Gnarls Barkleyでの活動でも知られるCee Lo Greenが、『The Lady Killer』の全曲試聴をnpr musicで開始しました。『The Lady Killer』は、Cee Lo Greenのサード・ソロアルバム。日本発売は12/1で、リード・シングルの「F**k You」は、すでに全英No.1の大ヒットとなっています。アルバムでは、全編にわたってオーケストラルなトラックと、Cee Lo Greenのボーカルが堪能できますね。
KINGS OF LEON『Come Around Sundown』ワールド・オフィシャル・インタビュー
ケイレブ・フォロウィル(Vo/G)、ネイサン・フォロウィル(Dr)、ジャレッド・フォロウィル(B)の三兄弟と、従兄弟のマシュー・フォロウィル(G)の四名からなる、米テネシー州出身の実力派ロック・バンド、キングス・オブ・レオン(KINGS OF LEON)。’03年にリリースしたデビュー・アルバム『ユース・アンド・ヤング・マンフッド(Youth And The Young Manhood)』が全英チャート3位、プラチナ・セールスを記録して以来、モダンで時に実験的なサウンドと、地に足着いたヴィンテージ・ロックを両立させた音楽性で、作品を発表する度に高い評価と人気を獲得してきた、現在のメインストリーム・ロック・シーンをリードする最重要アーティストです。
彼らが、モンスター・アルバムとなった『オンリー・バイ・ザ・ナイト』に続く、通算5作目となる待望の最新アルバム『カム・アラウンド・サンダウン(Come Around Sundown)』を、11月24日にリリースします(輸入盤は、発売中)。
ここでは、そんな最新作『カム・アラウンド・サンダウン』の内容を、彼ら自身が各曲解説を軸に語り尽くした、ワールド・オフィシャル・インタビューをご紹介しましょう。
KIMONOS『Kimonos』interview
日本の音楽シーンに大きなインパクトを与えた、福岡出身のロック・バンド、ナンバーガールでの活動を経て、現在はZAZEN BOYSのフロントマンとして活躍する向井秀徳。日本人の父親とスウェーデン人の母親との間に生まれ、小学校、中学校、大学をイギリスで過ごした後、’06年に日本で本格的にアーティスト活動をスタートさせたシンガー・ソングライター、LEO今井。そのユニークな個性と音楽性で話題を集めてきた二人が、全く新しい音楽プロジェクトを始動させた。その名は、KIMONOS(キモノズ)。LEO今井は、向井秀徳がつくり出す実験的なオルタナティブ・ロック・サウンドに魅力を感じ、向井秀徳は、LEO今井が持つピーター・ガブリエルやブライアン・フェリーを彷彿とさせる洋楽的なメロディー・センスに関心を抱き、自然と二人で曲づくりをするようになったという。
そんな彼らが、大きな反響を呼んだ12インチ/iTunes限定シングル「Almost Human」に続き、11月17日にフル・アルバム『Kimonos』をリリースする。昨年から、向井が所有するMATSURI STUDIOで断続的に曲づくり/レコーディングを行い、吉田一郎(B:ZAZEN BOYS)が2曲でベースを、グレッグ・ソーニア(Dr:ディアフーフ)が1曲でドラムを担当した以外は、全てLEOと向井の二人でプログラミング/演奏を手がけた作品だ。気になるその内容は、’80年代のドラムマシンやシンセを駆使した、ソリッドでクールなサウンドと、彼らが紡ぎだす、時にエキセントリックで、時にエモーショナルなギター、キーボード、そしてボーカルが融合したもの。彼ら独特のメロディーと詞の世界が耳を刺激する、イマジネイティブでオリジナリティーあふれるアルバムに仕上がっている。
ここでは、そんな『Kimonos』の内容をLEO今井に、さらに、KIMONOSの音楽的背景を向井秀徳&LEO今井に語ってもらった。
interview & text Fuminori Taniue
photo Junji Hata
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Part 1:interview with LEO今井
