バイオリンを弾いていた祖父の影響で、3歳の頃からピアノを弾き始めたという島崎ひとみ。一時は、『ショムニ』、『救命病棟24時』、『古畑任三郎』といった人気ドラマに女優として出演していたという、ちょっと変わった経歴を持つアーティストです。とはいえ、そのソングライティング能力、歌唱力は出色で、2008年に発表した「口づけ」は、クラブ・シーン、ポップ・シーンを横断して話題となりました。
そんな彼女が、ファースト・フルアルバムをリリースしました。代表曲の名前をタイトルに冠したこの作品には、ナカムラヒロシ、石井マサユキ、朝本浩文といったプロデューサー陣に加え、田村玄一、井上富雄、屋敷豪太、philip woo、Kenji Suzukiといった名うてのミュージシャンたちが参加しています。
はたして本作は、どんなところから生まれてきたのでしょう? 島崎ひとみ本人に、対面で聞いてみました。なお、インタビューには、彼女が所属するGrand Galleryのプロデューサーを務める井出靖氏にも同席いただきました。
島崎ひとみ
柔らかく、透明な歌声を響かせる
自然派アーティスト
――島崎さんは、音楽大学に通っていたそうですが、ということは、ずっとクラシックを聴いてきたのでしょうか?
「そうですね。基本的にはクラシックを聴いてましたね。小さい頃から。でも、ポップスも好きで、ドリカムとか聴いてました」
――音大卒業後は、女優になり、有名なドラマにも出演されていますが、ここでいったん女優の道に入ったのは何が原因だったのでしょう?
「スカウトされたんです。で、オーディションを受けないかっていう話になりまして、オーディションを受けたら、お芝居もしたことないのに通ってしまって」
――その後、井出さんとお会いして、2008年にGrand Gallery-Japanからデビュー・ミニ・アルバムを発表したわけですね。
井出「そうですね。でも、ゆっくりやっていたので、出会ってからミニ・アルバムが出るまで、3~4年かかりました」
――そのミニ・アルバムにも収録されていて、新作でも輝きを放っている「口づけ」は、島崎さんにとって最初のヒット曲と言えると思うのですが、この曲が生まれた過程を教えてください。
「この曲に関しては、最初のワンフレーズが、詞と曲、同時にできましたね。そこからはスッとできました」
――この曲は、ちょっと悲しいラブ・ソングですが、歌詞はどこから生まれてきたのでしょう?
「メロディーの響きとか、メロディーの響きが持つ世界観とか、ですね。あと、自分がふと思ったこととか、何かを見て感じたこととかを、書きためてたりするので、それがつながって」
――このたびリリースされたフル・アルバムのタイトルを、『口づけ』としたのには、やはりこの曲に思い入れがあるからでしょうか。
「そうです。井出さんと最初につくらせていただいたのがこの曲で、この曲からいろんなことが始まったので」
井出「彼女は詞曲つくるんですけど、ピアノと歌だけでなんで、アレンジは僕が大体方向性を決めています。彼女の雰囲気にあわせて、ダウンテンポのソウルとか、UKの風味とかを意識していますね」
――どの曲を聴いても、柔らかく、透明な歌声が印象的ですが、影響を受けたボーカリストはいますか?
「リッキー・リー・ジョーンズとか、シャーデーとか、声に自分が魅力を感じる人の影響は、受けていると思います」
――メロディーは、どんなところから生まれてくることが多いのでしょう?
「日常生活の中で、アンテナにキャッチする感じです。曲をつくろうというアンテナは常に立っているんです」
――ということは、何かに触発されてメロディーを書くというよりは、まっさらなところにメロディーが降ってくるという感じなんでしょうか?
「そうですね。そんな感じです。なので、常に自分をまっさらにしておこうという意識はあるんです」
――では、“こんな曲を書こう”というところがスタート地点になることは、ないんですね。
「今のところないです。つくろうと思うと、違うところに力が入ってしまうので」
――自然派なんですね。普段の暮らしも自然派ですか?
「そうですね、かなり。食べ物とかも、身体が嫌がらないものを食べたり」
――アレンジ的には、生楽器の響きを重視していますよね?
