THE ORB『メタリック・スフィアーズ』インタビュー/来日も決定(2011年1月)


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’80年代末にジ・オーブの名でデビューして以来、クラブ・シーン流アンビエント・サウンドのオリジネイターとして活躍してきたアレックス・パターソン。彼が、なんとロック・シーンに輝かしい栄光を残すバンド、ピンク・フロイドのギター/ボーカル、デヴィッド・ギルモアとのコラボレーション・アルバム『メタリック・スフィアーズ』の国内盤を、12月29日に発表します。

最先端のアンビエント・ミュージックが楽しめる本作の内容について、パターソン博士に聞いてみました。なお、本作の日本盤は、2チャンネル・ステレオCD & 3D60(新ヘッドホン・サラウンド・システム)CDの2枚組、ボーナス・トラック2曲収録、CD-EXTRAとしてミュージック・ビデオ2本収録、高品質のBlue-spec CD仕様という、スペシャル・パッケージとなっています。

また、ジ・オーブは、2011年1月22日(土)に代官山UNITで開催される<root & branch presents UBIK featuring THE ORB – METALLIC SPHERES>にて、来日も決定しております。


THE ORB featuring DAVID GILMOUR

アンビエント・ハウスとプロクレッシブ・ロックの巨匠がつくり出す
最新鋭の音響芸術

 ’80年代末にジ・オーブの名でデビューして以来、クラブ・シーン流アンビエント・サウンドのオリジネイターとして活躍してきたアレックス・パターソン。彼が、なんとロック・シーンに輝かしい栄光を残すバンド、ピンク・フロイドのギター/ボーカル、デヴィッド・ギルモアとのコラボレーション・アルバム『メタリック・スフィアーズ』の国内盤を、12月29日に発表する。ジ・オーブは、’91年にリリースしたデビュー・アルバムのジャケットで、ピンク・フロイド『Animals』(’77)のアートワークを引用していた経緯を考えると、初期からのファンはそれだけでも興味がそそられる組み合わせだろう。
 もともとは、デヴィッド・ギルモア、ボブ・ゲルドフ、クリッシー・ハインド(プリテンダーズ)が参加したチャリティ・ソング「CHICAGO – CHANGE THE WORLD」(’09)のリミックス・バージョンを、アレックス・パターソンとユース(人気トップ・プロデューサーとして活躍する、元キリング・ジョークのベーシスト)が手がけたことからスタートしたという、このコラボレーション。パターソンとユースは、リミックスからそのまま勢いあまって、アルバム規模の制作を続けることになったが、その新作をより豊かな内容にするため、デヴィッド・ギルモアにギター持参で、ユースのサウス・ロンドンにあるスタジオまで来てもらったところ、共同作業を通じてあらゆるスタイルの音を生み出すことに成功したという。
 ちなみに、今回のコラボレーションについて、アレックス・パターソンは次のコメントを残している。
「ピンク・フロイド、デヴィッド・ギルモア、ジ・オーブが、同じ多くの惑星の周りを回っていたことを考えれば、この衝突は起こるべくして起こったんだ」
 そんな本作の内容は、それぞれ5楽章からなる「メタリック・サイド」と「スフィアーズ・サイド」で構成された、トータルタイム約50分に及ぶ壮大なもの。アレックス・パターソンとユースが操作する様々な環境音、効果音、シンセ・サウンドの中を、デヴィッド・ギルモアの、あの叙情的なエレクトリック・ギター/ラップ・スティール・ギターが漂っていく様は、正にトリッピーで神秘的だ。
 また本作には、通常の2チャンネル・ステレオCDに加えて、ユースも開発に携わった、3D60という新しいヘッドホン・サラウンド・システムを採用したCDも付けられている。この3D60という音響システムは、通常のヘッドフォンさえあれば、ステレオ音源から特別な機材なしで、360度の3次元サウンドを体験できるというもの。しかも、本作の2チャンネル・ステレオCDと3D60 CDは、それぞれその構成やアレンジ、作品全体の長さが異なるという、力のこもった内容になっている(さらに、今回リリースされる日本盤は、ボーナス・トラック2曲/CD-EXTRAとしてミュージック・ビデオ2本収録/高品質のBlue-spec CD仕様と、海外にはない豪華盤となっている)。
 ジ・オーブとデヴィッド・ギルモアが繰り広げる、興味深いコラボレーションを楽しめると同時に、最新技術を駆使したアンビエント・サウンドも堪能できる『メタリック・スフィアーズ』。本作は、彼らの音楽的な親和性とプログレッシブ精神を再認識できる好盤だ。

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interview with Alex Paterson (The Orb)

__本作『メタリック・スフィアーズ』は、あなたとユースが「CHICAGO – CHANGE THE WORLD」(’09/デヴィッド・ギルモアやボブ・ゲルドフらが参加した、ゲイリー・マッキノンを支援するためのチャリティ・ソング)のリミックス・バージョンを制作したことから始まったプロジェクトだったそうですね。具体的にはどのような段階を経て、本作の制作に発展していったんですか?