__LEOさんと向井さんの出会いは、’07年に、ご自身のイベント“City Folk”に向井さんを誘ったことがきっかけだったそうですね。 p>
「そうですね。その時に初めて会って、ちょっと話をしました。で、3〜4ヶ月後、私が『Fix Neon』(’08)というアルバムを制作している時に、3曲くらいドラムをMATSURI STUDIOで録らせてもらいました。で、そのうちの1曲が、シングルになった「Metro」で、向井さんがギター、吉田一郎(ZAZEN BOYS)君がベースで参加して、向井さんが気合いの入ったギターを弾いてくれて、曲の質感がガラって変わった。私と向井さんは、ハーフ・ジェネレーションくらい年が離れているけど、音楽的な価値観には、共通するものを感じました。それで、また一緒にやってみたいって思いました」
__で、その後、向井さんと二人でカバー・プロジェクトを始めて、そこから本格的にKIMONOSの制作も始まったんですね。 p>
「最初は、カバーEPでも出せたらいいかもと、半分遊びの気持ちで始めました。向井さんが、PINKとかトーキング・ヘッズのカバーをやると似合うんじゃないかって言い出して。で、いろいろと話をしたり、実際に録ったりしているうちに、そのカバー企画に飽きてきて、自然とオリジナルをつくり始めましたね。それで「Haiya」って曲がすぐにできたんですけど、“コレはいい”ってことになって、そこから“6曲くらい録ろう”、“アルバムにしよう”と、話が進んでいきました。去年の秋、今年の春、今年の夏と、三段階くらいで制作したんですけど、「Haiya」はその大きなきっかけになりました」
__本作には、「Sports Men」(’82/細野晴臣『フィルハーモニー』収録曲)が、カバーの成果として収録されていますが、この曲をピックアップした経緯は何だったんですか? p>
「結局、ちゃんとレコーディングしたカバー曲は「Sports Men」だけでした。「Sports Men」を録ったら、カバーはコレでもういいかなって気分になりました」
__オリジナル曲をつくり始めた時には、どんな構想があったんですか? p>
「そういうものは、特になかったですね。初期段階には、「Haiya」と、私の「Tokyo Lights」、あと「Soundtrack To Murder」や「Almost Human」の古いデモとか、結局アルバムには入らなかった曲が、ネタとしてありました。で、制作の途中に、二つ重要なことを話しました。一つは、とってつけたような安易なコラボレーションではなく、グループとしてイーブンに、一つにならなければいけない。そして、何かのリバイバルみたいなものとは違う、オリジナリティーと真のある共作をしなくてはならない、ということ。あともう一つは、“KIMONOS”というグループ名の由来についてですね」
__“KIMONOS”という名前は、LEOさんが観た大正時代の美人画、アルバム・ジャケットにも使った中村大三郎「ピアノ」や、山川秀峰「三姉妹」にインスピレーションを得たものだそうですね。 p>
「そうです。“LEO今井&向井秀徳”みたいな名前でもよかったんだけど、それだとちょっとアカデミックな感じがしたので、もうちょっとグループ名っぽい方が良いんじゃないかということで、私の中にあったイメージ、大正時代の美人画の話をしたんです。ホノルル美術館がこういう絵をたくさん所有していて、数年前に展覧会をやっていたんですけど、その美人画を観て、大正デモクラシー、大正モダンって言葉がある通り、当時は日本文化と西洋文化が自由主義的に融合した、今以上にある種オープンな時代だったんじゃないか、って印象がしたんです。で、そんなイメージ、アイディアが、私の理想を刺激した。そして、和と洋が完全に調和したアルバムをつくりたい、って思ったんです。そうしたら向井さんは、私の説明の中で“KIMONO”という言葉にピンときたみたいで、この名前におさまりました」
__本作では、「Tokyo Lights」のリメイクを筆頭に、東京という街への思いがテーマになってるようにも感じましたが、その点は意識しましたか? p>
「結果的に、そこが私と向井さんの、一番の共通点になっているんだと思います。二人とも、東京という都市に対して、憧れと同時に疎外感や嫌悪感、要は複雑な気持ちを抱いている感じがある。二人とも異邦人、ストレンジャーとして東京にたどり着いて、居心地がいいんだか悪いんだか分からないような気持ち…。KIMONOSに限らず、お互いの作品においても、そういったことが大きなテーマになっていると思います」