井出「彼女も、僕らの周りにいて、ミュージシャンの人と知り合うことが多くなってきたんで、だったら生演奏でできるものがいいんじゃないかってことで、やってみました」
――島崎さんが、アレンジに参加することはあるんですか?
「いえ、おまかせで。自分の想像をはるかに超える、素敵なものにアレンジしていただけるんで、いつもすごく楽しみです」
――アルバム中に、「口づけ」以外で、特に思い入れのある曲はありますか?
「どれにも思い入れはあるんですけど、「春待風」かな。「口づけ」に近い感じでスルッとできた曲で、朝本さんにすごい素敵なアレンジをしていただいたので」
井出「すごいイイ曲だなと思ったので、今回一曲目に持ってきました」
――アルバムは、リスナーにどんな風に楽しんでもらえたらよいと思っていますか?
「仕事が終わって家に帰る車の中とか、お風呂から上がって、ちょっとお茶飲んだりするときとか、心をほぐす、ホッとするときに聴いていただけたら嬉しいですね」
――今後の予定などありましたら、教えてください。
井出「いろんなスタイルで、ライブをやっていくと思います」
――4月20日には、UK楽曲のカバー集『SINGS UK CLASSICS』も出るんですよね。
井出「はい。オリジナルとカバー集で、多面性が見せられるかと思います」
――UKソウルからパンクまで、かなり幅広い楽曲をカバーしていますよね。歌ってみて、どうでしたか?
「発見がたくさんありましたね。世界観を広げるって、こういうことなんだなって思いました」
――最終的にアーティストとして目指しているところは、どんなところですか?
「シャーデーさんみたいに、すごく上質で素敵な音楽を、自然に紡いでいくのが理想ですね。日本だけじゃなく、いろんなところで歌ってみたいです」
interview & text TOMO HIRATA
【アルバム情報】
島崎ひとみ
口づけ
(JPN) Delicious Deli Records / UICV-1010
HMVでチェック
HITOMI SHIMAZAKI
SINGS UK CLASSICS
(JPN) Grand Gallery Japan / GRGAJ-0007
4月20日発売
HMVでチェック
【LIVE INFORMATION】
“島崎ひとみ デビューアルバム 発売記念ライブ”
・Guest NANASE
2011年4月19日(火) 西麻布新世界
予約¥3,000 当日¥3,500
OPEN 18:00 START 19:00
【Grand Gallery × Delicious Deli Records presents -Music for Daily Life-】
日常生活に溶け込む、良質な音楽を発信しているGrand Gallery × Delicious Deli Records。そのレーベル・コンセプトにちなんで、シチュエーションにマッチする楽曲を、島崎ひとみにセレクトしてもらいました。
春の暖かい日に、心をなごませてくれる曲 Best 5
1.Sade / Babyfather
タイトルの“Babyfather”は、ジャマイカ語で“未婚の父”という意味だそうで、子供さんへの強い愛情と 自分の生き様に向き合う強さを、優しさの中に感じる曲です。凛として かっこよいなぁ。
2.土岐麻子 / How Beautiful
ファンタジックな世界の中で 土岐さんの歌声がとても心地よいです。ほんわかと陽がさして こころがクリアになるような気持ちにさせてくれます。気持ちよいなぁ。
3.Henri Salvador / La Vie C’est La Vie
太陽の光が柔らかく輝く空気感の中、Henri Salvadorさんの、味わい深く穏やかな歌声に 思わずこちらも微笑んでしまいます。なんだか“人生は素晴らしいんだよ”と 優しく言ってくれているようです。あたたかいなぁ。
4.Corinne Bailey Rae / Call Me When You Get This
冷たい季節を越えて “はじまり”を感じさせてくれる曲。Corinneさんの 温かみのある声とグルーヴにそっと包みこまれます。ほぐれるなぁ。
5.島崎 ひとみ / KID
ジャケットの写真の世界観のような 水辺から吹く きれいな風を感じる曲です。竹中さんのギターが 風が含む水の粒子をキラキラさせてくださっているよう。爽やかだなぁ。(『SINGS UK CLASSICS』収録)