Animal Collective『Centipede Hz』インタビュー


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2000年に、ボルチモアの友人同士で自然発生的に結成されたAnimal Collective(アニマル・コレクティヴ)。デビュー・アルバム『Spirit They’re Gone, Spirit They’re Vanished』(’00)を発表して以来、『Campfire Songs』(’03)や『Sung Tongs』(’04)、『Feels』(’05)など、作品毎にその独創的な音楽性で話題を集め、不動の人気を獲得してきたインディー・バンドです。特にDominoからリリースされた『Strawberry Jam』(’07)、『Merriweather Post Pavilion』(’09)ではキャリア最高の評価を獲得し、アメリカの代表するバンドへと成長。現在は世界的人気を誇る存在となっています。

そんなAnimal Collectiveが、待望のニュー・アルバム『Centipede Hz』(センティピード・ヘルツ)をリリースしました。エイヴィー・テア(デイヴ・ポートナー)、ジオロジスト(ブライアン・ウェイツ)、パンダ・ベア(ノア・レノックス)、ディーケン(ジョシュ・ディブ)の4人体制に戻り、彼らの真骨頂ともいえるライブ・バンドとしての側面を打ち出した話題作です。

ここでは、そんな『Centipede Hz』の内容と制作背景について、Animal Collectiveのメンバー、エイヴィー・テアとジオロジストの二人に話を聞きました。


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Animal Collective『Centipede Hz』インタビュー

__前作『Merriweather Post Pavilion』は、内容はもちろんのこと、チャート・アクション的にも話題を集めた作品となりましたね。そんな前作を経て、今作『Centipede Hz』はどんな方向性の作品にしようと思って、制作をスタートしましたか?

ジオロジスト「今作を手がけるにあたって、前作のことについては特に何も考えなかったよ。ただ、前作のライブ・ツアーの終盤では、即興をできる余地を残しながらやっていたんだけど、プレイするのが簡単になりすぎてしまって、チャンジもしなくなって、僕ら自身あんまり興奮できなくなっていた。まぁ、飽きちゃったんだよね。だから今回のアルバムでは、はじめからもっとライブ的な要素、即興的な要素、フィジカルで複雑な要素を入れた曲をつくりたいとは思っていたかな」
エイヴィー・テア「前回の時はディーケンがいなかったんだけど、ライブも含めて、3人でやれることはやり尽くした感があったんだ。で、まぁこれは毎回アルバムをつくる度に思っていることなんだけど、前作よりも今作の方が絶対に良いと思える作品をつくりたかったよ。レコーディングを終えた時に、心から満足できるものをつくりたかった。今作では、その目標を達成できたと思うな。これまでにやってきたことは考えずに、新しいアニマル・コレクティヴを打ち出すところまで持っていけたと思う」

__今回、レコーディング場所にエルパソのソニックランチ・スタジオを選んだ理由は何だったのでしょうか?

ジオロジスト「まず、今作のエンジニア兼プロデューサーは前作同様ベン・アレンなんだけど、彼は、僕らが今回やりたいことを理解してくれたんで、また起用することにしたよ。前作と同じエンジニア兼プロデューサーだから、サウンド自体に変化をつけるのが難しかったりもしたけど、例えば僕らは今回、曲間も何かで埋めたいっていうアイディアを持っていたんだ。僕らのライブって、いつも曲間を空けずにセッションをやったりする感じなんだけど、それと同じように、アルバムでも何か曲間につながりを持たせていきたくてね。ちょうど1曲目と2曲目の間のような感じ。で、ベンはそういったこと、今のアニマル・コレクティヴのことを一番理解してくれているから」

__ええ。

ジオロジスト「それで、僕らがベンと一緒に“どこでレコーディングしようか”って話をしていた時、実はスタジオの方から“使ってくれないか?”ってオファーをもらったんだ。ソニックランチ・スタジオは、いろんなバンドに“使ってみない?”ってメールを送っていたみたいで、僕らと同郷のBeach Houseも、たまたまそのメールを受け取っていたんだよね。で、彼らから、実際にスタジオを使ってみたら良かったという話を聞いたんで、ベンと相談して僕らも使ってみることにしたよ」
エイヴィー・テア「スタジオがテキサスにある、という点は重要だったよ。レコーディングする時は、やっぱり自分達を隔離しておいた方が集中できる。ニューヨークやボルチモアだと、友人がいっぱいるからね。でもテキサスなら、フレンドリーじゃないというか、僕らのようなアメリカ北東部の人間にとって、南部ってちょっと気難しいところがあるから、ちょうど良い環境なんだよ」
ジオロジスト「しかもそのレコーディング・スタジオには、24chのアナログ・レコーディング・システム2台を同期できる設備があったんだ。今回は、ぜひそのシステムを使ってみたかったんだよね。レコーディング・ルームに関しても、自分達がやりたいことを実現できる条件を満たしていたし」

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__曲づくりとレコーディングには、どのくらい時間をかけたのでしょうか?