__歌詞も和と洋が調和したものとなっていますが、二人でどのように考えていったんですか? p>
「曲によって、ケースバイケースでしたね。向井さんが書いた詞もありましたし、彼がしゃべった言葉を私が英語でメモった場合もありましたし、私が書き溜めていた詞もありました。例えば「Mogura」という曲では、私が以前録ったデモ2曲から、それぞれのボーカルを取り出して、新しい別のトラックに移植しました」
__本作では、ドラムマシンやシンセを軸にしたサウンドも印象的ですが、サウンドメイキング面ではどんなことを重視したんでしょうか? p>
「二人でつくっていきましたから、このサウンドが一番自然だった、ということだと思います。どうしても他のパンチが欲しかった「Soundtrack To Murder」や「Almost Human」には、グレッグ(・ソーニア/ディアフーフ)や(吉田)一郎君を呼んだんですけど、基本的にドラマーとベーシストはいませんでしたから、二人とも自然と打ち込みのモードになってました。二人とも普段は生ドラムの音楽を中心にやっているんで、ドラムマシンを使った曲づくりは新鮮でしたね。私は、リンドラムの激しい音にヤラれました。そういう音を使うと、音と音の間に隙間が生まれて、ある意味スカスカな感じになるんだけど、そのカチっとしたストイックな感じが逆にハードで、それは本当に新鮮だった」
__なるほど。 p>
「私はこれまで、音を重ねてコンプレッスしまくるという、音の壁をつくる方法でトラックのハードさを出していたんだけど、彼は音を抜いていくんですよ。勉強になりましたね。料理に例えるなら、味付けをほとんどしないで、素材をそのままボンって出す感じ。生々しいというか、塩コショウもしないでステーキを焼くというか…。とにかく、そこにハードコアマザファッカーを感じたわけなんです(笑)。その結果が、このシンプルでドープなビートです」
__12インチとiTunesでのみリリースされた先行シングル「Almost Human」には、「No Modern Animal (Hudson Mohawke Remix)」も収録されていますが、このリミックスはどういう経緯で実現したんですか? p>
「ハドソン・モホークのアルバムを聴いた時、“すごいヤツがいるなぁ”って衝撃を受けたんですよ。で、このリミックスをお願いするにあたって、国内外のいろいろリミキサーの候補を挙げていったんですけど、彼がベストなんじゃないかと思ったんです。予測できない感じがあったんで、一番強烈なリミックスをつくってくれるんじゃないかなって。実際、面白いリミックスになりましたよね。もっとヘンなグリッチ・ホップみたいなことをやるのかと想像していたんですけど、こんなキレイな感じのリミックスにしてくれて、やっぱり驚かせてくれました。気に入ってます。ほとんどオリジナル曲であるところも、良い」
__LEOさんが、本作の中で個人的に気に入っている曲はどれですか? p>
「テンション的には「Tokyo Lights」ですね。自分のオリジナルも嫌いじゃないけど、今回のバーションができた時は、“コレだ”って感じがしました。あとは、やっぱり「Soundtrack To Murder」と「Almost Human」かな。両方PVがあって、今は「Soundtrack To Murder」のPVをつくっているところです。…でも、全曲いいですよ(笑)。このアルバムは、時間をかけて選曲もできたし、流れにもこだわったんで、アルバム全体を通して聴いてほしい」
Part 2:interview with 向井秀徳 & LEO今井
__向井さんは、「Tokyo Lights」を気に入っているそうですが、同曲やLEO今井さんのどんな部分にシンパシーを感じたんですか? p>
向井秀徳「LEOは、東京出身であって、これまでに世界のいろんな場所で生活していて、私と彼が会った時は、まだ彼が日本に戻ってきてから間もない頃でした。それで、彼はずっと東京で暮らしてきた人間じゃないので、そういった人がつくった東京の風景というものに興味を持って、そして共感を抱きました。私も、九州の佐賀からバンドで東京に出てきまして、今はもう東京で生活して10年以上になるんですけど、九州から出てきた時のカントリー野郎が見る東京というのは、やっぱりずっと東京にいる人とは違うものなわけですよ、当然」
