北アイルランド出身の3人組インディー・バンド、Two Door Cinema Club (トゥー・ドア・シネマ・クラブ)。メンバーは、アレックス・トリンブル(Vo/G)、サム・ハリデー(G)、ケヴィン・ベアード(B)の3名。’09年にKITSUNÉからリリースしたシングル「Something Good Can Work」と「I Can Talk」で脚光を集め、翌’10年にデビュー・アルバム『Tourist History』をリリースすると、UKでプラチナ・ディスクに輝くセールス、全世界で100万枚以上のセールスを記録。ライブ・パフォーマンスの評価も高く、一躍世界的に知られる存在となった人気アーティストです。先日開催されたロンドン五輪の開会式では、総合監督ダニー・ボイルのリクエストでアレックスが登場、その歌声を披露し話題を集めたばかりですね。
そんなTwo Door Cinema Clubが、9/2にニュー・アルバム『Beacon』を日本先行リリースします。プロデューサーにU2やR.E.M、ブロック・パーティーとの仕事で知られるジャックナイフ・リーを迎え、LAにある彼のホームスタジオでレコーディングしたという本作。その内容は、アレックスが“デビュー・アルバムと比べると、とても私的な作品。それと同時に様々な要素が入ったスケールの大きな作品なんだ。このバランス感は、僕たちが長い間追究している大きなテーマなんだけど、この作品でその夢に大きく一歩近づくことができた”と語る注目作となっています。
ここでは、本作『Beacon』の内容について、Two Door Cinema Clubのメンバー、サムに話を聞きました。
Two Door Cinema Club『Beacon』インタビュー
__デビュー・アルバム『Tourist History』(’10)は、セールス面を含めて、とても高い評価を得たアルバムとなりましたね。あのアルバムは、あなたにとってどんな意味を持つアルバムとなりましたか?
「すごく驚くような結果につながったわけだけど…。あのアルバムに入っている曲は、数年間かけて書いていったものだった。まだ僕らが高校生だった頃からね(笑)。もともとは、ただ友達同士で楽しみながら、遊んでいた中ででき上がっていったものだったんだ。そうしているうちに、いろんなところでプレイしたり、契約したり、レコードを出したりすることになって、なんだか自分としても、すごく不思議な気持ちがしてたよ。ただ実際は、レコードを出して以降ずっと忙しかったら、立ち止まって“変な感覚だなぁ”とか思ったりする暇さえなかったけど(笑)」
__アルバムリリース後、あなた達は長期ツアーを果てしなく行っていましたよね。新作『Beacon』の準備はどのように進めていったのでしょうか?
「ツアーをしている間は、あまり一緒に曲を書くような時間がなかったんだ。僕らは、一緒に部屋に入って曲を書いていくようなやり方が好きだから。でも、サウンドチェックの合間とか、短いオフが入った時なんかに少し書いて、だぶんツアーが終わった時点で3曲くらいはできていたと思う。でも、ちゃんとレコード用に曲を書き始めたのは、去年の10月ぐらいだったかな。もちろん、ツアー中にアイディアだけはたくさん溜め込んでいたよ。ちょっとしたギターのアイディアは考えていたし、アレックスは歌詞になる言葉を書いていたし、曲をつくるための素材はたくさんできていた」
__なるほど。
「で、10月、11月、12月と曲を書いていったよ。僕らは今一緒に住んでいるんだけど、曲を書きたいと思った時すぐに取りかかれるから、すごくいいね。スタジオを取って、みんなの都合を合わせて、そこから機材をセットして…って時間が、全部カットできるから(笑)。思いついたらすぐに機材がつながっている所に行って、始められるんだ」
