YAPAN『Hello World』インタビュー


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’02年に結成させた、沖縄出身の双子テクノ・バンド、RYUKYUDISKO。石野卓球に才能を見いだされて以来、国内のクラブ・ミュージック・シーンに新風を巻き起こしてきた人気アーティストです。そのメンバー、廣山陽介が、YAPAN名義でキャリア初となるソロ・アルバム『Hello World』を10/12にリリースします。自分のソロ・アーティストとしての可能性を、自由に追求していったという本作。その音世界は、アルバム1曲目「China Talker」からラストの12曲目「Past Days」まで、RYUKYUDISKOとはひと味もふた味も違う、ユニークで冒険的な楽曲の数々を収録したものとなっています。

既存のジャンルにとらわれない、時にエキセントリックで、時にディープなエレクトロニック・ミュージックが楽しめるYAPAN『Hello World』。ここでは、そんな本作の内容について、廣山陽介に話を聞きました。


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YAPAN

廣山陽介(RYUKYUDISKO)のソロ・プロジェクトが、遂にスタート

__YAPANは、今年に入ってから本格的に活動をスタートさせたプロジェクトだそうですが、始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

「実は、結構以前から曲づくりはやっていて、アルバムには、2年前くらいにつくった曲も入ってますね。その時はRYUKYUDISKOをやっていたから、書き溜めていた感じでした。で、実際にやろうと思ったのは去年くらいで、去年の秋くらいからは、もうずっとYAPANばっかりやってましたね」

__RYUKYUDISKOとは別に、個人プロジェクトで曲をつくりたくなった経緯は何だったんですか?

「モノづくりをしてる人は皆そうだと思いますけど、やっぱりソロ作品をつくりたいなっていうのが、ずっとあったんですよね。で、いつかできたらいいなと思ってたんです。とはいえ、メインの活動の方があるから、希望としていつかできるといいかなって思っていたんですけど、なんで今回のタイミングになったかと言うと、“RYUKYUDISKO、次どうしようか”、みたいな感じになっていたからなんです」

__どういうことですか?

「RYUKYUDISKOとして作曲が始まって、半分くらいできたところで、“このままでは、まだRYUKYUDISKOのモードにはなってないね”、“出さない方がいいよね”ってことになったんです。で、じゃあどうしようか?って時に、お互いソロでやりましょうっていうのが去年の話ですね。それで、今年になってから本格的にソロを始めた感じなんですよ」

__昨年沖縄でスタートさせたパーティー、<Metaphorik>もソロ活動の一環だったんでしょうか?

「そうですね。お互いにやりたいことが微妙に違っていたので、ソロでやる時に意味のあることをそれぞれやっていこう、みたいな話になっていったんですよ。で、僕は<Metaphorik>というパーティーを始めて…」

__哲史さんの方は<RAKUEN>を始めた、と。

「そうですね」

__<Metaphorik>では、どういうサウンドを展開しているのですか?

「一晩中、音が、グルーヴが途切れないパーティーにしたいと思っていて、ずっとノンストップで、ゲストは呼ぶんですけど、特にピークタイムを設定していない感じです。ある種のミニマルっていうか、時間帯によって抑揚をつけずに、いつ来ても自由に楽しめるパーティーですね。そういうのが、僕的にも楽しいので。熱血社交場っていう、那覇のど真ん中にあるクラブで、2ヶ月に一回、第4土曜にやってます。11月はリリースパーティーとして開催しますよ」

__<Metaphorik>での活動は、YAPANにフィードバックされていますか?

「はい、してます。DJもやって、ライブもやって、制作もやるって活動を以前から続けているんですけど、わりと自分の中で、つくるものとDJするものの表現方法が分かれてきているんですね。で、その中で共通点を探していく中で、その接点となっているのが<Metaphorik>だったりするんです。例えば「Metaphor」って曲は、<Metaphorik>をテーマに書き下ろした曲ですしね」

__なるほど。では、YAPANで一番やってみたかったことは何ですか?

「今までは、RYUKYUDISKOというテーマがあって、2人でバンドをやっていたんですけど、それとは違って、完全に個人にフォーカスしたものをやりたかったですね。自分でつくれる自信もあったので、自分一人でやった時に、自分自身の中からできてくるものをちゃんとアウトプットさせたい、っていうのがYAPANのテーマです」

