autoKratzが、4/28に『Kick EP』を無料配信

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UKのエレクトロ・デュオ、autoKratzが、4/28にオフィシャルサイトで、新作『Kick EP』を、ファンへの感謝をこめて無料配信すると発表しました。『Kick EP』は3曲入りで、タイトル・トラックの「Kick」は、Primal ScreamやKasabianとの仕事で知られるJagz Koonerがプロデュースしています。しかも、ギターには、Primal ScreamのAndrew Innesをフィーチャーしているということで、これは期待できそうですね。4/28を楽しみに待ちましょう。

Ellie Goulding「Guns And Horses」

Ellie Gouldingが、「Guns And Horses」のPVを公開しました。「Guns And Horses」は、全英No.1を記録した、Ellie Gouldingのデビュー・アルバム『Lights』から、三枚目のシングルとして、UKで5/17にリリースされます。

BBC Sound of 2010で、最有力新人の栄誉を勝ち得たEllie Goulding。ビジュアル的な派手さはないものの、着実に成功をおさめています。彼女がつくるような、フォーク・テイストとエレクトリック・サウンドの融合から生まれるポップは、“2010年の音”になるかもしれませんね。

Lightspeed Champion「Madame Van Damme」

Lightspeed Championが、「Madame Van Damme」のPVを公開しました。「Madame Van Damme」は、Lightspeed Championが2/24に日本発売したセカンド・アルバム『Life Is Sweet ! Nice To Meet You !』から、二枚目のシングルとしてリリースされる予定です。プロデュースは、Animal Collective、Gnarls Barkleyも手がけるBen Allen。

DECO*27 初音ミクとギターで紡ぐ、愛の言葉

ギターを主体にした正統派ロック・サウンドと、ボーカロイドの初音ミクを融合させた独自の楽曲で、ニコニコ動画を中心に人気を博しているDECO*27(デコ・ニーナ)。これまでに4枚の自主制作アルバムを発表するなど、精力的に活動するボーカロイドP(=プロデューサー)だ。13歳の時にギターと作曲を始め、大学生の頃からDTMで楽曲制作を始めたというDECO*27。バンド活動ではなく、初音ミクをボーカルに選んだ理由とは何だったのだろう?

「感情を持っているような、いないような、そんな初音ミクの声に惚れたんです。この声をバンド・サウンドとぶつけたらどうなるだろう? と思ったのがきっかけです。ギター以外のパートは打ち込みで、最初にドラムを打ち込んで、それにあわせて弾き語ったものを録音。そのあと、アレンジ加えていく感じですね」

そんなDECO*27が、このたびデビュー・アルバム『相愛性理論』をリリースした。本作は、表題曲の「相愛性理論」や「二息歩行」といった、ニコ動で“VOCALOID殿堂入り”(再生数が10万以上のボーカロイド曲に付けられるタグ)を果たした7曲をに加え、新曲や、sasakure.UKらによるリミックスを収録。初回限定版には、4曲のアニメーションを収録したDVDも同梱される。収録曲では、どれも恋愛にまつわる出来事や心情が赤裸々に綴られているが、作品全体を通して、どんなことがテーマになっているのだろうか?

「「相愛性理論」の歌詞にもありますが、“想いは誰にも見えないから、このように歌にしてみたのです”ということがテーマになってます。歌詞は、すべて実体験が元になっていますが、恥ずかしいので、よくひねくれた言い回しを使ってますね(笑)」

リスナーから大きな共感を集めている、DECO*27の描くリアルな恋愛模様。その世界観を彩るのが、『相愛性理論』に参加した、数多くのクリエイター陣だ。本作では、ボーカロイドやニコ動を通じたコラボレーションによって生まれた、楽曲の新たな魅力に気付くことができるだろう。

「イラストレーターの“りょーの”さんは、色使いやセンス、独特の作風に惚れて、本作のイラストをお願いしました。「愛 think so, feat. とぴ」で歌ってくれた“とぴ”さんは、僕のボーカロイド曲を歌ってくれたことがきっかけで、一緒に活動しようという話になりました。ボーカロイドというテーマは共通しているものの、みなさんそれぞれが、同じ方向を向いて制作しているわけではないと思うんです。それが本作のように、ひとつの作品に向かって一緒に制作することは大変面白いし、自分にはないものを補い合えるのが素晴らしいですね。結果、最高の一枚を仕上げることができたと思ってます」

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Wolfmother「Far Away」

Wolfmotherが、「Far Away」のPVを公開しました。「Far Away」は、Wolfmotherが2009年に発表した最新セカンド・アルバム『Cosmic Egg』から、4枚目のシングルとしてリリース予定です。PVの監督は、Passion PitやMuseも手がけるHydra。

新レーベル“LDK”スタート。リリース楽曲募集中!