__ええ。 p>
向井「で、私の場合は、単に田舎から出てきたもんだから、最初は、ビルが壁のようにあるだとか、そういうことから、わりと分かりやすい感じの、すごく無機質で冷たい印象を持ったりした。でも、そういう印象を持ちながら、実際に日常生活を送っていくと、東京の隙間に、いろんな人間っぽい営みが見えてきた。で、私は、東京に来た時に感じた無機質な印象と、実生活における生々しくて現実的な東京というものをない交ぜにして、これまで曲をつくってきたんですけど、そういった目線と近いものが「Tokyo Lights」にはあるな、と」
__なるほど。 p>
向井「「Tokyo Lights」は、東京を愛でているのか、攻撃しているか分からない歌で、そのLEO今井独特の眼差しが好きでした。そこが、彼の音楽の核でもあると思います。だから、そういった部分は、KIMONOSの大きなポイントとして、まずあります」
__LEOさんの方は、ZAZEN BOYSやナンバーガールの音楽に初めて接した時、どこに魅力を感じたんですか? p>
LEO今井「私が、ZAZEN BOYSを最初に聴いて共感した部分は、音楽的なオリジナリティーと、その攻撃力でした」
__それで、’09年に二人でこのプロジェクトを始めた当初、まずはPINK「Don’t Stop Passengers」(’86)【1】や、トーキング・ヘッズ「This Must Be the Place」(’83)のカバーをやってみたそうですが、この時はどんなヴィジョンを思い描いていたんですか? p>
向井 「その時の自分らのテンションというのは、“遊んでみよう”といった感じの温度感でした。で、私の中に、LEO今井がやると似合うと思った曲がいくつかあったから、リクエストした」
LEO「最初、向井さんは、“やってみればいいじゃん”みたいな感じでしたよね。それで、私が、“じゃあ一緒にやりましょうよ”って声をかけて、そこからスタートしました」
向井「PINKの曲は、私の中で忘れかけていた存在になっていたものです。中学1年とか2年の頃、福岡では深夜に『ミュージックトマト』という、テレビ神奈川の音楽ビデオクリップ番組が放送されていて、あれが唯一の、日本のロックの情報源だった。洋楽は、もっといろいろありましたね。民放で『MTV』って番組もやってたし、『ポッパーズMTV』とか、ローカルで『ナイトジャック福岡』という番組もやってて、それは竹内出さんが司会でしたね。まぁ、そういった番組の中でPINKを聴いた時、他の日本のバンドと比べて、すごく個性的で大人っぽい印象がしたんです。子供が聴いてはいけないような匂いを感じた」
__分かります。 p>
向井「友達は、もっと元気がいいタテノリのビート・ロックとかを聴いてましたけど、私はこまっしゃくれたガキだったんで、そういう音楽を聴くことで、自分の精神年齢を上げたかったんだろうね。PINKは、そういう記憶の片隅に置かれていた存在だったんですけど、LEO今井の音楽を聴いた時、それが何故が蘇ったんです。何か通じるものがある、と」
LEO「PINKというと、最初はアメリカの女性アーティストのことかと思ったんですけど、すすめられて実際に聴いてみたら、衝撃的でした。私は、ホッピー神山さんとスティーヴ衛籐さんは知っていたんですけど、彼らが昔、PINKってバンドをやっていたことは知らなかった」
__では、LEOさんから“KIMONOS”というユニット名の由来になった、大正時代の美人画の話を聞いた時、向井さんはどう感じましたか? 中村大三郎の「ピアノ」は、本作のジャケットにも使用されましたが。 p>
向井「私は、最初に山川秀峰「三姉妹」を見たんですけど、我々がつくっている音楽の本質を突いたテーマを持っているな、って思いました。東京という街の中で、いろんな文化が混ざり合っているイメージ——だから、そこにあるのは、必ずしも和洋折衷というイメージではない、と思ってます。和洋折衷というと、琴とドラムンベースとか、そういう分かりやすいイメージしか湧いてこないと思うんですけど、そういうことではないですから」