__制作の準備を進めていく中で、どんな内容のアルバムにしようと考えていましたか?
「より大人に成長したレコードになるとは思っていたよ。それくらいしか考えてなかったかな(笑)。最初から何かコンセプトを立てていたわけじゃなかった。一緒にまたレコードをつくれることがすごく新鮮だったし、友達同士で一緒に暮らしながら、レコードをつくり上げていくことができて、楽しかったよ(笑)。そういった時間を切り取ることのできたアルバムっていうか、すごく新鮮で楽しいレコーディングだった。一緒にいろんなことを経験しながら、成長しているってことを感じられたしね。ライブも、曲が増えたことでより新鮮な気持ちでプレイしていけると思う」
__今作は、プロデューサーにジャックナイフ・リーを起用し、LAにある彼のホームスタジオでレコーディングを行ったそうですね。彼と一緒に仕事をした経緯や理由についても教えてください。
「彼の関わった作品が、前々から好きだったんだ。で、Skypeでよくやり取りしてたんだけど、彼はすごくフレンドリーで謙虚な人だね。音楽の話をチャットしたりしてた。で、今年に入ってからLAで顔を合わせたんだけど、すごく良かったよ。彼自身、すごい音楽ファンだからね。一緒にYouTubeでビデオ・クリップをたくさん見て笑ったりして、一緒に仕事できて本当に最高だった。ギターを考えていた時も、フロアまでやって来て一緒にペダルをいじってくれたりしたし。そこまで期待してなかったのにね」
__LAの街はいかがでしたか?
「すごく良かったよ。朝、早く起きて、海岸沿いをドライブしながらスタジオに向かうんだけど、すごくいい気分だったね。ただ、そんなに自由な時間がなくてね。あそこでやれることはたくさんあったけど、できなかった。でもギグも2つくらいは観に行けたし、楽しかったよ。他のどこかの街でこのアルバムをつくっていたとしたら、まったく同じレコードになっていたとは思わないな」
__完成した今作は、前作以上に多彩な楽曲群とサウンドが詰まった作品となりましたね。曲づくりのアプローチやサウンドメイキング面で、今回特に重視したこと、意識したことは何でしたか?
「自信を持って何か新しいことに挑戦していく、っていうことだったと思う。キャッチーであることと、特にダンスできるようにってことは意識した。僕らも世界を周りながらいろんな経験をしたし、いろんなスタイルに触れるようになったこともあるし、新しい挑戦をしながら、みんなを踊らせたい、っていうのがあったよ。そこから僕らのサウンドも広がったと思うし、それでまた新曲をみんなが楽しんで聴いてくれたらいいな、って思ってる」
__アルバム・タイトル曲「Beacon」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「前々からこの曲名をアルバム・タイトルにしようって思っていたわけじゃないんだ。アルバムの中で一番最初にできた曲ってわけでもないし。最後…いや、最後から2番目にでき上がった曲だったね。地下の部屋で、みんなでアイディアを考えながらつくっていったんだけど、なかなかうまく進まなかった。そうしているうちに、たしかケヴィンが“ベースレスにしてみよう”って言い出したんだ。それから何度か合わせていくうちに、他のセクションもでき上がっていった。次第に手ごたえを感じることのできる曲になっていったよ。で、それを持ってスタジオに入ってレコーディングしたら、突然全てがカチッと収まった感じになってね」
__そうだったんですか。
「こういう構造の曲って、今までに書いたことがなかった。たいてい曲の構造のパターンっていうのが決まってたんだよね。似たような要素の繰り返しっていうか。でも、この曲はセクションが次々とやって来て、まったく新しい構造になった。すごく良かったと思うよ。曲自身が芽を出して、育っていったような感じがしたから。このアルバムも、そんな風にどこか新しい方向に進んでいけるものになってくれたらいいなって思ったんだ」
__そういう意味をこめて、この「Beacon」をアルバム・タイトルにも採用したんですか。
「“Beacon”(かがり火、目印、灯台)って言葉の持つ、方向を導いてくれるもの、みたいな意味を反映した部分が大きいね。僕らは、いろんなところに行ってみたい、いろんなことをやりたい、って思っているわけだけど、そういう場所に進んでいく目印になってくれるような…」
__先日24時間限定フリー・ダウンロードを実施した「Sleep Alone」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「この曲は、僕らが一緒に住み始める前に書いた曲だね。夏に2日くらい休みがあって…、いや、クリスマスの時期に、ファーストの曲をつくったアレックスの家のガレージに、機材を持ち込んだ時かな…。ずいぶん前のことだから、よく覚えてない(笑)。ライブで既に何度もプレイしていた曲だったから、ダウンロード公開した時リアクションがすごくよかったよ。ライブ演奏がYouTubeにアップされたりしていたから、レコーディングされたバージョンをダウンロードできるってことで、ファンのみんなもすごく喜んでくれてた。アルバム制作って、すごく忍耐強い作業なんだけど、そんな風にみんながリアクションしてくれると、やっぱりやった甲斐があったって気になるよね(笑)」