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このたびLOUDでは、将来有望な才能をサポートするため、国内有数のトップDJ / アーティストを共同主宰兼A&Rに迎え、新デジタル・レーベル“LDK(Loud Digital Kitchen)”をスタートする運びとなりました。つきましては、そのリリース楽曲を募集いたします。

革新的な音楽を制作されている方、ぜひこの機会にご応募ください。

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トクマルシューゴ 誰も聴いたことのないポップ・ミュージックを追求し続ける 個性派インターナショナル・アーティスト

2004年にニューヨークのレーベル、Music Relatedから『Night Piece』をリリースして以来、国際的アーティストとして活躍するトクマルシューゴ。アメリカ/ヨーロッパでいち早く評価を受け、日本に先行する形で海外活動を重ねてきた人気者だ。’07年にサード・アルバム『EXIT』をリリースすると、国内での人気も急上昇。無印良品CMのサウンド・プロデュースや、IOC(国際オリンピック委員会)のスポットCM楽曲、NHK『トップランナー』『ニャンちゅうワールド放送局』の楽曲を担当するなど、活躍の場を広げている。

そんな彼が、待望のニュー・アルバム『Port Entropy』をリリースした。ZAK氏を招き制作した楽曲「Rum Hee」以外は、これまで同様、演奏、録音、ミックスの一切をトクマルシューゴ一人で行った注目作だ。その内容は、“総括ができた作品”と彼自身が語る通り、これまでに培ってきた独自の音楽性を、さらに突き詰めたもの。そこでは、何十種類もの楽器が共鳴し合う緻密なサウンドスケープと、心温まる類い希なメロディー・センスを堪能することができる。

ポップ・ミュージックの奥深き世界が詰まった『Port Entropy』。本作の内容と、彼の音楽観について、トクマルシューゴに話を聞いた。


【キャリアを総括したアルバム】

――トクマルシューゴさんは、海外からデビュー作『Night Piece』(’04)を発表して以来、リリースを重ねる毎に国内外で注目を集め、高い評価を得てきましたね。ここまでの音楽活動を振り返ってみて、現在の率直な気持ちは、どのようなものですか?

「この『Port Entropy』というアルバムをようやく出せた、という気持ちですね。僕は、これまでに3枚のアルバムをつくってきましたが、このアルバムでは、その総括ができた、という感覚があるんですよ」

――昨年ミニ・アルバム『Rum Hee』を出していますが、フル・アルバムとしては、前作『EXIT』(’07)から約2年半の期間が空きました。本当はもっと早く新作を出したかったそうですが、やはりツアーやライブ活動の方でかなり忙しかったんですか?

「それもありましたけど、制作自体に時間がかかりましたよね。時間をかけたかった、と言った方がいいかもしれません。『EXIT』を完成させた時点から、曲をずっとつくり続けて、50〜60曲くらいつくりましたから。そして、そこから曲を選ぶのにも時間をかけましたし、曲を完成させるのにも時間をかけましたね。どういう曲にしようかな、どういう作品にしようかなと、ずっと考えてました」

――具体的には、どのようなテーマやコンセプトの作品を考えていたんですか?

「とにかく良いモノを、ということでしたね。バンド編成でやりたいとか、弾き語りでやりたいとか、いろいろ考えはしたんですけど、そういうことじゃなくて、単純に今の状態で、今の自分が一人でできる一番良いものをつくりたかった。結局は、そこに落ち着きました。そういう意味で、これまでの総括ができた作品だと思っています」

――ちなみに、過去のアルバムは、作品毎にテーマやコンセプトを設けて制作したものなんですか?