エイヴィー・テア「曲づくりを具体的にスタートした時期は定かじゃないけど、僕は2010年の頃から一人で曲を書き始めていたよ。で、2011年の1月から4月の期間に一回メンバー全員で集まって、曲づくりをしたね。そこからしばらく時間が空いて、次は11月に2週間くらい、また全員で作業をした。その間にはもちろんツアーもやっていたから、ツアー中に一人でネタをつくったりいじったりもしていたけどね。で、今年に入ってから6週間くらいレコーディングして、ミックスに2週間半くらいかけたかな。そんな感じ」

__今作は、楽曲それぞれの個性がより際立っている印象がしました。フィジカルでライブ感のあるサウンドを目指した他に、曲づくりで何か重視したことはありましたか?

エイヴィー・テア「大別すると2パターンあるんだけど、「Monkey Riches」とか「Today’s Supernatural」は、スタジオに入る前から楽曲としてかなり完成していたね。今回はライブで何度もプレイしていた曲も多かったから、レコーディングの時に何をやるべきかは、大体見えていたと思う。あとは、毎回アルバムに対して1〜2曲くらいは用意してるんだけど、スタジオに入ってからセッション、試行錯誤を繰り返して完成させた曲もあった。ライブでもやってない、スタジオに入るまで何もはっきり決まっていないような状態の曲だね。今回は「Applesauce」がそういう曲だった。前作の場合は「My Girls」がそうだったかな。だから「Applesauce」のような曲には、ベンの助言なんかもかなり入ってるよ」

__今作の曲づくりや音づくりで、一番印象に残っている作業、面白かった作業は何ですか?

ジオロジスト「サンプリングするネタをつくっていく時に使ったムーグ(モーグ)は、面白かったな。ベース・シンセっぽい要素は、それでつくっていったんだ。あとは、ラジオっぽい音、エアチェック・テープぽい音をつくるということを、今回はいろいろやったよ」
エイヴィー・テア「(アメリカの)ラジオDJは、自分を他局に売り込む時、自分がしゃべっているトークの部分だけを編集したテープをつくるんだけど、聞くとかなり不思議というか、ミュージック・コンクレート的で面白いんだ。YouTubeにアップされてたりもするよ。で、僕らは今回そういったエアチェック・テープにインスパイアされてね。似たような手法でいろいろ試してみた」
ジオロジスト「それから、ドラムをレコーディングする時に、通常の西洋的なドラム・セットではなく、ハットの部分にシェイカーを配置してみたり、ラテン・パーカッション的なセットを組んでみたりとかもしたね」

__では、そんな今作に“Centipede Hz”(ムカデ・ヘルツ)というタイトルを付けた理由を教えてください。どういったイメージから出てきたタイトルなのでしょうか?

エイヴィー・テア「レコーディングを始める前から、アートワークを含めてアイディアをいろいろ考えていたんだ。自分の’60年代〜’70年代のレコード・コレクションにある埃っぽいイメージとか、宇宙人がやっている宇宙のラジオ・ステーション的なイメージとか、自分達が宇宙からやってきてどこかのバーで演奏しているイメージとか…」
ジオロジスト「あとは、ラジオの周波数を超えた音のイメージとか、音や色が様々に枝分かれしていくようなイメージとか、そんなアイディアからこのタイトルとアートワークが出てきたんだ」

__さすが、サイケデリックなヴィジョンですね。

エイヴィー・テア&ジオロジスト「ハハハ」

interview iLOUD


【リリース情報】

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Animal Collective
Centipede Hz
(JPN) Domino/Hostess / HSE-10126
8月29日発売
※日本先行発売、ボーナストラック2曲、歌詞対訳付
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tracklisting
01. Moonjock
02. Today’s Supernatural
03. Rosie Oh
04. Applesauce
05. Wide Eyed
06. Father Time
07. New Town Burnout
08. Monkey Riches
09. Mercury Man
10. Pulleys
11. Amanita
12. Honeycomb(ボーナストラック)
13. Gotham(ボーナストラック)

【オフィシャルサイト】
http://radio.myanimalhome.net/(アルバム全曲試聴実施中)
http://animalcollective.org/
http://hostess.co.jp/

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