BRADBERRY ORCHESTRA『Vol.0』インタビュー


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Mr.Children、サザンオールスターズ、My Little Loverなどの大ヒット曲プロデュースや、非営利団体ap bankの活動で有名な小林武史と、クラブ・ミュージックをベースとした数々の革新的プロデュース作品や、世界を舞台としたDJ活動で知られる大沢伸一。この二人が2009年に立ち上げたニュー・プロジェクトが、BRADBERRY ORCHESTRAです。

これまで配信限定でのみ楽曲を発表してきた彼らですが、この3月16日には、ついにミニアルバム『Vol.0』をリリースしました。本作には、スマートフォンCMのタイアップソング、「LOVE CHECK」、「To be (or not)」、「L.P.D」のほか、ゲーム『龍が如く OF THE END』のオープニング曲、エンディング曲など、全6曲が収録されています。

そこでiLOUDは、このプロジェクトがいかにして誕生し、どこへ向かっているのか探るべく、小林武史と大沢伸一の二人に話を聞きました。


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BRADBERRY ORCHESTRA
小林武史と大沢伸一からなる
無限の可能性を秘めた未来型プロジェクト

――お二人の出会は、いつごろ、どんなシチュエーションで、だったんでしょう?

大沢伸一(以下O)「お酒の席で、エイベックスの松浦社長に紹介してもらったんです」
小林武史(以下K)「あとは、東京環境会議で」
「あ、そうですね。それが一番大きかったですね」
「東京環境会議は、4年前にageHaで“エッジなものをクリエイター目線でやる”っていう主旨でやったイベントで、CMのクリエイターとかコピーライターとか、ミュージシャンとか、いろいろ集めたんだけど、それに大沢君にも出てもらったんだよね」
「そこが、BRADBERRYにつながる発端でしたよね」

――そこから一緒に曲をつくろうということになった、きっかけは何だったんですか?

「“大沢君と一緒にやろうっていうイメージというか夢みたいなものが、頭の中にひらめいちゃったんだよね”っていう、早口で短い電話(笑)を小林さんからもらいまして、もちろん僕も断る理由なんて無いから“じゃあ、やりましょう”と。それからちょっとして、できあがった感じの曲が、いきなり送られてきましたね。それが2009年の8月」

――小林さんに“ひらめいた”ものは、具体的にはどんなものだったんでしょう?

「ロックがどんどん伝統芸能みたいになっていくのを、再構成していく、異化していくっていうことを、大沢君とやりたかったっていうことかな」

――『Vol.0』の前に、そこで何曲かできたんですか?

「いや、「Lucky」っていう曲、一曲だけですね」
「僕らが組んで何かやっているという噂がそこから出て、新しいスマートフォンCMの音楽をやってくれないかって話をもらったんですよ。それが『Vol.0』の始まり」
「それで、二人で東麻布のスタジオに入って3時間くらいやっていたら、今のスタイルができたんです」

――実際の制作作業は、どういう感じで進められたんですか?

「けっこうキャッチボールが多かったですね。二往復ぐらいしたら大体形になってましたよ」

――基本的に歌詞とメロディーが小林さん、トラックは大沢さんという分担だったんですか?

「はい。リズム・トラックが僕という感じでしたね。小林さんが反応しそうな音を選んで投げました」

――大沢さんのつくる音は、クラブ・ミュージックの中でも、もっともエッジのあるものなんですが、小林さんは、リズム・トラックを受け取って、ギョッとするようなことはありませんでしたか?

「僕は、一般的にはミスチルに代表されるようなメジャー感のあるものをプロデュースすると思われてるけど、僕の中にはダークサイドというか、超プログレみたいなものも共存しているので、そういうことは全然なかったですね」

――「LOVE CHECK」の歌詞に込められた意味は、どんなものでしょうか?

「世界にはいいかげんじゃすまない部分があって、そういうものは環境やエネルギー、お金の使い方から、AIDS問題までいろんなところにある。そういうことに気を使おうよ、という雰囲気的なことですね」

――「To be (or not)」は、どういう経緯でできた曲なんですか?

「これは、「LOVE CHECK」が好評だったので、NTTドコモの方のCMソングもつくってくれと言われて、つくった曲です。思ったよりダークな曲になりましたね」
「もっとプリミティブでいいんだよ、そうなりたくない?って感じでつくった曲です。デジタルだけど、いなたい感じが共存していて、そこが面白いですね」

――「L.P.D」は?

「サイケデリックとロックとポップが混じりあった時代の何かに、大沢君がピンときたんでしょうね。僕は、それを楽曲として忠実に成立するようにつくっていった感じです」

――この三曲は、かたまりになっている感じですね。一方で、『Vol.0』には、ゲームソフトのオープニング、エンディング・テーマも収録されていますが、これらをやることになったのは、なぜですか?

「この一連の流れを見て、それに触発されたゲーム・プロデューサーから、“うちの音楽をやって欲しい”とお願いされたんです。相手は、一応企業ですけど、対峙しているのは(ゲーム・)クリエイターなんで、そういう意味では、この二曲が一番歩み寄っていますね」
「僕の中では、日本における、異化した『ブレード・ランナー』みたいなイメージでつくってました」

――6曲目の「Body Electric」だけは、何の制約もなく、つくったんでしょうか?

「これは、このCDを出すっていうことで」
「なんとなく締めが無いから、インストでもいいから何かやりましょうよってことで、小林さんがつくってくれたピアノの曲があるんですよ。それを僕がリコンストラクトして、できあがったんです」
「もうバッコン、バッコン、やられて、完全に原型をとどめていない(笑)。そこで、これには言葉が必要だなって話になって、BRADBERRY ORCHESTRAの名前のもとにもなっている、レイ・ブラッドベリの作品からサンプリングさせてもらいました」

――このあと、何か予定はありますか?

「音楽に限らず、プロデュースものを二人でやっていくとか」
「BBOプロジェクトという形で、いくつかのユニットを出したり、ファッション、建築とつながったり。僕らのやり方ひとつで、いろいろなことができると思うんです。世界をどうイメージするかという点で、クリエイティブでありたいですね」

――最後に、お互いを簡潔に表現すると、どんな人ですか?

「失礼を承知で言ってしまうと、自分の映し鏡のようなところと、自分が持っていない部分を持っている方ですね」
「あえて言えば、僕にとってもそんな感じですね。あと、僕がこれからの時代と接点を持っていくときに、大沢伸一の持っているものが必要なんです。彼は、本当に鬼才ですね」

interview & text TOMO HIRATA


【アルバム情報】

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BRADBERRY ORCHESTRA
Vol.0
(JPN) avex / AVCO-36050(ORS)
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tracklisting
01. LOVE CHECK
02. To be (or not)
03. L.P.D
04. Mutation
05. kizamu
06. body electric

【オフィシャルサイト】
www.bbo-a.jp/

【VIDEO】

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