LEO「私はこのプロジェクトに、もっと本質的な部分で、“和”とか“洋”という概念が関係なくなるくらいに融合・調和している、そういうイメージを持っていたんです。で、私が、大正時代の美人画のことを説明していると、“着物”という言葉に向井さんがピンときて…」
向井「うん、“KIMONO”というグループにしたかったんです。でも、KIMONOってグループが他にいて、アイスランドに。それで、“KIMONOS”になりました」
__音楽でも映画でも本でも何でもいいのですが、アルバム制作にインスピレーションを与えたものとしては、美人画の他にどんなものがありましたか? p>
向井「私は、例えば1曲目の「No Modern Animal」という曲にはパーカッションが入ってるんですけど、アレをつくっていた時には、キップ・ハンラハンの『Coup De Tete』(’81)【2】がアタマにありました。あの、有機的な16ビートのパーカッションと、ソリッドなビートが入っているニューヨークっぽいノリが、カッコイイなって思った。私は、ニューヨークのロックが昔からすごく好きで、それに対して憧れにも近い感情を持っています。トム・ヴァーラインとか、ソニック・ユースとか、やっぱり非常に“クール”なんですよ。ギターの音から情念が伝わってくるのに、その質感はすごくクール。で、自分もそういう表現をしたくて、ずっとやってきたんだけど、なかなかそうは上手くいかない。もっとスラっとしていて、頬がコケていて、目の下にクマがあるようなスタイルの持ち主じゃないと、あれは様にならないのかもしれない」
LEO「ニック・ケイヴみたいな感じ」
向井「まぁ、そういうクール・サウンドへの憧れというのがずっとあるので、なるべくソリッドな音にしたかったですよ。なんていうのかな…自分の中にあるアクの強さというものを、自分で薄めたかった」
__LEOさんとコラボレートすることで? p>
向井「そう。LEO今井だったら、私が思い描くあの“クールネス”を表現してくれるんじゃないか、と思いながらやってました。ただ、LEO今井も決してアクが弱い表現者じゃないので、KIMONOSの音楽は、やっぱりアクの強いものになったと思いますけど。…それはしょうがないか?」
LEO「うん。それはしょうがないね」
向井「でも、ビートの冷たい質感、冷たいけど肉感的な質感というのは、出せたと思う。’80年代のドラムマシンというものには、機械なんだけど、魂が宿ってる気がする。例えば、ジャストに打ったリンドラムのあの音色、音圧、周波数には、魂が宿ってる感じがする。実際に私は、’80年代のドラムマシンで組んだリズムパターンを、ずっと1時間くらいループして聴いていることがあります。ブギー・ダウン・プロダクションズに『Criminal Minded (Instrumentals / Hot-Club-Version)』(’87)【3】っていうのがあるんですけど、アレ、最高ですよね。『Criminal Minded』のヴァージョン集で、ドラム・サウンドだけ聴けるんですけど、あれには涙が出てきます。なんで、ドラムに関してはそこまで持っていきたいな、とも思ってました」
__本作にある’80年代的なテイストというのは、ドラム・サウンドに因る部分も大きいんですね。 p>
向井「打ち込みでやるなら、ザ・ドラムマシンな方法が一番だと思ってましたからね」
LEO「ドラム音を打ち込む時は、“ハッ!ハッ!”って、発声しながらやりましたよ。そこに魂を吹き込むように」
向井「うん。それ、重要」
LEO「あと、上モノに関しては、私はスティーヴ・ライヒ【4】が大好きで、ああいうミニマリズムの要素を取り込もうとしました。アルバムができ上がった頃には、ティアーズ・フォー・フィアーズの作品を聴いたりもして、そういった要素の取り込み方に共感しましたね」
向井「ライヒ・スタイルのシーケンスというのは、LEOの中にコンセプトとして結構あった。私はそんなに詳しくないけど、ああいうパーカッションに近いアタック音のシーケンスというのは、どの曲にも結構入ってると思います」
