St. Vincent『Strange Mercy』インタビュー


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ニューヨークはブルックリンを拠点に活動するアーティスト、セイント・ヴィンセント。本名、アニー・クラーク。ポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのツアー・メンバーを経て、’07年に4ADから『Marry Me』でソロ・デビューを果たした彼女は、続くセカンド・アルバム『アクター』(’09)でその非凡な音楽的才能が開花し、インディー・シーンを中心に高い評価を獲得している注目株です。ベック、アーケイド・ファイア、グリズリー・ベアなどアーティスト達からの支持もあつく、音楽通なら要チェックの逸材といえるほどの人気を誇っています。

そんなセイント・ヴィンセントの最新作『ストレンジ・マーシー』の日本盤が、11/23にリリースされました。海外メディアのアルバム・レビューで軒並み高得点をたたき出した話題作です。その内容は、彼女が打ち出してきたアーティーでひねりのきいたサウンドを、より耳馴染みの良い音世界へと発展させた、ポップでハイセンスなもの。シングル「Cruel」を筆頭に、彼女の美しい歌声、卓越したミュージシャンシップを堪能できる、開放的な作品となっています。

ここでは、本作『ストレンジ・マーシー』の内容とその音楽的背景について、セイント・ヴィンセントにメール・インタビューで話を聞きました。なお彼女は、2012/1/10(火)に東京 渋谷DUO Music Exchangeで、待望の来日公演を行う予定となっています。


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St. Vincent『Strange Mercy』インタビュー

__まずは、あなたが音楽に興味を持ったきっかけ、ギターを弾くようになったきっかけについて教えてください。ギターは、12歳の頃に始めたそうですね。

「物心ついた頃には、すでに音楽に夢中だったわ。一番最初に買ったカセットテープは、マイケル・ジャクソンの『バッド』で、擦り切れるまで聴いたわね。で、12歳の時にニール・ヤングになりたくてギターを弾き始めたの」

__影響を受けたミュージシャンやシンガー~ボーカリストがいましたら、少しご紹介いただけますか? また、バークリー音楽大学では、どの分野を主に学んでいたんですか?

「私はバークリー音楽院を中退しちゃったし、何の学位を取ろうとしていたかもよく覚えてないわ。音楽ビジネスについて学ぶには、実際に音楽業界に飛び込んでみるしかない、って気づいたのよ」

__あなたは、スフィアン・スティーヴンスやポリフォニック・スプリーのツアーに参加していたことでも知られていますね。プロ・ミュージシャンとしてのキャリアは、どのようにしてスタートしたのでしょうか?

「音楽業界での最初の仕事は、タック・アンド・パティっていう、私の叔父と叔母がやっているジャズ・デュオのツアー・マネージメントだったわ。東京、大阪、福岡のブルーノート・クラブで、3週間ライブをやったのよ。あれは、すごくいい体験だった!」

__セイント・ヴィンセントの名で、ソロ活動を始めた経緯・理由は何でしたか?

「“セイント・ヴィンセント”は、ディラン・トマス(1914/10/27~1953/11/9:ウェールズのスウォンジー出身の詩人、作家。20世紀を代表する偉大な詩人の一人として知られています)が死んだ病院の名前から取ったの。私は12歳の時からずっと曲を書き続けているのよ。他のバンドと過ごした時間からは、いつも多くのことを学んだわ」

__ソロ活動を始めて以降、アルバム『Marry Me』 (’07)、『Actor』(’09)を通じて、あなたの音楽性、作品性は高く評価され、順風満帆なキャリアを歩めているように感じます。ご自身のこれまでの活動については、どのような感想を持っていて、どのような自己評価をしていますか?

「私はいつも、前より良いレコードをつくりたいと思っている。でもそれと同時に、私が今までにつくってきたレコードの全てに誇りを持っているわ。自分が好きなことをして生活できるなんて、すごくラッキーよね」

__この度日本でもリリースされるあなたの最新作『ストレンジ・マーシー』について教えてください。本国ではすでに好評を得ていますが、今作を通じてあなたがチャレンジしてみたかったこと、表現してみたかったことは何でしたか?

「私は、“トゲのあるポップ・ソング”をつくりたかったのよ。抽象的だけど型にハマっていたり、残虐だけど美しかったり、冷酷だけど感情的だったり…と、相反する要素をミックスして曲をつくるのは、すごくエキサイティングだったわ」

__音楽的には、これまでのアルバムよりも良い意味で聴きやすい、耳に馴染みやすい楽曲群が詰まった作品に仕上がっていると感じました。今作の曲づくりやサウンドメイキング面で重視したことは何でしたか?

「『ストレンジ・マーシー』に入ってる曲をひも解いていくと、どれもシンプルな曲だということが分かると思う。曲と、ヴォーカル、ギターが最優先されるべきだ、ということが大事だったの。だから他の要素は、それらの引き立て役でしかないわね」

__あなたの曲づくりにおける着想のアイディア、制作のプロセスというのは、どのようなものなのでしょうか。少しその作曲マジックをご紹介いただけますか?

「私は、ありとあらゆるところからアイディアを得てるわよ。「Chloe in the Afternoon」は1972年のエリック・ロメール(1920/3/21~2010/1/11:ヌーヴェル・ヴァーグを代表するフランスの映画監督)の映画のタイトルからとったし、「Champagne Year」はバス・ヤン・アデル(Bas Jan Ader 1942/4/19/~1975:1975年に史上最小の船で大西洋を横断しようとして、行方不明になった、オランダ出身のパフォーマンス・アーティスト。2006年に彼に関するドキュメンタリー映画『Here Is Always Somewhere Else』がつくられています)について言及してる曲なの」

__あなたは、来年1月に来日公演を行いますね。バンド・メンバーを従えてのライブになるかと思いますが、どんなパフォーマンスを披露する予定ですか? ステージ上のあなたは、アルバム作品とは全く違う魅力があるように感じます。

「レコードよりも少しダークで、激しいものになると思うわ」

__最後に、あなたの次なる活動目標を教えてください。

「人々に響くようなレコードをつくり続けることね。Thank you very much!」

interview iLOUD
photo Tina Tyrell


【リリース情報】

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St. Vincent
Strange Mercy
(JPN) 4AD/Hostess / CAD3123CDJ(BGJ-19290)
11月23日発売
HMVでチェック

tracklist
01. Chloe in the Afternoon
02. Cruel
03. Cheerleader
04. Surgeon
05. Northern Lights
06. Strange Mercy
07. Neutered Fruit
08. Champagne Year
09. Dilettante
10. Hysterical Strength
11. Year Of The Tiger
12. This Wave (日本盤ボーナストラック)
13. Year Of The Tiger (Live: 4AD Session) (日本盤ボーナストラック)

【St. Vincent 来日公演】
2012年1月10日 (火)
渋谷 duo music exchange
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET:¥5,000(オールスタンディング/税込)別途1ドリンク
一般プレイガイド発売日:10月15日 (土)
問 クリエイティブマン 03-3462-6969
http://www.creativeman.co.jp/

【VIDEO】

【オフィシャルサイト】
http://hostess.co.jp/4ad/stvincent/
http://4ad.com/artists/stvincent

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