Chase & Status『No More Idols』インタビュー


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ソウル・ミルトンとウィル・ケナードからなる、ロンドン出身のダンス・ミュージック・アクト、チェイス&ステイタス。’90年代半ばにDJ活動をスタートさせた彼らは、’00年代に「Duppy Man」「The Druids」「Dumpling Riddim」といったドラムンベース・アンセムを次々と送り出し、一躍脚光を浴びたアーティストです。’08年には、「Pieces feat. Plan B」、「Against All Odds feat. Kano」、スヌープ・ドッグ「Snoop Dogg Millionaire」の元ネタとなった「Eastern Jam」などを収録したファースト・アルバム『MORE THAN A LOT』をリリースし、その人気を確実なものとしています。
そんな彼らが、最新アルバム『ノー・モア・アイドルズ』をリリースした絶好のタイミングで、SONICMANIA(8/12開催)にてライブ・パフォーマンスを披露するために来日を果たしました。ザ・プロディジー、ペンデュラムに続く存在として、ライブ・アクトとしても高い人気を誇る彼らだけに、ソニックマニアでのライブ、パワフルでしたね。

というわけで、ここではそんなチェイス&ステイタスに、最新作『ノー・モア・アイドルズ』の内容について聞いてみました。なお本作は、UKアーバン~ベース・ミュージックとオルタナティヴ・ロックの要素を、前作以上に大胆に融合してみせた野心作で、UKチャート5位を記録した「Blind Faith feat. Liam Bailey」を筆頭に、映画『狼たちの処刑台』のテーマ曲「End Credits feat. Plan B」(UKチャート9位)、UKの人気オーディション番組“X Factor”で話題となったマリをフィーチャーした「Let You Go feat. Mali」(UKチャート11位)、さらに「Heavy Vs. Dizzee Rascal」、「Brixton Briefcase feat. Ceelo Green」、「Embrace feat. White Lies」などなど、話題曲が目白押し。本国では、既に全英アルバム・チャート2位を記録するヒットとなっています。


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CHASE AND STATUS『No More Idols』インタビュー

__最新作『ノー・モア・アイドルズ』は、全英チャートで2位を記録するヒット作になっていますね。反響には満足していますか?

ウィル・ケナード「チャートで上位になったことはすごく嬉しいんだけど、僕らとしては、ただアルバムを早く完成させたいと思っていただけで、そんなに期待感はなかったんだ。レーベルが頑張ってくれたおかげだだね。満足しているよ。もちろん、常に良くなりたいと思っていて、2位の次はもう1位しかないから、あとは1位を目指すだけかな」

__本作であなた達が一番チャレンジしてみたかったことって、何でしたか?

ウィル「一番大きなチャレンジは、様々なアーティストとコラボレーションしたことだったね。いろんなシンガーやラッパーとコラボして、典型的なソングライティングをやりつつ、モダンなプロダクションを目指していったから、アレンジメントにはすごく時間がかかった。そこは、このアルバムでかなり挑戦した部分だったと思う。何回も、何十回もやり直した曲が多かったから、すごく大変なプロセスだったよ。その結果、すごく満足できるものになったけどね」

__ソングライティングを意識した曲づくりというのは、今作がメジャー・リリース第一弾となることを念頭に置いたチャレンジだったんですか?

ウィル「メジャー・レーベルから出すということで、成功しないといけないってプレッシャーはあったと思う。本当に真剣に取り組まなければいけないプロジェクトだと思ったし、いろんな人達からも期待されていたから、ちょっと大変な部分があったんだ。僕らはすごく完璧主義者で、野心的でもあるから、その部分がプレッシャーになったと思う。ファースト・アルバムがすごく成功したから、セカンド・アルバムはそれ以上のものにしなきゃいけない。難しいチャレンジだと感じていたよ」

__ちなみに曲づくりでは、具体的には特にどのような点を重視したのでしょうか? 本作は、各曲ごとに多彩なビートが楽しめる内容となっていますね。

ソウル・ミルトン「アルバム全体ではなく、曲単位で制作していったから、バラエティに富んだ内容になったんだと思う」
ウィル「今回は、サンプリング機材を使ったり、ピアノ、ギター、シンセサイザーを弾いたり、ソフトウェアや新しいテクノロジーも使った。典型的なダンス・ミュージックのレコーディング・プロセスを用いながら、新しいやり方を取り入れていくようにしたんだ」
ソウル「曲づくりのプロセスは、曲によって毎日プロセスが違ったよ。例えば、ボーカルのために曲をつくったり、バックトラックを全部つくりあげてから、ボーカリストを誰にしようか決めたり、お互いにサンプルでつくったネタを持ち寄って、それを合わせて曲をつくったり…といった感じでね」

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__では、本作に参加している様々なMC/ボーカリスト、アーティストについて教えてください。今回特にコラボレートしてみたかったアーティストは、誰でしたか?