LEO「あと、Warp RecordsやRephlexのアーティスト、特にマイク&リッチの『Mike & Rich』(’96)【5】とかも、私はよく聴いてました。…二人組の作品ってあんまり聴かないから、自分のレコード・コレクションから前例を探そうとしましたね。で、ダークスローンの『Panzerfaust』(’95)なんかも出てきました。ジャンルは全然違うけど、ミニマルで冷たいのにヘビーで熱い。そいういう意味では、彼らと近いものがあると思いました」
向井「二人組のユニットって、例えばティアーズ・フォー・フィアーズも、MGMTもそうなんだけど、なんかガリ勉っぽいんですよ。二人組というと、なんかそういう落ち着いたイメージしか思い浮かばなかったから、そういうのじゃない何かに持っていきたかった」
__音楽以外で、何かインスパイアされた作品はありましたか? p>
LEO「映画の話は、二人でよくしていました。で、僕は日本映画の知識があんまりないから、向井さんからいろいろ教えてもらったりしました。KIMONOSの音楽とは直接関係していないですけど、『ジャズ大名』(’86/監督:岡本喜八、原作:筒井康隆)【6】を借りて、それ観ることで、向井さんのことをもっと知ることができた気がしました」
向井「『ジャズ大名』は、私が音楽をやる上で基本にしている映画で、一言で言えば狂乱状態、混乱状態の映画なんですけど、すごいグルーヴ、うねりが生み出されているんですよ」
__なるほど。 p>
向井「あと、「Almost Human」のPVを撮影する前日に、私はジャン=リュック・ゴダールの『軽蔑(Le Mépris)』(’63)【7】を観ました。やっぱり映画に関しても、私はクラスのみんなが観ているような映画は観ないという、こまっしゃくれたガキだったんで、ヌーヴェルヴァーグの退屈な映画を観ていたんですよ。ただ、そうは言っても素晴らしい作品なんで、PVで参考にしました。ゴダールの、あのドリー(カメラの台車)を使った横移動のスピード感、テンポが好きで。でも、当日スタジオにレールがなかったんで、クローズアップ/クローズアウトでいこうということで、ああなりました。静かなんだけど、ただならぬ雰囲気がある、そんなPVにしたかったです」
LEO「あと「Miss」をつくっていた時、ジョン・カーペンター『ニューヨーク1997(Escape from New York)』(’81)【8】のテーマ曲に近いものがあると、向井さんに指摘され、聴いたら確かにその通りだと思いました」
向井「ジョン・カーペンターの映画は、ある意味、自分の中で悪夢に近いものだな。カーペンターは自分で音楽もつくるんだけど、またそのサントラがね、それこそミニマルなシーケンスで、悪夢感に拍車をかけるわけよ。「Miss」のとっかかりになったベースラインは、LEOが持ってきたんだけど…怖いわ、確かにコレ」
LEO「それは、トラウマですね」
__今回KIMONOSとして、二人でアルバムをつくり終えて、いかがでしたか? p>
向井「KIMONOSの音楽には、表面的には非常に落ち着いた質感があるんだけど、“いやいや、オレ達は東京で温度高く生きているぞ”という叫びも、ちゃんと入れられたと思いますね。“アグレッシブでいたい in 東京”、そういうテンションや疾走感は、出せたと思う」
LEO「やっている時は気づかなかったんだけど、KIMONOSの歌詞を振り返って読んでみると、理想と現実の境を扱ったものが多いと思いました。自分は今、現実を生きているけれども、やっていることは、自分の夢を形にしているというか、現実を拒絶しているところがあるというか…。本当に偶然なんですけど、このジャケットに描かれているお嬢さんがピアノで弾いてる曲って、シューマンの「トロイメライ(夢)」(『子供の情景 (op.15)』第7曲)なんですよ。正に夢。ただそれだけなんですけど」
向井「ふーん、でも、それ面白いね」
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inspiration source of KIMONOS
【1】PINK – 光の子 <Amazon 中古盤CD>
(1986:Moon/East West Japan)
【2】KIP HANRAHAN – Coup De Tete <HMV>