「そうですね。例えば『EXIT』は、その前作『L.S.T.』(’05)の内容がちょっとドロドロしていたイメージだったんで、それをひっくり返したような作品にしようと思って、つくったものでしたね。それで、ちょっとあか抜けたというか、ポップで明るい作品になったんですよ」

――なるほど。

「で、そういったことも全部取り払ってやりたいな、と思ってつくったのが今作なんです」

【子供達のエントロピー】

――アルバム・タイトルとなった、“Port Entropy”という言葉の由来は何ですか?

「この言葉には…特に意味がないんですよ(笑)。僕の好きな音楽家に、ブルース・ハーク(Bruce Haack:’60〜’70年代に活躍した、電子音楽の巨匠。子供のための音楽や、“モンド”なシンセサイザー作品を数多く残している)という変わり者がいるんですけど、彼の作品に『Captain Entropy』(’73)というアルバムがあるんですよ。で、そのタイトルの感じがすごく良いなぁと思ったので、“entropy”(編注:エントロピーとは、物質や熱の拡散度や、情報量を表すパラメーターのこと)の部分をいただいて、“Port Entropy”というアルバム・タイトルにしました。深読みしてもらっても大丈夫だし…っていうくらいのニュアンスですかね(笑)」

――“port”という単語の方には、何か思い入れがあるんですか?

「いや、何もないです(笑)。語感的に、何となく良いかな、と。今作の楽曲タイトルには「Platform」「Tracking Elevator」「Drive-thru」「Suisha」とか、動きに関係するものが多いので、それの基準になったらいいかな、という気持ちもありましたけど、そんなに深い意味はないですね」

――本作のジャケットは、“Port Entropy”という言葉から連想してつくったものなんですか?

「前作と同じく、シャンソンシゲルという、僕の幼なじみに描いてもらいました。曲だけを聴かせて、あまりイメージを伝えずに絵を描いてもらったんですけど、いっぱい描いてもらった中から、この絵を選びましたね。僕の中に、今作のうっすらとしたイメージとして、子供達が一生懸命遊んでいる姿というものがあったんですけど、この絵はそのイメージを一番良く表現しているなって思ったんですよ」

――“子供達が一生懸命遊んでいる姿”ですか。いいですね。

「良い作品をつくろうと思った時、僕には、子供達が一生懸命遊んでいる姿をイメージしておくと良いものができる、という感覚があるんですよね。いろんな境遇の子供達を集めて、遊ばせておいて(笑)、それをうっすらとイメージしながらつくっていく…。『Port Entropy』の制作って、正にそんな感じでしたね」

【オリジナルな曲づくり】

――では、『Port Entropy』の曲づくりについても話を聞かせてください。トクマルさんは、かねてよりデジタル楽器を使わない/ライン録音を行わない、というポリシーで制作作業を行っていますが、本作においてもその点に変化はありませんでしたか?

「楽器に関しては、そうでしたね。今作も、生楽器のみを使いました。シンセも嫌いじゃないし、打ち込みも嫌いじゃないんで、本当はどんな楽器を使っても構わないんですけどね。でも、ソロ活動をスタートさせて、自分にしかできないものは何かって考えた時、それは、二度と再現できない生楽器の響きを使ったものだったんですよ。それで、生楽器を生演奏して、それをレコーディングしていく、という方法でやっていくことにしたんです。楽器を集めること自体が趣味だった、ということもありますけどね。昔からオモチャでも何でも、音が出るものに興味があったんですよ」

――本作でも、何十種類もの楽器を使用していますが、中でも特にポイントとなったものは何かありましたか?

「うーん。今作では、ピアノでしょうかね。初めて弾き語りっぽい感じで録った、3曲目の「Linne」では、キレイなピアノの音を録るのではなく、自分好みの音に変えたものを録しました。自分の中では意外と新鮮な作業でしたね。あとは、ダルシマーという変わった弦楽器を使いました。弦を叩いて音を出すんですけど、この楽器をメインで使ったのは、6曲目の「Laminate」ですね」

――本作の中で、アルバム全体の軸となった楽曲というのは、何かありましたか?

「そういった楽曲は特にないんですけど、曲順的には、2曲目「Tracking Elevator」がアルバムの軸になっていると思いますね。この曲は、完成するまでにすごく時間がかかりました。ようやくできた、って感じだったんですけど、個人的に気に入っています」

――ちなみに、この曲にはこの楽器の音がいいといった、各曲における楽器のチョイスは、どのように決めていくんですか?

