米サウスカロライナ州コロンビア在住のベッドルーム・クリエイター、チャズ・バンディックのソロ・プロジェクト、トロ・イ・モア。’09年にCarpark Recordsからリリースした「Blessa」で一躍注目を集めた、ウォッシュド・アウトと並ぶ、チルウェイブ/グローファイ・シーンを代表するアーティストです。昨年初頭には、ファースト・アルバム『Causers Of This』を発表。その弛緩したドリーミーかつトロピカルなエレクトロニック・サウンドで、インディー・ポップ・シーンに静かなる旋風を巻き起こしています。
そんな彼が、約一年という短いインターバルを経て、ニュー・アルバム『アンダーニース・ザ・パイン』を2月23日にリリースします。インタビューで、“自分で演奏する方がよりチャレンジング”と語っている通り、なんと前作でのエレクトロニック/サンプリング的な音づくりを排し、生音を主体にした楽曲群を詰め込んだ進展作です。と言っても、そこはトロ・イ・モア。リード曲の「Still Sound」を筆頭に、彼独特の淡く、甘い音世界を、よりナチュラルなサウンドで表現した内容となっています。
ここでは、そんなトロ・イ・モアの最新作『アンダーニース・ザ・パイン』について語った、チャズのインタビューをご紹介しましょう。
TORO Y MOI
淡く切ないチルウェイブの旗手が奏でる、ポップでアコースティックな新しい音世界
__今作『アンダーニース・ザ・パイン』は、前作『Causers Of This』(’10)から約1年ぶりと、かなり短いタームでのリリースとなりましたね。
「自分へのチャレンジとして、できるだけ早くレコーディングしてやろうと思ってたんだよね」
__今作を制作するにあたって掲げたテーマは、何でしたか?
「前作は、サンプラーを用いたエレクトロよりの作品だったと思うけど、今作ではサンプルから距離を置いた、生音を用いた伝統的なレコーディングをしたいと思っていたんだ。この作品をつくっていた時期には、’70年代のソウルなんかをよく聴いていたんだけど、それを自分なりに再現しつつ、新たな音楽がつくれたと思っているよ」
__あなたは、普段ベッドルームで制作をしているそうですが、今作のレコーディングはどのような環境で行ったんですか?
「今もベッドルームでのレコーディングは続けてるよ。僕にとってすごく大事なことだからね。でも今作では、自宅だけじゃなくて、音源を持ち出して、スタジオでもミックスしたんだ。すごく良かったね。変わった手法などは一切なしの、本当にスタンダードな方法でミックスをした。正直言って、最初に自分でミックスしていた時は、何かが足りない気がしてたんだ。でも、スタジオでミックスした瞬間に、これだ!って思ったよ」
__生音のレコーディングは、あなた一人で行ったんですか?
「そうだね。前作と手法は違うけど、今作も全て一人でレコーディングした。最初にギターやピアノの音をレコーディングして、その音をベースに、いろんな音を重ねていったんだ。前作の時は、サンプリング・ネタを探すところからスタートしたから、曲づくりのベーシックな部分が、全く違うよ。どちらの作業も楽しいけど、自分で演奏する方がよりチャレンジングだ」
__そうですね。では、“アンダーニース・ザ・パイン”という、アルバム・タイトルの意味について教えてください。
「このタイトルは、アルバムに収録されている「How I Know」という曲の、歌詞の一部なんだ。歌詞としては、アルバムの中でも特に気に入っているものの一つだよ。自分が死んでしまったら、松の木の下に埋めて欲しい、という内容なんだけどね」
__今作のジャケット写真(グレープフルーツを食べている、チャズ本人の口を写したもの)には、どんな意味が込められているんですか?
「正直言って、そんなに意味はないよ。実は、この写真は、僕の誕生日に撮ってもらったものなんだけど、この写真をくれた女の子のビデオが、YouTubeのどこかにあるはずさ」
__ジャケット・アートワークの中にある“eat your fruit”という言葉には、どんな意味があるんですか?
「ハハッ、単にアルバム・ジャケットの写真の参照だけど、“健康でいろよ”とも捉えられる言葉かもね」
__分かりました。それではここで、あなたのプロフィールについても、いくつか聞かせてください。まず、アーティスト名のトロ・イ・モア(Toro Y Moi)の由来は何ですか?
「この名前は、半分がフランス語で、もう半分がスペイン語なんだけど、“雄牛と私”っていう意味なんだ。自分の本名、チャズウィック・バンディックで活動しても良かったんだけど、トロ・イ・モアになることによって、アーティストとして別の人生が始まった気もするし、プロジェクト・ネームを付けて良かったと思ってるよ」
__で、あなたは、昨年ユニクロのCMに出演しましたね。どういう経緯で出演が決まったんですか?
「僕の友人である、グリズリー・ベアのクリス(・テイラー)が、ユニクロの代理店にいる人と知り合いだったみたいで、たまたま僕を紹介してくれたんだ。CMは、日本でも放映されたんだよね? 一瞬だから気づかない人も多かったとは思うけど(笑)」
__音楽以外に興味があることは、何ですか?
「デザインやファッションには、刺激を受けることが多いね。こうした分野の最先端に居られるっていうのは、すごく良い感じだよ。僕の音楽にトレンドを取り込めるからね。僕自身、大学ではグラフィック・デザインを勉強していたんだ。だから、レコード・ジャケットからウェブ広告まで、全部自分でデザインしている。自分でデザインできるって、良いことだと思うんだ。時に忙しすぎて困っちゃうことがあるけど(笑)」
__ところで、あなたは、’09年にマイケル・ジャクソンの「Human Nature」をカバーしていますね。彼のファンなんですか?
「もちろん、もともと彼の音楽をリスペクトしているけど、あれはトリビュート・アルバム(『CHUM ONAH』)用にカバーして欲しいって頼まれて、手がけたものなんだ。「Human Nature」なら、自分でもうまくカバーできるって思ったんだよね。実際に、みんながどう思ってくれたのか分からないけど、気に入ってくれたらいいな」
__それでは最後に、今後の活動予定を教えてください。日本に来る予定はありますか?
「今のところ未定だけど、近い将来絶対に行きたいね。うん。今年中に行けるといいな」
__『アンダーニース・ザ・パイン』のライブ・ショーは、どのようなものなんですか?
「ライブは、4人編成のバンド・スタイルだね。前作の時は、コンピューターを一人で操作するという形式のライブだったから、バンドとしてジャムったり、即興演奏できるのは最高だよ。今は、この新しいスタイルのライブを、すごく満喫しているところさ」
__次の作品も、またすぐに出す予定ですか?
「今はライヴ活動が忙しくなってきたから、すぐには作品をつくれないかもしれないけど、それでも少しずつ曲を書き始めてるよ。常に創作活動は続けていたいからね!」
photo Bryan Bush
【アルバム情報】
TORO Y MOI
Underneath The Pine
(JPN) CARPARK/HOSTESS / CAK59J
2/23発売
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tracklisting
01 Intro/Chi Chi
02 New Beat
03 Go with You
04 Divina
05 Before I’m Done
06 Got Blinded
07 How I Know
08 Light Black
09 Still Sound
10 Good Hold
11 Elise
12 リカルド・アンド・ライン (ボーナストラック)
【オフィシャルサイト】
http://toroymoi.blogspot.com/