Neon Indian『Era Extraña』インタビュー


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ブルックリンを拠点に音楽活動を行うテキサス州デントン出身の異才、アラン・パロモのプロジェクト、ネオン・インディアン。2009年にリリースしたデビュー・アルバム『サイキック・キャズムス』(Psychic Chasms)で一躍脚光を浴びた、チルウェイブ・サウンドの流れを生み出した一人として知られる重要アーティストです。今年3月には、The Flaming Lips with Neon Indian名義で、フレーミング・リップスとのコラボレーションEP をリリースし、話題を集めています。

そんなネオン・インディアンが、待望のニュー・アルバム『エラ・エクストラーニャ』(Era Extraña)を9/7にリリースします(日本初回盤には、『サイキック・キャズムス』全曲をボーナス・トラックとして追加収録)。アルバムの仕上げを、フレーミング・リップス、モグワイ、MGMTらとの仕事で知られる名プロデューサー、デイヴ・フリッドマン(マーキュリー・レヴ)と共に行い完成させた意欲作です。

ここでは、その『エラ・エクストラーニャ』の内容について、アラン・パロモに話を聞いてみました。現在話題となっているウォッシュト・アウト『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』と共に、チルウェイブの未来が詰まった注目作ですよ。


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NEON INDIAN『Era Extraña』インタビュー

__前作『Psychic Chasms』(’09)は、インディー・ミュージック・シーンで世界的に注目され、高い評価も獲得した作品となりましたね。『Psychic Chasms』は、あなたにとってどのような意味を持つ作品となりましたか?

「僕の人生の、ある時期のハイライトを集めたスクラップブック。あれはいろいろ気にせずに、やりたいことができた作品だよ」

__では、最新作『エラ・エクストラーニャ』(Era Extraña)について教えてください。まず、あなたが今作でトライしてみたかったことは何でしたか?

「今回のアルバムで新たにトライしたことは、2つ、3つあるんだ。今回のアルバムでは、プロダクション・スタイルを全然違うコンセプトにしたい、という自覚があったんだけど、それをどう始めたらいいのか分からなかったね。で、ニューヨークで探し出したドリーム・シンセをアルバムに取り入れることにして、その使い方を勉強したんだ。使い方を覚えると、後々もしばらく役に立つしね。音それぞれが個性的だから、それらをどう組み合わせたらベストなのかを、見つけ出さないといけなかった」

__なるほど。

「『Psychic Chasms』が、つくった全てのトラックに、後からメッシュのようにメチャクチャな光沢を加えたアルバムだとしたら、『エラ・エクストラーニャ』は、既にメチャクチャな状態のサウンドを調整する、っていうプロセスのもとでつくられたアルバムかな」

__今作のアルバム・タイトル、“エラ・エクストラーニャ(Era Extraña)”には、どのような意味合いが込められているのでしょうか?

「この言葉は、スペイン語で、“strange”(おかしな)って意味と、もう一つ“to miss”(見失う、恋しがること)っていう意味があるんだ。だからこのタイトルの主な意味は、“missing era”(人々が常に何かを恋しがる時代)って感じかな。テクノロジーが進化した今の時代、人々はみんな世間に取り残されて、何かを探して、常に何かが欲しいと待ちこがれてる。そんな意味合いのタイトルさ。しかも、昔の’70年代や’80年代の映画なんかで未来とされてきた世界が、今僕たちの目の前にある。それもなんか”strange”な感じがするだろう?っていうような意味も含まれているんだ」

__で、今作の曲づくりは、活動拠点のブルックリンの他に、’10年/’11年シーズンの冬に、ヘルシンキでも行ったそうですね。

「ヘルシンキには、ツアーで何回か訪れたことがあって、とにかく綺麗な場所だなと思ってね。で、しばらく滞在したいと思える所だったから、ヘルシンキを制作の場に選んだんだ」