「それは、曲をつくった最初の時点でイメージできていますね。曲のイメージが最初にでき上がっているので、それを具現化していくために様々な音を創っていく、といった感覚なんですよ」

――では、本作の制作で一番時間がかかった部分というのは、そのイメージに音を近づけていく作業だったんでしょうか?

「そうですね。この色とこの色を合わせて…みたいな、本当に些細な作業なんですけど、個人的にはそこがすごく重要なんです。自分にしか分からない感覚だと思うんですけど、絵画的でもあり、立体的なパズルっぽい感じでもある作業ですね。周波数ごとに色分けされているようなイメージなんですけど」

――音が色で見えるんですね。本作は、色で例えると、全体的にどんなものになりましたか?

「うーん。ジャケットにあるような、緑や青の感じでしょうか。今作は、意外と鮮やかな色合いだと思います。でも、各曲ごとの色合いは、なんともいえない微妙な色の塊ですけどね」

――ところで、楽曲を仕上げる際、トクマルさんはPCを使用するそうですね。本作からも感じられる、どこかエレクトロニカ的なテイストというものは、そういったPC上の作業から生まれてきているのでしょうか?

「アコースティックなサウンドも、エレクトロニカ的なサウンドも好きなので、自然とそうなっているのかも知れませんね。僕は、生楽器の演奏を録音して、それをただ生々しく再現したいと思っているわけじゃないんですよ。なんで、かなり細かなエディットもやってます。一音一音のサウンドを変えていくような作業が多いですね。PCでの作業は、僕が演奏したサウンドを、曲としてより完璧なものへと近づけていくためのものなんです。ファースト・アルバムは、よくエレクトロニカのアルバムと一緒に並べられていましたけど、僕はそれについて全然悪い気はしてないですよ」

【夢日記もモチーフにした歌詞】

――リリック面についても教えてください。本作のリリックでは、どんなところを特に意識しましたか?

「前作よりも、もうちょっと言葉にこだわってみようかなって思いましたね。言葉の当てはめ方や、細かな言葉のチョイスには、ちょっとこだわりました。でも、作詞していく方法自体に、変化はなかったですよ。これまで同様、自分の“夢日記”から拝借して、書いていきました」

――変わった夢をよく見るんですか?

「いやぁ、見ている夢自体は、普通だと思うんですけどね(笑)。それを記録するかしないかの違いがあるだけで」

――夢日記をつけ始めたきっかけは、作詞をするためだったんですか?

「いや、単なる好奇心で始めたものでした。で、そこから歌詞をつくっていく時は、あまり具体的なワードを使わないようにしているので、見た夢をそのまま詞にしているわけじゃないんですよ。あと、『Port Entropy』では、十年前に書いた夢日記からピックアップしたりもしているんで、必ずしも最近の夢だけを取り上げたものじゃありませんね」

――では、そういった歌詞にメロディーをつけていく際、本作で特に心がけたことは何でしたか?

「僕の場合は、曲をつくった段階でメロディーも全てでき上がっているので、そこに歌詞を当てはめていくという作業をやるんですけど、曲にフィットする歌詞を探していくのが、なかなか難しいんですよ。その作業には、いつもかなり時間がかかりますね」

――では、トクマルさんならではの、日本的でもあり無国籍的でもあるメロディー・センスは、主に何から培ったものだと思いますか?

「まずは、子供の頃に聴いていた音楽、というものが大きいと思いますね。あと、僕は、いわゆる古き良き音楽も好きなんですけど、そういった音楽をいっぱい聴くようになってから、メロディーが浮かびやすくなった、ということはありますね。僕は、’60年代の音楽にあるメロディーとかが結構好きで、そういう音楽を一時期よく聴いていたんですよ。で、そういったメロディーに日本語の歌詞を乗せていくと、こういう音楽になる…というのはあると思います」

【存在しないポップを目指して】

――トクマルシューゴさんのつくりだす音楽は、結果的にとてもポップなものなんですが、曲づくりにおいてポップ性は重視していますか?

