BATTLES『GLOSS DROP』インタビュー

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アメリカのハードコア・シーンや前衛音楽シーンで活躍してきた、名うてのミュージシャン四名、イアン・ウィリアムス(G/Key/Electronics:元ドン・キャバレロ)、デイヴ・コノプカ(B/G/Effects:元リンクス)、ジョン・ステニアー(Dr:元ヘルメット)、タイヨンダイ・ブラクストン(G/Vox/Key/Electronics)が、’02年に結成したスーパー・バンド、バトルス。3枚のEP作品を経てWARPからリリースしたアルバム『ミラード』(’07)で、アヴァンギャルド〜インストゥルメンタル・ロックの中でも、ずば抜けて実験的かつ洗練されたサウンドを披露し、一躍世界的に知られる存在となった大物です。

そんな彼らが、待望の最新アルバム『グロス・ドロップ』を本日リリースしました。制作途中で、タイヨンダイがバンドから離脱したために、イアン、デイヴ、ジョンの三人体制でアルバムをイチからつくり直し完成させたという、様々な意味で注目の作品です。その内容は、なんとマティアス・アグアーヨ、ゲイリー・ニューマン、カズ・マキノ(ブロンド・レッドヘッド)、Yamantaka Eyeという四名の個性派ゲスト・ボーカリストをフィーチャーした楽曲を収録した、驚きのもの。バンド・サウンド自体も、従来作品以上にワイルドでダイナミックで、「Ice Cream (feat. Matias Aguayo)」や「Sundome (feat. Yamantaka Eye)」を筆頭に、マジカルで斬新なサウンドスケープが堪能できるものとなっています。

バトルスの新たな音世界が詰まった『グロス・ドロップ』。本作の内容について、メンバーのデイヴ・コノプカに対面で話を聞きました。なお、彼らは、フジロックへの出演が決定しております。


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BATTLES

孤高のアヴァンギャルド・ロック・バンドがみせる、
パワフルでカラフルな驚きの新世界

3ピース・バンドとしての曲づくり

__最新作『グロス・ドロップ』の曲で構成した、<SonarSound Tokyo>でのライブはいかがでしたか?

「すごい良かったよ。超ナーバスになってたんだけどね」

__確かに前半の頃は、ちょっと緊張感があるように感じました。でも、尻上がりに良くなっていきましたね。

「そうだね。ライブを進めていくにつれ、どんどんプレイも良くなっていったと思う。最初は、ちょっと怖かったんだ。自分達でも、それは感じていたよ」

__では、早速『グロス・ドロップ』の内容について教えてください。今作は、制作終盤の段階でメンバーの一人、タイヨンダイ・ブラクストンが脱退したので、最終的に三人で制作した初作品ということになりましたね。ふりかえってみて、今回の制作作業は大変でしたか?

「そうだね。いろいろ難しかったよ。タイヨンダイが抜けた時点で、彼のプレイしたパートを全部抜き取らなければいけなくなったんだけど、曲自体はもうかなりでき上がっている状態だったりしたから、イチからまた曲をつくり直していったんだ」

__ちなみに、タイヨンダイが脱退の意志を伝えたのは、昨年の秋頃のことだったそうですが、突然の出来事だったんですか?

「まぁ、突然だったんだけど、何となくは分かってたよ(笑)。だから、驚きはしなかったね。タイヨンダイと一緒につくっていた時から、曲ができ上がっていっても“何かが違う”って、みんな感じていたんだ。だから、彼が抜けたことで、逆にアルバム自体はまとまったというか、その“何かが違う”って感じていた部分が整理されたと思う。その点に関しては、ポジティブに捉えているよ」

__なるほど。三人でつくり直した今作と、タイヨンダイと作業していた時に思い描いていたアルバムとでは、かなりイメージの異なる内容になっているんですか?

「そうだね。タイヨンダイが参加していたパートは、本当に全部取り除いてしまったからね。で、はじめからアルバムをつくり直したわけだから。自分達としては、とても良い作品ができたと思ってるよ。このアルバムでは、本当に自分達がつくりたいと思ったものをつくりたかったから、3ピース・バンドになったのだったら、3ピース・バンドとしてちゃんとアルバムをつくろうって思ったんだ。で、思っていた通りのものができた思う」