__今作に関しては、アルバム作品としてのコンセプト等は、特に考えていなかったんですね。

「そうですね、今回は、自分の世界観をどこまで出せるのか、っていうことだけだったので。だからこのアルバムは、ボーカルとかもなく、ほぼ一人で沖縄のスタジオでつくり上げた曲ばかりです。もし次作を出せる機会があるんだったら、コンセプトに乗っかったアルバムをつくる可能性もあるかもしれませんけど」

__ちなみに、YAPANというプロジェクト名は、いつ頃決めたんですか?

「もともと’05~’06年から、たまに沖縄でパーティーをやった時に使っていた名前だったんですよ。小さいパーティーとかで実験的な選曲をやる時に、自分の名前を使わず、あえてYAPANでやってたんです。で、その自由にやる感じが心地良かったんで、いい意味で肩の力が抜けた感じを自分の表現方法にも出そうと、今回この名義にしました」

__では、アルバム『Hello World』について教えてください。まず、このアルバム・タイトルにはどんな思いが込められていますか?

「初めてのアルバムなので“よろしくお願いします”という、挨拶的な意味合いですね。“Hello World”って、全世界的に使われてる常套句ですし、初めてソロ作品を出すのでこの言葉にしようと思いました」

__音楽的には、正にジャンルレスともいうべき、不思議なサウンドが展開されていて驚きました。ご自身の中では、どのような音楽を目指していたんでしょうか?

「以前からそうなんですけど、基本的に僕の一番の表現方法っていうのは、コンピュータ・ベース、打ち込みベースで曲をつくっていくっていうものですよね。で、一番好きなのはダンサブルなビートが入った曲なんですけど、それ以外の曲もつくりたいっていうのがありました。で、こういった手法の中で、特に楽器を演奏するわけでもないので、自分のコンピュータを使って、ボタンを押したり、クリックしたり、機材をつなげてつまみをいじったりしながら、自分でも聴いたことないような曲をどこまでつくれるのか。それが、作曲を始めた時からの自分のテーマだったりするんです」

__なるほど。

「それで、コンセプトとしては、テクノ・アルバムだとか、ダンス・ミュージックのアルバムだっていうのもありだと思うんですけど、他ジャンルの音楽とかを聴くと、例えばロックをやっている人のアルバムが、全てロックの曲だったりはしないじゃないですか。そういう意味で、家で聴くような踊れない曲があってもいいし、実験的な曲があってもいいし、一つのアルバムとしてまとまっていればそれでいいって思ってましたね。シングルやダウンロード用に、フロアライクな曲をつくるというものでもなかったし。だからこのアルバムの曲は、結構BPMがバラバラだったりするんです。つくっている最中は考えてないんですけど、でき上がったものを聴くと、ビートがいろいろ変化していく方が自分っぽいな、という感じがしますし」

__では今作は、廣山陽介流儀の、広い意味でのエレクトロニック・ミュージックということになりますか。

「僕の場合はこういう感じになりました、って感じですね」

__アルバムを制作していくにあたって、最初に手応えの感じた曲は何でしたか?

「つくり溜めていた曲もあったりしたんですけど、これはいけるってきっかけになったのは…11曲目の「Dormitory Dream」ですかね。これは、RYUKYUDISKOの活動期間中につくっていた曲です。4曲目の「Sunshine World」も、「Dormitory Dream」とほぼ並行してつくっていたものなんで、きっかけにはなっているんですけど、今の質問の答えになる曲とはちょっと違う気もしますし。あと、5曲目の「Beauty」も、きっかけになった曲かもしれない。1曲目の「China Talker」とか、8曲目「Simple Girls」とかは、意外と結構とんとんでき上がってきたんですけど、先に挙げた3曲が、わりときっかけになったのかな、という気はしますね」

__「China Talker」はインパクト十分な曲ですね。これはどんなアイディアからでき上がった曲ですか?

「まだ最終的にどの曲を採用するのか決めかねていた時期に、ちょっとダンスビートのある曲でもつくってみようと思って、リズムから組み始めた曲ですね。で、当時自分がDJをしていた時のBPMが130BPMだったんで、130BPMと決めて、リズムを組んで、ベースラインを組んでいったら、偶然こういうコード進行になって、中国っぽいメロディーが浮かんだんで、それをつけて、最後に声のサンプルを乗っけてできた…って感じです。ちなみに、いまDJをする時は、もうちょっとBPMが遅くなってるんですけど」

