Aeroplane『We Can’t Fly』インタビュー


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ベルギーを拠点に活動するプロデューサー/DJ、Vito de Lucaのプロジェクト、Aeroplane。’07年にシングル「Aeroplane / Caramellas」でデビューして以来、Nu-Discoを牽引する存在、新たなバレアリック・サウンドの旗手として話題を集めてきた注目株です。リミキサーとしても人気を博し、これまでに手がけてきたリミックスは、Friendly Fires「Paris」、Grace Jones「Williams Blood」、Sebastien Tellier「Kilometer」、Robbie Williams「Bodies」などなど多数。公式リリースはされていませんが、MGMT「Electric Feel」のリミックスでも話題となりました。
そんなAeroplaneが、待望のデビュー・アルバム『We Can’t Fly』をリリースしました。Au Revoir Simoneや、ザ・ローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」でのボーカルで知られる、伝説的な女性R&Bシンガー/女優、Merry Clayton、Uffie「Pop The Glock」のPVにも出演していた、LA在住の注目ティーンエイジ・シンガー、Sky Ferreiraらが参加した注目作です。

本作『We Can’t Fly』の内容とAeroplaneの音楽的背景について、Vito de Lucaに話を聞きました。


__まずは、あなたが音楽活動/DJ活動を始めた経緯について教えてください。クラシックを勉強していたこともあるそうですね?

「僕はクラシック音楽を勉強したというよりも、音楽を“クラシックなやり方”で学んだんだ。若かった頃は、むしろクラシック音楽はあんまり好きじゃなかった。だから、作曲する上で役立つと思う要素をクラシックから抽出して、学んでいったね。もちろん、音楽やハーモニーの裏にある理論は、日々の作曲活動にとても役立っているよ」

__ちなみに、あなたは、どんなアーティストや音楽に影響を受けてきたのでしょうか。少しご紹介いただけますか?

「僕はピアノを4~5年、ギターを3年学んだけど、あくまで作曲するために必要な分だけを学んだ。その後、Nirvanaのカバー・バンドを始めて、やがてエクストリーム・メタルへと移行したよ。で、さらにその後、誰かがDaft Punkの「Homework」をくれて、僕は一時ギターをやめ、いろんな音楽機器を買うようになった。16歳の頃にはDJも始めたよ。当時はボーイスカウト・パーティーを開いて、みんなを踊らせるために、あらゆるレコードをかけていたね。すると、次第に呼ばれるパーティーがどんどん大きくなって、19歳の時にレコード店を開いたんだ。エレクトロニックな音だけをまわすDJになったのは、この頃さ」

__Aeroplaneのサウンドを聴いていると、’70年代のエレクトロニック・ミュージック全般や、’70年代~’80年代のディスコ~ポップ・ミュージックなどもお好きなように感じますが、いかがですか?

「いま挙った全ての音楽も、もちろんさ! ポップ・ミュージックを中心に、Kraftwerkやイタロ・ディスコのような初期のエレクトロニック音楽とか、初期のハウス・ミュージックなんかも聴いてるよ」

__Aeroplaneは、もともとどういう経緯でスタートしたプロジェクトだったんですか?

「3〜4年前にエレクトロ・ハウスのプロジェクトをやっていて、そこで「Caramellas」と「Aeroplane」というトラックをつくったんだ。ただ、そのトラックは、エレクトロ・ハウスのプロジェクトに適したものじゃなかったから、新たに名義を考える必要があった。そこで、「Aeroplane」っていうトラックがあるから、“プロジェクト名はAeroplaneにしよう”という話になってね。当時は、プロジェクトが長続きするかどうか分からなかったけど、それが全ての始まりだったよ」

__それで、デビュー・シングル「Aeroplane/Caramellas」を’07年にリリースして、あなた達はNu-Discoを牽引する存在として注目されたわけですが、これらの曲は、どのようなアイディアから誕生したものだったんですか?

「正直、分からないんだ。純粋に、僕は遅めのBPM(テンポ)が好きなんだよ。それと、ピアノの音やディスコ・ドラムも好きだね。だから、このようなサウンドの音楽をつくることは、意識的な選択ではなかった。単純にスピーカーから出る音がそうなっただけさ」

__分かりました。では、待望のビュー・アルバム『We Can’t Fly』について教えてください。まず、作品のテーマは何でしたか?

「このアルバムの目的は、自分に影響を与えたものをより深く追求することだった。リミックスを手がける時よりも自由があるから、より深くね。それで、このアルバムでは、全てが生演奏された、サイケデリックなディスコ、ポップ、ロックをやったよ。あの時代にあった限界を利用して、できる限りそういったサウンドに近づくことを試みた」

