Steve Aoki『Neon Future I』来日インタビュー


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Dim Mak Recordsを運営する一方、2000年代半ばにはエレクトロ系のDJとして頭角をあらわし、そのワイルドなパフォーマンスで世界的人気を獲得したSteve Aoki(スティーヴ・アオキ)。ハリウッドを拠点に活動する彼は、現在EDMシーンのトップDJ/プロデューサーとして唯一無二の個性を誇るアーティストです。ここ日本での人気も絶大ですね。2012年には初のアーティスト・アルバム『Wonderland』をリリースし、グラミー賞にノミネートされています。

そんなSteve Aokiが、Fall Out Boy、Luke Steele (Empire of the Sun)、will.i.am、Waka Flocka Flame、Machine Gun Kelly、Flux Pavilionらが参加した話題のセカンド・アルバム『Neon Future I』(ネオン・フューチャー Part.1)のリリース直後という好タイミングで、先日幕張メッセで開催された<FATBOY -eat sleep rave repeat- SLIM tour>のスペシャル・ゲストとして来日しました。

というわけで、新作『Neon Future I』の内容と彼のDJ/音楽観を探るべく、来日したSteve Aokiにインタビューをしてきました。パーティー・ピープルとして名を馳せる彼の、意外な一面も伝わる内容となっています。


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Steve Aoki『Neon Future I』来日インタビュー

__2000年代半ば頃のあなたは、エレクトロ・シーンの中心人物と見られていましたが、現在はEDMシーンのトップDJに上り詰めています。一方、エレクトロ・シーンは現在もアンダーグラウンドに存在しているわけですが、メジャーのEDMシーンに乗り出すことになる転機というのは、ご自身の中であったのでしょうか? 今やあなたはロックスターのような存在になっていますよね。

「もともと、エレクトロ・ベースのサウンドがEDMに進化していった感じだと思う。エレクトロは128BPMくらいで、僕自身もプロデュースしていたけど、そこからノイズを取って、よりアンセムっぽく、よりコマーシャルにしたものがEDMに発展していったんだと思うよ。エレクトロは様々なサウンドが融合したもので、それこそテクノとパンクが合わさった感じというか、そこにはノイジーな電子音やパンクなアティチュードがあるだろ。で、EDMはパンクじゃないけど、そういったエレクトロ・サウンドの様々な要素を持ったものだと思うんだ」

__そうですね。

「で、エレクトロは2009年くらいに一番盛り上がって、そこから少しずつ人気が下降していったわけだけど、僕はそれだからEDMに向かったというわけじゃない。自然と活動していく中で出会ったり知り合った人達がいて、彼らが僕に声をかけてくれたことがきっかけだったと思う。例えばLaidback Lukeは、彼の方から“一緒にやろうよ!”って声をかけてくれたから、アムステルダムにある彼のスタジオに行って「Tuburance」をつくったんだ。そうしたら次にAfrojackから声がかかって、一緒に「Show Me Your Hands」を制作した。そういったことは『I Love Techno』のコンピにもつながったし、Afrojackとはさらに「No Beef」も制作したし、NERVOも交えて「We’re All No One」を制作したりした」

__2010年から2011年頃の話ですね。

「僕が思うに、そういったコラボで何が大事かというと、柔軟性、ニュートラルであることだよ。自分を見失わず、そして相手のことを受け入れる、そのバランス感覚がとても大事だと思う。僕は、Boys NoizeやArmand Van Heldenなど様々なタイプのプロデューサーとコラボしていくことで、自分自身もプロデューサーとして進化し、成長していくことができた。吸収するものが多かったね。それが今につながったし、今なお進化を続けているんだ。2014年の僕は2012年よりも進化しているし、2015年にはさらに進化していると思うよ」

__なるほど。

「制作方面だけじゃなく、そこから様々なフェスにブッキングされるようになったことも凄く大きいね。それまでは、例えば<I LOVE TECHNO>のようなエレクトロ系のフェスがもっぱらだったけど、よりメジャーで成功して、商業的なフェスにもブッキングもされるようになったから。たぶん、それを切り開いたのがJusticeさ。彼らがエレクトロ・シーンから出てきて、メジャーなフェス、メジャーなスロットでやるようになったのは大きかったと思う。まあ、エレクトロ・シーンはたとえ形がなくなったとしても、様々なジャンルの根底には根づいてるって思っているよ」

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__今現在のエレクトロ・シーンについては、どう見ていますか?

「Dim Mak Recordsのアーティスト、Botnek、Autoerotique、Felix Cartalなどは、サウンド的にはエレクトロだと思うんだけど、多くの人は彼らのことをEDMアーティストとして見ていると思う。The Bloody Beetrootsなんかにしても、そうだよね。今や“EDM”という言葉は大きなものになっているから、否が応でもその大きな傘の下にエレクトロも入る、という構図になっていると思う。だから今のエレクトロは、EDMの中にあるひとつのハイブリッドなシーンなんじゃないかな」

__通常、ダンスミュージック・クリエイターはDJカルチャーの中で生きていくものだと思いますが、あなたの交友範囲はロック・アーティストからヒップホップ・アーティストまで、多岐に及んでいますよね。こうした交友関係は、どこから生まれてきたのでしょうか?