「僕には、好きな音楽がいろいろとあるんですけど、そんな中に(自分の好きな音楽相関図の中に)、いくつか穴の空いている部分があるんですよ。僕の中では、その位置にあるべき音楽というものがあるのに、それが存在しない。だから、そこの抜けている部分を埋めたかったんですよね。で、その穴を埋めるために自分でつくった音楽が、たまたまこうしたポップなものだった、ということなんだと思います」

――面白い発想ですね。

「いろいろな音楽を聴いていくうちに、“こういう音楽があるはずなんじゃないか?”という妄想が広がっていった感じですね。僕の音楽は、それを具現化していったものなんですよ。『Port Entropy』では、ようやくそれが完成に近づいたと思っています」

――聴きたい音楽があるのに存在していない、というある種の枯渇感が、曲づくりの原動力になっているんですね。

「ええ。昔から、そこにもどかしさがありましたね。雑誌のレビューなんかがヒントになったりもしましたよ。“誰かと誰かを合わせたようなサウンドが…”とか書いてあっても、実際に聴いてみると、自分が想像していたものと違っていたりしますよね。じゃあ、自分で想像していたものをつくってみよう…とか。僕は、いまだにリスナー感覚がとても強いんだと思います」

――なるほど。では、いちリスナーとして、自身の音楽をどのように形容したいですか?

「そこが一番難しいところですね。なかなか言葉が見当たらないんですよ…。絵にして説明したい感じですね(笑)。相関図みたいなものを書いて、“この辺りの音なんですよ!”って言いたいです」

――その相関図、いつかぜひ見せてください(笑)。では、最後に今後の活動目標を教えてください。

「5月からツアーが始まるんですが、自分の曲をアレンジし直して、バンド編成で演奏するのは、結構楽しみですね。エンターテインメントとしてはまだまだなんですけど、今はライブをやること自体が楽しいです。あとは、今の自分が置かれている、この良い環境を守っていけたらいいですね。特に大きな目標があるわけじゃないんで、好きなことを続けていけたらいいなって思っています」

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HIDEO KOBAYASHI 日常に沸き起こるうねりを表現した、劇的ハウス・アルバム

1990年代にアンダーグラウンド・テクノ・シーンで活躍し、現在はハウスを主体としたスタイルで、クラブ・シーンの屋台骨を支えているクリエイター / DJ、HIDEO KOBAYASHI。ダンス・ミュージックの本質に根ざした、確かなプロダクションと強靭なグルーヴを武器に、数々のトップDJから絶大な支持を獲得している実力派だ。

そんなHIDEO KOBAYASHIが、このたび二作目となるソロ・アルバム『a Drama』を完成させた。“自分の音楽、DJ、人生、人間性を含めた、小さなドラマの集合体”をテーマにつくり上げられた本作。その趣旨を、彼はこう話す。

「私たちは普段から様々な感情を抱きながら、1秒1秒生きているわけですよね。これまでの音楽活動や人生は、どの瞬間も全て運命的、衝撃的、流動的、情緒的であり、決して平坦ではありませんでした。そういった、生きていること全てが“Drama”なので、本作はその一部分を輪切りにした、ここ一年間のポートレートとも言えますね」

パーカッシヴなサウンドを用いた軽快なグルーヴと、陶酔感やジワジワとした高揚感あふれるエレクトロニック・サウンドという二つの要素を含んだ、このアルバム。HIDEO KOBAYASHI自身が最上のディーヴァと賞賛するLisa Shaw、前作『ZERO』では、「Rockstar」で強力なタッグを見せたTomomi Ukumoriらがボーカル参加しているほか、SOIL & “PIMP” SESSIONSの元晴とのセッションで生み出した「Ase」、Rasmus Faberとの共作によるディープなフロア・キラー、「Teardrops」が収録されている点も注目だ。

なかでも、エモーショナルなインスト・トラック「Made In Japan」は、先行シングルですでに話題となっている注目曲。HIDEO KOBAYASHIは、この楽曲タイトルに特別な意味を込めたという。

