AA=『The Klock』インタビュー


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上田剛士が、THE MAD CAPSULE MARKETSでの活動を経て、2008年にスタートさせたソロ・プロジェクトAA=(エーエーイコール)。これまでにアルバム『#1』(’09)、『#2』(’10)、『#3』(’11)をコンスタントに発表している人気アクトです。昨年は、東日本大震災復興支援プロジェクト、AA= AiDを立ち上げ、「We’re not alone」を無料配信したことでも話題に。今年に入ってからは、難波章浩(Hi-STANDARD)とのコラボ曲「FIGHT IT OUT feat. K (Pay money To my Pain)」(アーケード用ゲーム『機動戦士ガンダム EXTREME VS. FULL BOOST』オープニング楽曲)をリリース。さらにドイツのGan-Shinから、アルバム『#3』の世界配信をスタートさせています。

そんなAA=が、ニュー・シングル『The Klock』を7/11にリリースします。 7/14に全国ロードショーされる映画『へルタースケルター』(監督:蜷川実花、主演:沢尻エリカ、原作:岡崎京子)のエンディングテーマとして書き下ろした「The Klock」のほか、新曲「Lasts -Your Rhythm Mix-」、さらに5/10に赤坂BLITZで行われた<TOUR #3>のフルライブ音源を収録した、なんとトータル75分52秒のシングル作品です。

ここでは、本作『The Klock』の内容とその背景について、上田剛士に話を聞きました。ロング・インタビューです。なお『The Klock』のiTunesエディションは、「The Klock」と「The Klock (+11min. Live Tracks Ver.)」の2トラックを収録した特別編成となっています。


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AA=『The Klock』インタビュー
Interview with Takeshi Ueda

__では早速、ニュー・シングル『The Klock』について教えてください。まずタイトル曲の「The Klock」は、映画『ヘルタースケルター』のエンディングテーマとして制作されたものとなっていますね。どのような経緯で監督の蜷川実花さんからオファーをいただいたんですか?

「ほぼ映画の撮影を終えたくらいの段階、最初のトレイラー映像がホームページに上がっているような段階で、話を突然いただきました。今年に入ってからですね。で、“映画で使う音楽をつくってもらえませんか?”ということだったので、そのトレイラー映像を観てみたら、ちょっとアイディアが浮かんできたので、やってみようかな、と」

__映画関係の音楽を手がけるのは、今回が初めてだったそうですね。依頼を受けた時、まずどんなこと思いましたか?

「どういう内容の映画なのかを考える余裕もなく、“映画館で流れる音楽をやるのか…”というイメージだけでしたね。初めてだったので、それに対しての興味だけがあるって感じでした。前のバンドの時にも話をもらったことがあったんですけど、実際に制作するまで至らなかったんですよね。でも今回は、タイミング的にも合ったし、映像を観たら自分の中にイメージが浮かんできたので、せっかくの機会ですから」

__では、かねてよりチャンスがあればチャレンジしてみたかった分野の一つだったんですね。

「そうですね。今回はエンディングテーマでしたけど、映像の中で使われる音、映像ありきの音、というものには興味がありますね。全部自分発信でつくってきた、いままでのものとは違って、お題を出されて何かをつくるっていうのは楽しいだろうな、と。実際今回は、映画というモチーフが最初にあって、そこからイメージをいただいて、反応するように曲をつくっていったので、そういう意味ではとても新鮮で楽しかったですよ」

__今回『ヘルタースケルター』のトレイラーを観た時、すぐに曲のイメージが出てきたんですか?

「はい。観た時に自分の中で鳴った音、音のモチーフがなんとなくあったんで、それをそのままデモテープにおこして聴いてもらったんです。そうしたら、割とそのままでOKみたいな感じだったんで、自分が映像から受けたイメージと監督が持っていたイメージを同期できたのかな…って思いました。蜷川さんは激しい音を望んでいたみたいなんですけど、デモにあったメロディーの部分も+αとして気に入ってくれましたね。だから、そのデモも完成形の曲も、あんまり変わらない感じです」