「あのリミックスを仕切っていたのは、ユースだったんだけど、僕たちはギター・セッションをしてもらうため、デヴィッド・ギルモアにスタジオまで来てもらったんだ。で、それが『メタリック・スフィアーズ』のプロジェクトにつながった。その後、4ヶ月かけてこのアルバムをつくったよ。アルバム制作以外のことは、全てマネージャー達になんとかしてもらった!」

__本作は、「メタリック・サイド」と「スフィアーズ・サイド」の二部構成になっていますが、アルバムのテーマはどのようなものでしたか?

「こういう構成にしたのは、音楽ダウンロード配信の際、曲をバラで購入できないようにするためさ。でも、“アルバムのA面とB面”みたいな分け方は、してもいいかなって思った。ファンのためにもね」

__ちなみに、あなたにとって、ピンク・フロイド、デヴィッド・ギルモアとは、どのような存在のアーティストですか? あなたは、『The Orb’s Adventures Beyond The Ultraworld』(’91)のジャケットで、ピンク・プロイド『Animals』のアートワークを引用したことがありましたが。

「フロイドのあのアートワークをジ・オーブのジャケットに引用したのは、バタシー発電所の写真を使っていたからだよ。僕はバタシーで育ったんだ。僕は、ピンク・フロイドには、常に、最高の敬意をはらっている」

__本作での、デヴィッド・ギルモアとのレコーディング作業はいかがでしたか?

「大変だったことは、特になかった。ものすごく楽しいレコーディングだったよ。彼は、スタジオで3時間プレイしてくれたね。で、僕らは、それを素材にして『メタリック・スフィアーズ』をつくっていったというわけさ」

__レコーディングは、プロモーション映像に映っている通り、屋外で楽器や環境音の採取なども行いながら、進めていったんですか?

「ある部分ではそうだね。ユースは、庭の端に自分のスタジオを持っていて、僕らはそこでも少しレコーディングをした。南ロンドンの夏をアルバムに取り込むためにね…。ユースのスタジオは、理想的だよ。庭先にあって、陽の光にあふれ、緑に囲まれているんだからね」

__本作の音づくり~曲づくりで、重視したことは何でしたか?

「デヴィッド・ギルモアを満足させることと、サンプリングの使用を控えること、だね」

__本作には、ステレオ・ミックスのほかに、3D60という、新しいヘッドホン・サラウンド・システムを採用したディスクも付いていますね。

「そう、僕らは『メタリック・スフィアーズ』を2バージョンつくったんだ。2枚のCDのうち、1枚は普通のステレオで、そしてもう1枚はヘッドフォン用さ。ヘッドフォン用アルバムの方で、床や天井から聞こえてくるようなサウンドをつくる作業は、すごく面白い経験だったな」

__本作の制作を通じて、アンビエント・ハウスのオリジネイターとして新たに発見できたことは何でしたか?

「世代がどれだけ変わっても、チルアウト・ミュージックを気に入ってくれている人達がいて、音楽は生き続けるんだってことかな」

__今後の活動予定を教えてください。

「リー・スクラッチ・ペリーと23世紀のダブ・ジャンプ・アルバムをコラボしたり、ジ・オーブ・スタイルのオペラ音楽をやったり、いろいろやっていくよ。GaudiとChester Taylorと一緒に、The Screenってバンドもやっているし、Nina Walshと一緒にカントリー・コンボ、Rootmasters っていうのもやっている。最近は『PixelJunk Shooter 2』(PSNゲーム)に、HFB(high frequency bandwidth)名義で参加して、『Hell Fire and Brimstone』ってアルバムを出した。『Battersea Bunches』っていう映画のサウンドトラックも、もうすぐ出る予定さ」

translation NANAMI NAKATANI
interview & text FUMINORI TANIUE
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【アルバム情報】

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THE ORB featuring David Gilmour
Metallic Spheres
(JPN) SONY / SICP-20268~9(2CD)
12/29日発売
※ 完全生産限定盤 
※ デジパック2枚組 
※ Blu-spec CD (TM) 
※ CD-EXTRA仕様(ミュージック・ビデオ2曲収録)
※ ボーナストラック2曲収録

tracklist
Disc 1
1. メタリック・サイド(ステレオ・ヴァージョン)
2. スフィアーズ・サイド(ステレオ・ヴァージョン)
Disc 2
1. メタリック・サイド(3D60ミックス)
2. スフィアーズ・サイド(3D60ミックス)
3. ザ・カルト・オブ・ユース・アンビエント・ミックス
4. ヒムズ・トゥー・ザ・サン(3D60ミックス – エディット)

【オフィシャルサイト】(www.sonymusic.co.jp 内)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/SR/theorbftdavidgilmour/index.html

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