ウィル「まずは、「Embrace」でフィーチャーしたホワイト・ライズ。彼らのような音楽を自分達の音楽と合わせるのは、今までにない感じのものだったから、ぜひやりたいと思っていたんだ。「Heavy」でコラボしたディジー・ラスカルも、もちろん特別だった。あとは、「Brixton Briefcase」でフィーチャーしたシーロー・グリーンかな。彼がいつもやっている音楽とは全く違う歌い方をしてもらったから、すごく面白いコラボレーションになったと思う。誰にしても、結果には本当に満足しているよ」

__シーロー・グリーン以外は、全てUKのアーティストですよね。コラボするにあたって、何か基準のようなものはあったんでしょうか?

ウィル「特別な基準というものはなかったよ。僕らがユニークだなって思える声を入れたかったから、有名アーティストでも新人でもよかったんだ。イギリスにはいろんな音楽があって、いろんなアーティストがいることを紹介できればいいなって感じさ。エキサイティングで視野が広い人達とやりたいとは思っていたけどね」

__実際にコラボレートしてみて、印象に残ったのは誰でしたか?

ソウル「全員それぞれ面白かったけど、「Blind Faith」のリアム・ベイリーは特に楽しくて、クリエイティブな人だったよ。いい意味で、すごくクレイジーなんだ」

__全英チャート5位を記録した「Blind Faith」は、今のところチェイス&ステイタス最大のヒット曲となっていますね。どのようにして誕生した楽曲でしたか?

ウィル「長い話になるんだけど、最初はバッキング・トラックから入って、そのアイディアをすごく気に入っていたから、そこにいろんな要素を徐々に加えていって、1年半から2年くらいかけて曲を完成させていったんだ。で、今度はそれにボーカルを加えるために、10人くらい違うボーカリストに歌ってもらったんだけど、なんとなく気に入らないものばかりでね。で、ようやく最後にリアム・ベイリーと出会ったんだ。彼がいつもやっているようなスタイルとは違うんだけど、面白いトラックだねって、すごく気に入ってくれてね。で、昔のレイヴ時代によくあったロリータ・ハロウェイの声ネタを持ってきて、ようやく満足する結果を得られたわけさ」

__かなりの時間と労力をかけた力作だったんですね。タイニー・テンパーをフィーチャーした最新シングル「Hitz」は、いかがですか?

ソウル「最初にビートだけを入れて…パブリック・エナミーのような、’90年代初頭の雰囲気を出したいなって思っていたね。で、タイニーとは去年フェスで知り合って、ツアーにも一回参加してくれたんだけど、彼と何か一緒に何かやりたいって思っていたから誘ったんだ。それで、彼はいつもアンダーグラウンドな音楽をやっているから、あえて“Hitz”っていうタイトルにしてみた。アイロニーってわけじゃないんだけど」

__では、“ノー・モア・アイドルズ”というアルバム・タイトルには、どのような意味合いが込められているんですか?

ウィル「なかなか反抗的で、いい響きだと思ったんだ。いろんな解釈ができるけど、僕のひとつの解釈としては、昔はジム・モリソンとか、マイケル・ジャクソン、ジミ・ヘンドリックスのようなアイドルが存在していたけど、今の時代にそういったアイドルは存在できるのか?っていう疑問を投げかけている言葉なんだ。昨今の音楽は、あまりにもビジネスになってしまって、アーティストのアイドル性とその良さを、企業が持っていってしまっているんじゃないか、っていうね」

__なるほど。チェイス&ステイタスも、ジミ・ヘンドリックスのようなオーラを放つ存在になれたら幸せですか?

ソウル「ハハハ。ジミヘンみたいに弾けたら、そりゃすごく嬉しいけど(笑)」

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__近年、あなた達はライブ活動に力を入れてきましたが、ライブをする際はどんなパフォーマンスを心がけていますか?

