Buraka Som Sistema『Komba』インタビュー


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J・ワウ(旧名リル・ジョン)、DJライオット、コンダクター、MCカラフ、ブラヤからなる、ポルトガル発のダンス・ミュージック・アクト、ブラカ・ソム・システマ(Buraka Som Sistema)。’06年にシングル・デビューした彼らは、クドゥル/クドゥーロ(Kuduro / kuduru:アフリカのアンゴラに起源を持つ、ポルトガルのリスボンで独自に発展した音楽)とモダン・クラブ・ミュージックを融合したサウンドで注目を浴びた、個性派アーティストです。
ディプロやザ・カウント&シンデンといった人気DJ達からのサポートや、M.I.A.とのコラボ曲「Sound Of The Kuduro」でさらなる注目を集めると、’08年には、デビュー・アルバム 『ブラック・ダイアモンド』(Black Diamond)をリリース(日本でのリリースは’09年)。その年を代表するダンス・アルバムとして話題を集め、世界的に知られる存在となっています。彼らは、’09年に来日を果たし、GAN-BAN NIGHT SPECIALとフジロックでアツいパフォーマンスを披露しておりますので、ご記憶の方も多いでしょう。
そんなブラカ・ソム・システマが、待望のニュー・アルバム『コンバ』(KOMBA)をリリースしました。彼ら独特の音楽性をさらにもう一歩先へ進めるべく制作に励んだ、という意欲作です。ステレオタイプ(Stereotyp)とのセッションなども行いながら完成させたという本作。そのサウンドは、「(We Stay) Up All Night」「Hangover (BaBaBa)」「LOL & POP」を筆頭に、前作以上にエネルギッシュでユニークなビート、ヴァイブスが詰まったものとなっています。

ここでは、そんな最新作『コンバ』の内容について、メンバーのJ・ワウとコンダクターに話を聞きました。なお、本作収録曲の「(We stay) Up All Night」は、iTunesの“今週のシングル”として、11/1(火)まで期間限定フリーダウンロードができますので、チェックしてみてください。


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BURAKA SOM SISTEMA『KOMBA』インタビュー

__前作『ブラック・ダイアモンド』は、クラブ/ダンス・ミュージック・シーンにインパクトを与えたアルバムとなりましたね。『ブラック・ダイアモンド』 はブラカ・ソム・システマにとって、どのような意味を持つ作品となりましたか?

「『ブラック・ダイアモンド』をリリースしたことは、ミュージシャンとしてすごく大きなゴールだったと思う。俺たちのファースト・アルバムだったし、あのアルバムのおかげで自分たちの音楽が、想像以上に注目を集めることになったからね。日本やオーストラリア、クロアチアにメキシコまで、世界中の人たちがアルバムの曲を知っていたり、俺たちのライブを体験してくれた。最初に注目を集めたのは「Sound of Kuduro」だったけれど、『ブラック・ダイアモンド』を出したことで、俺たちがただの一発屋じゃないってことを、世界に示せたと思う。だから、俺たちにとってはアレは、ただアルバムをリリースしたってだけじゃなくて、夢の実現そのものだったんだよ」

__では、そんな前作に続くニュー・アルバム『コンバ』(KOMBA)について教えてください。まず、アルバムの制作はいつ頃スタートしたのでしょうか?

「2010年の9月頃に制作を始めたんだ。ポルトガル南部のハウス・スタジオに4週間くらい籠って、ビートづくりやアイディア出しに取りかかった。ああやってみんなで集まって曲を書くっていう作業は、俺たちにとって初めての経験だったんだけど、とにかくゼロから始めたよ。ビートのコンセプトから歌詞まで、すべて白紙からスタートした。で、そうやって4週間一緒に作業していくうちに、どんなアルバムにしたいのかが見えてきた。それからリスボンのスタジオに戻って、アイディアをさらに練ったり、ロンドンのレッドブル・スタジオでセッションをしたりしながら、自分たちのほしいサウンドを形づくっていった感じだったね」

__最終的には、どんなテーマやコンセプトのアルバムにすることになったんでしょうか?

「コンセプトが見え始めたのは、ある程度ビートをつくった時点だったね。どれも、どこかダークでベース・ヘヴィーなことに気付いたから。ダークだけどパーティーっぽい、というコンセプトを考えていくようになったんだ。例えば、メキシコの“死者の日”についてだとかね。で、そうやって考えていくうちに、アンゴラのしきたりである“コンバ”をテーマに楽曲をつくってみようってことになった」

