Crystal Fighters『Star of Love』インタビュー


crystal_fighters_jk.jpg

スペインのナバラ出身で、現在はイギリスのロンドンを拠点に活躍する、Sebastian、Gilbert、Graham、Laure、Mimiからなるインディー・バンド、Crystal Fighters。’09年に、フランスの人気レーベル、Kitsuneからデビュー・シングル「I Love London」と、セカンド・シングル「Xtatic Truth」をリリースし、そのダンサブルかつユニークなサウンドで脚光を浴びた注目株です。

彼らが、待望のデビュー・アルバム『Star of Love』を2月23日にリリースします。海外では既に昨年末に発表され、高い評価を得ている話題作です。「I Love London」「Xtatic Truth」はもちろん、「In The Summer」「Follow」「Swallow」「At Home」といったシングル曲を筆頭に、最新のエレクトロニック~ダンス・ミュージックと、バスク地方に伝わる伝統音楽の要素が融合した、ポップでパンクでサイケでダンスな楽曲が詰まった本作。その音世界は、Laureの祖父が書き留めていたオペラにインスピレーションを得たという壮大な世界観と相まって、エモーショナルにして、時に哲学的なものとなっています。

iLOUDでは、そんな本作『Star of Love』の内容について、Crystal Fightersのメンバーにメールで話を聞いてみました。

※追記(2/23)
本日2/23より、Crystal Fightersの最新PV曲「At Home」リミックス曲の、フリー・ダウンロード企画がスタートしました。話題のアーティスト7組がリミックスを担当しており、各アーティストの手がけたリミックス曲が、三日間限定でダウンロード可能になるとのこと。第一弾のリミックスは、Kateという3人組バンドとなっています(第二弾以降のアーティストは、まだ未公開)。ダウンロード・ページの詳細は、KSRのオフィシャルtwitter、[KSR_yougaku]でも公開していくとのことです。
さらに、全てのリミックスが公開された後に、どのリミックスのダウンロードが一番多かったかを当てる、スペシャル・プレゼント企画も実施され、見事的中された方には、抽選でアーティスト・グッズが当たるとのこと。ぜひ参加してみてください。


crystal_fighters_A.jpg

Crystal Fighters『Star of Love』インタビュー

__まずは、あなた達が、バンド活動を始めた経緯について教えてください。メンバーのLaureが、“スペインのバスク地方に住んでいた祖父の日記に記されていた、未完成のオペラ楽曲を実現するために、Crystal Fightersを始めた”という話は、本当ですか?

「本当だよ。Crystal Fightersの全ては、バンドのオリジナル・メンバーの一人、Laureから始まったんだ。彼女のお祖父さんが亡くなった時、Laureはバスク地方にあるお祖父さんの家に、自分に残された遺品を整理しに行って、そこで革表紙の本を見つけた。開いてみると、それはお祖父さんが秘密で書いていた、未完成のオペラだった。で、そのオペラの一部分が“Crystal Fighters”っていうタイトルだったんだ。僕らは、Laureの見せてくれたそのオペラが、バスク地方という環境で書かれた事実と経緯に、ものすごく魅了された。そして、そのインスピレーションが、そのままバンド名になったってわけさ。それをきっかけに、バスク地方の文化や音楽についてリサーチを始めたら、エキサイティングな発見が多くて、それは僕らがやりたいタイプの音楽と、すごく相性が良いってことに気がついたんだ」

__運命的で、ドラマチックな話ですね。ちなみに、そのオペラ自体は、どんなストーリーなんですか?

「お祖父さんが病で苦しんでいた晩年に書いた作品だから、理解するのは難しい内容なんだ。いろんな文章が一カ国語以上の言語で走り書きされていて、スケッチやその他の描写と混在しているんだ。そこには、お祖父さんのアイディア、価値観、経験が入り混じっていて、計り知れない宇宙の謎、償いの本質とその探求、愛の勝利、あとは太陽の全能といった、壮大なテーマが網羅されているんだけどね」

__あなた達自身が定義している通り、Crystal Fightersのサウンドは、シンセサイザーとバスク地方の民族楽器が融合した、ダンサブルでポップなものとなっていますね。具体的には、どんなアーティストや、どんなジャンルの音楽に影響を受けているんですか?

「僕らの音楽は、バスクの伝統的なフォーク・メロディーと、ダンス・ミュージックに大きく影響されているんだ。そのエッセンスを自分達の曲で再現すると同時に、’80年代初期のスペイン産ポップ~パンクからの影響も取り入れているよ。あの頃のスペインにあったポップ・ミュージックは、すごく面白いのに不当に見過ごされていると思うから。あと、僕らは今、ロンドンで最新の音楽に囲まれて暮らしていて、ライブをする時は、DJやダンス・ミュージック・アーティストと同じステージに立つ。だから、特にコンテンポラリー・ミュージック、ダンス・ミュージックも、僕らに大きな影響を与えている音楽だね」

__なるほど。で、あなた達は、’09年にシングル「I Love London」と「Xtatic Truth」をKitsuneからリリースして、その存在を知られるようになりました。どういう経緯で、Kitsuneからのリリースが実現したんですか?