__3ピース・バンドになってからの曲づくりは、これまでのスタイルとは違うものだったんですか?

「タイヨンダイが抜けて三人になってからの曲づくりというのは、まるでパズルみたいな感じだったね。すでに三人が各自でつくっていたパートがあったから、それを抜き出して、そこに新たなパートをはめ込んでいったんだ。今回の曲づくりは、基本的にはそういうものだったよ」

__では、ジャム・セッションはあまりしなかったんですね。

「うーん。これまでは、誰かが思いついた小さなアイディアに、みんなでいろんな要素を足していっていたんたけど、今回は、各自バラバラにつくっていったパートをファイルで交換し合って、作業を進めていくことが多かったってことかな。だから、これまでよりもストラクチャーを考えながら曲づくりをしていったよ。相手がこうしたなら、自分はこうしよう…みたいな感じでね。曲を組み立てていくというか…。前作『ミラード』の時にも、この方法でつくった曲があったんだけど、今回は、より考えながらそれをやっていったってことさ」

驚きのゲスト・ボーカリスト陣

__今作には、マティアス・アグアーヨ、ゲイリー・ニューマン、カズ・マキノ(ブロンド・レッドヘッド)、Yamantaka Eyeの四名が、ゲスト・ボーカリストとして参加していますね。このアイディアはどのようにして出てきたものだったんですか?

「タイヨンダイがいた時にほぼでき上がってた曲の中には、やはりボーカル・パートがないと成立しないものがあったから、そういう曲に関しては、各曲に一番合いそうなボーカリストを迎え入れてみようじゃないか、って話になったんだ。せっかくそういうチャンスができたんだから、やってみようということだね」

__かなり思い切った決断だったかと思うのですが、いかがですか?

「確かにね。でも、僕ら以外の人達が加わって、自分達の曲に味を加えていくというのも、面白いと思ったんだ。実際、面白くなったと思うし、作業も楽しかったよ」

__この個性的な四名の人選は、どのように決めていったんですか?

「僕ら三人で決めていったよ。まず、マティアス・アグアーヨは、ジョン(・ステニアー)がマティアスのマネージャーと友達だったから、頼むことにした。ジョンがドイツに住んでいた時に、彼らと知り合ったんだ。ジョンは、KOMPAKTレーベルのファン、マティアスのファンだしね。ゲイリー・ニューマンも、ジョンのアイディアだったね。ジョンは、子供の頃、ゲイリー・ニューマンのファンだったらしい。だから、当初はもし実現できたら嬉しいなって程度に考えていたんだけど、本当に実現しちゃったね」

__ゲイリー・ニューマンという人選には、かなり驚きました。バトルスとゲイリー・ニューマンの組み合わせなんて、全く想像していなかったので。

「アハハ、本当だよね。僕らも驚いたよ(笑)。で、カズ・マキノは、女性ボーカルが欲しかったからお願いして、Yamantaka Eyeは、この「Sundome」って曲には彼以外に相応しい人はいないだろうって感じだったから、お願いすることにしたよ」

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新しくて楽しい、新バトルス・サウンド

__今作のアルバム・タイトル、“グロス・ドロップ”(Gloss Drop)という言葉には、どんな意味合いが込められているんですか?

「この言葉自体には、特に深い意味はないね。アート・ワークのイメージを、そのまま言葉にしたものだから。でも、このイメージ自体には、意味がある。このアルバムのアート・ワークは、僕が手がけたんだけど、自分達が乗り越えてきたいろんなグチャグチャな物事を、そのまま表現してみたものなんだ。このアルバムは、このアルバム・ジャケットのように、グチャグチャとしたものが溜まって、積み上がっていってできた作品だと思う。で、このジャケットの写真って、ちょっと艶やか(Glossy)で、しずく(Drop)っぽいイメージだろう? そこから、このタイトルを付けたんだ」