「刺激が多いんだよね。僕は違うことがしたいし、違うジャンルと融合することはチャレンジのしがいがあるって感じているんだ。誰もやっていないことに挑戦するのって、十回中九回はたぶん失敗する。多くの人もたぶん成功しやしなだろうって思うだろう。でも、その分上手くいった時、勝った時というのは達成感が凄く大きいし、それが面白いからこそやるんだよ。僕はLinkin Parkとコラボしたけど、彼らのことは凄く大好きだったから大きなチャレンジだったよ」

__そうでしょうね。

「次のアルバム『Neon Future II』(2015年リリース予定)には、Linkin Parkとのコラボ曲が入る予定になっているんだけど、僕としては“自分の好きなアーティストと一緒にやって何が悪い”って感じだね。フェスでLinkin ParkやFall Out Boyの曲をプレイするのは相応しくないからやらない、なんていうのはもったいないよ。自分が好きならやればいいし、それが合うか合わないかなんて、全く気にしない」

__では最近のコラボレーションは、あなたの方からオファーすることも多いんですか?

「僕からお願いすることもあるし、お互いに“やりたいね”って話になることもあるね。今作『Neon Future I』だったら、MGK(Machine Gun Kelly)との「Free the Madness」は、会った時に“一緒にやろうせ!”ってことになった曲だよ。「Rage the Night Away」のWaka Flocka Flameも、ツアーで一緒だったから意気投合してできた曲だね。でも、Luke Steele(Empire of the Sun)との「Neon Future」、will.i.amとの「Born to Get Wild」、Bonnie McKeeとの「Afroki (with Afrojack)」は、僕の方からお願いして参加してもらった曲さ。ただ、最終的にはやっぱり曲次第だよ。つくった曲が相手にささらなかったら、一緒にはやってくれないと思うよ」

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__今作『Neon Future I』はメジャー・デビュー作となりますが、それは意識しましたか?

「そういうことは考えてないね。ここにくるまで一切メジャーのツテはなくやってきたわけだし、僕自身も僕と一緒にやってきた仲間達も、メジャーの力を借りずに世界中でファン層を確立することができたわけだから。だから僕の中では、メジャーから支えてもらう必要性は特に感じてないし、僕の方から“お願いします。契約してください”と言うような姿勢も持ってないよ。とは言え、今回SONYがバックアップしてくれることはとても嬉しいし、感謝しているよ。ただ、インディー・アーティストがやってく上で、今の時代ってレーベルがそこまで必要なものだと思っていないんだ。もちろん、大きなサポートにはなるけどね、特にラジオは。Dim Makでは、ラジオでの展開にはすごくお金も労力がかかるから、専門チャンネル以外は無理だったよ。でもメジャー・レーベルでなら、そういった展開ができる利点はある、ということさ」

__『Neon Future I』は、「Delirious (Boneless)」や「Afroki (with Afrojack)」にもボーカルが入り、全曲ボーカル入りの作品となっています。これはアルバムとしての完成度を意識したからですか?

「このアルバムは、自分の中ではクラブトラック(フロアに向けて、みんなが飛んだり踊ったりというインパクトを狙って制作したの)ではなく、あくまでも“ソング”なんだ。だから、そこで必要になるX要素として、どの曲にもボーカルが入っているんだ。前作の『Wonderland』には「Steve Jobs (ft. Angger Dimas)」というインストが入っていたけど、あれは僕の意図ではなく、Ultraから頼まれて入れたものなんだよね」

__そうでしたか。

「今作では「Get Me Outta Here (ft. Flux Pavilion)」が最もボーカルの少ない曲だけど、インストのトラックも実際にはつくってあるんだ。で、次に出す『Neon Future II』にはインストを入れるかどうか…ということがあるんだけど、僕としては『Neon Future II』も、今作同様ボーカル中心のアルバムにしたいと思ってる。その後に、求められているインスト集を出していきたいね」

__では、DJセットを自分のアルバムの楽曲でいっぱいにするということは、あまり考えてないんですか?

「今回の幕張メッセでは、ちゃんと『Neon Future I』から全曲プレイしてはいるんだよ。ただ、例えば「Back to Earth (ft. Fall Out Boy)」なんかは、マッシュアップにしてかけているんだ。歌のフックの部分を切りとって、その間にShowtekとUmmet Ozcanのトラックを混ぜてるから、違う印象の曲に聴こえると思う。アルバムに入っているオリジナルは、やっぱりDJ向けのものではないからね。「Born to Get Wild (ft. will.i.am)」も、Autoerotiqueのリミックス・バージョンをかけたりしてるしね」

__『Neon Future I』は、すでにUSダンス・チャートで1位を記録していますが、その結果についてはどう感じていますか?

「信じられないよ。前作『Wonderland』の時と比べて、ますます競争が激しくなっているからね。David Guetta、Calvin Harris、Skrillex、Knife Partyと、みんながアルバムを出すという中で結果が出てきたのは嬉しい。もし彼らのアルバムもリリースされていたら、チャート・アクションはもっと厳しかったかもしれないけど、今回すごく手応えは感じている。何より、日本で評判がいいのは嬉しいことだね」

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__1曲目の「Transcendence (ft. Ray Kurzweil)」と10曲目の「Beyond Boundaries (ft. Aubrey de Grey)」では、このアルバムのコンセプトともとれるメッセージを発信していますね。その内容について教えていただけますか? 今作には、実際コンセプトはあるのでしょうか?