「戦後の欧米による洗脳は、いまだ日本人の心に深く刻み込まれていて、音楽業界で言うと“外タレ至上主義”にそれが表れていると思うんです。そんな精神を捨てない限り、アーティスト達の潜んだ才能を開花させるのは難しいでしょう。そういう意味も込めて、この曲は「Made In Japan」という奇抜な名前にしました。音楽に国境と思い込みをつくっているのは、雑誌や各種ウェブ・サイトなど、国内の媒体であることに気づいてほしいですね」

『a Drama』を通じて、自身の芸術的感性とスピリットを描き出した、HIDEO KOBAYASHI。彼は音楽活動に、どんな意義を見出しているのだろうか。

「坂本龍一や、YMO、ドビュッシーといった、自分のルーツにある音楽には、私自身も救われてきました。なので、自分の音楽で誰かにポジティブな影響を与えられたら、最高ですね。そこだけはブレることのない、自分に課せられた使命だと思っています」

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オーラルヴァンパイア ダークなダンス・グルーヴが鳴り響く アヴァンギャルド・サイコ・ポップ

仮面をかぶった奇才トラック・メイカー / DJ、レイブマンと、吸血ボーカルのエキゾチカからなる、オーラルヴァンパイア。テクノ、エレクトロ、インダストリアル・ミュージックの実験性、昭和歌謡を彷彿とさせるレトロなメロディー、ゴシック調のビジュアル・イメージで、独特の存在感を放つ注目株だ。’04年に自主制作アルバムを発表して以降、急速に話題となっている彼ら。海外のジャパンカルチャー・イベントにも多数出演しており、国内外のオーディエンスを魅了している。

そんなオーラルヴァンパイアが、このたび初のフル・アルバム『ZOLTANK』を発表する。これまでに配信限定でリリースしてきた人気曲のニュー・バージョンに、新曲を加えた、全16曲が楽しめる本作。彼らの、バックグラウンドと未来が詰まった会心作だ。ポップさと、ミステリアスな世界観をあわせせ持つそのサウンドは、非常に中毒性が高い。

『ZOLTANK』の制作背景を探るべく、オーラルヴァンパイアの二人、レイブマンとエキゾチカに話を聞いた。なお、レイブマンはインタビュー中も仮面をかぶっており、その素顔は今も謎に包まれている。


――フル・アルバム、『ZOLTANK』を完成させた手応えはいかがですか?

レイブマン「手応えというか…かなり苦労しましたね(笑)。制作に長いこと時間がかかったし、一言では語れないですね」

エキゾチカ「でも時間がかかった分、ファンの方々にちゃんと伝わるような、“ZOL”のこもったアルバムになったよね?」

レイブマン「うん。アルバム・タイトル『ZOLTANK』は、いろんな出来事への思い入れや、グニャグニャした怨念みたいな“ZOL”を、タンクに詰めるイメージで付けたんですよ(笑)」

――“ZOLTANK”は、造語なんですか?

レイブマン「ゲルと似たような、ゾル状物質っていうのがあるんですよ。水溶液よりヌメリがあるんだけど、ゲルまではいかない物質で、血液とかがそうなんです」

エキゾチカ「私たちは、怨念、情念、感情のことを“ZOL”って言葉で表現したんですけど、血液もそうだし、イメージに合っていてちょうどいいなと」

レイブマン「でも、バンド自体はそんな重いテーマをやっているわけじゃないので、アルバムは純粋に楽しんでもらえたらと思います(笑)」

――本作では、ハード・テクノ、エレクトロ、ロック、ダブステップなど、様々なスタイルの楽曲が展開されていますが、全体を通して、昭和歌謡的なレトロなメロディーや、退廃的な雰囲気が印象的だと感じました。そういった要素が、オーラルヴァンパイアの軸となっているのでしょうか?

レイブマン「そういう要素は初期からあって、二人に共通しているものなんですよね」

エキゾチカ「昭和時代のエンターテインメントって、個性的だし、そこには“ZOL”が渦巻いている楽曲が多かったイメージがあります(笑)。そういう要素と、私たちのつくり出す音楽をミックスすることで、オーラルヴァンパイアっていうスタイルが、自然にでき上がったんです」

――また本作には、これまでに配信限定で発表してきた楽曲や、インディー時代の楽曲も収録されていて、オーラルヴァンパイアの軌跡をうかがい知ることもできますね。

エキゾチカ「私たちって、正式な音源が無い状態で何年もずっとライブ活動をしてきたから、“オーラルヴァンパイアはこういう者です”っていう一枚を、とにかくつくらなきゃと思ったんです。昔の楽曲は、このアルバムに収録するために全部つくり直したんですよ」