__「The Klock」では、そのメロディーが乗ったサビの部分の展開が特に印象的だと感じました。

「自分は、メロディーのあるポップな部分も激しい部分も両方好きなんで、もともと持っているスタイルではあるんですけど、今回はそれが曲中ではっきりと分かれる感じになりましたね。それは、最初に観た映像で感じた二面性というか…一面的ではないイメージ。それを自分の中で表現してみたからだと思います」

__歌詞は、白川貴善さんとどのように書き進めていったんでしょうか?

「歌詞も、映像を観て自分が受けたイメージをまず言葉にして、それをタカに見せて、で、タカはその言葉を見て、音を聴いて、自分のパートをつくっていく、という感じでした。それで、最終的に二人で詰めていって」

__制作期間はどのくらいだったんですか?

「かなり短かったですね。デモを上げて聴かせるまでが一週間くらい。普通だったら、その時点で断っちゃうかもしれない(笑)。わりと期間が短いってだけで、“ごめんなさい”ってなるタイプなんですけど、今回はやれそうな気がしたんで。ただ、忙しかったですね。最初に映像があってイメージを与えられたからこそつくれた、っていうのはあるかもしれない。逆に映像がなかったら、断っていたのかも」

__ちなみに、岡崎京子さんの原作『ヘルタースケルター』は、読んだことがあったんでしょうか?

「なんとなく知っている程度でしたね。女の子の家に行くと置いてある、みたいなイメージで。今回お話をいただいた時、台本ももらったんですけど、あえてそれは見ませんでした。映像だけでやろうと思って。そうしないと映画の内容に持っていかれ過ぎて、そうなってしまうのも違うだろうと思ったんで」

__なるほど。完成版の映画『ヘルタースケルター』全編を実際に観た時は、どんなことを感じましたか?

「かなり強烈でパワフルな映画なんで、そういう意味では、まず映画自体にやられる感じでしたね。で、そんな映画のシメ、エンディングの曲をやらせてもらえて、自分もまあパワー系の音楽ですから、盛り上げ甲斐がある感じというか、ガッチリ組めている感じがしました。映画を観ると、男の人の方が、女の人のパワーにやられちゃうかもしれないですよ」

__ところで、蜷川実花さんは以前からAA=やTHE MAD CAPSULE MARKETSのファンだったそうですね。

「THE MAD CAPSULE MARKETSのことはあんまり知らなくて、AA=になってから知ったみたいです。実は、彼女自身がわりとラウドな音を好きで、どこかで自分の音も聴いてくれて、ずっとアタマの中に残っていたみたいなんです。で、『ヘルタースケルター』をつくる時も、自分の過去の作品なんかを聴いて、その音のイメージを当初から入れていたそうなんですよ。だから実際にお会いした時、ラフ段階のシーンをみせてもらったら、自分の別の曲が使われていて」

__そうなんですか。それではもう、環境的にはバッチリの状況だったんですね。

「自分としてはすごくラッキーというか、やりやすいですよね。いつも通りの自分の音を出してくれればOKです、みたいな感じでしたから。イケイケでいっちゃってください、みたいな。それで、最初に映像を観てイメージしたのは、実はコレなんですってデモを渡したら、それを気に入ってもらえたんで」

__『The Klock』のCDジャケットは、蜷川実花さんが撮影された写真を使用したものにもなっていますね。

「このジャケットは、逆にこちらから蜷川さんにお願いしました。せっかくお話をいただいてやった曲なので、どうせなら蜷川さんに撮ってもらったら面白いんじゃないか、と。彼女の作品は鮮やかな世界観ですけど、自分らは白黒で全然派手じゃない世界観ですからね。で、あのマスクだけお渡しして、“好きなように撮ってください”と、全部お任せてでやってもらいました」

__カップリング曲の「Lasts -Your Rhythm Mix-」についても教えてください。この曲はどのようにして誕生した曲ですか。「The Klock」のセッションとは関係なく?

「そうですね。この曲は、もともとモチーフがなんとなくあったものです。で、今回シングルを出すということで、アルバムとは違うアプローチができるし、自分自身も遊びたい、楽しみたいと思ったんで、もともとのものとはミックス違いというか、こういう表現で仕上げてみようと思って。そういうノリで入れた曲です」