(1981:American Clavé/Yellowbird/EWE)
【3】BOOGIE DOWN PRODUCTIONS – Criminal Minded (Hot-Club-Version) <Amazon>
(1987:B-Boy)
【4】STEVE REICH – Octet/Music for a Large Ensemble/Violin Phase <HMV>
(1980:ECM)
【5】MIKE & RICH – Mike & Rich <Amazon>
(1996:Rephlex/Sony)
【6】ジャズ大名 [DVD] <HMV>
(1986:角川エンタテインメント)
【7】軽蔑 [DVD] <HMV>
(1963:ジェネオン・ユニバーサル)
【8】JOHN CARPENTER – Escape from New York [O.S.T.] <HMV>
(1981:Silva/Rambling/Volcano)
Matt & Kimの『Sidewalks』を全曲試聴
ブルックリンのインディー・ポップ・デュオ、Matt & Kimが、12/8に日本発売を予定しているサード・アルバム『Sidewalks』の全曲試聴をMySpaceで開始しました。今年のフジロックで元気なところを見せてくれたMatt & Kim、新作では一段とグレードアップしたサウンドを聴かせてくれます。
(11/2追記)全曲試聴がSpinner.comでも始まりました。
2010年10/31-11/6の注目リリース
今週リリースのうち、アルバムのJAMIROQUAIからSWAHILI BLONDEまでは、現在発売中のLOUD191号にてピックアップしております。そちらもよろしければチェックしてみてください。
ALBUMS
JAMIROQUAI/ Rock Dust Light Star
’96年の3rdアルバム『Travelling Without Moving』を全世界で700万枚ヒットさせ、不動の人気を確立した、リーダーのジェイ・ケイ(Vo)を中心とするUKのジャズ・ファンク・バンド。約5年ぶりの7thアルバムは、全編をライブ・レコーディングで制作。リード曲「White Knuckle Ride」のような、彼らの真骨頂とも呼べるファンキーでダンサブルな楽曲から、ブルージーなロック・チューンまで、バラエティー豊かなサウンドを展開し、新機軸を打ち出した会心作。
11/3リリース(POP/ FUNK)★★★★★★★☆☆
TIM DELUXE/ Fluid Moments
数々のヒット・トラックを生み出してきた、UKのクラブ・ミュージック・プロデューサー/DJ。約4年の3rdアルバムは、“ルーツへの回帰/ジャズ、ディスコから影響を受けたハウスとテクノ”と自身が語る作品で、ハウス/テクノ・ミュージックの本質のみを追求したかのような、ベーシックで、グルーヴィーで、ヒプノティックなトラックを収録。彼らしいスタイリッシュなアイディアと、微細なトレンドに左右されないサウンドが詰まった作品。
11/3リリース(HOUSE/ TECHNO)★★★★★★★☆☆☆
agraph/ Equal
電気グルーヴをはじめとする様々なアーティストの制作やライブをサポートし、’08年に『a day, phases』でデビューした、実力派エレクトロニカ・アーティストの2ndアルバム。砂原良徳、ミト(クラムボン)、alva notoがプロダクションに参加し、生楽器の響きに着目した楽曲や、新たなリズムにトライした楽曲、agraph流アンビエント・ミュージックにトライした楽曲など、前作以上に繊細かつイマジネイティブな音世界を追求。
11/3リリース(ELECTRONICA)★★★★★★★☆☆☆
SWAHILI BLONDE/ Man Meat
LAのWeave!というアート・ロック・バンドで、ドラマー/ボーカリストとして活躍していた女性アーティスト、ニコール・ターリーによるソロ・プロジェクト。ジョン・フルシアンテ(元Red Hot Chili Peppers)ら多彩なミュージシャンが参加し、The Slits、The Raincoatsといった伝説的なガールズ・バンドに通じる、アフロビート、ダブ、クラウトロックといった要素を独自に消化した、サイケデリックなポスト・パンク・サウンドを展開。