__なるほど。

「今回のアルバムに対して、Aeroplaneでやってきたリミックスに類似した音を期待している人々もいたと思うけど、実はこのアルバムの楽曲は、リミックスを手がけていた時期より以前の、3年くらい前につくったものなんだ」

__そうなんですか。ちなみに、アルバム・リリースを機に、コンビを組んできたStephen Fasanoがユニットを離れたことには、どんな経緯があったんですか?

「彼は、音楽家として適任じゃなかったというか、どちらかというとDJなんだ。だから、リミックスを手がけていた間は、どのようにしたらトラックがよりフロア向けになるかという観点で、Aeroplaneに貢献してくれていた。でも、いざアルバムをつくるとなると、そういった要素は、あんまり関心事ではなくなってね。楽器を演奏したりするという、本当の音楽家としての仕事が求められるようになってから、Stephanは、自分の居場所を見つけられなくなってしまったんだ」

__分かりました。アルバム・タイトルを、“We Can’t Fly”とした理由は何ですか? 「We Can’t Fly」というタイトル曲も収録されていますが、この言葉をAeroplaneの名前と並記すると、とてもユーモラスですね。

「僕は、“Aeroplane”(飛行機)で連想される類いのものから、逸脱したかったんだ。パイロットの衣装を着てDJすることもできたけど、少し陳腐だなと思ってね。そこで、アルバム・タイトルを“We Can’t Fly”とした。タイトル曲の中に、“come on let’s try…”って歌詞があるけど、人類が飛べないことは、事実だしね」

__音楽的には、あなたが言う通り、これまでのシングルやリミックス曲以上に、よりメロディックでシンフォニックなサウンドが詰まった、良い意味でキャッチーな内容となっていますね。本作の曲づくりや音づくりで、特に重視したことは何でしたか?

「ライブ感を、より強調したかったね。たまにフル・バンドが演奏しているようなサウンドも入っているけど、実は僕一人でやったものなんだ。フル・バンドに聴こえるよう、音をいくつも重ねていったよ」

__本作には、「I Don’t Feel」にMerry Clayton、「Without Lies」にSky Ferreira、「Good Riddance」にJonathan Jeremiah、「Fish In The Sky」にNicolas Ker、「We Fall Over」にAu Revoir Simoneと、多彩なボーカリストやアーティストが参加していますね。それぞれ、どういう経緯で参加してもらったんですか?

「このアルバムの半分には、ボーカリストが参加しているけど、とても簡単に実現したんだ。例えば、Au Revoir Simoneは、もともと知り合いだったし、Jonathan JeremiahやSky Ferreira、そして以前から尊敬していたMerry Claytonは、レーベルが間をとりもってくれたよ。しかも、このような人達とのコラボレーションは、インターネットの力によって簡単に行うことができた」

__本作収録曲の中で、あなたが特に重要視しているトラックはどれになりますか?

「一番好きなトラックは、「London Bridge」だね。自分の好きな要素が、全て含まれているよ。この曲のギター音は、アルバムを通しても一番なんじゃないかな。ビートとベースも骨太だし、自分にとって完璧に一番近いものだ」

__先行シングルの「Superstar」は、どのようして誕生した曲ですか?

「これは、誕生日に母親からトークボックスをもらって、その日のうちに制作した曲さ。もらって最初にやった作業だったよ。まずピアノにあたる部分のパートを制作して、レコーディングする際には、全ての音を実際の楽器音に置き換えて、ボコーダーの代わりにトークボックスを活用してみたよ」

__では最後に、Aeroplaneの次なる活動目標を教えてください。

「ライブショーをつくり上げることだね。上手くいくことを願っているよ。で、それが終われば、また新しい曲づくりだ!」

translation Akimoto Kobayashi
interview & text Fuminori Taniue
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【アルバム情報】

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Aeroplane
We Can’t Fly
(Wall Of Sound/Eskimo)

tracklisting

01. Mountains of Moscow
02. We Can’t Fly
03. Superstar
04. London Bridge
05. I Don’t Feel [feat. Merry Clayton]
06. Without Lies [feat. Sky Ferreira]
07. The Point Of No Return
08. Good Riddance [feat. Jonathan Jeremiah]
09. Caramellas (Album Version)
10. Fish In The Sky [feat. Nicolas Ker]
11. My Enemy
12. We Fall Over [feat. Au Revoir Simone]

【Official Website】
http://ksr-corp.com/label/discs.php?disc_id=287
http://www.aeroplanemusic.be/

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