみたいでしたね。ベースの練習には苦労したようです。「ロープ」のベースは、平出君がやってますけど、他は馬渕が弾いてます」

__ちなみに、今作もエンジニアに中村宗一郎さん、プロデューサーに石原洋さんを迎えて制作していますが、彼らとの作業のどんなところを気に入っているのでしょうか?

「今のバンドは、Pro Toolsを使うことも多いと思うんですけど、中村さんはそういったものは一切使わず、僕らの好きな、中村さんのスタジオじゃないと出ない独特の音の質感にしてくれるんですよ。ちょっとした言葉を伝えるだけで、僕らの好きな音の方に寄せてくれるんで、意思疎通も取りやすいですね。石原さんに関しては、突拍子もないアイディアをポンって出してくるんですけど、僕らの持ってきた曲にそれが一つ付け加えられるだけで、曲が生き生きとして、その要素が欠かせないものになる。そういう瞬間が結構ありますね。サウンド・プロデューサーって感じです」

__Pro Tools等の機材を使わないとなると、特にこうしたアルバムの場合、制作作業が大変ではなかったですか?

「大変なんですけど、Pro Toolsとかを使うとツルっとした音になるというか、全てを操れるからハプニングがないというか、どこか面白みがなくなってしまって、僕らはそういうのはあんまり好きじゃないんです。僕らは、もっと人がやってる感じ、ゴツゴツした感じが欲しかったですから」

__リード曲に選ばれている「ライフワーク」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?

「リリックに関しては、“終わらない感じ”ですかね。何を成し遂げても終わらない感じ。そこに着いたからといって、そこで満足しない。その感じです。楽曲的には、アルバムの中でちょっとテンションが違うものになっているんで、アルバムの中から外そうかな、とも思っていた曲でしたね。迷いました。でも、PV曲はまた違う曲になるんですよ」

__それは、どの曲ですか?

「「ロープ」ですね。今、PVを制作中です。この曲は、もともとBPMが高めだったんですけど、曲が揃っていくうちにテンションが他と合わなくなったんで、BPMをかなり落として、ミニマルな感じで再アレンジしました。歌詞に関しては、“新興宗教にハマっていく友達を助けたい”といったような…そんな感じでしょうか」

__ちなみに、今作の中で、最初にでき上がった曲は何だったんですか?

「「ライフワーク」「フェンスのある家」「同じ考えの4人」の3曲は、ほぼ同時期に、最初にできた曲でした」

__「同じ考えの4人」は、特に新展開というか、面白い曲ですね。

「火サス、みたいな感じがありますよね(笑)。みんな、今回のモードは分かっていたんで、曲を持っていっても問題はなかったですよ」

__ところで、出戸さんの中では、“居心地が良くて、悲惨な場所”とは、他の言葉で表現するとどんな感じになりますか?

「酔っぱらっている人がいて、自分は酔っぱらっていて気持ちいいけど、ちょっと違う視点から見ると、その人は悲惨に見える…そういう感じですかね。僕は、どちらかというと客観的に見れない方で、居心地がいい中にいたいんですけど、チラチラそういうことに気づく瞬間があるんです。で、それは、どんな状況においてもそういうものだなぁって気がしているんです」

__独特の視点、感覚ですね。では、最後に今後の活動予定を教えてください。

「このアルバムのライブ、ツアーがあります。今回は、バンドというスタイルをわりと崩したアルバムをつくったんで、ライブではちゃんとバンド・アレンジし直して、やっていこうと思ってます」

text Fuminori Taniue


【アルバム情報】

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OGRE YOU ASSHOLE
homely
(JPN) VAP / VPCC-81694
8月24日発売
HMVでチェック


tracklisting
1. 明るい部屋
2. ロープ
3. フェンスのある家
4. ライフワーク
5. 作り物
6. 同じ考えの4人
7. ふたつの段階
8. マット
9. 羊と人

【Official Website】
http://www.ogreyouasshole.com/
http://www.vap.co.jp/oya/

【LIVE INFORMATION】
8/27(土)ARABAKI ROCK FEST.11 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
9/10(土)BAYCAMP 2011 川崎市東扇島東公園
9/21(水)TOWER RECORDS高知店10th×楽器堂30th presents「NO MUSIC,NO SARY」

「homely」リリースツアー
9/03(土)新潟 CLUB RIVERST
9/11(日)札幌 cube garden
9/17(土)広島 NAMIKI JUNCTION
9/18(日)福岡 DRUM Be-1
9/22(木)岡山 PEPPERLAND
9/24(土)大阪 BIGCAT
9/25(日)名古屋 CLUB QUATTRO
10/01(土)沖縄 桜坂セントラル
10/08(土)松本 ALECX
10/10(月祝)東京 赤坂BLITZ
10/16(日)仙台 HOOK

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