__中国っぽいメロディーを使おうというのは、その場の思いつきだったんですか?

「とりあえず、琉球音階以外で曲をつくりたかった、というのはありました。このアルバムには、琉球音階を使っている曲ってほとんど入ってないんですよ。もちろんRYUKYUDISKOっぽい部分もあるとは思うんですけど、実は琉球音階のみでできてるのって、最後の曲「Past Days」だけなんです。新たな挑戦かどうかは分からないですけど、今までやってきたことを一回すみに置きつつ、どんどん新しいことを、できるだけやってみようと思っていたんで」

__「China Talker」や「Party People」には、ギター・サウンドがフィーチャーされていますが、これもコンピュータで仕上げたものなんですか?

「そうですね。シンセのギターって、今すごいですよね。微妙な調整ができるから、頭の中で思ってる音をかなり再現できる。だから、そういうやり方に結構ハマってやってますね。ただ、10曲目の「Into the Wild」では、実際にギターを弾いてもらいました。曲がほとんど完成した時点で、もうひとエッセンス欲しいなと思って、元bonobosのコジロウ君に相談して、“ギターのサンプルをくれない?”みたいな感じでお願いしたら、すぐに彼が弾いたものを送ってくれたんです。で、そのギターのサンプルを曲に付け足して、できた曲ですね。でも、曲をつくる過程で外部のミュージシャンが入っているのは、「Into the Wild」だけなんですよ」

__サウンドメイキング面では、どんなことを重視しましたか?

「今回つくって思ったのは、意外と、例えばキックドラムやベースに使う音は、全部一緒でもいいんだなってことですかね。今回は一応曲によって音を変えていたりしているんですけど、もっと一緒でもいいなって思いました。この辺りは、ライブをやっていたから出てくる発想だったりするのかもしれませんけど」

__なるほど。基本となる音を曲ごとに変えたりしないというのは、ある種バンドっぽいアプローチでもありますね。ちなみに、曲づくりをしていく中で、曲を完成させるさじ加減というのは、どのようにして決めたんですか?

「もともとダンス・ミュージックやテクノのDJをやっていたんで、やっぱり自分が聴いていて気持ちいいかどうか、ですよね。ミックスする前の時点で気持ち良いかどうかっていうのが、一番の落としどころ。だから、自分が気持ち良いと感じたら、曲によってはベースが入ってなくても完成しちゃうし、ビートがちぐはぐでも完成になっちゃいます。逆に、自分が気持ち良くならないと、どんなに時間かけても、どんなに苦労していても、曲としては完成しないです。だから、そういう曲はこのアルバムには入ってません」

__分かりました。では最後に、今後の活動予定について教えてください。

「ライブをやっていきたいですね。WIRE11でライブをした時も自由にできて楽しかったし、手応えも感じたんで。あとは、将来的には、歌モノの曲なんかにもチャレンジしてみたいと思っています」


【リリース情報】

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YAPAN
Hello World
(JPN) Ki/oon / KSCL-1862
10月12日発売
HMVでチェック

tracklist
01 China Talker
02 Party People
03 Yapclap
04 Sunshine World
05 Beauty
06 Naha City Hotel
07 CT2.Edit
08 Simple Girls
09 Metaphor
10 Into the Wild
11 Dormitory Dream
12 Past Days

【オフィシャルサイト】
http://www.yapan.me/
※「China Talker」のミュージックビデオ フル試聴ができます。

【PARTY INFORMATION】

SATURN【luminous】
2011/10/15(土) 大阪 難波 HATCH
http://smash-jpn.com/band/2011/10_saturn/index.php

『clubasia × ASOBISYSTEM HALLOWEEN PARTY 2011』
-YAPAN(Yosuke Hiroyama / RYUKYUDISKO) 『Hello World』 release party-
2011/10/29(土) 東京 CLUB ASIA
http://www.clubasia.co.jp/

HELLO!!FREAKS!! × NIGHTFLY
Collaboration Special Party
2011/11/12(土) 沖縄 深夜喫茶 音洞【オトボラ】
http://otobola.ti-da.net/

Y!LIVE TOUR In Niihama
2011/11/18(金) 愛媛 Club Planet
http://11.xmbs.jp/xyz/

Return To The Groove vol.17 5th Anniversary
Y!LIVE TOUR In Takamatsu
2011/11/19(土) 香川 music cafe nattsu
お問い合わせ:087-822-2776(music cafe nattsu)
http://www.nattsu.jp/

metaphorik vol.4
YAPAN/Hello World Release Party
2011/11/22(火・祝日前) 沖縄 沖縄熱血社交場
http://nekke2.ti-da.net/

DIZCO × YAPAN Y!LIVE TOUR
2012/01/21(土) 宮城 CLUB ADD
http://www.clubadd.com/

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