__そして、今作の最終的なプロダクションとミックスは、デイヴ・フリッドマンが担当していますね。

「彼との作業は最高だったよ。面白かったしね。僕も、彼も、お互いにいろいろと学べるチャンスだった。彼にとっては、完全なエレクトロニック・レコードを手がける初の経験となったし、僕にとっては、初めてスタジオでのレコーディング経験ができた。だから、お互いにとってすごく良かったんだ」

__ちなみに、デイヴ・フリッドマンと作業することにしたのは、今年の春先にリリースしたThe Flaming Lips with Neon Indian名義のEPをつくったことがきっかけだったんでしょうか?

「実は、このアルバムのセッションの方が、フレーミング・リップスとの作業よりも先だったんだ。ファースト・セッションの終わり頃に、彼らがスタジオに入ってきたんだよ。で、お互い同じスタジオにいるなら、何かつくってみようってことで、急遽一緒に音楽をつくることになった。2日間でね。で、その場でいろいろ演奏したものをレコーディングして、それがEPになったんだ」

__そうでしたか。

「僕が、今回デイヴを起用したのは、僕が友達から最初にもらったミックスCDに入っていた最初の曲が、マーキュリー・レヴ『Deserter’s Songs』(’98)の「Holes」だったからかな。フレーミング・リップスのウェインとは、一緒に何かつくろうって会話を何度かしたことがあって、デイヴとも電話でそんな話をしたことがあった。僕は角ばったギターの上にシンセサイザーを加えたいって思っていたんだけど、その時、シンセサイザーっぽい楽器と、彼ならではのオーガニックでサイケ・ロックっぽいクオリティーを組み合わせたら面白いんじゃないかって思ったんだよね」

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__今作は、楽曲面でもサウンド面でも、前作よりもクオリティーの高い音世界を堪能できる内容だと感じました。サウンドメイキング面では、どんな部分を特に重視しましたか?

「今までスタジオ作業をしたことがなかったんだけど、今回はフリッドマンのTarboxスタジオで作業できたおかげで、サウンドを囲む、ちょっとした空間をつくれる可能性が大きく広がったんだ。スタジオを使うっていうアイディアが、自分が創り出したかったものをつくるのに大きな役割を果たしたと思ってるよ」

__シングルカットした「Polish Girl」は、どのようにして誕生した曲でしたか?

「この曲は、アルバムの中でも一番早くできた曲なんだ。作曲の途中でちょっと行き詰まってイライラしてたんだけど、その時に思いついたシンプルな反復音がもとになって、曲全体が完成した。で、そのループのまわりに要素を重ねていって、一晩ででき上がったんだ。仕上げとミックスには時間をかけたけどね。自分がやってみようとしていた全てのことが、考え過ぎだったんだ。だから、遊びでシンセを弾くことで、結果的にそのフラストレーションをしずめることができた。その時にシンセで適当に弾いていたメロディーがコレだった、ってことだね。“何だコレ!?”って思って、それをプレイし続けたんだよ。それにビートをくっつけて、曲が完成したわけ」

__今作には「Heart: Attack」「Heart: Decay」「Heart: Release」というインストのトラックが収録されていて、アルバム全体をまとめあげるのに一役かっていますね。このアイディアは、どのようにして出てきたものだったんですか?

「いろんなパターンを試していく過程で、同じ曲の似たようなバージョンが3種類できてね。インストのコンビネーションでつくったんだけど、最終的に、その同じサウンドを使った3曲を全部を入れたかったから、こうしたんだ(笑)。つながってるけど、つながってない3曲。リンクしているけど、違う音楽のピースにしたんだ」

__ところで、あなたがもともと音楽活動をはじめたきっかけ、そして現在のようなエレクトロニック~シンセサイザーを駆使した音楽をつくり始めたきっかけは何だったんですか?

「大学で映画を勉強してる時に、フラストレーションを抱えていたことがきっかけだったね。大学での最初の2年間は、セオリーの勉強ばかりで、カメラを使わせてもらえなかったんだ。だからすぐに達成感を感じて、自分が満足できるような何か楽しいことを始めようと思って、バンドを始めた。映画って音楽に比べて人手が必要だし、やっぱり時間のかかるプロジェクトなんだよね」