__その、本作のアルバム・タイトルになっている“コンバ”とは、どんな風習なんですか?

「アンゴラで今でも残っているしきたりで、誰かが亡くなると葬儀の7日後に家族や友達が集まって、亡くなった人が好きだった食べ物や飲み物をふるまいながら、その人の人生と旅立ちを祝う、というものなんだ。思い出を忘れないために、その人についての話をしたり、好きだった音楽をかけてダンスしたりするんだよ」

__なるほど。今作の曲づくりとサウンドメイキングで重視したこと、意識したことは何でしたか? あなた達のトレードマークであるクドゥルを、どのように進化・発展させたかったのでしょうか?

「今回は、全てをもう一歩先へ進める、ってことを意識したかな。クワイト(kwaito)からズーク(zouk)、ヒップホップ、ロック、ポップまで、自分たちが受けてきた影響をミックスしながら、新しいヴァイブスを生み出したかったんだ。だから、そういった音楽のエナジーはそのままキープしながら、ブラカ・ソム・システマ流のひねりを加えるにはどうすればいいか、ってことを考えていったよ。今回のアルバムでは、クドゥルの影響は残っているけれども、以前ほど前面には出ていないと思う。その理由の一つは、2年間ツアーをして、俺たちはプロダクション・ユニットとしてもタイトになったし、よりバンドらしくもなったからさ。その影響が、このアルバムのサウンドにも出てきているんだよね。“ブラカのサウンド”ってものをもっと追求したかったし、もっと自分たちらしい音楽にしたかったんだ」

__曲づくり自体で新たにチャレンジしたこと等は、何かありましたか?

「新しいジャンルやスタイルを取り入れていくことは、俺たちにとってチャレンジではないんだ。とにかく一緒に制作しながら、一番ベストなサウンドを探そうってだけだから、それが最終的にどんな音になるかなんて分からないし。むしろ一番苦労したのは、言葉の壁だった。俺たちにとって、英語は100%しっくりくる言葉ではないから、ポルトガル語の持つ雰囲気をキープしたいって気持がある一方で、でも世界中の人々に俺たちが歌っていることを伝えるには、やっぱり英語も取り入れていかないダメだなっていう気持ちもあってさ。そのバランスを取るのがすごく難しかったよ」

__リリックの話とも関連してきますが、今作は、ステレオタイプ、アフリカン・ボーイ、ケイシャ、サラ・タバレス、テリー・リン、ブラヤ、ミックスヘルなど、様々なアーティストをフィーチャーした作品にもなっていますね。彼らとのコラボレーションはいかがでしたか?(以下、各アーティストついてコメントをいただきました)

ブラヤ(Blaya)は、この4年間ずっとライブに参加してもらっていて、もう俺たちには欠かせないメンバーだし、ブラカの核でもあるね。「(We Stay) Up All Night」や「LOL & POP」を聴いてもらえれば分かると思うけれど、ダンサーとしてはもちろん、シンガーとしても素晴らしい才能を持っているんだ。

ステレオタイプ(Stereotyp)は、仕事をしはじめてしばらくになるけど、素晴らしいプロデューサーなんだ。今回は、俺たちと1週間一緒に過ごしてもらって、アルバムのうち3曲を共同プロデュースしてもらった。彼のプロジェクト、KU BOもカッコいいし、ソロ作品も良いんだよね。ぜひチェックすることをお勧めするよ。

アフリカン・ボーイ(Afrikan Boy)は、仲の良い友達で、俺たちがイギリスに行く度に会ってるんだ。「Eskeleto」は、ロンドンのレッドブル・スタジオで一緒にレコーディングしたんだけど、もう75%くらい曲はでき上がっていて、アフリカンなグライムっぽいフロウがほしいなって思っていた。彼はナイジェリア育ちなんだけど、そこで経験した異教徒の儀式みたいな、ダークな雰囲気を曲に取り入れたかったんだ。

ケイシャ(Kaysha)は、「Dollar」という曲を聴いた時に、彼と一緒にやってみたいって思ったんだ。すごく強いフックがある曲でさ、俺たちもあのヴァイブスがアルバムにほしかったんだよ。タイトル曲「Komba」のビートにピッタリだと思ってね。

サラ・タバレス(Sara Tavares)とのコラボは、俺たちにとってもちょっと意外だった。もともとリスボンで会った知り合いなんだけど、すごく良い曲を書くんだよ。で、「Voodoo Love」の フックを書いている時に、彼女に手伝ってもらおうと思ってスタジオまで来てもらったんだ。それで結局、彼女が書いたフックがすごく良かったから、それを使うしかないってことになってさ、アルバムの中でも特にお気に入りの曲になったよ。もし彼女のことを知らないなら、今すぐチェックすべきだ!