__なるほど。では、各曲のサウンド面についても教えてください。まず、今作の楽曲は、全体的に前作よりもよりトライバルで、明るいムードを持ったものが多いように感じましたが、この辺りは意識していたのでしょうか? 特に「Ice Cream (feat. Matias Aguayo)」や「Dominican Fade」には、カリビアンっぽい、トロピカルな要素が盛り込まれていますね。

「トライバルな部分に関しては特に意識していなかったけど、夏っぽくて楽しいものをつくろうという気持ちはあったね。それで、自然とトロピカルな要素が出てきたんだと思う。「Ice Cream」なんて、正に夏っぽい雰囲気がある曲だよね。この曲は、まずイアンがループをつくって、そこからジャム・スタイルでつくっていったものだよ」

__リズムに対する探究心というのは、今作の曲づくりでも重要視していたんですか?

「そうだね。「Sundome (feat. Yaman taka Eye)」には、僕らのそういった側面が上手く表現されているんじゃないかと思う。でも、僕らの場合、計画的にそういう曲をつくろうと思っているわけじゃないんだ。結果的に、そういった曲ができ上がる。そこがポイントだね。自然とそういった曲ができ上がっていくんだよ」

__では、今回の制作で、バトルスとして新たに引き出せた音楽的要素は何でしたか?

「いろいろな要素を引き出すことができたと思う。新しい音をつくり出せたと思うし、これまでになかったパートをつくり出すことができたんじゃないかな。今作では、イアンがAbleton Liveを使ってみたり、僕も新しいペダル・ボードを導入して、ループを聴きながらよりライブ感のある音を出せるように工夫したりしたから、そういう面でも新たなサウンドを打ち出せたと思っているよ」

__ちなみに、今作の中で一番つくっていて大変だった曲は何ですか?

「うーん…。「Wall Street」かな。この曲は、イアンからもらったループに対して、どういうわけか、何を合わせていったらいいのか全然アイディアが思い浮かばなくて、苦労したよ。で、同じことを延々と繰り返してしまった…。あとは、「White Electric」だね。この曲は、アルバムの中で最初に着手した曲だったんだけど、かなり時間がかかって、最後の最後でまたつくり直したんだ。どうしても納得いかない部分があってね。結果的に、満足いく仕上がりになって良かったよ」

__あなた達は、バトルスを通じて、音楽というもののどのような側面に近づくことができたら、一番本望なんでしょうか?

「僕らは、自分達が一番楽しいと感じる方法で、一番楽しいと思える音楽をつくりたいだけなんだ。そして、まだ誰も聴いたことのない、新しい音楽を生み出したいって思っているだけなんだよ。だから、ただ普通に曲をつくっているバンドとは、ちょっと違うのかもしれないね。これからも、ユニークでオリジナリティーのあるバンドであることを、ずっと心がけていきたい。常に新しいものを追求していきたいと思っているから、立ち止まるわけにはいかないよ」

__分かりました。では最後に、バトルスの次なる活動目標を教えてください。

「自分達を一番ハッピーにさせてくれるのは、やっぱりいろんな場所でライブをして、それをみんながどう受け取ってくれるのか見ることだね。だから、ライブをどんどんやっていきたい。日本の次はヨーロッパに行く予定だから、今度はそこでリアクションを確かめるよ。自分達が音楽をやっていく上での一番の幸せは、そうやってみんなのフィーリングを生で感じ取っていくことなんだ」

interview & text Fuminori Taniue
translation Miho Haraguchi
photo Jason Frank Rothenberge


【アルバム情報】

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BATTLES
GLOSS DROP
(JPN) BEAT/WARP / BRC-288
4/27発売
HMVで買う

tracklisting
01__Africastle
02__Ice Cream (Feat. Matias Aguayo)
03__Futura
04__Inchworm
05__Wall Street
06__My Machines (Feat. Gary Numan)
07__Dominican Fade
08__Sweetie & Shag (Feat. Kazu Makino)
09__Toddler
10__Rolls Bayce
11__White Electric
12__Sundome (Feat. Yamantaka Eye)
13__Sundome (Instrumental)

【オフィシャルサイト】
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Battles/
http://bttls.com/

【試聴】
Ice Cream (Featuring Matias Aguayo) by BATTLES

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