ソウル「いつも観客が盛り上がることを期待してるね。そして、自分のパフォーマンスが最高に良いものであることを心がけてるよ。ギターを落とさなかったり…とかね。DJはずっとやってきたから、もう身に付いた能力みたいになっているけど、ライブに関しては、常に全て上手くいくよう心がけないとね」
ウィル「DJでもし何かトラブルがあるとしたら、たいていは電源やCD、ターンテーブルの問題だけど、ライブではもっといろんなケースのトラブルがあるからね。もし僕らが、DJを10年やるより先にライブを10年やっていたら、DJよりもライブの方が全然楽だったのかもしれないけど」

__ちなみに、本作には、そういったライブ活動の成果というものが反映されていると考えていますか?

ウィル「そう思うよ」
ソウル「ライブ・パフォーマンスをやるようになってから、制作でもより楽器を用いるようになったし、どうやったらもっとライブ感が増したり、面白くなるのかということを考えるようになったから、やっぱり大きな影響があったと思う」

__もともと、あなた達がライブ活動に重点を置くようになったきっかけは、何だったんですか?

ウィル「ザ・プロディジーやペンデュラムのライブを観て、ダンス・ミュージックでも本格的なライブをすることができるって分かったんだ。で、自分達でもできるって思った。ずっと長い間DJをやってきたけど、ダンス・ミュージックをライブでやる意味を知った、というかね」

__そうでしたか。では、あなた達がそもそもレイヴ、ドラムンベース、ガラージ、グライム、ダブステップ…と発展してきた、このUK独特の音楽シーンにハマったきっかけは何だったのでしょうか?

ウィル「若い頃にレイヴに行ったり、パイレート・ラジオを聴いたのがきっかけだったよ。それがどういうジャンルなのか全然知らなかったけど、とてもアンダーグラウンドなものだったから、すごく特別な思いがあったね。で、それを聴きながら育って、今ではほとんど自分たちの人生そのものになっている、という感じさ」
ソウル「みんな、このアンダーグラウンド・シーンは死んでいくって言っていたけど、これからもどんどん繁栄していく自信を持っているよ」

text Fuminori Taniue


【アルバム情報】

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CHASE & STATUS
No More Idols
(JPN) UNIVERSAL / UICR-1090
HMVでチェック


tracklisting
01. No Problem/ノー・プロブレム
02. Fire In Your Eyes ft Maverick Sabre/ファイア・イン・ユア・アイズ feat. マーヴェリック・セイバー
03. Let You Go ft Mali/レット・ユー・ゴー feat. マリ
04. Blind Faith ft Liam Bailey/ブラインド・フェイス feat. リアム・ベイリー
05. Fool Yourself ft Plan B & Rage/フール・ユアセルフ feat. プランB&レイジ
06. Hypest Hype ft Tempa T/ハイペスト・ハイプ feat. テンパT
07. Hitz ft Tinie Tempah/ヒッツ feat. タイニー・テンパー
08. Heavy vs Dizzee Rascal/ヘヴィ feat. ディジー・ラスカル
09. Brixton Briefcase ft Ceelo Green/ブリクストン・ブリーフケース feat. シーロー・グリーン
10. Hocus Pocus/ホーカス・ポーカス
11. Flashing Lights ft Sub Focus & Takura/フラッシング・ライツ feat. サブ・フォーカス&タクラ
12. Embrace ft White Lies/エンブレイス feat. ホワイト・ライズ
13. Time ft Deliah/タイム feat. ディライラ
14. Midnight Caller ft Clare Maguire/ミッドナイト・コーラー feat. クレア・マグワイア
15. End Credits ft Plan B/エンド・クレジット feat. プランB

16. Blind Faith ft Liam Bailey – Loadstar Remix /
  ブラインド・フェイス feat. リアム・ベイリー(ロードスター・リミックス)*
17. Time ft Delilah – Chase & Status ‘Champagne Bubbler’ Remix /
  タイム feat. ディライラ(チェイス&ステイタス’シャンペン・バブラー’リミックス)*
18. Time ft Delilah – Wilkinson Remix/
  タイム feat. ディライラ(ウィルキンソン・リミックス)*
19. Let You Go ft Mali – Brookes Brothers Remix/
  レット・ユー・ゴー feat. マリ(ブルックス・ブラザーズ・リミックス)*
*日本盤ボーナス・トラック

【Official Website】
http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/chase_and_status/index.html
http://www.chaseandstatus.co.uk/

【VIDEO】

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