__あなたがつくり出したサウンドは、チルウェイブというキーワードを生み出すきっかけにもなりましたが、あなた自身は、チルウェイブという言葉にどのような感想をお持ちですか?

「特にないな。以前は、チルウェイブというジャンルにくくられて、ちょっと腹が立っていた時期もあった。でも、もしそのおかげで自分の音楽に興味をもってくれるなら、結果的には悪くないんじゃないかな」

__分かりました。では最後に、今後の活動目標を教えてください。

「果てしなくツアーをやっていくつもりだ。あと、あんまり寝ないようにしようと思ってるんだ。睡眠不足は、スタジオで朦朧とするには最高なんだよね。来年は2枚レコードをつくりたいと思ってるから、まあ、どうなるか楽しみにしててよ」

interview & text iLOUD


【リリース情報】

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NEON INDIAN
Era Extraña
(JPN) YOSHIMOTO R and C / YRCG-90063
9月7日 日本先行発売
HMVでチェック

tracklisting
01. Heart: Attack /ハート: アタック
02. Polish Girl /ポリッシュ・ガール
03. The Blindside Kiss /ブラインドサイド・キッス
04. Hex Girlfriend /ヘックス・ガールフレンド
05. Heart: Decay /ハート: ディケイ
06. Fallout /フォールアウト
07. Era Extraa /エラ・エクストラーニャ
08. Halogen (I Could Be A Shadow) /ハロゲン(アイ・クッド・ビー・ア・シャドウ)
09. Future Sick /フューチャー・シック
10. Suns Irrupt /サンズ・イラプト
11. Heart: Release /ハート: リリース
12. Arcade Blues (Single) /アーケイド・ブルース(シングル)
13. Eras Ending Above Us /エラズ・エンディング・アバヴ・アス(日本盤ボーナス・トラック)
14. (Am) /(Am)
15. Deadbeat Summer /デッドビート・サマー
16. Laughing Gas /ラフィング・ガス
17. Terminally Chill /ターミナリー・チル
18. (If I Knew, I’d Tell You) /(イフ・アイ・ニュー、アイド・テル・ユー)
19. 6669 (I Don’t Know If You Know) /6669(アイ・ドント・ノウ・イフ・ユー・ノウ)
20. Should Have Taken Acid With You /シュド・ハヴ・テイクン・アシッド・ウィズ・ユー
21. Mind, Drips /マインド・ドリップス
22. Psychic Chasms /サイキック・キャズムス
23. Local Joke /ローカル・ジョーク
24. Ephemeral Artery /イフェメラル・アーテリー
25. 7000 (Reprise) /7000(リプライズ)
(Tracks 14-25 taken from “PSYCHIC CHASMS”)

※日本初回盤のみファースト・アルバム『サイキック・キャズムス』の全12曲(Tracks 14-25)をボーナス・トラックとして追加収録
※ネオン・インディアン『エラ・エクストラーニャ』のリリースにあわせて、チルウェイヴのパイオニア&最高峰の2アーティスト、NEON INDIAN & WASHED OUT対象のチルウェイヴ・キャンペーンをTower Recordで実施(店舗限定)。対象商品をお買い上げのお客様に、先着で両面B2ポスター(片面:NEON INDIAN/片面:WASHED OUT)をプレゼントします。
詳細はこちら http://tower.jp/article/feature_item/81721

【オフィシャルサイト】
http://www.bignothing.net/neonindian.html
http://neonindian.com/

【VIDEO】

NEON INDIAN – HEART: ATTACK from gorillavsbear.net on Vimeo.

NEON INDIAN – HEART : DECAY from gorillavsbear.net on Vimeo.

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※iLOUDでは、WASHED OUTのインタビューも掲載中ですので、ぜひチェックしてみてください。
http://www.iloud.jp/interview/washed_out_within_and_without.php

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