「今作は音楽的な面でも好評を得ているけど、この2曲の中で語られているメッセージこそが、“Neon Future”というアルバム・タイトルに示されているコンセプトで、僕自身が強く賛同している価値観なんだ。‪レイ・カーツワイル‬もオーブリー・デ・グレイも共にフューチャリストで、彼らが伝えようとしているそのユートピア的な未来像、僕はそこに強く共感していてね。例えばオーブリー・デ・グレイは、不老不死について、“死”とはいつか治療可能になる病であって、科学の進化によって人間は永遠に生き続けられるようになる、ということを強く語る博士なんだ。‪レイ・カーツワイル‬の方は、技術の発展と人間はいずれ融合して、その中で様々に未来の可能性が広がっていくということを唱えている発明家で、それがこのアルバムのテーマの一つなんだよ」

__多くの人はあなたのことをスーパー・パーティー・ピープルと見ていますが、ケーキ投げ一つとっても、実は“Autoerotiqueのビデオからヒントを得た”と語っていますね。そこには、フィジカルでありながらもただのバカ騒ぎではない美学があるように感じます。実際のところはどうなんでしょうか?

「スーパー・パーティー・ピープルと見られても僕はまったく構わないし、逆にDJをしている時はそう見てもらいたいくらいさ。DJをしている時はインテリ学者風であるよりも、みんなと同じレベルで我を忘れて楽しんでる自分でありたいし、その場面ごとに合った対応の仕方というのが大切だと思うからね。だからこうした取材の時に、僕はいきなりケーキを投げつけはしないし、シャンパンを浴びせることもしない(笑)」

__そうですね(笑)。

「‪カーツワイル‬と会えば科学の話をするけど、DJの時に僕が本で読んだ科学の話を語るつもりはない。ただ、パーティーから帰った後にこのアルバムを聴いて、それがきっかけで、もし興味があるなら僕が学者の人達と話したYouTubeを見て、見識を広げてくれればそれでいいんだ」

__では最後の質問です。あなたのライブ・パフォーマンスはワイルドなことで知られていますが、逆にそれで音楽的に不当な評価を受けていると感じることはありませんか?

「そうだね。もちろんそのことは承知しているよ。自分のやっていることには犠牲が伴うって感じている。でも、ケーキなんか投げてるのにまともに受け取ってくれって思う方が間違ってるだろ。だから、それはそれで本当に楽しい快楽主義的なもの、そこを追求するものとして割り切ってやってるんだ。クラブに来ている人のほとんどは、我を忘れて楽しい思いをしたいものだよ。だったら僕はDJとして、カッコよく落ち着いた感じでプレイして10%の知性派に認められるよりも、90%の楽しもうぜ!って人達を楽しませることに徹して、そのことで10%の方から“何だこれ、冗談だろ?”って思われても、それは仕方ないって思っている。特にオンライン上で映像を観た人達が誹謗中傷を書き込んだりするわけなんだけど、僕はそれは気にしないようにしているね。僕は自分のパーティーに来てくれた、その場にいる人達を楽しませる為にやっているんだ。そこで来てくれた人達が楽しんでくれれば、それでいい。そこにいない人達のことは相手にしてないよ」

interview: Tomo Hirata
Interprete: Banno Yuriko
photo: Kenji Kubo


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Steve Aoki
Neon Future I
(JPN) SONY / SICP-4162
発売中(10/1リリース)
iTunes / Tower / HMVでチェック

tracklist
01. Transcendence [ft. Ray Kurzweil] (Intro)
02. Neon Future [ft. Luke Steele of Empire of the Sun]
03. Back to Earth [ft. Fall Out Boy]
04. Born to Get Wild [ft. will.i.am]
05. Rage the Night Away [ft. Waka Flocka Flame]
06. Delirious (Boneless) [with Chris Lake & Tujamo ft. Kid Ink]
07. Free the Madness [ft. Machine Gun Kelly (MGK)]
08. Afroki [with Afrojack ft. Bonnie McKee]
09. Get Me Outta Here [ft. Flux Pavilion]
10. Beyond Boundaries [ft. Aubrey de Grey] (Outro)
国内盤ボーナストラック
11. Boneless [with Chris Lake & Tujamo]
12. Rage the Night Away (Milo & Otis Remix)

【オフィシャルサイト】
http://www.sonymusic.co.jp/artist/steveaoki/
http://steveaoki.com/

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