Africa Hitech『93 Million Miles』インタビュー


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グローバル・コミュニケーションやハーモニック313といったプロジェクトを通じて、’90年代初頭から音楽活動を続けるベテラン・テクノ・クリエイター、マーク・プリチャード。『Curvatia』(’01)で一躍注目を集めたダウンテンポ・グループ、スペイセックの中心メンバーとして知られるクリエイター/シンガー、スティーヴ・スペイセック。ここにご紹介するアフリカ・ハイテックは、この実力派アーティスト二名がスタートさせた新プロジェクトです。ファンを中心に、数年前からから話題を呼んでいたこのユニット。昨年、WARPからようやくシングル「Blen」と「Hitecherous EP」をリリースし、活動を本格化させています。

そんな彼らが、いよいよ初のアルバム作品『93ミリオン・マイルズ』を5/18にリリースします。“ただただ素晴らしいベースライン・ミュージックをつくりたかった”という本作。その内容は、テクノ、ダンスホール、ダブステップといった音楽的要素を、彼ら独自のセンスで融合した、ディープかつエクスペリメンタルなものとなっています。

ヘビーでストイックなベース・サウンドが詰まった『93ミリオン・マイルズ』。本作の内容について、スティーヴ・スペイセックに話を聞きました。


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AFRICA HITECH

スティーヴ・スペイセックとマーク・プリチャードのコンビが放つ、
究極のベースライン・テクノロジー・ミュージック

__あなたとマーク・プリチャードの初コラボレート曲は、マークがトラブルマン名義でリリースしたアルバム『Time Out Of Mind』(’04)に収録されていた「Without You」だと思いますが、もともとあなた達が出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

「実は、俺らが最初にコラボレートした作品は「Turn It On」(’07/Mark Pritchard & Steve Spacek名義)だったんだ。リリースは「Without You」の方が先だったけどね。で、俺が彼と出会ったのは、俺がIsland Recordsに所属していたことがきっかけだった。カスタム・ブルーっていいバンドがいるんだけど、当時、彼らはマークと一緒に仕事をしていて、俺もちょうど彼らと仕事をしていたから、カスタム・ブルーを通して紹介されたんだ」

__ちなみに、あなたとマークは、その後奇しくもイギリスからシドニーに引っ越して、家もご近所さんらしいですね。

「その後、彼とはしばらく会っていなかったんだけど、本当に偶然オーストラリアで再会することになったんだ。マークも今オーストラリアにいるよって話を人から聞いて、コンタクトを取ったのさ。俺もマークも、妻がオーストラリア人なんだよね」

__そうなんですか。アフリカ・ハイテックのプロジェクトが本格化したのは、いつ頃なんですか?

「真剣に考えはじめたのは、’07年の頃に、トロントのミュージック・アカデミーで一緒にプロジェクトをやった時だったよ。夜、ダウンタウンのホテルに戻って、曲を書く以外に何もすることがなくて、それがきっかけで「Turn It On」をちゃんと仕上げようってことになって、いろんなことが動きはじめたんだ」

__なるほど。では、アフリカ・ハイテックというプロジェクト名の由来について教えてください。どのようなスタイルの音楽を、二人でつくってみたかったんですか?

「この名前は、すごく筋が通っているというか、やってることにピッタリ合った名前だって思ったんだ。俺らは、モダンなダンス・ミュージックだけじゃなくて、クラシックなものもやってるし…そもそもベースライン(・ミュージック)も、レゲエも、デトロイト(・テクノ)も、ダブステップも、全てのルーツはアフリカにあるだろう? で、そういう音楽的要素に、いろんなハイテク機材を混ぜあわせていったのが、俺らが今つくってる音楽だと思ったんだ。ハイテクなアフリカって、すごくロマンのあるイメージだと思う。もともとは、何千年も昔にアフリカで文明が生まれて、そこからいろんなインスピレーションが世界に散らばっていったわけだからさ」

__そうですね。

「そういうアフリカにつながっていく文化というか、ベースラインも、デトロイトも、レゲエも、音楽はみんな根っこでアフリカのビートにつながっているっていうのが、インスピレーションになってるんだ」

__分かりました。では、そんなアフリカ・ハイテックの初アルバム作品『93ミリオン・マイルズ』について教えてください。まず、アルバム・コンセプトは何かありましたか?

「いや、ただ素晴らしいベースライン・ミュージック、ダンス・ミュージックをつくりたいって思っていただけだった。本当に自分たちが納得できる音楽をつくりたかったんだ。自分たちが今感じているエモーションを、何にも影響されずに表現して、本物のアルバムをつくりあげたいと思っていた」

__音楽的には、多様なビート/リズムを独自に解釈した、ミニマルでストイックなベースライン・ミュージックを楽しめる内容となっていますが、特に追求してみたかった部分は何でしたか?

「ベースラインだね。そこがメインさ。UKのベースライン・ミュージックに、シカゴとかデトロイトとかいろんな要素が加わって、ダンスしていくような感じ。でも、UKベースラインが決め手になっているかな。何曲かは、iPadやiPhoneのアプリでつくったんだよ。すごく面白いアプリが出てるんだ。Basic 64っていうフリー・プログラムを使ったりもしたね。技術的にいろいろと苦労する部分もあったけど、すごく楽しんで音楽をつくれたよ」

__曲づくり自体は、どのように作業を進めていったんですか?

「俺の場合は、iPadでつくった素材をスタジオに持って行って、そこにいろんな要素を足していくことが多かったね。マークにはマークのアイディアがあって、彼はスタジオで曲をつくっていたよ。で、そこに俺が付け足していったりもした。特に決まった方法はなかったよ。曲ごとに、いろんなアプローチを取った。俺らがその時どう感じているかっていう部分を、大事にしたかったからね」

__ところで、アルバム・タイトルの“9300万マイル”(1億5000万km)というのは、地球から太陽までの距離のことですよね? このタイトルには、どんな意味が込められているんですか?

「アルバムの名前は、内容をどうとでも想像してもらえるように、言葉の響きだけで選ぶこともできたんだけど、最終的には、アルバムの中身と呼応した言葉にしようってことになってね。それで、「93 Million Miles」って曲の名前を、そのままアルバム・タイトルにも使うことにした。アルバムの内容ともリンクした、雰囲気が伝わる言葉だと思う」

__ユニット名同様、ロマンを感じるタイトルだと思います。では、最後にアフリカ・ハイテックの、次なる活動目標を教えてください。

「各自いろんな計画があるんだけど、今はとにかくアフリカ・ハイテックをメインで進めていきたい。まずはツアーだね。5月のアタマから、ヨーロッパ・ツアーが始まるんだ。すごく楽しみだよ」

translation Nanami Nakatani
interview & text Fuminori Taniues


【アルバム情報】

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AFRICA HITECH
93 Million MIles
(JPN) BEAT/WARP / BRC-294
5月18日発売
HMVでチェック

tracklisting
01. 93 Million Miles
02. Do U Wanna Fight
03. Out In The Streets
04. Future Moves
05. Glangslap
06. Our Luv
07. Spirit
08. Light The Way
09. Foot Step
10. Cyclic Sun
11. Don’t Fight It
+ Bonus Track for Japan

【オフィシャルサイト】
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Africa-Hitech/
http://warp.net/records/africa-hitech

【Album Sampler】

Africa Hitech – 93 Million Miles – Album Sampler by Warp Records

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