__これまでのAA=のイメージとはちょっと違う、なんと言いますか…。

「自分的には、ニューウェイブみたいなイメージなんですけどね。ボーカルの処理は現代のテクニックを使ってやっているんですけど、それ以外の部分はなるべく昔懐かしい感じの機材を使ったり、音を使ったり。そういう所にこだわってつくりました」

__この曲でトライしてみたアイディアは、今後アルバムの方にもフィードバックできそうですか?

「これは遊びでつくった感じですけど、今度はバンドの方でちゃんとしたヴァージョンでやってみる、ってことはあるかもしれませんね。まだ分かりませんが。幅を広げていく意味で、アルバムに向けていろいろ遊びでこういったことをやっていきたいな、とは思ってます」

__3曲目には、5月10日に赤坂BLITZで行われたライブのフル音源「Live Tracks from “TOUR #3″ at AKASAKA BLITZ -2012.05.10-」が収録されていますね。面白い試みですが、どうしてフルライブ音源を1曲としてそのまま入れようと?

「とりあえず、ライブ音源を録っておこうって話になって、その流れから、どうせならライブ・トラックもシングルに入れよう、と。しかも、入れるならまんま入れようぜってことになって。だから、ハサミは入れてないですよ。ライブに来られなかった人には、意味がよくわからない部分もあるかもしれません(笑)。ライブに来た人なら、“ここの部分はあの時のだな”って分かると思うんですけど」

__これは、斬新なパッケージだと思います。

「シングルなんだけど、これまでに自分らが出したアルバムよりも収録時間が長い、と(笑)。それが言いたかったっていうかね。アルバムよりも録音時間が長いシングルになってます。この時のライブ自体は、昨年サード・アルバム『#3』を出して以降ライブをやってなかったんで、レコ発とは違うんですけども、サード・アルバムを中心にしたものでしたね。実質一年半ぶりくらいのライブだったんで、そういった意味では…重要というか、久々に気合いを入れてやったライブでした」

__分かりました。では最後に、今後の予定について教えてください。ニュー・アルバムの構想には、もう着手しているのでしょうか?

「そうですね。ぼんやりとしたイメージは、あることにはあります。ただ、実際につくり出してみないと分からないですね。次のアルバムを制作するためのアイディアは、ちょこちょこと出てきそうかな、って感じですかね」

__昨年発表した「We’re not alone」、サード・アルバム『#3』は、震災後の日本というものを反映した作品でもありました。新しいアルバムには、思い描いている何か大きなテーマというものはありますか?

「新しいアルバムに関しては、今の社会的状況を反映させた場として考えてないですね、今のところ。それよりも、今は音楽的な部分での幅とか、そういったイメージばかりですね。最終的にどんな言葉が出てくるのか、まだ分かりませんけど、基本的にはそういった方向じゃないテンションでつくろうとは思ってます」

__何か新たなプロジェクトでの活動などは、考えていますか?

「時間があれば、いろいろやってみたいことはあるんですけどね。自分のライフワーク、自分が若い頃からずっとやってきた音楽スタイルは、あくまでもAA=のようなバンドだと思っているんですけど、前々からやりたいなと思っていることの一つは、生楽器を一切使わない、コンピューターのみの作品をつくることかな。時間が許せばつくり溜めていって、出せたらいいですね。そういう欲求はあります。逆にコンピューターを使わない、オーガニックな音楽もやってみたいですけどね。ものをつくるということに対して、自分は自由でいたいんです」

interview iLOUD


【リリース情報】

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AA=
The Klock
VICL-36710
7月11日発売
HMVでチェック

tracklisting
01. The Klock
02. Lasts -Your Rhythm Mix-
03. Live Tracks from “TOUR #3″ at AKASAKA BLITZ -2012.05.10-(67min.)
 ~ #3 INTRO
 _WORKING CLASS
 _DISTORTION
 _posi-JUMPER
 _sTEP Code
 _Dry your tears
 _coLors
 _GREED…
 _meVER
 _LOSER
 _ROOTS
 _I HATE HUMAN
 _PEOPLE POWER
 _DREAMER
 _We’re not alone(AA= Ver.)~

【オフィシャルサイト】
http://www.aaequal.com/

【映画『へルタースケルター』公式サイト】
http://hs-movie.com/

※ 7月14日(土)全国ロードショー

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