__今作の中で、あなたが特にその仕上がりに満足している曲は何ですか?
「全部気に入ってるから選ぶのが難しいけど、すごく気に入ってる曲の一つは「Spring」かな。この曲も、僕らがこれまでにつくってきた曲とは、かなり違うものになってるんだ。すごくビューティフルな瞬間があるっていうか。ファーストには、そういうビューティフルな瞬間ってなかったんじゃないかと思うから(笑)。このアルバムには、そういう要素を取り込めたからハッピーだよ」
__ところで、今作のシュールレアリズムっぽいアルバムジャケット、アートワークは、どのようなアイディアから出てきたものなんですか?
「ああいうスタイルの写真が好きなんだよね。映画的っていうか、すごくシュールで、何かそこにストーリーがありそうなんだけど、それが一体どんなストーリーなのか見当も付かない、みたいな。イマジネーションが必要っていうかね。遊び心もあるし、セクシーな要素もあるし、すごく良いカヴァーになったと思ってるよ」
__最後に、Two Door Cinema Clubの次なる活動目標を教えてください。
「いつも取材の時、いろんな国に行ってみたいって話をするんだけど、今回のアルバムを通じて、またいろんな国に行けたらいいなと思ってる。南アメリカとか、アフリカとか、中国とかね。いろんな国からファンの声をもらうし、僕ら自身もいろんな所でショーをしたいって思ってる。旅すること自体が好きなんだよね(笑)。だからツアーは全然苦じゃないし、いろんな場所で、いろんな人を前にしてショーをしていきたいって思ってるんだ」
__年末には、また日本にも来てくれますね。
「うん! 実は、これまでスシって好きじゃなかったんだけど、最近になって、やっとおいしいと思えるようになったんだ。だから今度は、ぜひ本場のスシを楽しんで食べてみたい(笑)」
translation Nanami Nakatani
interview iLOUD
【リリース情報】
Two Door Cinema Club
Beacon
(JPN) TRAFFIC / TRCP-96(初回限定スペシャル・プライス盤)
(JPN) TRAFFIC / TRCP-97(通常価格盤)
(JPN) TRAFFIC / TRCP-98/99(2CD:オリジナル・アルバム+ライヴ盤)
9月2日 日本先行発売
HMVでチェック
tracklisting
01. Next Year
02. Handshake
03. Wake Up
04. Sun
05. Someday
06. Sleep Alone
07. The World Is Watching (with Valentina)
08. Settle
09. Spring
10. Pyramid
11. Beacon
12. Start Again [ボーナス・トラック]
13. Sleep Alone (acoustic) [ボーナス・トラック]
※デラックス盤ボーナス・ディスク収録予定曲
14 tracks recorded live at Brixton Academy in February
01. Cigarettes In The Theatre
02. Undercover Martyn
03. Do You Want It All?
04. This Is The Life
05. Something Good Can Work
06. Handshake
07. Costume Party
08. You’re Not Stubborn
09. Settle
10. Eat That Up, It’s Good For You
11. What You Know
12. Sleep Alone
13. Come Back Home
14. I Can Talk
【オフィシャルサイト】
http://trafficjpn.com/tdcc/TRCP-96/
http://twodoorcinemaclub.com/(アルバム全曲試聴実施中)
【来日情報】
Two Door Cinema Club
Japan Tour 2012
12/12(水)大阪 なんば Hatch
12/14(金)神奈川 横浜 BAY HALL
12/15(土)東京 新木場 STUDIO COAST
チケット一般発売日:9/15 (土)
問)クリエイティブマン 03-3499-6669
http://www.creativeman.co.jp/artist/2012/12twodoor/