「僕らは、昔からKitsuneのファンだったんだ。だから、曲が完成した時にコンタクトを取ってみたら、Kitsuneのジルダがすごく気に入ってくれて、2曲のリリースが実現したわけ。とにかく嬉しかったね。Two Door Cinema Club、Renaissance Man、Maybbといったアーティストのリミックスをしたり、彼らにリミックスしてもらえるチャンスにも恵まれた。去年は、東京や世界中でライブもできたしね! Kitsuneは最高のレーベルだ。ちなみに、僕らが特に好きなのは、Is Tropicalだよ」

__Is Tropicalは、Kitsune期待のニューカマーですよね。話を戻して、では、あなた達のデビュー・アルバム『Star of Love』について教えてください。まず、作品のテーマやコンセプトは何でしたか?

「アルバム全体でプロデュースしたかったのは、インスピレーション源になったお祖父さんのオペラが持つ、雄大さと臨場感。そして、スペイン産パンク・ミュージック特有の反骨精神だね」

__アルバム・タイトルの“Star of Love”には、どのような意味合いが込められているのでしょうか?

「“Star of Love”の頭文字、“SOL”は、スペイン語で“太陽”っていう意味の言葉なんだ。この言葉も、Laureのお祖父さんが書いたオペラにあった、苦悩と憂鬱のイメージ、記憶と欲望を表現する言葉がベースになっている。で、例えば、「Champion Sound」は、心を奪われる愛を見つけることの不確実性と、そのイメージを描いた曲だね。「Solar System」は、魂=太陽系だという想像をしてつくった曲だ。この曲は、Bakarっていうアーティストの描いた、同じタイトルの絵がインスピレーション源さ。その絵は、彼の元恋人たちの顔を地球に見立て、自分自身をその絶望の中心点にある太陽に見立てた作品なんだけどね。そして「In The Summer」では、太陽の光が降り注ぐ都会で感じる、激しい高揚感を表現した。そう、太陽は、僕らのやること全ての中心にあるんだ」

__「In The Summer」は、本作のリード・シングルにもなっていますね。

「「In The Summer」は、“ソニック・マキシマリズム”を追求した実験的な曲なんだ。軽快なループするリズムが、爆発するコーラス部分、驚天動地的なベース・サウンドと衝突して、想像もしなかった太陽への讃歌をつくり出している。リスナーは、曲の激しさが増すと共に、至福に満ち溢れて、情熱的で無秩序になっていく夏の季節に放り込まれるような、ミステリアスな気持ちになるんじゃないかな。この曲のメロディーは、お祖父さんのオペラにも登場する、スペインのナバラで行われる、有名なランツのカーニバルで聴いた音楽にインスピレーションをもらったんだ」

__曲づくり自体は、どのようなプロセスで制作していきましたか? 独自の作曲方法などありましたら教えてください。

「僕らは、メンバー全員で同居しているんだけど、壁がすごく薄いから、何でも筒抜けなんだ。隣の部屋で誰かが曲をつくっていると、家にいる全員に聞こえてくるんだよ。だから、その聞こえてくる音がいい感じの時は、みんなで集まって、一緒に曲をつくり込んでいったよ。各自で曲について考えることもあるけど、曲の始まりと終わりは、必ず全員集合してつくったね。曲づくりは、大体いつもシンプルなアイディアからスタートするんだ。メロディーやリズムのアイディア、あとは特別なテーマや、楽器をベースにしたものとか…。それを自分達が納得いくまで弾いてみて、あとはライブの時に実験的なことを試して、曲を完成させていったね」

__ところで、バスクの民族楽器というのは、具体的にはどんな楽器なんですか?

「バスクの主な民族楽器は、txalaparta (木琴状の打楽器。通常は1人か2人の演奏者が木槌で演奏)、tabor(ロープの巻かれたスネアドラム)、txistu(バスク地方特有の、縦笛のような楽器)だね。このアルバムでは、それらに加えてスパニッシュ・ギターも使ったよ。もちろん、シンセやエレキ・ギターも使ったけど。バスクの民族楽器と伝統的なメロディーは、僕らの音楽にオーガニックなサウンドをもたらしてくれたし、歴史ある音楽に挑戦できたことは、大きな経験になった」

__分かりました。では最後に、Crystal Fightersの次なる活動目標を教えてください。

「もっといろんな国でライブをやって、新しい曲をみんなと共有していきたいね。ニュー・シングル「At Home」も、もうすぐリリースされるし、今年はライブの予定が既にいっぱい入っているんだ。大好きな東京にも、近いうちに行けるといいね! 僕らの最新情報は、www.facebook.com/crystalfighterswww.twitter.com/crystalfighters でチェックできるよ」

tanslation Kyoko Watanabe Barbosa
interview & text Fuminori Taniue


【アルバム情報】

crystal_fighters_jk.jpg

Crystal Fighters
Star Of Love
(JPN) KSR / KCCD-433
2/23発売
HMVで買う 
Towerで買う

tracklisting
01 Solar System
02 Xtatic Truth
03 I Do This Everyday
04 Campion Sound (Alt Version)
05 Plage
06 In The Summer
07 At Home
08 I Love London
09 Swallow
10 With You
11 Follow
12 At Home (Acoustic Version)
13 Xtatic Truth (Version Espanyol) (Acoustic Version)
14 Plage (Acoustic Version)
15 Campion Sound (Acoustic Version)
16 Follow (Acoustic Version)

【オフィシャルサイト】
http://www.ksr-corp.com/label/artists.php?artist_id=204&music_genre_id=4
http://crystalfighters.com/
http://www.myspace.com/crystalfighters

interviewカテゴリーの記事