レイブマン「そんなことをしていたら、情念や怨念がわいてきて…(笑)。楽曲のジャンルはバラバラなんですけど、コンセプト自体は初期から変わっていないですね。一番大きく変わったのは、技術的な部分です。インディーズの頃は、PCではなくハードウェアで曲づくりをしていたんですけど、ボコーダーが無かったから、自分の首を絞めながら“あーーー”とか言っていましたね(笑)」

――ある意味斬新ですね(笑)。その一方で新曲には、楽曲構成におけるセオリーやフォーマットをぶち壊した、アヴァンギャルドなものが多いですね。

レイブマン「ポップな曲をつくる一方で、ノイズみたいな曲もつくって、自分の中でバランスを取ったんです。アングラ・シーンにいるだけだと、何でも自由だから、逆に新しいことって生み出しづらい気がするんですよ。それだったら、例えばのステージでアングラなことをやっちゃう方が、新しいなと思うんですよね。それもあって、J-POPにはないスタイルを意識して、今作はポップスとアングラが共存したようなアルバムにしたんです」

――とはいえ、あそこまでいびつな表現に行き着くって、並大抵の感性ではないと思いますよ。

レイブマン「ふふふふ(笑)。そういうことを、ちゃんとしたレコード会社を通してやってるっていう事実も、自分としては面白いんですよ。サディズムなのか…。もはやSなのかMなのか、わからないですけど」

――あと、『ZOLTANK』収録曲のタイトルには、“フレアスタック(※注1)”、“スキゾイド(※注2)”、“Innsmouth”といった、含みのある単語が多用されていますよね。

エキゾチカ「私が先に歌詞を書いて、その内容をふまえてレイブマンが曲名を付けたんです」

レイブマン「オーラルヴァンパイアの楽曲には、“工業哀歌三部作”っていうのがあるんです。第一作目は、インディーズ時代に出した「バンボロ工房」っていう曲で、第二作目が「フレアスタック」なんです。三つ目はまだ無いんですけどね(笑)。もともと僕は、無機質なものが好きで、建造物マニアだったりするので、それと自分の情念が交ざることで楽曲が生まれたんです」

――“Innsmouth”は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説に登場する、架空の都市ですよね?

レイブマン「はい。以前から僕は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『クトゥルフ神話』をモチーフにした曲を書こうと思っていたんですけど、なかなか完成できなかったんですよ。そうしたら、こっちから何も言ってないのに、エキゾチカさんがそういう歌詞を書いてきたからビックリしました」

――エキゾチカさんが書く歌詞は、とてもサイコな世界観を持っていますよね。

エキゾチカ「歌詞を書く時は、ストーリーやあらすじを描くよりも、断片的でもいいから伝わるイメージをつなげていく感覚なんですよ」

――声の質感や響かせ方も関係しているのかもしれませんが、非現実的な世界の住人が、何かを啓示しているような錯覚すら覚えるな…と思いました。ところで、アルバムのアートワークでは、レイブマンさんが自らディレクション / デザインを手がけたそうですね。

レイブマン「はい。アートワークに関しても、僕の中に明確なコンセプトがあったんですよ。オーラルヴァンパイアというものを、一発で説明できるようなものにしたので、すごく冒険をしたワケではないんですけど」

――今後の活動には、どんなビジョンを持っていますか?

レイブマン「社交的でない人でもやれることを選んでいった結果、僕はこういう音楽活動に行き着いたんですよ。僕みたいな、うだつの上がらないヤツでも、こういうことができるんだぞって…わかってくれたらと思います」

エキゾチカ「私たちの世界観に、入り込んで楽しんでほしいですね。普段リスナーがいるのとは、違う世界を提供していきたいです」

※注1: 原油採掘施設、ガス処理施設、製油所などで出る余剰ガスを、無害化するために焼却した際に出る炎。また、その手法のこと。

※注2: 社会的に孤立していて対人接触を好まず、感情の表出が乏しく、何事にも興味関心がないように見えるといった、性格特徴。

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