テリー・リン(Terry Lynn)は、今回のアルバムに参加してくれたゲストの中で、唯一一緒にレコーディング作業していないミュージシャンだね。彼女が「Voodoo Love」で歌っているヴァースは、全部キングストンで録音したもので、俺たちはその音源のデータを受け取って、全部が上手くハマるようにアレンジしていった。彼女は、ジャマイカ音楽のアイコンだからね、参加してもらえたことを誇りに思うよ。

ミックスヘル(Mixhell)は、ライマとイゴール・カヴェレラ(元セパルトゥラ)のデュオなんだけど、俺たちはみんなイゴール・カヴァレラのドラムを聴いて育ったし、ブラジルのトライバル音楽とヘヴィーメタルを融合するってアイディアはすごいなって思っていた。今回は「Macumba」で、彼らとリスナーがトランス状態に陥るようなサウンドをつくりたいと思ったよ」

__先行シングルの「Hangover (BaBaBa)」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「コーラスの部分は、もともとはナコベータ(Nacobeta)っていうアーティストのアンゴラの歌からきたものなんだ。俺たちは、よくその歌をライブでやってたんだよね。で、ビートの部分は、ステレオタイプと一緒にやった南ポルトガルでのセッションでできた。あのセッションでは、たった数時間で、曲の70%くらいができ上がったんだよね。すごくオリジナルで、カッコいいビートになったと思う」

__現時点での最新PV曲「(We Stay) Up All Night ft. Blaya & Roses Gabor」は、どのよ うにして誕生した曲ですか?

「この曲は、全世界にいる俺たちみたいな変わり者やオタクや音楽マニア、とにかく昼は寝て過ごして、日が暮れてからがやっと本番だ、みたいなヤツらに捧げた曲なんだ。夜な夜な怪しいストリーミング・サイトで音楽をチェックしたり、クラブに繰り出したりしているようなヤツらさ。そういうヤツらこそが、俺たちの音楽にとって一番大切なんだ。この曲は、J・ワウとブラヤがアイディアを出したんだけど、すぐにみんなのお気に入り曲になったよ」

__では最後に、ブラカ・ソム・システマの次なる活動目標を教えてください。

「これからスタートする、2年に渡る世界ツアーに全力で取り組むつもりさ。今はそのことしか考えてないね。今回はツアー・ドキュメンタリーみたいなものも制作したいなって思ってるしね」


【リリース情報】

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Buraka Som Sistema
Komba
(JPN) Enchufada/Hostess / ENCD015J
10月26日発売
HMVでチェック
Towerでチェック
※特典情報:タワーレコード特典
ブラカ・ソム・システマの楽曲を本人がミックスしたMIXCD『SAKE BOMB MIX』、
約60分収録(先着特典の為、無くなり次第終了となります)。

tracklist
01. Eskeleto feat. Afrikan Boy
02. Komba feat. Kaysha
03. Voodoo Love feat. Sara Tavares & Terry Lynn
04. Tira o pe
05. (We Stay) Up All Night feat. Blaya & Roses Gabor
06. Hypnotized
07. LOL & POP feat. Blaya
08. Vem Curtir feat. Stereotyp
09. Candonga
10. Hangover (BaBaBa)
11. Macumba feat. Mixhell
12. Burakaton feat. Bomba Estereo
13. Hangover (BaBaBa) (Caspa Remix) [Bonus Track]
14. Hangover (BaBaBa) (Tony Senghore Remix) [Bonus Track]
15. Hangover (BaBaBa) (Oui’Wack Remix) [Bonus Track]
16. Hangover (BaBaBa) (Swick Remix) [Bonus Track]

【オフィシャルサイト】
http://www.hostess.co.jp/burakasomsistema/
http://www.buraka.tv/

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