11/3リリース(ROCK)★★★★★★★☆☆☆
HURTS/ Happiness
英BBCが期待の新人を選出する“Sound of 2010”にノミネートされた、マンチェスターのニューウェイブ・バンドによるデビュー作。80’s ニューウェイブ以降のエレクトロ・ポップ・サウンドを軸にした、耽美でダークな、確固たる美意識に貫かれた楽曲を収録。彼らのファンを公言する、Kylie Minogueも参加。
11/3リリース(ROCK)★★★★★★★☆☆☆
ROVO/ RAVO
ダンス・ミュージックやジャムの要素を融合させた、独自のサウンドを展開する、インスト・バンドによる、2年ぶり通算9作目のアルバム。バンド史上屈指の名曲として音源化が待たれていた「Eclipse」をはじめ、ここ3年間のライブで鍛え抜かれた5曲を収録。宇宙レベルの大きな存在に包み込まれるような、壮大なサウンド・スケープを表現。
11/3リリース(ROCK/ ELECTRIC)★★★★★★☆☆☆☆
DAISHI DANCE/ DAISHI DANCE remix…2
今年夏には→Pia-no-jaC←とコラボ・アルバムをリリースするなど、ハウス・シーンを越えて活躍を見せる、DJ / プロデューサーのリミックス・アルバム。今年1月にリリースされた『DAISHI DANCE remix.』の第2弾で、彼が手がけたリミックス / プロデュース・ワークスのみを厳選し、未発表Remix曲も加えた、フロア直結型の2枚組アルバム。
11/3リリース(HOUSE)★★★★★★☆☆☆☆
APPARAT/ DJ-Kicks
Ellen AllienのBPitch Controlをベースに活動するプロデューサーの最新ミックスCD。OvalやBorn Ruffians、Thom Yorke、Burial + Four Tet、Ramadanmanなど、4つ打ちのダンス・トラックにとどまらず、ロックやエレクトロニカ、ダブステップまで、幅広い楽曲をミックス。本作のためのエクスクルーシヴ・トラック、Apparat「Sayulita」も収録。
10/31リリース(ELECTRIC)★★★★★★☆☆☆☆
will.i.am, Nicki Minaj「Check It Out」
will.i.amとNicki Minajがコラボした「Check It Out」のPVが公開されました。「Check It Out」は、The Buggles「Video Killed the Radio Star」をサンプリングしていることでも話題となっていましたね。Nicki Minajは、海外で11/22にデビュー・アルバム『Pink Friday』をリリースします。新曲「Right Thru Me」のPVも公開されたので、貼っておきますね。
!!!のスタジオ・ライブをThe Interfaceで
今年6月に、最新アルバム『Strange Weather, Isn’t It?』を日本発売した、カリフォルニア出身のダンス・バンド、!!!がスタジオライブを行いました。現在、その模様をThe Interfaceで見ることができます。曲目は「AM/FM」「Steady As The Sidewalk Cracks」「The Most Certain Sure 」「Must Be The Moon」で、最初の3曲がニューアルバムからの曲ですね。
Tiësto「Speed Rail」
Tiëstoが、「Speed Rail」のPVを公開しました。「Speed Rail」はTiëstoの最新シングルで、そもそもはビデオゲーム『DJ Hero 2』用に書き下ろした曲だったということです。というわけで、ビデオもゲーム仕様になっていますね。
LOUD191号発売!
LOUD191号が発売となりました。
Katy Perry「Firework」
Katy Perryが、「Firework」のPVを公開しました。「Firework」は、8/25に日本発売された最新アルバム『Teenage Dream』からのサード・シングルです。「Firework」は、ストリングスが軽快で、キャッチーなダンス・ポップに仕上がっていますね。